体重を1kg減らすより、除脂肪体重を1kg増やす方が基礎代謝が約50kcalも上がります。
「体重が減った!」と喜んでいても、実は筋肉が落ちていただけというケースは非常に多いです。体重の増減だけを追いかけていると、本当の意味での体の変化を見落としてしまいます。そこで大切になるのが「除脂肪体重(LBM:Lean Body Mass)」という概念です。
除脂肪体重とは、体重から体内の脂肪量をすべて引いた数値のことです。つまり、筋肉・骨・内臓・水分・血液などをすべて合計した「脂肪以外の組織の重さ」を指します。筋肉量そのものとは少し異なりますが、筋肉量の変化を把握する上で非常に参考になる数値です。
体重と脂肪量の違いを例で整理してみましょう。
| 項目 | 数値例 |
|------|--------|
| 体重 | 58kg |
| 体脂肪率 | 28% |
| 体脂肪量(58 × 0.28) | 16.24kg |
| 除脂肪体重(58 − 16.24) | 41.76kg |
この例では、体重58kgの方の「本当の体の中身」は約41.76kgということになります。体重が同じ58kgでも、体脂肪率が20%なら除脂肪体重は46.4kgとなり、大きく異なります。
除脂肪体重が重要な理由はシンプルです。脂肪は代謝がほぼゼロに近いのに対して、筋肉を含む除脂肪体重の組織は常にエネルギーを消費します。除脂肪体重が高い人ほど、じっとしていても多くのカロリーを消費できる体質です。
これが基本です。
体重計の数字だけを見ていると、「筋肉が落ちた」のか「脂肪が落ちた」のかがわかりません。特に食事制限だけのダイエットでは、脂肪より先に筋肉が落ちやすいという研究結果もあります。除脂肪体重を定期的に把握することで、本当に良い方向に変化しているかどうかを正確に判断できます。
除脂肪体重の計算式はとてもシンプルです。手順は2ステップだけです。
ステップ1:体脂肪量を求める
$$\text{体脂肪量(kg)} = \text{体重(kg)} \times \frac{\text{体脂肪率(\%)}}{100}$$
ステップ2:除脂肪体重を求める
$$\text{除脂肪体重(kg)} = \text{体重(kg)} - \text{体脂肪量(kg)}$$
まとめると1つの式になります。
$$\text{除脂肪体重(kg)} = \text{体重(kg)} \times \left(1 - \frac{\text{体脂肪率(\%)}}{100}\right)$$
具体的な計算例を2パターン見てみましょう。
Aさんのケース(体重55kg・体脂肪率30%)
$$\text{体脂肪量} = 55 \times 0.30 = 16.5\text{kg}$$
$$\text{除脂肪体重} = 55 - 16.5 = 38.5\text{kg}$$
Bさんのケース(体重55kg・体脂肪率22%)
$$\text{体脂肪量} = 55 \times 0.22 = 12.1\text{kg}$$
$$\text{除脂肪体重} = 55 - 12.1 = 42.9\text{kg}$$
体重は同じでも、除脂肪体重には約4.4kgの差が生まれます。これだけで基礎代謝に1日あたり約220kcalもの差がつくと言われています。1ヶ月に換算すると約6,600kcal、脂肪約0.9kg分のエネルギー差です。意外ですね。
この計算に必要な体脂肪率は、市販の体組成計(インバディ型の家庭用タイプ)で測定できます。タニタやオムロンの家庭用体組成計であれば3,000円〜15,000円程度で購入でき、毎日同じ時間(起床後・食事前・排泄後)に計測するとより正確な数値が得られます。
計測タイミングが条件です。
体脂肪率の測定精度が気になる方は、スポーツジムや一部のドラッグストアに置かれている業務用体組成計(InBodyなど)を利用するとより精度の高い数値が得られます。無料で測定できる施設もあります。
タニタ公式|体脂肪率・除脂肪体重の基礎知識(計測方法・読み方)
除脂肪体重の「理想値」は、身長や体型によって変わります。一般的に使われる計算式として「理想除脂肪体重」を求める方法があります。
$$\text{理想除脂肪体重(kg)} = 22 \times \text{身長(m)}^2 \times 0.75$$
この「22」はBMIの標準値、「0.75」は体脂肪率25%を想定した係数です(1−0.25=0.75)。身長158cmの女性を例にすると次のようになります。
$$\text{理想除脂肪体重} = 22 \times 1.58^2 \times 0.75 = 22 \times 2.4964 \times 0.75 \approx 41.2\text{kg}$$
つまり、身長158cmの女性の理想除脂肪体重は約41kgが一つの目安です。
女性の除脂肪体重の平均的な目安を身長別に整理すると、次のようになります。
| 身長 | 理想除脂肪体重の目安 |
|------|---------------------|
| 150cm | 約37kg |
| 155cm | 約40kg |
| 160cm | 約42kg |
| 165cm | 約45kg |
| 170cm | 約48kg |
