点眼薬と同時に出しても、アレジオン眼瞼クリームを先に塗ると薬が無駄になります。
アレジオン眼瞼クリーム0.5%(一般名:エピナスチン塩酸塩眼瞼クリーム)は、2024年5月に参天製薬から発売された、世界初の経眼瞼型アレルギー性結膜炎治療剤です。これまでの点眼液とは根本的に異なる剤形であり、「点眼が苦手な患者にとっての新たな選択肢」として医療現場で注目されています。
この薬剤の最大の特徴は、有効成分エピナスチン塩酸塩をまぶたの皮膚から吸収させることで、結膜まで薬物を到達させる「経眼瞼吸収」という新しいアプローチを採用していることです。非臨床試験では、ウサギの眼瞼皮膚に単回塗布後、眼瞼結膜中の平均エピナスチン濃度が塗布後8時間にCmaxに達し、塗布後24時間においても定量されることが確認されています。つまり、1日1回の塗布で24時間にわたり結膜への有効成分の供給が持続する設計になっています。
薬効薬理の面では、エピナスチン塩酸塩はヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用としつつ、肥満細胞からのメディエーター遊離抑制作用も有しています。この二重の作用機序により、アレルギー反応の「即時相」だけでなく「遅発相」にも効果を発揮するとされています。これが、1日1回投与で高い有効性が示された背景の一つです。
製剤の性状は白色~淡黄白色のクリーム剤で、2gチューブ入りで販売されています。1本で約66回分(片眼使用の場合)、両眼使用では約1ヵ月分に相当します。薬剤師や眼科スタッフが指導せんを活用する際、この「使い続けられる量かどうか」を患者に伝えることも、アドヒアランス向上のうえで重要な情報です。
参考:参天製薬 Santen Medical Channel 医療従事者向けFAQ(正しい使い方・用量・製剤情報)
https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/faq/DK026_faq.html
服薬指導において指導せんを使う際、正しい塗布手順を患者に視覚的・言語的に伝えることは非常に重要です。手順を正確に理解してもらわないと、過量塗布や眼への誤塗布といったリスクが生じます。
電子添文(2025年2月改訂、第2版)および参天製薬の公式FAQによると、正しい塗布手順は以下の流れです。
| ステップ | 手順 | 指導のポイント |
|---|---|---|
| ① | 手をせっけんと流水でよく洗う | 眼周囲へ触れるため、手指衛生は必須 |
| ② | チューブを軽く押しながら横に引き、約1.3cm(片眼分)を指先に出す | 「大人の人差し指の先端から第一関節までの半分程度」と伝えると量が伝わりやすい |
| ③ | 軽く目を閉じ、上下まぶたに約半量ずつのせて透明になるまでやさしくなじませる | 強くこすらないこと、眼の中に入れないことを明示する |
| ④ | もう片方の目も同様に繰り返す(両眼の場合) | 両眼で合計約60mg・合計約2.6cmが1回使用量の目安 |
指導せんに手順を記載する際に特に注意したいのは、②の量の表現です。「約1.3cm」というのは、人差し指の第一関節から爪の先端までの長さの約半分に相当します。数字だけでなく、こうしたイメージを添えると患者への伝達がよりスムーズです。
指導せんには量の目安は必須です。実際に過量塗布が起きた場合、電子添文では「速やかにふき取る、または洗顔するよう」指示されています。「多めに塗れば効果が上がる」と誤解する患者もいるため、「1日2回以上や30mg超の過量塗布については安全性・有効性が未検討」であることも、服薬指導の場で一言添えておくとよいでしょう。
参考:アレジオン眼瞼クリーム0.5% 電子添文(JAPIC)—14.1 薬剤交付時の注意 全文
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071433.pdf
アレジオン眼瞼クリームを処方される患者の多くは、すでに点眼薬や眼軟膏剤を使用していることが珍しくありません。併用時の順序を間違えると、薬効を最大限に引き出せない可能性があります。これが大切なポイントです。
参天製薬の公式FAQによると、点眼剤や眼軟膏剤と同じ時間帯に使用する場合は、「点眼剤・眼軟膏剤を先に使用し、あふれた分をふき取ってから、アレジオン眼瞼クリームを最後に塗布すること」が望ましいとされています。その理由は次の2点です。
- 点眼の際に目の周りを指で触れることでクリームが落ちてしまう可能性がある
- 目の周りにあふれた点眼液をふき取る際、クリームも一緒に除去されてしまうリスクがある
一方で、アレジオン眼瞼クリームと点眼剤・眼軟膏剤は使用部位が異なり(皮膚 vs 結膜)、互いの吸収に影響を及ぼすことはないと考えられるため、「間隔を空ける必要はない」とも公式に明記されています。間隔なし・順序あり、というのが原則です。
