後発品に変えるほど薬価が上がる製品が実在します。
アレンドロン酸錠35mgは、骨粗鬆症治療を目的としたビスホスホネート系薬剤の代表格です。破骨細胞の活性を抑制することで骨吸収を抑え、骨密度を維持・向上させる効果があります。通常は週1回、起床時に水約180mLとともに服用し、服用後30分は臥床を避ける特殊な用法が必要な点が特徴です。
先発品としてはボナロン錠35mg(帝人ファーマ)とフォサマック錠35mg(オルガノン/MSD)の2製品があります。後発品は複数のメーカーから発売されており、薬価には大きな差があります。
2026年4月1日適用の薬価をもとに、主要製品を整理すると以下のとおりです。
| 製品名 | メーカー | 2026年4月~薬価 | 区分 |
|---|---|---|---|
| アレンドロン酸錠35mg「DK」 | 大興製薬 | 228.60円 | ★(後発品扱い外) |
| アレンドロン酸錠35mg「SN」 | シオノケミカル | 228.60円 | ★(後発品扱い外) |
| アレンドロン酸錠35mg「VTRS」 | ヴィアトリス | 194.60円 | 後発品 |
| アレンドロン酸錠35mg「日医工」 | 日医工 | 194.60円 | 後発品 |
| アレンドロン酸錠35mg「YD」 | 陽進堂 | 194.60円 | 後発品 |
| ボナロン錠35mg | 帝人ファーマ | 181.40円 | 先発品(☆) |
| フォサマック錠35mg | オルガノン/MSD | 166.30円 | 先発品(☆) |
| アレンドロン酸錠35mg「NIG」 | 日医工岐阜 | 87.40円 | 後発品 |
| アレンドロン酸錠35mg「トーワ」 | 東和薬品 | 87.40円 | 後発品 |
| アレンドロン酸錠35mg「サワイ」 | 沢井製薬 | 87.40円 | 後発品 |
| アレンドロン酸錠35mg「F」 | 富士製薬工業 | 87.40円 | 後発品 |
| アレンドロン酸錠35mg「JG」 | 日本ジェネリック | 87.40円 | 後発品 |
これが基本情報です。
最も安い後発品(87.40円)と最も高い後発品(228.60円)の差は約2.6倍にのぼります。薬価が「後発品だから安い」とは一概に言えない状況になっているわけです。
✅ 参考情報:アレンドロン酸錠35mgを含む同効薬・薬価の最新情報はこちらで確認できます。
薬価サーチ:アレンドロン酸錠35mg「DK」の同効薬・薬価一覧(2026年4月適用版)
医療従事者の多くは「後発品=先発品より安い」という前提で業務を進めています。しかし、アレンドロン酸錠35mgではこの常識が崩れるケースが実際に発生しました。つまり後発品が先発品より高い「薬価逆転」です。
令和7年度(2025年4月)薬価改定の結果、アレンドロン酸錠35mg「DK」「SN」「YD」の3製品は、先発品であるボナロン錠35mgおよびフォサマック錠35mgよりも薬価が高くなりました。
これはなぜ起きたのでしょうか?
