ふきを圧力鍋で煮ると、食感が完全になくなって別の食べ物になります。
ふき佃煮を美味しく仕上げるうえで、下処理の工程は「調理の8割を決める」と言っても過言ではありません。圧力鍋を使えば煮込み時間は劇的に短縮されますが、下処理を省いてしまうと仕上がりに大きなえぐみや苦みが残り、食べにくい佃煮になってしまいます。
まず行うのが「板ずり」です。まな板の上にふきを並べ、塩をふってから手のひらで転がすように押しつけながらこすります。これにより表面の産毛が取れ、塩が繊維の奥まで入りやすくなります。使う塩の量は、ふき200gに対して小さじ1杯程度が目安です。
板ずりが終わったら、たっぷりのお湯で2〜3分茹でます。茹で上がったらすぐに冷水にとり、粗熱をとります。これが大切です。
冷えたら皮を剥きます。端から指でつまんで引っ張ると、スーッと繊維状の皮が取れます。皮が残っているとスジが口に当たり、食感が悪くなります。皮むきが終わったら3〜4cmの長さに切りそろえ、さらに30分ほど水にさらしてあく抜きを完了させましょう。この水さらしを怠ると、圧力鍋で加熱した際に苦みが凝縮されてしまいます。つまり下処理が条件です。
下処理済みのふきは、ザルにあげてしっかり水気を切ってから圧力鍋に入れます。水気が多すぎると調味料が薄まり、味が決まりにくくなるので注意してください。
下処理が整ったら、いよいよ圧力鍋での調理に入ります。基本のレシピはシンプルで、材料は下処理済みのふき200g・醤油大さじ3・みりん大さじ2・砂糖大さじ2・酒大さじ1・だしの素少々の6つだけです。これだけ覚えておけばOKです。
圧力鍋にふきと調味料をすべて入れ、蓋をして中火にかけます。蒸気が上がりはじめたら弱火にして、加圧時間は3〜5分が目安です。この時間は非常に重要で、5分を超えると繊維がくずれてふきの食感がほぼ消えてしまいます。「圧力鍋だから長く煮ていい」というのは誤解です。通常の鍋で煮る場合の目安は20〜30分なので、圧力鍋がいかに時短になるかがわかります。
加圧が終わったら火を止め、圧力が完全に下がるまで自然放置します。急いで蒸気を抜こうとすると、鍋の中で突沸が起きる可能性があります。危ないですね。圧力が抜けたら蓋を開け、煮汁が残っている場合は蓋を外したまま中火で煮詰めます。
煮汁がほぼなくなり、つやが出てきたら完成です。仕上げにごまを散らすと風味が増し、見た目も格段によくなります。
| 工程 | 通常の鍋 | 圧力鍋 |
|------|---------|-------|
| 下処理 | 約10分 | 約10分 |
| 煮込み時間 | 20〜30分 | 3〜5分 |
| 煮詰め | 10〜15分 | 5〜10分 |
| 合計目安 | 約50〜55分 | 約25〜30分 |
合計で約20〜30分の短縮になります。平日の夕食の一品としても十分現実的な時間です。これは使えそうです。
圧力鍋でふき佃煮を作る際には、初心者がつまずきやすいポイントが3つあります。これらを事前に知っておくだけで、失敗のリスクを大きく下げられます。
① 液体の量が少なすぎる問題
圧力鍋は密閉された空間で蒸気を使って加熱するため、鍋底を覆う程度の液体が必要です。佃煮は煮詰めることが前提なので調味料の総量が少なめになりがちですが、少なくとも鍋底から1cm程度の液面を確保してください。液体が不足すると焦げつきの原因になります。心配な場合は水を大さじ2〜3杯追加して加圧し、後から煮詰めて仕上げる方法が安全です。
② 加圧時間のオーバー
