荒砥石から研ぎ始めると、刃がかえって傷んで2倍長く研ぐ羽目になります。
砥石を選ぶとき、「とりあえず1本あればいい」と思っていませんか。実は砥石には番手という粒度の数字があり、この番手の違いが研ぎの仕上がりを大きく左右します。
番手の数字が小さいほど粒が粗く、大きいほど粒が細かくなります。大まかに分けると、次の3種類が基本です。
家庭で最初に1本だけ買うなら、中砥石(#1000前後)が正解です。
実は、切れ味が少し落ちた程度の包丁を荒砥石で研いでしまうと、本来削る必要のない金属まで削り取ってしまい、刃の寿命を縮めます。包丁メーカーの貝印によると、刃こぼれがない状態なら中砥石から始めることが推奨されています。「どの砥石を使えばいい?」という疑問は、まず刃の状態を確認することで解決します。
刃こぼれがある→荒砥→中砥→仕上砥。刃こぼれがない→中砥→仕上砥。これが基本です。
研ぎ始める前の準備を怠ると、作業中に砥石がずれてケガをしたり、砥石そのものが割れたりすることがあります。実際、砥石の準備不足によるケガは家庭内刃物事故の一因とされており、決して見過ごせません。
準備の手順は以下のとおりです。
準備が整ったら、いよいよ研ぎの工程です。
研ぎの順番は「中砥→仕上砥」が基本です。この流れを守るだけで、仕上がりが格段に変わります。
包丁を砥石に当てるとき、多くの方が角度を高くしすぎる傾向があります。正しい角度は刃先と砥石面の間が15〜20度です。
角度の目安として、1円玉(厚さ約1.5mm)を2〜3枚重ねて刃の背(みね)の下に置いたとき、ちょうど浮き上がる高さが15〜20度に相当します。これは覚えやすい方法です。
力加減については、「前(刃先方向)に押すときに軽く力を入れ、引くときは力を抜く」が基本です。押すときに力を入れすぎると刃が波打ち、均一な刃がつきません。力は1〜2kgほどが目安で、これはトマトを軽く押さえるくらいの感覚です。
角度と力加減が一定に保てれば、研ぎの成果が出ます。
研ぎ続けていると刃先に「かえり(バリ)」と呼ばれる金属のめくれが指先でわずかに感じられます。このかえりが出たら、そのブロックの研ぎは完了のサインです。
かえりをそのままにすると、切り口がギザギザになり食材の断面が潰れます。かえりの処理は仕上がりを決める重要な工程です。
かえりの取り方には2つの方法があります。
新聞紙を使う場合は、刃を寝かせるように当て、刃先方向に向かって押し出すように引きます。逆方向(引く方向)にすると新聞紙が切れてしまうため注意しましょう。
仕上砥石で研ぐ際は、力をほぼ入れず「砥石の上を滑らせる」感覚が正解です。
かえりが取れているかの確認方法は、親指の腹を刃先に対して垂直にそっと当てること(刃の方向には絶対に動かさない)です。引っかかりが消えていれば完成です。刃先が爪に引っかかるくらい鋭ければ、十分な切れ味が戻っています。
砥石は研いで使い続けるうちに中央がへこんできます。これを「砥石の反り」または「砥石の目詰まり」と呼びます。
砥石が反ったまま使うと包丁を一定の角度で保てず、刃が丸くなる原因になります。これは見落とされがちな問題です。
砥石の平面を戻す方法は、「面直し砥石(つらなおしと石)」または「ブロック塀のコンクリート面に水をかけながらこする」方法です。面直し砥石は1,000〜2,000円前後で市販されており、砥石本体の寿命を大幅に延ばす効果があります。定期的なメンテナンスが条件です。
また、研いだ後の包丁も同様に、水分をしっかり拭き取ってから保管することが大切です。水分が残ると、ステンレス製でも錆が発生することがあります。「水を拭いてから保管」これだけ覚えておけばOKです。
砥石の平面が保たれていれば、同じ砥石を5〜10年以上使い続けることも十分可能です。道具を大切に使う習慣が、長期的な節約につながります。
「どのくらいの頻度で研げばいいの?」という疑問は、多くの方が持っています。実は、研ぎすぎも包丁の寿命を縮める原因になります。
一般的な家庭用包丁の研ぎ目安は2〜3ヶ月に1回です。毎日使う包丁であっても、適切に使えばこのペースが適切です。ただし切れ味を感じたら早めに対応するのが賢明です。
切れ味の簡単チェック方法を3つ紹介します。
研ぐ頻度が高すぎると、包丁の刃の厚みが薄くなり、最終的に刃が使えなくなります。有名な包丁ブランド「グローバル(GLOBAL)」のステンレス一体型包丁を例にとると、刃の厚みは約1.5〜2mmで設計されており、このマージンは決して広くありません。適切な頻度で研ぐことが道具を大切に使うことにつながります。
また、まな板の素材も切れ味の持続に影響します。木製まな板は刃に優しく、プラスチック製は硬いため刃の消耗が早い傾向があります。切れ味が落ちやすいと感じているなら、まな板の見直しも選択肢のひとつです。
| 切れ味の状態 | 使う砥石 | 研ぎ時間の目安 |
|---|---|---|
| 少し切れ味が落ちた | 中砥石(#1000)のみ | 片面5〜10分 |
| かなり切れ味が悪い | 中砥石→仕上砥石 | 合計20〜30分 |
| 刃こぼれがある | 荒砥石→中砥石→仕上砥石 | 合計40〜60分 |
研ぎにかかる時間は状態次第です。こまめな中砥石メンテナンスが結果的に最も手間が少なくなります。