2回目は、菌床に水をかけるだけでは発芽しないことがあります。
エリンギ栽培キットの1回目は、購入時点でメーカーがほぼ発芽直前まで菌床を仕上げてくれています。つまり、1回目は「セットするだけで生えてくる」状態なのです。
ところが2回目は、菌床の体力が使われた後の状態からスタートします。菌がエネルギーを消費しているため、適切なリセット作業をしないと、水をあげても発芽しないまま時間だけが過ぎていきます。つまり2回目からが"本当の栽培"です。
1回目との大きな違いは3点あります。
| 比較項目 | 1回目 | 2回目 |
|----------|-------|-------|
| 菌床の状態 | 発芽直前・栄養満タン | 収穫後・栄養消耗 |
| 成功難易度 | ★☆☆(簡単) | ★★★(要注意) |
| 必要な作業 | 浸水・覆土のみ | 菌掻き・休養・再浸水が必要 |
「2回目に生えてこない」という声がネット上で非常に多いのも、このギャップに気づかないままに1回目と同じ作業だけをしてしまうからです。悔しいですね。
1回目に比べて収穫量も少なくなる傾向があります。兵庫県森林技術センターの栽培マニュアルによれば「1回目に50個以上採れた場合、2回目以降の発生数は非常に少なくなる」と記載されており、初回にたくさん収穫できた場合ほど2回目のハードルが上がるという、少し意外な事実があります。
兵庫県森林技術センター「もりのきのこ農園シリーズ」栽培マニュアルPDF(2回目以降の発生数について記載あり)
2回目を成功させるには、菌床を「正しく疲れさせて、正しく回復させる」という流れを理解することが大切です。これさえわかれば問題ありません。
2回目に向けた準備作業は、大きく4つのステップで進めます。順番を守ることが条件です。
ステップ1:収穫後の芯の除去と菌掻き
1回目の収穫が終わったら、まず残った芯(根元の部分)をスプーンなどでていねいに取り除いてください。そのまま放置すると腐敗してカビの原因になります。
その後、菌床表面の上部数ミリをスプーンや清潔なヘラで薄く削ぎ落とします。これを「菌掻き(きんかき)」と呼び、古い菌糸の膜を取り除くことで発芽を促す効果があります。表面の茶色い部分が見える程度まで削るのが目安です。
ステップ2:菌床を2〜4週間「休ませる」
菌掻き後は、2〜4週間の休養期間が必要です。休養中は完全に乾燥させるのではなく、表面がじっとり湿っている程度を保ちながら袋に入れて管理します。乾燥しすぎると菌が死んでしまい、逆に湿らせすぎるとカビが発生します。これが意外と難しいところです。
ステップ3:赤玉土を撒いて再浸水
休養後、再び赤玉土(水を吸わせて水切りしたもの)を菌床の上面に均一に撒きます。その後、赤玉土が十分湿るよう霧吹きで水を与えてください。付属のポリ袋に入れ、袋の上部を少し開けた状態でクリップ留めします。
ステップ4:10〜18℃の場所で管理
栽培袋に入れたら、室温10〜18℃・湿度80〜95%の環境に置いて管理を続けます。発芽までには2〜4週間かかります。気長に待つことが基本です。
| 作業 | タイミング | 注意点 |
|---|---|---|
| 芯の除去・菌掻き | 収穫直後 | 表面2〜5mm程度を削る |
| 菌床の休養 | 菌掻き後すぐ〜2〜4週間 | 乾燥しすぎ・湿らせすぎNG |
| 赤玉土・再浸水 | 休養終了後 | 赤玉土は水切りしてから使う |
| 管理・発芽待ち | 再セット後 | 直射日光・20℃超えを避ける |
森産業「もりのきのこ倶楽部」えりんぎ農園 公式栽培方法ページ(菌掻き・収穫後の手順が詳細に掲載)
2回目に発芽しない原因の多くは、温度と湿度の管理ミスです。
エリンギの栽培適温は10〜18℃です。20℃を超えると発芽しにくくなり、25℃以上が続くと菌が弱って枯れてしまいます。逆に8℃以下の寒すぎる場所でも菌の動きが止まってしまいます。エリンギ栽培は「冬〜春先」の季節限定なのはそのためです。
夏場に「余ってるから2回目もやってみよう」と試みると、まず失敗します。実際に9月に挑戦した事例では、30℃を超える気温が続いたためにエリンギが細くやつれ2週間ほどで枯れてしまったという記録があります。季節は重要な条件です。
湿度のキープも同じくらい大切です。目標は80〜95%という高湿度。家庭で測定するには小型の温湿度計が役立ちます。置き場所の確認に、ひとつあると便利なアイテムです(ドラッグストアやホームセンターで500〜1,000円程度から購入できます)。
