ブロムフェナク点眼の先発品と後発品を正しく使い分ける方法

ブロムフェナク点眼液の先発品「ブロナック」と後発品の違いを、BAK濃度・薬価・臨床データの観点から徹底解説。処方変更や患者への説明で迷う医療従事者は必読では?

ブロムフェナク点眼の先発品と後発品を正しく知る

後発品に切り替えただけで、患者の角膜上皮障害リスクが5倍になることがあります。


この記事の3ポイント要約
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先発品「ブロナック」とは

千寿製薬が製造する先発品。薬価は64.3円/mLで、BAK(ベンザルコニウム塩化物)濃度は0.001%。後発品(30.8円前後/mL)とは約2倍の薬価差がある。

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後発品によってBAK濃度が異なる

後発品の中には先発品の5倍にあたるBAK濃度0.005%の製品がある。研究では高BAK濃度製品で角膜上皮細胞の有意な生存率低下が報告されている。

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臨床使用上の注意点

白内障術後など角膜上皮が脆弱な患者には、処方変更前のBAK濃度確認が推奨される。1日2回という用法はプラノプロフェン(1日4回)と比べて服薬アドヒアランス面で優れている。


ブロムフェナク点眼液の先発品「ブロナック」の基本情報と特徴

ブロムフェナク点眼液の先発品は、千寿製薬株式会社が製造・販売する「ブロナック点眼液0.1%」です。一般名はブロムフェナクナトリウム水和物で、薬効分類は「非ステロイド性抗炎症点眼剤(NSAID)」に属します。薬価は64.3円/mLで、現在流通している主な後発品(30.8円/mL前後)と比べると約2倍の薬価差があります。


作用機序は、シクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジンの生成を抑制するものです。プロスタグランジンは炎症の主要メディエーターであり、その産生を抑えることで眼の腫れ・発赤・疼痛をコントロールします。つまり、炎症の「根本原因」ではなく「症状」を抑える対症療法であることを患者へ説明する必要があります。


効能・効果は「外眼部及び前眼部の炎症性疾患の対症療法」で、具体的には眼瞼炎・結膜炎・強膜炎(上強膜炎を含む)・術後炎症が適応となっています。用法・用量は「1回1〜2滴、1日2回点眼」です。これが重要なポイントです。


1日2回という用法が基本です。


国内第Ⅲ相比較試験では、眼内レンズ挿入術後炎症患者を対象に、0.1%プラノプロフェン点眼液(1日4回)との比較試験が実施されました。術後1週間での全般有効度の累積有効率は、ブロムフェナク群83.8%(88/105例)に対してプラノプロフェン群67.6%(71/105例)と有意差あり(P=0.0040)。用法が半分の回数で、より高い有効率を示した点は見逃せない臨床データです。これは使えそうです。


なお、先発品ブロナックの主な添加剤はホウ酸・ホウ砂・乾燥亜硫酸ナトリウム・エデト酸ナトリウム水和物・ポビドン・ポリソルベート80・ベンザルコニウム塩化物(BAK)・pH調節剤です。BAK濃度は0.001%で、これが後発品の一部と異なる点として注目されています。


参考:ブロナック点眼液0.1%の添付文書・基本情報(KEGG Medical Database)


医療用医薬品 : ブロナック(KEGG Medical Database)— 組成・添加剤・臨床成績など先発品の詳細情報が確認できます


ブロムフェナク点眼液の先発品と後発品の違い:BAK濃度・添加剤・薬価を比較

先発品ブロナックと後発品を比較する際、医療従事者が最も注目すべき点は「BAK(ベンザルコニウム塩化物)の濃度差」です。実は全ての後発品が先発品と同じBAK濃度とは限りません。


現在流通している主な製品のBAK濃度と薬価は以下の通りです。


製品名 区分 薬価(/mL) BAK濃度 製造販売元
ブロナック点眼液0.1% 先発品 64.3円 0.001% 千寿製薬
ブロムフェナクNa点眼液0.1%「日点」 後発品 30.8円前後 0.001% ロートニッテン
ブロムフェナクNa点眼液0.1%「日新」 後発品 30.8円前後 0.005% 日新製薬/テイカ製薬
ブロムフェナクNa点眼液0.1%「ニットー」 後発品 30.8円前後 0.005% 東亜薬品/日東メディック


