カシューナッツアレルギーは、ウルシ科の常緑低木から採れる食用種子であるカシューナッツを食べることで発症するアレルギー反応です。口や唇のかゆみ、腫れ、違和感、めまい、吐き気、腹痛、下痢、蕁麻疹など多様な症状を引き起こします。アナフィラキシーや呼吸困難など重篤な症状があらわれる頻度が比較的高いため、特に注意が必要なアレルゲンとして認識されています。
参考)カシューナッツアレルギーの症状・対策・注意すべき食べ物【食物…
消費者庁が令和6年度にまとめた「即時型食物アレルギーによる健康被害に関する全国実態調査」では、カシューナッツの症例数がナッツ類の中でくるみの次に多く、割合が前回調査の2.9%から4.6%と約1.6倍に増加しました。日本ではナッツ類が食物アレルギーの原因として全体の第4位(8.2%)を占め、年齢別では1〜2歳で第3位、3〜6歳では第1位となっています。カシューナッツは原因食物別のショック発生率が18.3%で全食物の中で最も高く、重症化リスクの高さが際立っています。
参考)Allergen Fact Sheets
ナッツ類アレルギーの症状は通常、摂取後数分以内に起こり、じんましんからアナフィラキシーまでのさまざまな症状が現れます。アナフィラキシーは生命を脅かす可能性のある反応で、呼吸困難になり身体がショック状態に至ることがあります。日本でのナッツ類アレルギーは、ショック症状を引き起こした原因食物として鶏卵、牛乳について第3位で17.4%を占めています。
2025年1月21日に開催された「食物アレルギー表示に関するアドバイザー会議」では、2025年度中にカシューナッツを表示義務のある「特定原材料」に追加する方針が決定されました。消費者庁の会見では「所要の手続きを経て令和7年度中に行いたい」との発言があり、公定検査法の開発を前提として義務化の準備が進められています。カシューナッツが追加されると、アレルギー表示が義務付けられている「特定原材料」は現在の8品目から9品目となります。
参考)消費者庁、カシューナッツをアレルギー表示義務の対象に追加へ…
現在の特定原材料(表示義務対象)は、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生の8品目です。ここにカシューナッツが追加されることで、食品事業者は原材料表示の見直しやスタッフ教育、アレルゲン食材の保管管理などの対応が求められます。また、カシューナッツと同時にピスタチオも表示が推奨される「特定原材料に準ずるもの」に加える方針が決定されました。
表示義務化には移行期間があるため、義務化されたからといってすぐにすべての加工品に表示されるわけではありません。義務化後もアレルギー表示とともに原材料欄を注意深く確認する必要があります。
日本経済新聞:アレルギー表示義務、カシューナッツを追加 消費者庁
カシューナッツの表示義務化に関する最新の発表内容と背景が詳しく解説されています。
カシューナッツアレルギーは、アレルギー専門医による問診、皮膚テスト、血液検査などによって診断されます。特異的IgE血液検査では、カシューナッツ全体に対するIgE抗体を測定する方法(f202)があり、基準値は0.34以下 UA/mLとなっています。検査方法はFEIA法が用いられ、2〜3日程度で結果が得られます。
参考)カシューナッツ(CAPアレルゲン)略号:f202
より詳細な診断には、CRD(Component Resolved Diagnostics)と呼ばれるアレルゲンコンポーネント検査が注目されています。カシューナッツに含まれる主要なアレルゲンタンパク質のひとつであるAna o 3(アナオースリー)に対する特異的IgEを測定することで、摂取後の誘発症状をより正確に予測できます。Ana o 3は熱に対して安定なタンパク質であり、この成分にアレルギーがある場合はアナフィラキシーとも呼ばれる重篤な症状を引き起こす可能性があるため、カシューナッツを完全に避ける必要があります。
参考)http://senoopc.jp/al/nutsallergy.html