✅ 発芽が遅いと感じたときのチェックリスト。
- ✔️ 室温が10〜18℃の範囲に収まっているか
- ✔️ 直射日光が当たっていないか
- ✔️ ビニール袋の口が閉まりすぎていないか(酸素不足になる)
- ✔️ 表面の赤玉土が乾燥しきっていないか
- ✔️ 水たまりができるほど水をやりすぎていないか
「霧吹きで1日1回」が目安の水やりです。たっぷりかければ良いというものではありません。
また、発芽を促す環境として「昼は15〜18℃・夜は10〜15℃以下」という温度差がある環境が効果的です。寒暖差が刺激になり発芽が促されます。これは意外と知られていないポイントです。
ニッポー「エリンギ栽培は難しい?失敗しない栽培方法をご紹介」(温度・湿度管理の詳細と失敗例)
2回目の栽培でよくあるトラブルが「カビの発生」です。ただし、白いふわふわが全部カビというわけではありません。
白いふわふわ=カビではない場合が多い
菌床表面に出てくる白い綿状のものは「気中菌糸(きちゅうきんし)」と呼ばれるエリンギの菌糸が空気中に伸びたもので、カビではありません。これは正常な状態で、そのまま栽培を続けて問題なしです。
危険なカビは「色」で見分ける
白いものが徐々に青・緑・黒に変色してきたら、それは雑菌カビです。青カビや緑カビが広がると、エリンギの菌が負けてしまい2回目の収穫が不可能になるケースがほとんどです。痛いですね。
対処法としては、変色したカビ部分をスプーンで取り除き、風通しの良い場所に移動します。カビが発生する主な原因は「換気不足+水やりのしすぎ」です。風通しが悪いと、湿度が高くなりすぎてカビの温床になります。
| カビの見た目 | 状態 | 対処 |
|---|---|---|
| 白いふわふわ | 気中菌糸(正常) | そのまま栽培続行 |
| 青・緑色の変色 | 雑菌カビ(危険) | 該当部分を取り除き換気 |
| 黒・茶色のぬるぬる | 腐敗・細菌汚染 | 2回目を諦める目安 |
ビニール袋の口は「完全に閉めない」のがポイントです。上部を2〜3cmほど開けた状態でクリップ留めし、酸素が入る隙間を確保します。完全に密閉すると酸欠でカビが爆発的に増えやすくなります。
YUIME「エリンギにカビが付くとどうなる?症状と対策について」(カビの種類と菌床への影響を詳しく解説)
2回目の収穫量を少しでも増やしたい場合に有効なのが「芽かき(間引き)」というテクニックです。検索上位の記事では意外とスルーされがちな実践的な知識です。
エリンギは発芽すると複数の芽が密集して出てきます。このまま全部育てると、1本1本に届く栄養が分散されるため、全体的に細くて短いエリンギになりがちです。北村きのこ園の体験記録でも「芽を間引いていたら1本あたり栄養が届くので、もっと大きく成長していたかもしれない」と報告されています。
💡 芽かきのやり方と目安。
- 芽が5〜10本以上密集している場合は、細くて弱そうな芽を指やピンセットで取り除く
- 残す本数の目安は「5〜7本程度」(菌床のサイズや元気さによって調整)
- 芽かきは芽が1〜2cm程度に育った段階で行うのが効果的
- 間引いた小さな芽は食べることはできませんが、残した芽がより太く育ちます
実際に間引きをしなかった場合と比較すると、間引きをした株では1本あたりの太さが明らかに違います。スーパーで売っているような、太くしっかりしたエリンギに近い形に仕上がりやすくなります。これは使えそうです。
2回目は全体的な本数が1回目より少なくなる傾向にありますが、1本あたりの質を高めることで「少ないけど立派なエリンギ」を収穫できます。数より質を目指す方向で楽しむのが2回目の正解かもしれません。
収穫のタイミングは「カサの裏のヒダが見え始めた頃」が最適です。カサが平らに開ききってしまうと食感が落ちるため、少し早めに収穫するほうが食べておいしいエリンギになります。
🍳 自宅で育てたエリンギは鮮度が抜群で、収穫直後はきのこ特有の臭みがなく、コリコリとした弾力がスーパーのものとは別格だという声が多数あります。芽かきで大きく育てた2回目の収穫は、その分一層おいしく感じられるはずです。
北村きのこ園「おうちでエリンギィ栽培に挑戦 その2」(芽の間引きと収穫量の関係について実体験が掲載)