一等米を買えば必ずおいしいご飯が炊けると思っていたなら、今日から3,000円以上損し続けます。
「一等米」という言葉を、スーパーの米袋で見かけたことがある方は多いはずです。なんとなく「一等=最高においしい」というイメージを持ちがちですが、実はこれが大きな誤解のはじまりです。
お米の等級は、農産物検査法という法律に基づいて、国が認定した農産物検査員が玄米の品質をチェックして決定します。つまり国家検査です。この検査は、お米を食べておいしいかどうかを判定するものではありません。あくまでも「見た目の品質」を審査するものです。
等級は以下の4段階に分類されます。
| 等級 | 整粒(きれいな粒)の割合 | 水分量 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| 一等米 | 70%以上 | 15.0%以下 | 家庭用・贈答用・飲食店用など |
| 二等米 | 60%以上 | 15.0%以下 | 家庭用・業務用など |
| 三等米 | 45%以上 | 15.0%以下 | 加工用(味噌・日本酒など) |
| 規格外 | 45%未満 | − | 飼料用・工業用など |
「整粒」とは、形がきちんと整っていて、虫食いや変色・割れのないきれいな粒のことです。等級が基本です。
一等米では整粒が70%以上でなければならず、さらに着色粒(カメムシに吸われたり病気で変色した粒)の混入が0.1%以下、もみの混入が0.3%以下などの細かい基準があります。二等米ではこれが少しだけ緩やかになり、整粒60%以上、着色粒0.3%以下、もみ0.5%以下という基準です。
つまり、一等米と二等米の差は「整粒が10%違うかどうか」と「わずかな異物の混入量の差」だということです。一読すると、思ったほど大きな差ではないと感じる方も多いのではないでしょうか。
これは分かりやすくたとえると、卵のLサイズとMサイズの違いに近いイメージです。どちらも卵であることに変わりはなく、中身の栄養価が劇的に異なるわけではありません。大切なのは、この等級が「見た目と均一性の基準」であり、「味の基準ではない」という点です。
参考:農林水産省「玄米の検査規格」
農林水産省|玄米の検査規格(農産物規格規程)
「二等米は味が落ちるのでは?」と不安に思う方が多いですが、結論から言うとそれは間違いです。
農林水産省の研究やさまざまな食味試験でも一貫して示されているのが、「一等米と二等米の食味に有意な差はない」という事実です。新潟県上越市が2019年に実施した「コシヒカリ1等米と2等米の食べ比べ」では、参加者から「どちらもおいしい」「味に違いは感じない」という回答が大多数を占めました。農林水産部の担当者も「1等米と2等米の食味は違わない」と公式に発言しています。
なぜ味が変わらないのでしょうか?
理由は精米のプロセスにあります。玄米の段階では二等米に着色粒や被害粒が少し多く混じっていますが、精米・選別工程でこれらは取り除かれます。消費者の手に届く白米の状態では、一等米由来であっても二等米由来であっても、品質はほぼ同じに均一化されているのです。
ただし、注意が必要な点が一つあります。歩留まり(玄米を精米して白米になる割合)は等級によって違います。一等米の場合、精米すると玄米の約89%が白米になりますが、二等米では80%程度になることもあります。つまり、同じkg数の玄米でも、二等米は取り除かれる部分が多くなるということです。
お米屋さんやスーパーが二等米を仕入れても最終的な白米の量が少なくなる分、販売価格が単純に安くなりにくい構造もここに理由があります。つまり二等米だからといって必ずしも「安くて得」とは言い切れない面もあります。
食味は変わらないということですね。精米時期が新しく、正しく保管されていれば、二等米でも十分においしいご飯が炊けます。
参考:新潟県上越市「コシヒカリ1等米と2等米の食べ比べ」記事
ありそうでなかった! コシヒカリ1等米と2等米の食べ比べ(上越タウンジャーナル)
「では、スーパーで買うお米が一等米か二等米か、どうすれば分かるの?」と思った方も多いはずです。
驚くべきことに、精米後の袋には等級を表示する義務がありません。農産物検査法では玄米の等級を検査・格付けしますが、精米袋への等級記載は事業者の任意です。義務で記載しなければならないのは「産地・品種・産年・精米時期」であって、等級ではありません。
これは意外ですね。つまり、スーパーで「あきたこまち5kg」と書かれた袋を買っても、それが一等米なのか二等米なのか、袋を見ただけでは分からないことがほとんどなのです。