食物アレルギーの確定診断には経口負荷試験(OFC:oral food challenge)が有用ですが、ナッツおよびピーナッツは誘発症状が重篤で負荷試験を実施することが困難であることから、血液検査による評価が特に重要となっています。
サーモフィッシャー:カシューナッツアレルゲン情報
カシューナッツのアレルゲンコンポーネントAna o 3の詳細な特性と検査方法について専門的な情報が掲載されています。
カシューナッツを食べてアレルギー反応が出た場合、食後数分から数時間以内に症状が現れます。初期段階では口や喉のかゆみ、唇や顔の腫れ、全身の蕁麻疹といった比較的軽度な症状が見られますが、アレルギー反応が進行すると消化器系や呼吸器系の症状が現れ、重症化することがあります。
参考)https://nanajuni.jp/blogs/magazine/cashew_allergy
具体的な症状としては以下のようなものがあります:
参考)【2022年版】カシューナッツアレルギーとは?症状や注意すべ…
カシューナッツアレルギーの中で最も危険な症状がアナフィラキシーショックです。アナフィラキシーショックとは、体内で広範囲にわたるアレルギー反応が起こり、血圧が急激に低下し、全身の臓器が機能不全に陥る状態です。この状態になると呼吸困難や意識の喪失、最悪の場合には死亡に至るリスクもあるため、迅速な対応が求められます。
軽度の症状の場合は安静にしてしばらく様子を見ますが、数時間経っても症状が変わらない時や更にひどくなった場合はすぐに医療機関を受診してください。特に呼吸困難や意識障害などアナフィラキシーショックの症状が見られる場合は、直ちに救急車を呼ぶ必要があります。重度のアレルギーを持つ人には、エピペン(自己注射式のアドレナリン注射器)が推奨される緊急薬として、医師の指示に従って携帯しておくと安心です。
参考)カシューナッツアレルギーの対処法や治し方は?死亡事例はある?…
カシューナッツアレルギーが確認された場合は、カシューナッツを使用した加工品や料理を口に入れないように心がけることが最も重要です。カシューナッツは中華料理を中心とする炒めもの、和えもの、スパイスカレー、サラダ、チョコレート、パン、ドレッシングなどさまざまな料理や加工食品に使用されています。外見からは判断しづらい場合も多いため、原材料表示をチェックしたり、お店の人に尋ねたりして正確な情報を確認することが大切です。
カシューナッツが含まれる可能性のある食品には、アジア料理(タイ料理、インド料理、中国料理)、製パン製品、スイーツ、アイスクリーム、ケーキ、ペストソース、焼き菓子、シリアル、クラッカー、フレーバーコーヒー、冷凍デザート、パスタ、リキュールなどがあります。また「天然フレーバー」や「植物由来」という言葉は、ナッツやナッツの香料が入っていることを示している可能性があります。アジア料理のレストランでは料理にナッツを使用することが多く、鍋は複数の食事の調理に使用される可能性があるため混入のリスクをはらんでいます。
カシューナッツとピスタチオは同じウルシ科に属する近縁の種にあたり、強い交差抗原性があることが知られています。カシューナッツに反応する人はピスタチオにも反応する場合があり、その逆も同様です。さらにカシューナッツアレルギーを持つ人は、スパイスとして使われているピンクペッパー(ブラジルコショウ)に対するアレルギーのリスクも高い場合があります。ナッツ類のアレルギーを持つ人の約30%は複数のナッツに対するアレルギーを持っているため、カシューナッツだけでなくピスタチオなど他のナッツ類のアレルギーについても念入りにチェックする必要があります。
治療では原因食物をとりのぞく「除去食」や、原因食物を少しでも食べられる人が徐々に食べる量を増やしていく「経口免疫療法(減感作療法)」といった方法が選択されます。
Caneat:カシューナッツアレルギーの症状・対策・注意すべき食べ物
カシューナッツアレルギーの日常生活での具体的な対策方法と注意すべき食品の詳細なリストが掲載されています。