また、他の皮膚外用剤を眼周囲に併用する場合についても質問が多い場面です。参天製薬は「外用剤の一般的なルールとして順序や間隔に取り決めはない」としつつも、アレジオン眼瞼クリームと他の皮膚外用剤の混合は承認された用法外であり、避けるよう求めています。ステロイド外用剤などを眼周囲に使用中の患者には、指導せんに「混合しない」旨を明記しておくと安心です。
この「クリームは最後に塗る」というルールは、多剤を使用している花粉症患者ほど忘れやすいポイントです。指導せんには順番を矢印や番号で明示するとアドヒアランスが向上します。
指導せんを作成・活用するうえで欠かせないのが、禁忌・使用上の注意・特殊患者(小児・妊婦・授乳婦)への対応です。これらを正確に伝えることが、薬剤師・医師の責務になります。
🔴 必ず伝える使用上の注意事項(電子添文14.1準拠)
👶 小児への使用について
「12歳未満には使えない」と思い込んでいる医療従事者もいますが、正確には「12歳未満を対象とした臨床試験は実施していない」という表現です。絶対禁忌ではありません。電子添文上は「小児等も通常、成人と同じ用法・用量で使用できる」とされており、判断は医師に委ねられます。ただし臨床データがない以上、指導せんにその旨を記載し、保護者への十分な説明と同意が求められます。
🤰 妊婦・授乳婦への使用について
妊婦への投与は「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ」が原則です。高用量の動物実験では受胎率の低下や胎児致死作用が認められているため、安易に投与すべきではありません。授乳婦については、健康成人での血漿中エピナスチン濃度が0.5%群の一部で定量されているものの(Cmax:55.9pg/mL・46.7pg/mL)、乳汁移行の影響は不明のため、患者ごとに慎重に判断します。
👁️ コンタクトレンズ装用者について
コンタクトレンズ(CL)装用中の使用は基本的に可能と考えられています。ただし、CLの脱着とクリームの塗布を同じタイミングで行う場合は、CLを先に脱着してからクリームを塗布するよう指導するのが実用上のポイントです。指先にクリームが付いた状態でCLを触ると汚染リスクがあるためです。CL使用者の多い患者層では、指導せんにこの一言を加えることで患者のトラブルを未然に防げます。
参考:アレジオン眼瞼クリームをご使用の患者さんへ Q&A(参天製薬公式、患者向け)
https://www.santen.com/jp/healthcare/eye/library/allergic_conjunctivitis/acream/alesion_cream_qa
既存の記事では塗布手順の説明が中心ですが、実際の服薬指導現場で課題になりやすいのは「患者がいつ塗ればよいか迷う」という問題です。この視点で服薬指導と指導せんを深堀りしてみましょう。
アレジオン眼瞼クリームには規定された塗布時間帯はありません。1日1回であればいつでもよいのですが、入浴や洗顔で洗い流されるリスクを避けるため、公式には「入浴後または就寝前」が推奨されています。就寝前に使用すれば朝の洗顔をしても効果が持続するという点も、患者への安心材料として伝えられます。
つまり「就寝前に1回塗れば翌朝の洗顔後も効く」ということです。
実際の服薬指導では、患者のライフスタイルに合わせた「塗り忘れ防止の工夫」も提案できます。例えば、歯磨きの後・スキンケアの後など、毎晩必ずやる行動の「直後」にセットするよう提案することで、習慣化のハードルが下がります。
塗り忘れた場合は「気づいたときすぐに1回分を塗布する」が原則ですが、次回の塗布時間が近い場合は忘れた分は塗らずに通常のタイミングに戻します。2回分を一度に塗布しないことも忘れずに指導せんへ記載が必要です。
さらに見落とされがちなのが「かゆみがなくても続けてほしい」という点です。アレルギー性結膜炎の治療においては、症状が落ち着いていても治療期間中は用法通りに継続することがアレルゲン曝露期間の症状抑制につながります。「かゆくないから塗らなかった」という患者が一定数存在するため、指導せんにも「症状がなくても継続してください」という一文を加えておくことが、長期的なアドヒアランス維持に直結します。
保管方法についても服薬指導で頻出の質問です。アレジオン眼瞼クリームの貯法は「室温保存(1〜30℃)」です。一見シンプルですが、「冷蔵庫に入れたほうがよいですか?」という患者の質問に注意が必要です。チルド室や冷気吹き出し口付近などで凍結してしまった場合は品質に影響する可能性があるため、使用を避けるよう指導します。万が一の凍結リスクをふまえ、指導せんに「冷蔵庫のチルド室はNG・室温保管してください」という注意書きを添えるのが親切な対応です。
参考:アレジオン眼瞼クリーム0.5% 添付文書情報と服薬指導のポイント(日経メディカル)
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/prd/13/1319762N1021.html