バーク堆肥は、樹木の皮(バーク)を発酵させて作る土壌改良資材で、肥料取締法の特殊肥料として国が効果を認定しています。日本バーク堆肥協会の基準では、木の皮・木質チップの含量が75%以上と定められており、十分に発酵させることで土づくりに有効な資材となります。原料には針葉樹や広葉樹の樹皮が使われ、発酵を促進するために米ぬかや鶏糞、牛ふんなどの補助剤を混ぜることが一般的です。
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バーク堆肥の最大の特徴は、リグニンと呼ばれる難分解性の有機物を多く含んでいることです。リグニンは植物の細胞壁を構成する成分で、微生物による分解速度がゆっくりであるため、一度土壌に施用すると長期間にわたって土壌改良効果が持続します。この性質により、他の土壌改良材と比較して頻繁に施用する必要が少なく、持続的な土づくりに適しています。
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バーク堆肥を土壌に施用すると、微生物の働きによって団粒構造が促進されます。団粒構造とは、土壌の粒子が微生物や有機物によって小さなかたまりをつくる状態で、空気や水の通り道ができて植物の根が伸びやすくなる理想的な土壌環境です。この団粒化により、通気性・排水性・保水性・保肥性のすべてが改善され、土がふかふかになるため耕作もしやすくなります。
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バーク堆肥に含まれる「フミン酸」という成分は、栄養分の吸収を助ける重要な役割を果たします。排水性がありながら水持ちや肥料の効きがよい、理想的な土の状態に近づけることができるのです。さらに、バーク堆肥は有機物の供給源として、植物の成長に必要な炭素を中心とした有機物を含み、これらが徐々に分解されることで土壌に栄養が供給され、微生物のエサとしても機能します。
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バーク堆肥と腐葉土は、ともに植物性原料からなる土壌改良資材ですが、いくつかの重要な違いがあります。腐葉土は、カシやクヌギなど広葉樹の落ち葉を堆積・発酵させたもので、繊維質含有量が5~6%と比較的低いのに対し、バーク堆肥は樹皮を原料とするため繊維質(リグニン)含有量が40%以上と非常に高くなっています。この違いにより、土づくりの効率はバーク堆肥の方が優れているとされています。
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通気性・保水性・保肥性の改善効果は両者とも持っていますが、バーク堆肥は分解されにくい性質があるため、土壌改良効果が長く持続するという特徴があります。落ち葉と比べると樹皮は硬いため分解の速度が遅く、微生物がとどまりやすい環境を提供します。また、バーク堆肥は繊維状の植物体を多く含むため、保水性も高くなります。使用量の目安としては、鉢植えであれば用土の2~3割程度、地植えであれば1平方メートルあたり2kg程度を混ぜ込むことが推奨されています。
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バーク堆肥の適切な施用量は作物や用途によって異なりますが、研究によれば年間2t/10a(1平方メートルあたり2kg)の投入が安全であると示されています。プランター栽培の場合、50cm角のプランターで約500g、30cm角のプランターで約180g、容量換算では1平方メートルあたり8L程度が目安となります。一度に大量投入すると窒素飢餓のリスクがあるため、土全体の20%程度にとどめることが推奨されています。
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窒素飢餓とは、バーク堆肥のようにC/N比(炭素窒素比)が高い有機物を投入した際、微生物が分解に窒素を消費してしまい、作物が利用できる窒素が不足する現象です。バーク堆肥のC/N比は35%以下という基準が設けられており、適度に調整されたものが流通していますが、未熟なバーク堆肥を使用すると生育障害を起こすことがあります。対策としては、鶏糞、おから、油かす、米ぬかなど窒素を多く含む資材を追加する方法や、十分に堆肥化してから施用する方法があります。
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バーク堆肥は土壌に鋤き込むだけでなく、マルチング(地表面を覆うこと)にも有効活用できます。マルチングに使用すると、雑草の繁殖抑制、表土の乾燥・凍結防止、病気の発生抑制、見た目の美しさなど多くのメリットがあります。地表をバーク堆肥で覆うことで土中の雑草に太陽の光が届かなくなり、雑草が出にくくなります。また、植物繊維が豊富で土に比べふんわりとしているため、雑草が生えてしまった場合でも根を摘み取るのが簡単です。
参考)バーク堆肥でマルチング
マルチングの効果を十分に発揮させるには、3~5センチほどの厚さでたっぷり撒くことが重要です。薄く撒いてしまうと、霜の立ち上がりに負けて効果が得られません。特に冬季の霜対策として有効で、バーク堆肥は腐葉土のように強風で飛び散ることが少ないため、マルチングに適しています。ただし、敷きっ放しだとバーク堆肥ばかりが雨水を吸ってしまい地中深くまで水分が浸透しないため、寒さが弱まった春先には元の地面を軽く掘り起こすよう、バーク堆肥を土と混ぜ込むことが推奨されています。
バーク堆肥の施用は、土壌微生物の活性化に大きく貢献します。有機物を投入することで、微生物が利用できるエサを供給し、根圏微生物など有効菌の活動が盛んになります。土壌微生物は、有機物の分解、養分の循環、病害抑制など、健康な土づくりと持続可能な農業において重要な役割を担っています。微生物の働きによって団粒構造化が促進され、養水分の吸収力および保持力が改善するのです。
参考)土づくり・土壌改良において欠かせない「土壌微生物」の役割とは…
土壌微生物を活性化するためには、堆肥や腐葉土などの有機物を適度に投入することに加え、過剰な耕作を避ける、化学肥料・農薬の使用量を適切に調整する、適度な水分を維持するなどの取り組みが効果的です。バーク堆肥は微生物分解に対する抵抗力が高い難分解性のリグニンやセルロースを多く含んでいるため、分解の速度がゆっくりで生成される腐植物質の安定度が高く、効果が持続しやすいという特徴があります。これにより、土壌微生物のバランス改善にもなり、連作障害などの発生を抑える効果も期待できます。
参考リンク(日本バーク堆肥協会による品質基準の詳細)。
日本バーク堆肥協会
参考リンク(土壌微生物の活性化に関する詳しい情報)。
土づくり・土壌改良において欠かせない「土壌微生物」の役割とは?