肝機能検査を省いたまま処方を続けると、副作用が重篤化しても医薬品副作用被害救済制度の対象外になります。
ベンズブロマロンの先発品は、トーアエイヨー株式会社が製造・販売する「ユリノーム錠」です。規格は25mg錠と50mg錠の2種類があり、2024年時点の薬価はそれぞれ25mg錠が8.00円/錠、50mg錠が11.00円/錠となっています。
一方で後発品(ジェネリック)は現在多数の製薬会社から発売されており、代表的なものとして東和薬品の「ベンズブロマロン錠「トーワ」」や日医工の「ベンズブロマロン錠「NIG」」などがあります。後発品の薬価は25mg・50mgともに6.1円前後と、先発品より約25〜45%低い水準です。
| 規格 | 先発品(ユリノーム) | 後発品(例:トーワ) | 差額(1錠) |
|---|---|---|---|
| 25mg錠 | 8.00円 | 6.1円 | 約1.9円 |
| 50mg錠 | 11.00円 | 6.1円 | 約4.9円 |
50mg錠を1日1錠、1年間服用した場合の薬剤費の差額を計算すると、365日×4.9円=約1,788円になります。長期処方では患者の自己負担や医療費全体への影響が積み重なります。
「先発品で治療効果が安定している患者にはあえて変更しない」という方針をとる施設もありますが、ジェネリック推進の観点からは後発品への切り替えも選択肢として提示することが重要です。先発・後発の選択よりも、処方前後の管理のほうが臨床的に重大だということが原則です。
PMDAおよびトーアエイヨーの医療関係者向け情報では、先発品・後発品ともに添付文書の「警告」欄は同一内容であり、肝機能モニタリングの義務は先発・後発に関係なく等しく課せられています。これが基本です。
参考:ユリノーム錠の薬価・後発品一覧(KEGG Medical)
https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=D01056
ユリノーム(ベンズブロマロン)の効能・効果は「下記の場合における高尿酸血症の改善:①痛風、②高尿酸血症を伴う高血圧症」の2つです。注意したいのは、②の適応は「高尿酸血症の改善」であり、高血圧そのものを治療する薬ではないという点です。この区別を患者に明確に説明できていないと、服薬継続のモチベーション低下にもつながります。
ベンズブロマロンは「尿酸排泄促進薬」に分類されています。腎近位尿細管に存在するURAT1(尿酸トランスポーター1)を選択的に阻害し、尿酸の再吸収を抑制することで尿酸の尿中排泄を促進します。つまり作用機序上、産生を抑えるのではなく排泄を増やす薬です。
高尿酸血症の病型は大きく3つに分類されます。
原則として、尿酸排泄低下型にはベンズブロマロンなどの排泄促進薬を、産生過剰型にはフェブキソスタット等の生成抑制薬を選択します。処方前に24時間尿中尿酸排泄量(600mg/日を基準)や尿酸クリアランスで病型を確認することが推奨されています。病型確認が条件です。
もう一点、尿酸排泄が促進されると尿中に大量の尿酸が流れ込み、尿が酸性化します。その結果として尿路結石のリスクが高まるため、腎結石の既往歴がある患者には原則禁忌とされています。また、腎結石リスクを下げるため尿アルカリ化薬(クエン酸製剤など)との併用も検討してください。尿アルカリ化は必須と言えます。
参考:高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(日本痛風・核酸代謝学会)
https://minds.jcqhc.or.jp/common/summary/pdf/c00476_supplementary.pdf
ベンズブロマロンの最も重大な副作用は、劇症肝炎を含む重篤な肝障害です。これは先発品・後発品を問わず、すべてのベンズブロマロン製剤の添付文書【警告】欄に明記されています。
PMDAから2011年11月に発出された「PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo.4」によると、2008年度以降にPMDAに報告されたベンズブロマロンの肝障害関連症例61例を分析した結果、以下のことが判明しています。
つまり、徴候を見落とさず適切なタイミングで検査を行えば、重篤化を防ぐことができる可能性が高い副作用です。これは見逃せないポイントですね。
添付文書が要求する肝機能検査の頻度は下記の通りです。
| 時期 | 検査頻度の目安 |
|---|---|
| 投与開始前 | 必ず実施(肝障害のある患者は禁忌) |
| 投与開始〜6ヵ月 | 3ヵ月に1回以上 |
| 6ヵ月以降 | 定期的に継続実施 |