前述のとおり、5分以上の加圧はふきの繊維を壊しすぎます。ふきは細く繊細な野菜なので、圧力鍋の威力に対して非常に敏感です。「もう少し柔らかくしたい」という場合でも、加圧は5分を上限とし、追加で煮詰める段階で火加減を調整するほうが安全です。加圧5分が上限です。
③ 皮むきの不完全
下処理の項目でも触れましたが、皮が残っているとスジが口に残ります。特に圧力鍋で加熱すると繊維がほぐれる一方で、スジの部分は残りやすくなります。皮むきの際は、端を数本まとめてつまんで引っ張る「まとめ剥き」をするとスジをしっかり除去できます。慣れれば200gのふきの皮むきは5分以内で終わります。
これらの3点に注意すれば大丈夫です。
せっかく手間をかけて作った佃煮ですから、正しい保存方法で長く楽しみたいところです。ふき佃煮の保存期間は、方法によって大きく変わります。
冷蔵保存の場合、清潔な密閉ガラス容器に入れ、冷蔵庫で保存すれば約1週間が目安です。重要なのは「使い回しのタッパーより、煮沸消毒したガラス瓶のほうが日持ちする」という点です。タッパーは細かい傷に菌が繁殖しやすく、1週間を待たずに風味が落ちることがあります。ガラス瓶で保存するのが原則です。
取り出す際は必ず清潔なスプーンを使い、素手で触らないようにしましょう。雑菌が入ると一気に傷みが早まります。
冷凍保存の場合、小分けにしてラップで包んだ後にジッパー付き保存袋に入れれば、最大3ヶ月保存が可能です。1回分をラップで包む量は「ご飯1膳分のおかず程度」、大さじ2〜3杯を目安にすると使い勝手がいいです。
解凍は冷蔵庫に移して一晩かけて自然解凍するのがベストです。電子レンジで急速解凍すると水分が飛びやすく、パサついた食感になりやすいので注意してください。
| 保存方法 | 容器 | 保存期間 |
|---------|------|---------|
| 冷蔵 | 煮沸済みガラス瓶 | 約1週間 |
| 冷蔵 | タッパー | 約5日 |
| 冷凍 | ラップ+ジッパー袋 | 最大3ヶ月 |
冷凍保存を活用すれば、ふきの旬(3月〜5月)にまとめて仕込んでおき、オフシーズンにも楽しめます。いいことですね。
基本のレシピに慣れたら、少しのアレンジで風味をガラリと変えられます。ここでは家庭でも試しやすいバリエーションを3つ紹介します。
山椒風味の佃煮
調味料に実山椒(または粉山椒小さじ1/2)を加えるだけで、本格的な風味の佃煮に仕上がります。実山椒は5〜6月に旬を迎えるため、ふきと時期が重なります。旬の実山椒を購入して塩漬けや冷凍保存しておけば、年間を通じて使えます。山椒の独特のしびれが、ふきの苦みと絶妙にマッチします。
ショウガ風味の佃煮
千切りにしたショウガ1かけ(約10g)を加えて一緒に加圧すると、すっきりした辛みと香りが加わります。ショウガは消化促進作用もあり、夏場の食欲が落ちた時期に食が進む一品になります。薬味として常備しているショウガを活用できるので、コスト面でも優しいアレンジです。
ちりめんじゃこ入り佃煮
ちりめんじゃこ(じゃこ)30gを一緒に加えると、カルシウムとうまみがプラスされます。お子さんがいる家庭では、じゃこを入れることでふきの苦みが和らぎ食べやすくなる効果もあります。加圧後の煮詰め段階で加えれば、じゃこが硬くなりすぎず、ふかふかとした食感に仕上がります。意外ですね。
どのアレンジも追加材料は1〜2種類だけです。基本レシピの調味料はそのままで、プラスアルファの食材を加えるだけなので、失敗リスクも低くなります。気軽に試してみてください。ふきの旬の時期に数種類のバリエーションを仕込んでおくと、食卓のバリエーションが一気に広がります。