正常新生児でも10点満点を取れないことの方が多く、9点が標準的な評価です。
アプガースコア(Apgar score)は、1953年にアメリカの麻酔科医バージニア・アプガー(Virginia Apgar)博士が考案した、出生直後の新生児の全身状態を評価するスケールです。それ以来70年以上にわたって、世界中の産院で標準的に使用されています。
この評価スコアは、新生児仮死の有無を迅速に判断するためのツールです。出生直後という時間的に余裕のない場面で、5つの観察項目を短時間でチェックできるよう設計されています。つまり現場での即断即決を支える道具です。
アプガースコアが"APGAR"と表記されるのには理由があります。スコアの名前は考案者の苗字であると同時に、5つの評価項目の英語の頭文字をそのまま並べた頭字語(acronym)でもあります。
| 頭文字 | 英語 | 評価項目(日本語) |
|--------|------|------------------|
| A | Appearance | 皮膚色(外観) |
| P | Pulse | 心拍数 |
| G | Grimace | 反応性(顔をしかめる) |
| A | Activity | 活動性(筋緊張) |
| R | Respiration | 呼吸 |
この構造を知っておくだけで、日本語・英語両方の国試問題にも対応できます。これは使えそうです。
現場では、新生児が生まれた直後に助産師・産科医・看護師がチームで評価を行います。評価は主観的な要素を含むため、可能であれば複数人で確認するのが原則です。
ナース専科:アプガースコア(アプガー指数)の評価方法と看護への活かし方(ナース専科)
看護師国家試験で頻出のアプガースコア5項目を、語呂合わせで確実に覚えましょう。複数の覚え方を知っておくと、どちらかが頭に残りやすくなります。
【語呂合わせ①】「しごき アップで 批判発生」
- 🔵 し → 心拍数(Pulse)
- 🔵 ご → 呼吸(Respiration)
- 🔵 き → 筋緊張(Activity)
- 🔵 アップ → アプガースコア
- 🔵 批 → 皮膚色(Appearance)
- 🔵 判 → 刺激に対する反応(Grimace)
- 🔵 発 → 8点以上
- 🔵 生 → 正常
「しごき アップで 批判発生」の語呂は、8点以上が正常という判定基準まで一緒に覚えられる点が非常に優れています。語呂合わせを覚えるだけで評価項目と正常値が両方頭に入るということですね。
【語呂合わせ②】「シゴキは 批判されて いやアップ」(別バージョン)
- 🟠 シ → 心拍数
- 🟠 ゴ → 呼吸
- 🟠 キ → 筋緊張
- 🟠 批 → 皮膚色
- 🟠 判 → 刺激への反応
- 🟠 いや → =評価5項目
- 🟠 アップ → アプガースコア
複数バージョンを知っておくと、どれか一つ思い出せなくても補完できます。試験本番で焦ったときほど、別の語呂から思い出せることがあります。
【英語頭文字で覚える方法】
英語で覚えたい人には、そのまま「APGAR」の順番で項目を紐づける方法がシンプルで効果的です。
| スコア | A(皮膚色) | P(心拍数) | G(反応性) | A(筋緊張) | R(呼吸) |
|--------|-----------|------------|------------|------------|---------|
| 0点 | 全身蒼白・チアノーゼ | ゼロ | 反応なし | ぐったり | なし |
| 1点 | 体幹ピンク・四肢青紫 | 100回/分未満 | しかめ面 | 少し動く | 弱い・不規則 |
| 2点 | 全身ピンク | 100回/分以上 | 啼泣・引き離す動作 | 四肢を積極的に動かす | 規則的・泣いている |
1項目2点満点×5項目=最高10点が基本です。
5つの項目を採点した合計点によって、新生児の状態を分類します。この判定基準は、出典によってわずかに異なる表記が存在しますが、臨床でよく使われる基準を以下に整理します。
| 合計点 | 判定 | 対応 |
|--------|------|------|
| 8〜10点 | 正常 | 通常の観察を継続 |
| 4〜7点 | 軽症仮死(第1度仮死) | 蘇生処置・経過観察 |
| 0〜3点 | 重症仮死(第2度仮死) | 緊急蘇生・NICU対応 |