特に見落とせないのが、定期的な肝機能検査を行わずに肝障害が重篤化した症例は、医薬品副作用被害救済制度においても「適正な使用」とは認められず、救済の支給対象外となるという点です。患者に何かあった時、救済が得られないのは患者にとっても医療者にとっても深刻な問題です。
副作用の自覚症状として患者への指導が必要な項目は、食欲不振・悪心・嘔吐・全身倦怠感・腹痛・下痢・発熱・尿濃染(茶褐色尿)・眼球結膜黄染(白目が黄色くなる)などです。これらの症状が現れたら直ちに服用を中止し受診するよう、処方時に必ず説明することが求められます。
参考:PMDAからの医薬品適正使用のお願いNo.4(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)
https://www.pmda.go.jp/files/000143908.pdf
ベンズブロマロンは主に肝代謝酵素CYP2C9によって代謝されます。この酵素を介した薬物相互作用が臨床上の大きな問題となるため、処方時には必ず確認が必要です。
中でも特に重要なのは、抗凝固薬ワルファリン(ワーファリン)との相互作用です。ベンズブロマロンはCYP2C9を阻害することでワルファリンの血中濃度を上昇させ、PT-INRが約50%上昇するという報告があります。出血リスクが跳ね上がるため、ワルファリン服用患者にベンズブロマロンを追加・増量した場合は速やかなPT-INRの再測定が不可欠です。
日経メディカルでは実際に「ユリノームを隔日服用から毎日服用へ増量した後にINRが急上昇した症例」が報告されており、増量のタイミングでのモニタリング強化が求められます。相互作用のリスクは増量時にも起きます。
CYP2C9関連で注意が必要な併用薬を整理すると以下の通りです。
また、利尿薬(特にサイアザイド系やループ利尿薬)は尿酸値を上昇させる方向に作用するため、ベンズブロマロンとの組み合わせでは尿酸コントロールが不安定になることがあります。高血圧合併の患者に処方することが多い薬であるだけに、降圧薬との組み合わせには特段の注意が必要です。
さらに、高度の腎機能障害(eGFR 30mL/min/1.73m²未満を目安)のある患者は禁忌に該当します。腎機能が低下すると、ベンズブロマロンの主な作用標的である腎近位尿細管での機能が著しく低下し、薬効が期待できなくなるためです。処方前に必ずeGFRや血清クレアチニンを確認してください。
参考:ユリノーム錠医療関係者向けFAQ(トーアエイヨー株式会社)
https://med.toaeiyo.co.jp/products/urinorm/faq-urn.html
2020年に国内で承認された新規の尿酸排泄促進薬、ドチヌラド(製品名:ユリス)は、ベンズブロマロンと同じURAT1阻害薬ですが、作用プロファイルや安全性の面でいくつかの重要な違いがあります。
ドチヌラドはURAT1に対する選択性がベンズブロマロンよりも高く設計されており、肝機能への影響リスクが相対的に低いことが期待されています。ベンズブロマロンで懸念される劇症肝炎のような重篤な肝障害報告は、ドチヌラドの市販後データでは現時点で明確に確認されていません。
一方でベンズブロマロン先発品(ユリノーム)には、長年の使用実績(1970年代からの使用)という強みがあります。病型や患者背景に応じてどちらを選択するかは、以下のような視点で整理できます。
| 比較項目 | ベンズブロマロン(ユリノーム) | ドチヌラド(ユリス) |
|---|---|---|
| URAT1選択性 | 中程度 | 高い |
| 肝障害リスク | 警告欄に明記(毎年約20例報告) | 比較的低い(市販後データ蓄積中) |
| 薬価(50mg相当) | 11.00円(先発) | 高め(比較的新薬) |
| 使用実績 | 50年以上の長期実績 | 2020年承認・比較的新しい |
| 肝機能検査要件 | 警告欄で6ヵ月以内は必須 | 重要な基本的注意として推奨 |
肝疾患の既往がある患者や定期検査が困難な事情がある患者では、ドチヌラドやフェブキソスタットなどへの変更を積極的に検討することが望ましい場合もあります。長期的な安全管理のしやすさも選択基準になり得ます。
なお、産生過剰型や混合型の高尿酸血症では尿酸生成抑制薬(フェブキソスタットやアロプリノール)の方が理論的に適切で、誤って排泄促進薬のみを使用すると尿路への尿酸負荷が増え尿路結石リスクが高まります。病型確認なしの処方は避けてください。フェブキソスタットへの切り替えで目標尿酸値を達成できた症例が8割以上との報告もあります。
参考:ユリノーム作用機序と類薬比較(PASSMED薬剤師・薬学生向け情報)
https://passmed.co.jp/di/archives/493