特Aを一度も獲れていないのに、愛知県の食卓の4割を占めているお米があります。
「あいちのかおりって、ランクはどのくらいなの?」と気にしている方は多いかと思います。結論からお伝えすると、愛知県産あいちのかおりは、日本穀物検定協会が毎年発表する「米の食味ランキング」において、過去9年間(2018〜2026年)継続して「A」ランクの評価を受けています。令和7年産も変わらず「A」評価でした。
ここで大切なのが「A」と「特A」の違いです。食味ランキングは全部で5段階あります。基準米(複数産地のコシヒカリブレンド)と比べて「特に良好」なものが最高位の「特A」、「良好」なものが「A」、「ほぼ同等」が「A'」、「やや劣る」が「B」、「劣る」が「B'」という順です。
つまり「A」は決して悪い評価ではありません。特Aは全国で43産地品種しか選ばれていないため、Aでも十分に「普通以上に美味しいお米」と評価されているということです。
重要な点があります。食味ランキングは毎年春に「供試試料米(試験用に提供されたサンプル米)」を使って試食した結果であり、流通する全てのあいちのかおりを対象にしているわけではありません。スーパーや通販で買えるあいちのかおりが全て同一の評価というわけではないんです。これが基本です。
実際に、産地や農家さんのこだわり、生産された年の気候条件によって味は大きく変わります。同じ「A」評価でも、農家さんの手間と栽培環境次第で、特Aに匹敵するほど美味しいあいちのかおりが存在するのが現実です。これを知っておけば、ランクだけで判断せずに美味しいお米を見つけやすくなります。
参考:日本穀物検定協会による食味ランキングの詳細や評価基準について
全国の産地品種ごとの食味ランキング結果が一覧で確認できます。特Aから B'まで、各産地の評価を比べながらあいちのかおりのポジションを把握するのに便利です。
あいちのかおりは、愛知県農業総合試験場が「ハツシモ」と「ミネアサヒ(コシヒカリ系統)」を交配させて育成した品種で、1988年(昭和63年)に品種登録されました。2000年には愛知県の奨励品種に指定されています。
「ハツシモ」は岐阜県を代表する大粒のお米で、粒の大きさと食べ応えに定評があります。「ミネアサヒ」はコシヒカリ系統のため、適度な粘りと旨みを受け継いでいます。この2つの良いところを組み合わせた結果が、あいちのかおりの「大粒」「しっかりとした食感」「ほどよい粘り」という三拍子です。
意外と知られていないのが、あいちのかおりが全国的に有名なブランド米「さがびより」の"父親"にあたる品種だという事実です。佐賀県農業試験研究センターが1998年に「天使の詩」を母に、「あいちのかおりSBL(愛知100号)」を父として交配させて誕生したのが「さがびより」。このさがびよりは日本穀物検定協会の食味ランキングで16年連続特A評価(令和7年産まで)を獲得している、まさに全国トップクラスのブランド米です。
つまり、特Aを量産する名門ブランド米の「遺伝子の源」がここにあるということです。これは使えそうです。
また、あいちのかおりは現在「あいちのかおりSBL」という改良型が主流になっています。「葵の風」との交配で病害に対する抵抗性が強化されており、穂いもち病やイネ縞葉枯病に強いのが特徴です。この病害抵抗性のおかげで農薬使用量を減らせるため、減農薬・特別栽培米として販売されるあいちのかおりも増えています。健康や環境への意識が高い主婦の方にとっては、見逃せないポイントではないでしょうか。
2021年の愛知県における水田作付シェアは以下のとおりです。
| 品種名 | 作付シェア |
|---|---|
| あいちのかおり | 40% |
| コシヒカリ | 23% |
| ミネアサヒ | 6% |
| 大地の風 | 3% |
| その他 | 28% |
愛知県全体の4割をあいちのかおりが占めているのは驚きです。コシヒカリが全国的に優勢な中で、これだけの圧倒的シェアを維持しているのは、それだけ愛知の土地と気候との相性が良いからにほかなりません。
参考:あいちのかおりの品種情報と系譜について
誕生の歴史、交配系譜、食味ランキングの推移、作付面積シェアが一覧でまとめられており、品種への理解を深めるのに役立ちます。
食味チャートで見ると、あいちのかおりの位置づけは「適度な粘り×しっかりした食感」の領域にあります。粘りが非常に強くてもちもちしたお米(ミルキークイーンやゆめぴりかなど)とは対照的に、粒が立ちやすくてさっぱりとした口当たりです。
コシヒカリとの比較でいうと、下記の表が参考になります。
| 比較項目 | あいちのかおり | コシヒカリ(標準) |
|---|---|---|