重症仮死(3点以下)の状態が続く時間が長ければ長いほど、脳性麻痺のリスクが有意に上昇することが医学文献で示されています。5分後もアプガースコア3点以下の場合は、その確率が統計的に有意に高まります。これはただの数字ではなく、児の将来に直結する指標です。
注意が必要な点として、「8点以上=正常」と「7点以上=正常」という2種類の表記が混在しています。これは使用するガイドラインや文献の違いによるものですが、看護師国家試験では「8点以上が正常」という基準が採用されることが多いです。8点以上が原則です。
また、アプガースコアはあくまで出生時の状態評価であり、長期的な予後を断定するものではありません。他の検査値(臍帯血pH、blood gas等)と組み合わせて総合的に判断することが重要です。
看護roo!(カンゴルー):新生児の出生直後評価とアプガースコアの観察方法(周産期ケアマニュアルより)
アプガースコアの評価タイミングは、出生後1分と5分の2回が基本です。この2回のタイミングには、それぞれ異なる臨床的意味があります。
1分後のスコア:緊急介入の判断に使う
出生1分後のスコアは、主に「今すぐ蘇生処置が必要かどうか」を判断するための指標です。1分後のスコアが低くても、蘇生処置を施して5分後に改善していれば、神経学的な予後への影響は小さいとされています。
1分後に低かったから即・重篤とは限りません。この点は現場でも保護者へ説明が求められる場面があるため、正確に理解しておく必要があります。
5分後のスコア:神経学的予後を反映する
5分後のスコアは、新生児の神経学的な長期予後をより確実に反映するとされています。5分後にスコアが3点以下の場合、脳性麻痺のリスクが統計的に有意に上昇することが知られています。
5分後も7点未満だった場合は、7点以上に回復するまで5分ごとに再評価(最大20分後まで)を行います。
10分後の再評価が必要なケース
蘇生を要した新生児や、状態が不安定なケースでは10分後の評価も必須です。さらに、本邦の低体温療法(脳低温療法)の適応基準の一つに「生後10分のアプガースコアが5点以下」が含まれており、これは重要な臨床判断の根拠となります。
| タイミング | 目的 | 重要性 |
|-----------|------|--------|
| 1分後 | 緊急蘇生の要否判断 | 即時対応の指標 |
| 5分後 | 神経学的予後の評価 | 長期予後の指標 |
| 10分後〜 | 低体温療法適応の判断など | 治療方針の決定 |
アプガースコアは一見シンプルに見えますが、実際の評価には細かい注意点が存在します。国試では問われなくても、現場で知っておかないと評価がズレてしまう落とし穴があります。
落とし穴①:正常新生児の皮膚色は「1点」が多い
出生後1分の正常な新生児は、体幹がピンク色でも四肢(手足)にチアノーゼが残っていることが多く、皮膚色のスコアは「1点」になります。出生直後の新生児は多血傾向にあるため末梢チアノーゼを来しやすいのです。このため健康な赤ちゃんでも1分後のスコアが9点止まりになることが多く、10点はむしろ珍しいです。「10点が正常」と思い込んでいると評価の基準がズレます。
落とし穴②:アプガースコアは主観的評価である
アプガースコアは評価者の主観が入ります。特に「Grimace(反応性)」や「Activity(筋緊張)」の評価は、施設や評価者によって点数がわずかに異なることがあります。そのため記録する際は、酸素投与の有無・蘇生術の実施有無なども合わせて記述しておくことが推奨されています。
これは「点数だけ書いて終わり」ではいけないということです。
落とし穴③:スコアは蘇生の開始を遅らせるために使ってはいけない
アプガースコアの評価を待ってから蘇生処置を開始するのは誤りです。新生児の蘇生(NCPR:新生児蘇生法)では、出生後すぐに「啼泣しているか」「筋緊張があるか」を確認し、必要であれば即座に蘇生を開始します。アプガースコアは1分後の評価として後からつけるものです。
落とし穴④:1分後スコアが低くても過度に悲観しない説明が必要
保護者は「1点だった」「3点だった」という数字を聞くと非常に不安になります。1分後スコアは緊急処置の要否を見るものであり、5分後に改善していれば予後を断定するものではないという説明が看護師に求められます。
MSDマニュアル プロフェッショナル版:正常な新生児の初期評価(皮膚色・チアノーゼの解釈を含む)