※薬価は改定により変動します。最新の薬価基準をご確認ください。


先発品と「日点」はBAK濃度0.001%ですが、「日新」「ニットー」などの銘柄ではBAK濃度が0.005%と先発品の5倍です。後発品といっても一様ではないということですね。


国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)の第29回ジェネリック医薬品品質情報検討会(2022年)で報告された文献によると、BAK濃度0.005%を含有する製品では、ヒト角膜上皮細胞(HCE-T細胞)の接触10分後の細胞生存率が66.5%〜58.1%と有意な低下を示しました。一方、先発品および「日点」(各BAK濃度0.001%)では接触10分後でも細胞生存率は88.4%・84.1%と対照群との有意差はなかったとされています。


数字だけ見ると、BAK濃度5倍でおよそ30ポイント近い細胞生存率の差が生じた、ということです。ただし、各製造企業は「臨床での使用回数(1日2回)では角膜障害は生じない」という見解を示しており、この点は注意が必要です。


参考:第29回ジェネリック医薬品品質情報検討会 資料(国立医薬品食品衛生研究所)


第29回ジェネリック医薬品品質情報検討会 資料29-3-2(NIHS)— ブロムフェナクNa点眼液の後発品におけるBAK濃度と角膜上皮細胞への影響が記載された公的資料です


ブロムフェナク点眼液の先発品が選ばれる臨床的根拠:NSAIDsとステロイドの使い分け

眼科領域では、術後炎症の管理においてNSAIDs点眼とステロイド点眼のどちらを使うか、あるいは併用するかが常に議論されます。ブロムフェナク点眼液が先発品として選ばれる背景には、明確な臨床的根拠があります。


ステロイド点眼の主なリスクは「ステロイド緑内障」と「感染症の不顕性化」の2点です。長期投与では眼圧上昇が問題となり、正常者でも0.1%デキサメタゾン点眼液投与により約5〜6%で高度な眼圧上昇が起きるとされています。厳しいところですね。


一方のNSAIDs点眼(ブロムフェナク含む)は、眼圧上昇リスクなしに抗炎症効果を発揮できる点が最大の利点です。特に白内障術後の合併症として問題になる「嚢胞様黄斑浮腫(CME)」の予防において、NSAIDsはステロイドよりも有効性が高いとする報告があります。CMEは黄斑部に嚢胞様変化が生じて視力が低下する病態で、白内障手術後に発症すると術後視力に直接影響します。


ブロムフェナク(先発品ブロナック)は「1日2回」という低頻度点眼でCME予防効果を発揮できる点が評価されています。他のNSAIDs点眼(例:プラノプロフェン1日4回)と比べて点眼回数が少なく、患者のアドヒアランス向上が期待できます。1日2回が条件です。


また、ブロムフェナクはアラキドン酸カスケードにおいてCOX-1とCOX-2の両方を阻害します。この特性が強力な抗炎症作用につながっており、臨床試験でプラノプロフェン(1日4回)より有効率が有意に高かったことの一因と考えられます。


ただし、NSAIDsにも注意事項はあります。重大な副作用として角膜潰瘍・角膜穿孔(いずれも頻度不明)が添付文書に記載されています。特に角膜上皮障害のある患者には「角膜糜爛からさらに角膜潰瘍・穿孔へ進行するおそれがある」と明記されており、投与前に角膜の状態を確認することが原則です。


ブロムフェナク点眼液の先発品を使用する際の注意点:特定患者への対応

先発品ブロナックの添付文書には、特定患者への慎重投与に関する重要な記載があります。医療従事者として把握しておくべき点を整理します。


まず「角膜上皮障害のある患者」への使用です。既存の角膜上皮障害がある状態でNSAIDs点眼を使用すると、角膜糜爛からさらに角膜潰瘍・角膜穿孔へと進行するリスクがあります。これは先発品・後発品共通のリスクですが、後発品の中にはBAK濃度が高い製品もあるため、角膜の脆弱な患者には先発品と同等のBAK濃度(0.001%)の製品を選ぶ配慮が求められます。


