生地を10分こねたら、すぐ伸ばすと麺がボロボロになります。
デュラムセモリナ粉とは、デュラム小麦という品種を粗く挽いた小麦粉のことです。名前の「デュラム」はラテン語で「硬い」という意味で、「セモリナ」はイタリア語で「粗挽き」を意味します。つまり、"硬い小麦を粗く挽いた粉"というそのままの意味が名前に込められています。
見た目でも違いはすぐにわかります。薄力粉や強力粉が白くサラサラしているのに対して、デュラムセモリナ粉は鮮やかな黄色味を帯びており、触るとザラザラとした砂のような質感があります。この色はカロテノイドという色素によるもので、パスタが美味しそうな黄色に見えるのもこのおかげです。
最大の特徴は、グルテン(タンパク質)の質です。強力粉のグルテンはよく伸びる性質がありますが、デュラムセモリナ粉のグルテンは「弾力はあるけれど伸びにくい」という独特の性質を持っています。これがパスタ特有の、あの歯応えのあるコシを生み出す秘密です。
実は、イタリアでは法律によって乾燥パスタはデュラムセモリナ粉100%で作ることが義務付けられています。それほど、パスタとデュラムセモリナ粉は切っても切れない関係なのです。
| 粉の種類 | グルテン量 | 食感の特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| デュラムセモリナ粉 | 多い(伸びにくい) | コシが強く歯切れよい | パスタ・ニョッキ |
| 強力粉 | 多い(よく伸びる) | もちもち・弾力あり | パン・ピザ |
| 薄力粉 | 少ない | サクサク・ふんわり | お菓子・天ぷら |
デュラムセモリナ粉は強力粉よりもさらに硬質な小麦から作られているため、強力粉でパスタを作るよりも格段にコシが出ます。これが基本です。
参考として、デュラムセモリナ粉の特徴と栄養については以下のページが詳しいです。
デュラムセモリナ粉とパスタの美味しい関係|特徴から選び方まで
手打ちパスタに必要な材料はとてもシンプルです。特別なものは何も必要なく、ほとんどの材料は普段の料理で使うものばかりです。
1人分なら粉は100g、卵は1個が目安です。覚えやすい比率ですね。
道具については、ボウル・フォーク・麺棒・包丁があれば問題ありません。パスタマシン(パスタマシーン)があれば生地を均一に伸ばしやすく、一気に麺の形にカットできるため作業がかなり楽になりますが、なくても手打ちで十分おいしいパスタができます。家に麺棒があれば、それだけで本格的な生パスタを楽しめます。
ひとつ知っておきたい点があります。デュラムセモリナ粉は粒子が粗いため、普通の小麦粉よりも水分を吸収するのに時間がかかります。そのため、生地を作り始めた直後は「まとまらない」「パサパサする」と感じることが多いですが、これは失敗ではありません。焦って水分を足しすぎると逆に生地がベタついてしまうので、まずは10〜15分こねながら様子を見るのが正解です。
オリーブオイルを入れると、生地がまとまりやすくなって伸ばしやすくなります。必須ではありませんが、入れることで作業がぐっとスムーズになるのでおすすめです。
生地のこね方が、完成した麺の食感を大きく左右します。ここが手打ちパスタ作りの最も大事なステップです。
まず、ボウルにデュラムセモリナ粉と塩を入れて軽く混ぜ、中央に丸いくぼみを作ります。そこに溶いた卵とオリーブオイルを入れて、フォークで外側の粉を少しずつ崩しながら混ぜていきます。全体がそぼろ状になったら、手でひとまとめにします。
台に取り出したら、手のひらの付け根を使って体重をかけながら力強くこねます。最初の5分ほどこねたところで、いったんラップで包んで30分ほど休ませてください。これがとても重要なポイントです。
デュラムセモリナ粉は粒子が粗いため、こねはじめてすぐは粉の内部まで水分が届いていません。一度休ませることで粉の中まで水分が浸透し、その後のこね作業がぐっとスムーズになります。これが基本です。
30分後に取り出してさらに10分こねると、表面がツルっとなめらかになってきます。耳たぶくらいのやわらかさが目安で、フィンガーテスト(中央を指で押してゆっくり戻れば捏ね上がり)で確認しましょう。こね方のポイントをまとめると、以下のとおりです。
こね終わったら、ラップでぴったりと包んで冷蔵庫へ。寝かせる時間は最低1時間、余裕があれば一晩(8〜12時間)がベストです。長く寝かせるほどグルテンが落ち着いて、伸ばしやすくしっとりとした生地になります。「時間がかかる」と感じるかもしれませんが、寝かせる時間は放置しているだけなので実際の作業時間はそこまで長くありません。