理想値が条件ではなく「目安」である点は重要です。骨格の太さや筋肉のつき方には個人差があるため、この数値はあくまでも方向性を確認するための参考値として活用してください。
また、BMIだけで判断すると「標準体重なのに体脂肪率が高い」いわゆる「隠れ肥満」を見逃します。BMI22でも体脂肪率が33%以上あれば、除脂肪体重は理想より低い状態です。体重とBMIが標準範囲でも除脂肪体重が低い場合、基礎代謝が低く、ちょっとした食べ過ぎで太りやすいという悪循環に陥りやすくなります。
これは要注意です。
自分の現在の除脂肪体重が理想値に対してどのくらい離れているかを確認することが、ダイエットや筋トレの目標設定の第一歩になります。
厚生労働省 e-ヘルスネット|BMI・肥満と健康リスクの関係(標準体重の考え方)
除脂肪体重が重要視される最大の理由のひとつが、基礎代謝との深い関係です。基礎代謝とは、安静にしていても生きていくために消費されるエネルギーのことです。
基礎代謝を除脂肪体重から計算する方法として、「Katch-McArdle(カッチ・マカードル)式」が広く使われています。
$$\text{基礎代謝(kcal)} = 370 + 21.6 \times \text{除脂肪体重(kg)}$$
先ほどのAさん(除脂肪体重38.5kg)とBさん(除脂肪体重42.9kg)で比較してみましょう。
$$\text{Aさんの基礎代謝} = 370 + 21.6 \times 38.5 = 370 + 831.6 = 1201.6\text{kcal}$$
$$\text{Bさんの基礎代謝} = 370 + 21.6 \times 42.9 = 370 + 927.0 = 1297.0\text{kcal}$$
1日あたり約95kcalの差があります。これを1年間に換算すると約34,675kcal、脂肪に換算すると約4.6kg分のエネルギー差になります。体重が同じでも、除脂肪体重が違うだけでこれだけの差が生まれます。
つまり代謝力の差です。
よく使われる「ハリス・ベネディクト式(改訂版)」も参考になります。女性の場合の計算式は以下の通りです。
$$\text{基礎代謝(kcal)} = 447.593 + 9.247 \times \text{体重(kg)} + 3.098 \times \text{身長(cm)} - 4.330 \times \text{年齢(歳)}$$
ただしこの式は体脂肪率を考慮しないため、除脂肪体重を使うKatch-McArdle式の方が実際の体質に近い数値が出やすいと言われています。体脂肪率の高い方にとっては、ハリス・ベネディクト式は基礎代謝を高く見積もりすぎる傾向があります。
ダイエット中に基礎代謝が下がって停滞するのは、筋肉が落ちて除脂肪体重が低下しているサインです。食事制限だけで体重を落とすと、この落とし穴にはまりやすくなります。基礎代謝を守りながらダイエットするためには、除脂肪体重を維持・増加させることが不可欠です。
除脂肪体重を増やすためには、筋肉の材料となるタンパク質を十分に摂ることが最も重要です。一般的に推奨されるタンパク質摂取量は「除脂肪体重1kgあたり1.6〜2.2g/日」とされています。
先ほどのBさん(除脂肪体重42.9kg)の場合を計算してみましょう。
$$\text{1日のタンパク質目標量} = 42.9 \times 1.6 \sim 42.9 \times 2.2 = 68.6 \sim 94.4\text{g}$$
1日あたり約70〜95gのタンパク質が目安です。これは毎食25〜32g程度に分けて摂るのが理想です。
食品に含まれるタンパク質量を目安として整理すると次のようになります。
| 食品 | 量 | タンパク質量 |
|------|-----|-------------|
| 鶏むね肉(皮なし) | 100g | 約23g |
| 卵 | 1個(60g) | 約7g |
| 木綿豆腐 | 半丁(150g) | 約10g |
| ギリシャヨーグルト | 100g | 約10g |
| サバ缶(水煮) | 1缶(180g) | 約26g |
毎食タンパク質を意識するのがポイントです。
日常の家事・育児の中では、食事準備の時間が限られることも多いです。そこで活用しやすいのがサバ缶・ツナ缶・卵・豆腐などの「すぐに使えるタンパク質食材」です。これらは調理が短時間で済み、コストパフォーマンスも高く、毎日の食事に無理なく組み込めます。
タンパク質の摂取と同時に、筋肉への刺激も必要です。自宅でできるスクワットや踏み台昇降は道具不要で始められ、除脂肪体重の維持・増加に効果的です。週2〜3回、1回10〜15分から始めるだけで、3〜6ヶ月程度で除脂肪体重の変化を感じられる方が多いとされています。
食事と運動がセットです。
プロテイン(タンパク質補助食品)を活用するのも一つの方法です。食事でなかなかタンパク質が足りない場合、女性向けのホエイプロテインやソイプロテインを1日1杯(約20g前後のタンパク質)追加するだけで、目標摂取量に近づきやすくなります。味や溶けやすさで選ぶと継続しやすいですね。
除脂肪体重を正しく把握して、体重の数字だけに惑わされない体づくりを続けることが、長期的に「痩せやすい体」を手に入れる最短ルートです。
国立健康・栄養研究所|日本人のたんぱく質摂取量に関する研究報告(PDF)