肉類ではレバーにビタミンAが圧倒的に豊富に含まれています。豚スモークレバーは100gあたり17,000μgRAEで、他の食品に比べて群を抜いています。鶏レバーは14,000μgRAE、豚レバーは13,000μgRAEと続きます。これらは普段の食事では毎日食べるような食品ではありませんが、意識的にメニューに取り入れることで、効率よくビタミンAを補給できます。
レバーペースト(4,300μgRAE)やレバーソーセージ(2,800μgRAE)のような加工品は、提供量が少ないため過剰摂取のリスクが低く、初心者向けです。ただし、継続的な摂取を考えると、一般的な鶏むね肉や豚肉よりも、週に1~2回のレバー料理を組み込む方が無難です。レバー独特の風味が苦手な場合は、レバーペーストをパンに塗るなど工夫することで、無理なく取り入れられます。
野菜から摂取するビタミンAは、主にβ-カロテンの形で含まれており、体内で必要な量だけビタミンAに変換されるため、過剰摂取の心配がありません。これが肉や魚とは異なる重要なポイントです。にんじんは100gあたり720μgRAE(冷凍・油いため時は1,100μgRAE)で、最も一般的で入手しやすいビタミンA源です。モロヘイヤ(840μgRAE)や小松菜(260μgRAE、1束300g全体で780μgRAE)も優秀です。
緑黄色野菜の定義は、可食部100gあたりのβ-カロテン当量が600μg以上という基準で設定されています。この知識を持つことで、スーパーで買い物をする際、栄養価の高い野菜を見分けられます。春菊やほうれん草も含まれており、和食の食卓に自然に組み込みやすいのが利点です。
魚介類の中でもビタミンAが特に豊富なのは、内臓部分です。あんこうの肝は8,300μgRAE、うなぎの肝は4,400μgRAE、うなぎのかば焼き(身を含む)は2,400μgRAEです。外食時に肝吸いやうな重を選ぶだけで、推奨摂取量の相当部分をカバーできます。うなぎは脂質も豊富なため、ビタミンAの吸収効率も自動的に高まるという利点があります。
女性の推奨摂取量が650~700μgRAEであることを考えると、うなぎのかば焼き1串(100g)で1日の約1/3、肝吸いなら大部分をカバーできます。これは手軽で実用的な摂取方法です。毎日の食事に取り入れるというより、週1回程度のご褒美食として組み込むバランスが適切です。
のりはビタミンAの優れた補給源で、ほしのり(乾燥のり)は100gあたり3,600μgRAE、焼きのりは2,300μgRAEです。コンビニやスーパーで手軽に購入できる味付けのりは2,700μgRAEと、ランチの傍らに付けるだけで栄養補給ができます。1日3~5枚食べるだけで有意な量のビタミンAが摂取できるため、日々の習慣に最も組み込みやすい食品です。
わかめも2,300~3,600μgRAE含んでおり、みそ汁一杯に含まれるわかめの量(3~5g乾燥状態)からでも、わずかながら継続的にビタミンAを摂取できます。この視点で考えると、毎日のみそ汁がビタミンA補給の地道な手段になることが理解できます。意外性のある知見として、古来より日本人が愛用してきた海藻類が、現代の栄養学からも優れた食材として評価されていることが挙げられます。
ビタミンAは脂溶性のため、油を使った調理方法で吸収率が大きく向上します。にんじんを炒めた場合、生のにんじん(720μgRAE)と比べて油いため(1,100μgRAE)で約1.5倍の効率になります。この数字は、調理方法が栄養摂取に与える影響の大きさを示しています。揚げ物の場合、衣をつけずに直接油に浸すとビタミンAが油に流出してしまうため、必ず衣をつけて調理することが重要です。
マヨネーズやドレッシングを利用する方法も効果的です。サラダにマヨネーズをかけるだけで、追加の調理手間なく吸収率が高まります。オリーブオイル、こめ油、ごま油など、家庭にある油を活用することで、意識せずに吸収効率を向上させられます。バター(100gあたり800μgRAE)を活用する調理も、同時にビタミンAを補給できるため一石二鳥です。
組み合わせとしては、にんじんのグラッセ(砂糖漬けを油で炒めたもの)が880μgRAEで最も効率的です。家庭で実践できる工夫として、週に1~2回、少量の油を使った炒め物を意識的に組み入れることで、自然にビタミンA摂取が増加します。
ビタミン Aの推奨摂取量参考:文部科学省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
日本人の食事摂取基準に基づいた男女別・年齢別推奨摂取量の詳細はこちら
ビタミンA豊富な野菜の調理法参考:厚生労働省e-ヘルスネット
栄養素の吸収を高める調理法の詳しい解説はこちら