参考になるプロのこね方については、こちらのページが詳しいです。
失敗しない!手打ち生パスタの作りのコツ②生地の捏ね方|イタリア料理
生地を休ませたら、いよいよ成形です。ここで大事なのは「打ち粉をたっぷり使う」ことです。打ち粉が少ないと麺同士がくっついてしまい、せっかくの生地が台無しになります。
冷蔵庫から取り出した生地を2〜3等分に切り分けます。使わない分はラップに包んで乾燥を防いでおきましょう。1つ分を台に置き、打ち粉(強力粉)をしながら麺棒で薄く伸ばしていきます。厚さの目安は1〜2mm程度です。1mmは名刺1枚ほどの薄さですが、初めてでも2mm程度であれば十分おいしく仕上がります。
伸ばした生地の表面にも打ち粉をしっかり振り、三つ折りか四つ折りにしてから包丁でカットします。幅の目安はざっとこのとおりです。
切り終えた麺は、すぐに手で広げながらほぐし、打ち粉をまぶします。この段階では麺同士がくっつきやすいので、ひと手間惜しまず全体にしっかり打ち粉をまぶしてください。パスタマシンがあれば、生地を通すだけで均一な厚みに仕上がり、カット刃で一気に麺の形にできます。初めての方にはパスタマシンを使うほうが失敗が少なくておすすめです。
巻いて冷凍保存したいときは、1食分ずつ丸めて打ち粉をしてから保存袋に入れると、くっつかずに保存できます。これは使えそうです。
せっかく作った生パスタも、茹で方ひとつで大きく味が変わります。まず大切なのは、たっぷりのお湯を使うことです。目安はパスタ100gに対してお湯1リットル以上。お湯が少ないと麺がくっついたり、均一に茹だらなかったりします。
お湯が完全に沸騰したら、塩を入れます。塩の量の目安は、お湯1リットルに対して塩10g(小さじ2杯弱)です。これは塩分濃度1%の計算になります。パスタに下味がつくと同時に、グルテンが引き締まってコシが増す効果があります。塩加減が足りないとぼんやりした味になってしまうので、しっかり入れましょう。
手打ちパスタの茹で時間は2〜5分が目安です。乾燥パスタに比べてずっと短く、火の通りが早いので注意が必要です。茹で始めたら1分ほどで1本食べてみて、好みの硬さを確認しながら仕上げましょう。茹で時間に注意すれば大丈夫です。
茹で上がったら即座にソースと和えることが大切です。手打ちパスタはくっつきやすいので、ザルにあけた後はすぐにフライパンのソースに入れてください。茹で汁はソースと麺をなじませる「つなぎ」として使えるので、大さじ2〜3杯ほど取っておくと便利です。この茹で汁はソースのとろみを出す大事な役割があります。
保存については、茹でる前の生パスタなら冷凍保存が便利です。打ち粉をしっかり振った麺を1食分ずつ小分けにして冷凍用の保存袋へ。冷凍のまま沸騰したお湯に入れて茹でられます。この場合、茹で時間を1〜2分長めにするのが目安で、2〜3週間ほど保存可能です。
初心者でも簡単!セモリナ粉で作る、もちもち手打ちパスタの作り方(富澤商店)
手打ちパスタは、乾燥パスタよりもソースが絡みやすいという特徴があります。表面にわずかなざらつきがあるため、ソースをしっかりつかんでくれるのです。これはうれしいことですね。
特に相性がよいのは、濃厚なクリーム系やミートソース(ボロネーゼ)です。もちもちの麺が重たいソースを受け止めてくれるので、食べごたえも抜群です。一方、シンプルなペペロンチーノにも意外なほどよく合います。麺そのものの風味がしっかりあるため、オイルとにんにくだけでもしっかり味わい深い一皿になります。
あまり知られていないのが、デュラムセモリナ粉の「おやき」や「ニョッキ」への活用です。デュラムセモリナ粉を使ったニョッキは、もちもちとした弾力があり、ソースとよく絡む独特の食感になります。普通のジャガイモニョッキよりも崩れにくく、初心者でも形が整いやすいというメリットがあります。
また、パンに少量(全体の20〜30%程度)混ぜて焼くと、表面がカリッとして中はふんわり、独特の黄色みのある風味豊かなパンに仕上がります。イタリアでは「アルタムーラ」という地方のパンがデュラムセモリナ粉100%で作られており、EUの原産地呼称保護(DOP)を取得しているほど価値が高いものです。日常のパン作りに少し混ぜるだけで、食卓に変化が生まれます。
日々のパスタソース作りを時短したいときには、市販のパスタソースをうまく活用するのも賢い選択です。手打ちパスタさえ作れれば、ソースは市販のものでも十分おいしく仕上がります。手間をかけるところとかけないところのバランスが、料理を長続きさせるコツです。