次に「亜硫酸塩含有」の問題です。先発品ブロナックには添加剤として乾燥亜硫酸ナトリウムが含まれています。添付文書の「その他の注意」には「喘息患者では非喘息患者よりも亜硫酸塩に対する過敏症が多く認められる」と記載されています。喘息の患者への処方時は注意が必要です。


また、「眼の感染による炎症のある患者」への使用も慎重に判断する必要があります。感染症を不顕性化するおそれがあるため、感染性の結膜炎などには原則として使用しません。感染があれば抗菌点眼薬が先決です。


妊婦・授乳婦への投与については、「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」という条件付き使用となっています。外国のデータでは、経口ブロムフェナクナトリウムを1ヵ月以上、総投与量1,500mg以上使用した患者に重篤な肝障害(死亡を含む)が報告されていますが、これは経口剤の話であり、点眼液での全身吸収は極めて微量です。健康成人男性での試験では、1回2滴・1日4回・4週間の反復点眼後も血中濃度は全測定時点で定量下限(50ng/mL)未満でした。ほぼ全身移行はないということですね。


点眼のタイミングも確認が必要です。他の点眼剤と併用する場合、少なくとも5分以上の間隔をあける必要があります。白内障術後では抗菌点眼・ステロイド点眼・NSAIDs点眼を同時に使うことが多いため、患者への点眼指導でこの点を明確に伝えることが重要です。


ブロムフェナク点眼液の先発品から後発品への変更:処方変更時に確認すべき独自視点

ジェネリック医薬品の使用促進は医療費抑制の観点から推進されていますが、ブロムフェナク点眼液においては「どの後発品を選ぶか」という選択が臨床的に重要な意味を持ちます。これは多くの記事では触れられていない視点です。


2024年10月から「先発医薬品を希望した場合の特別料金加算制度」が開始されました。先発品と後発品の薬価差の4分の1相当が自己負担に上乗せされる制度です。ブロナック(先発)の薬価64.3円/mLと後発品30.8円/mLの差は約33円で、その4分の1である約8円程度が患者の追加負担となります(1割負担の場合はさらにその1/10)。金額自体は小さいですが、患者への説明は必要です。


後発品への変更を検討する際、薬剤師・医師が確認すべきポイントは次の3点です。


  • 📋 BAK濃度の確認:角膜上皮が脆弱な患者(術直後、ドライアイ重症患者など)には、BAK濃度0.001%の製品(先発品ブロナックまたは「日点」)を推奨する根拠がある
  • 💰 薬価差の患者説明:2024年10月以降の特別料金制度を踏まえ、患者が先発品を希望する場合の追加負担について事前説明が必要
  • 🔄 変更後のフォローアップ:後発品への変更後、点眼時の違和感・刺激感の有無を次回受診時に確認することで、角膜上皮障害の早期発見につながる


一般処方箋での「般名処方」が広まる中、薬局で調剤されるブロムフェナク点眼液の銘柄が処方医の意図と異なる場合もあります。特に術後管理中の患者が複数の医療機関を受診する場合、どの銘柄が使われているかを処方医・薬剤師間で共有する体制が患者安全の観点から重要です。


なお、現行の後発品はすべて生物学的同等性試験を経て承認されており、「効かない」という話ではありません。臨床用量(1日2回)での角膜障害リスクについては各企業も「問題なし」との見解を示しています。ただ、長期使用患者や術後の脆弱な角膜上皮を持つ患者に対しては、銘柄の確認という一手間が患者を守ることにつながります。安全確認が原則です。


参考:先発医薬品を希望した場合の特別料金加算について(QLifePro)


2024年10月から開始の「先発医薬品を希望した場合の特別料金加算」(QLifePro)— 制度の概要と患者への説明方法が確認できます