八代目儀兵衛(米穀店)の解説によれば、「お米の等級を購入時に知ろうとしても、ほとんどの場合は袋に記載されていません。等級は事業者が自主的に記載しなければ載っていません」とあります。
もちろん、高品質をうたう一部のお米屋さんや産地直送品では「一等米使用」と明記している場合もあります。しかし、一般的なスーパーの量販米では、そうした記載がないことの方が多いです。
では、どうすれば品質の良いお米を選べるのでしょうか?ポイントは2つあります。
品質を確認するなら精米時期が条件です。等級よりも精米日の新しさを優先することが、毎日のごはんをおいしくする近道といえます。
参考:八代目儀兵衛「米の等級とは何?」
米の等級とは何?基準などをご紹介いたします!(八代目儀兵衛)
「一等米=おいしい」という思い込みと同様に、よく混同されるのが「等級」と「食味ランキング」です。この2つは、評価する団体も基準もまったく異なります。
等級は農林水産省が農産物検査法に基づいて行う、見た目の検査結果です。
一方、食味ランキングは、一般財団法人日本穀物検定協会が毎年実施する、専門の評価員による「食べておいしいかどうか」の試験結果です。1971年から続く伝統ある評価で、「外観・香り・味・粘り・硬さ・総合評価」の6項目を実際の食味で判定します。
ランクは以下の5段階です。
ここが重要なポイントです。一等米であっても食味ランキングが「A'」や「B」ということがあります。逆に、二等米でも食味的には非常においしく、専門家が「特A相当」と評価することも珍しくありません。
たとえば、猛暑の影響でお米の粒が白濁したり形が崩れた場合、整粒率が下がって「二等米」に格付けされることがあります。しかし白濁は見た目の問題であり、味への影響は限定的です。そのため、こうした年産のお米でも食味試験の結果は良好なケースが数多くあります。
本当においしいお米を選びたいなら、以下のように使い分けるのがベストです。
| 選ぶ目的 | 参考にする指標 |
|---|---|
| 見た目のきれいさ・品質の均一性を重視 | 等級(一等米など) |
| 食べておいしいかを重視 | 食味ランキング(特A・Aなど) |
| コスパを重視 | 精米時期+産地・品種で選ぶ |
令和6年産米の食味ランキングで特Aを獲得した銘柄には、北海道の「ゆめぴりか」「ななつぼし」、秋田県の「あきたこまち」「サキホコレ」、新潟県魚沼産「コシヒカリ」などが名を連ねています。これは使えそうです。
参考:日本穀物検定協会「食味ランキング」
一般財団法人 日本穀物検定協会|令和6年産米 食味ランキング
近年、日本の米産地では「二等米の比率が増えている」という現象が起きています。これは温暖化による猛暑が大きな原因です。
お米は出穂(稲の穂が出る)後の時期に高温が続くと、「白未熟粒」と呼ばれる白く濁った粒が多く発生します。農林水産省によると、整粒率が下がることで一等米の基準(整粒70%以上)を満たさなくなり、二等米・三等米に格下げされるケースが増えています。
実際に、令和5年産(2023年)は記録的な猛暑の影響で、全国の一等米比率が例年より大幅に低下しました。平年は一等比率が80%を超えていますが、この年は地域によっては50〜60%台まで下がった産地も出ました。
家庭の食卓に届くお米の約80%が一等米というのが平年の姿です。しかし猛暑の年には二等米・三等米が増えるため、お米の卸価格にも影響が出ます。一等米と二等米の価格差は玄米60kgあたりで銘柄によって数百〜数千円程度の差があり(例:長野県産コシヒカリ特Aで1等・2等の差が約4,320円/60kg ※令和5年産JAデータより)、これが流通コストや販売価格にも反映されてきます。
ただし前述のとおり、二等米でも精米後の食味はほとんど変わらない点を覚えておきましょう。問題ありません。
気候変動の影響は今後も続くとされており、「猛暑の年=二等米が増える=スーパーのお米が高くなる可能性がある」という構図を知っておくと、家計管理に役立てられます。米の購入タイミングや備蓄のタイミングを意識することで、食費を上手にコントロールできます。
特に、毎月のお米代が気になる主婦の方には、「産地直送」や「農家直買い」の活用も選択肢の一つです。等級に関わらず農家が直接販売しているお米は、流通コストが減る分、良心的な価格で手に入ることがあります。まずは産地直送ECサイトや地域のJA直売所をチェックするだけでも、月々のお米代を見直せるかもしれません。
参考:角一 メディア「猛暑が米に与える影響とは」
猛暑が米に与える影響とは。今更聞けない米の「等級」と各地の対応(角一)