原因は「改定対象外維持」と「先発品引き下げ」の組み合わせです。後発品が市場実勢価に基づく引き下げを受けずに薬価を維持した一方、先発品が改定で引き下げられた結果、価格が逆転しました。薬価制度の仕組みによって生じる逆転現象です。
この現象は算定区分にも直接影響します。薬価算定の区分では、後発品が先発品と同額またはそれより高い場合、「★(算定上の後発品外)」として扱われます。これは後発医薬品調剤体制加算の計算において、カウント対象から外れることを意味します。痛いですね。
令和7年度改定での具体的な変化は以下のとおりです。
つまり薬価逆転の影響が大きいということです。
✅ 参考情報:薬価逆転・算定除外の詳細なメカニズムについては以下が参考になります。
令和7年度薬価改定で算定から除外された後発品一覧とその理由(薬剤師.love)
選定療養制度は2024年10月から施行され、後発品が存在する先発品を患者が希望した場合、差額の4分の1相当を患者が追加負担する仕組みです。これにより「先発品を処方・調剤するたびに患者説明が必要になった」という薬局・医療機関は多いはずです。
しかし、2025年4月の薬価改定を境に、ボナロン錠35mgとフォサマック錠35mgはこの選定療養の対象から外れました。
対象外になった理由は明確です。選定療養の対象となる条件の一つが「長期収載品(先発品)の薬価が、後発品の最も高い薬価を超えていること」です。前述の薬価逆転によって、先発品よりも高い後発品(DK・SN・YD)が存在する状態になったため、この条件を満たさなくなりました。
結果として業務フローにも変更が生じます。具体的には以下のような点が変わります。
これは選定療養の対象薬を管理している薬局や病院薬剤部に直接影響します。対象薬一覧を定期的に更新していない施設では、2025年4月以降も誤って選定療養費を徴収し続けるリスクがあります。患者トラブルに直結する点に注意が必要です。
✅ 参考情報:2025年4月以降に選定療養対象から外れた医薬品の詳細な一覧はこちらで確認できます。
後発医薬品調剤体制加算(2025年度まで)は、薬局の後発品調剤割合の高さを評価する仕組みでした。この加算の計算において、「★(算定上の後発品外)」に分類された製品は分子にカウントされません。これが薬局の採用判断に直結します。
アレンドロン酸錠35mgの場合、2025年4月以降に「DK」「SN」「YD」の3製品が★扱いになりました。後発品調剤体制加算の維持・向上を目指している薬局にとっては、これらの製品を採用しても加算の算定分母から押し上げ効果が得られなくなるということです。これは見落としがちな変化です。
✅ 加算算定を意識した採用銘柄の判断基準は以下のとおりです。
後発品の切り替えを促進する立場の薬局では、87.40円グループの製品を採用することが加算算定上も理にかなっています。
一方で、87.40円グループと194.60円グループの薬価差は1錠あたり107.2円です。週1回服用で月換算すると約4〜5錠の使用になるため、月あたり約429〜536円の薬価差が生じます。年間に換算すると約5,000〜6,400円の差になり、処方数が多い施設ほど調達コストに無視できない影響をもたらします。
なお、後発医薬品体制加算は令和8年度(2026年)調剤報酬改定で廃止の方向が示されています。廃止後は加算算定の観点ではなく、純粋に患者の費用負担軽減と施設の調達コスト管理の観点から採用判断を行うことになります。加算に依存した採用ルールは早めに見直しておくのが得策です。
✅ 参考情報:後発医薬品調剤体制加算の廃止検討に関する最新情報はこちらです。
【令和8年度調剤報酬改定】後発医薬品体制加算は廃止へ(Medi-UP)
ここまで薬価の仕組みや制度的な変化について整理しました。医療従事者として実務に活かすためのポイントを、患者説明の観点から掘り下げます。
骨粗鬆症の治療は長期継続が大前提です。アレンドロン酸錠35mgは週1回服用であり、1ヶ月あたり4〜5錠の消費となります。長期間継続するからこそ、薬価の差が患者の実費負担に積み重なります。
3割負担の患者であれば、87.40円の後発品と229.20円の後発品(★扱い)では、1錠あたりの自己負担差が約42円です。週1回・月4錠とすると月168円の差、年間で約2,016円の差になります。これは1年分で見れば近所のランチ代程度の差ですが、5年・10年の長期継続では1万〜2万円の差につながります。
患者が「後発品を出してもらったのになぜこんなに高いの?」と感じるケースは現実にあります。薬剤師や医療スタッフとして「この後発品は価格が高めですが、○○円の製品もあります」と選択肢を示せると、患者からの信頼が高まります。
実際に薬価逆転の存在を知っている患者はほぼいません。先発品より高い後発品が存在するという事実は、患者にとって驚くべき情報です。
また、アレンドロン酸には錠剤以外に「ボナロン経口ゼリー35mg」という剤形があります。2026年4月以降の薬価は494.50円と錠剤より大幅に高く、嚥下困難な患者や服薬アドヒアランスに課題がある患者に処方されることがあります。ゼリー製剤の選定療養上の取り扱いや薬価についても、あわせて把握しておくことをお勧めします。
医療の中でも薬価情報は「知っていると得する・知らないと患者が損する」典型的な知識です。定期的な薬価改定の情報収集を業務の一部に組み込む意識が、現場の信頼性向上に直結します。
薬価サーチや厚生労働省の薬価基準収載品目リストを年1回(改定年は4月以降)確認するだけで、選定療養対象の変更や薬価逆転を見逃しにくくなります。最初の確認を今日行うのが一番早いです。
✅ 参考情報:骨粗鬆症治療薬としてのアレンドロン酸の薬理・臨床情報については以下が参考になります。