| 粒の大きさ | 大粒(コシヒカリより一回り大きい) | 中粒 |
| 粘り | ほどよい粘り | 強い粘り |
| 甘み | 上品でスッキリ | 濃厚な甘み |
| 食感 | 粒が立ちやすく食べ応えあり | もっちりとした食感 |
| 冷めたとき | パサつきにくい | やや硬くなりやすい |
この食感のちがいが、料理との相性に大きく影響します。あっさり系が条件です。あいちのかおりは「お米が主張しすぎない」ため、焼き魚・煮物・味噌汁などの和食全般はもちろん、カレーや丼もの、チャーハンとも非常に相性が良いのが特徴です。粒がしっかりしているので、カレーのルーや丼のつゆがかかっても米粒が崩れにくく、最後まで食感を楽しめます。
また、冷めてもパサつかないという点が、毎日お弁当を作る主婦の方にとって大きなメリットです。朝に詰めたお弁当を昼に食べる場面でも、お米がかたまらずにふっくらとした食感が続きます。おにぎりにしたときも粒のしっかりした存在感がより際立ち、食べ応えが増します。
さらに、あいちのかおりは2003年度から愛知県の小中学校の学校給食に積極的に導入されています。給食での採用条件は非常に厳しく、「大量に炊いても品質が安定している」「子どもたちが毎日食べても飽きない味」が求められます。その条件を長年クリアし続けているのが、あいちのかおりの実力の証明です。
「あいちのかおり まずい」という検索キーワードが存在するのは事実です。ただし、この評判の原因をきちんと知っておくことが大切です。厳しいところですね。
まず一つ目の原因が「粘りの強いお米に慣れた人のギャップ」です。コシヒカリやゆめぴりかなど、もっちりして甘みが濃いお米を食べ慣れた人が初めてあいちのかおりを食べると、粘りが少なくてあっさりしすぎると感じる場合があります。ただしこれは好みの差であり、あいちのかおり本来の特徴でもあります。あっさりした食味のお米が条件に合う方には最高の選択肢です。
二つ目の原因が「炊き方のミス」です。あいちのかおりはコシヒカリより粒が大きいため、吸水に時間がかかります。浸水時間が短いまま炊いてしまうと、芯が残ったような硬い仕上がりになり、「美味しくない」という印象につながりやすいのです。これは多くの人がやりがちな行動です。
対策として、以下のポイントを押さえるだけで美味しさが大きく変わります。
「まずい」という評判は、食べ方を少し工夫するだけで解消できるケースがほとんどです。これだけ覚えておけばOKです。特に浸水時間の確保は、炊き方の中で最も効果が大きい改善点なので、ぜひ試してみてください。
ここでは、あいちのかおりを愛知県内のお米全体のランクの中でどう位置づけるかという、やや専門的な視点でお話しします。これは検索上位の記事ではほぼ触れられていない内容です。
愛知県産のブランド米を過去9年間(2018〜2026年)の食味ランキングの評価で総合的に比べると、第1位が「ミネアサヒ(三河中山間地区産)」、第2位が「あいちのかおり」という結果です。興味深いのは、ミネアサヒは令和7年産で「特A」を獲得しているのに対し、あいちのかおりは9年間一度も特Aを獲得していない点です。
この差はどこから来るのでしょうか? 大きな理由の一つは「産地の気候環境」にあります。ミネアサヒは三河の中山間地区という、昼夜の気温差が大きい環境で育てられます。お米は日中に光合成でデンプンを蓄え、夜間の気温が低いほど消費するエネルギーが少なく済むため、甘みと旨みが凝縮されやすいのです。
一方のあいちのかおりは主に濃尾平野で生産されます。平野部は生産規模が大きく安定供給しやすい反面、昼夜の気温差が山間部に比べて小さいため、食味評価でやや不利になりやすいという側面があります。
ただし、大局的に見ると、全国ランキングで61位(美味しいお米ランキング2026)は全国に何百もある産地品種の中での数字です。「あいちのかおりは全国で普通以上に美味しい」という事実は変わりません。
また、生産量が圧倒的に多い(愛知県の水田の4割)ということは、価格の安定性や流通の豊富さにもつながります。特AのブランドNのお米が5kg3,000円を超えるのに対し、あいちのかおりは10kgで8,000〜9,500円前後が相場です。コストパフォーマンスで考えれば、毎日のごはん用としてはむしろあいちのかおりの方が優れた選択といえる場面もあるでしょう。
参考:愛知県産米の食味ランキング総合評価について
米の食味ランキング「愛知県産ブランド米 総合評価」(kome-ranking.com)
過去9年間の評価を集計した愛知県産ブランド米の総合ランキングが確認できます。あいちのかおりとミネアサヒの評価の差など、県内ポジションの比較に役立ちます。