「回転焼き」と聞いて首をかしげる人が、実は全国の約6割もいます。
回転焼きとは、小麦粉・卵・砂糖を溶いた生地を円形の鉄型に流し込み、あんこなどの具材を包んで焼いた和菓子のことです。ふっくらとした厚みのある円盤形が特徴で、焼き立ての香ばしさと、中のとろりとしたあんこが絶妙なバランスを持っています。屋台や商店街の専門店で販売されることが多く、子どもからお年寄りまで幅広い世代に長く愛されてきたお菓子です。
つまり「回転焼き」という名前は、お菓子の種類を指す言葉のひとつです。
歴史を辿ると、このお菓子の原点は江戸時代中期(安永年間、1770年代ごろ)にまで遡ります。現在の東京・神田駅近くにあった「今川橋」付近の店が「今川焼き」として売り出したのがはじまりとされており、史料に初めて登場するのは1777年(安永6年)のことです。当時は2個で4文という子ども向けのおやつで、庶民の間に急速に広まりました。
明治時代には全国的に大流行し、森永製菓の創業者・森永太一郎が「焼芋屋と今川焼がある限り、銀座での西洋菓子の進出は困難だ」と語ったほど、その人気ぶりは際立っていたといわれています。これは使えそうですね。
中身は定番のつぶあん・こしあん以外に、カスタードクリームやチョコクリーム、抹茶クリームなど、時代とともに多様化しました。冷凍食品としても広く流通しており、自宅でも手軽に楽しめるお菓子として現在も根強い人気があります。
参考:今川焼きの歴史・特徴についての詳しい解説はこちら(ニチレイフーズ公式)
今川焼(回転焼・大判焼)って? - ニチレイフーズ
同じひとつのお菓子に、なぜこれほど多くの呼び名が生まれたのでしょうか?
奈良大学・岸江信介教授(日本語方言学)の研究によると、回転焼きを指す呼び名は全国で少なく見積もっても100種類以上に及ぶとされています。これほど多い理由は、「名前のルーツが一種類ではない」からです。呼び名の由来は大きく次の3パターンに分けられます。
| 由来の種類 | 具体例 |
|---|---|
| 🔄 焼き方・製法に由来 | 回転焼き(焼き板を回転させる) |
| 🏪 店名・ブランド名に由来 | 御座候、蜂楽饅頭、甘太郎など |
| 🥁 形状・見た目に由来 | 太鼓焼き、太鼓饅頭、二重焼きなど |
「回転焼き」という名前は、円形の焼き型(中心に軸がある)を回転させながら生地を焼くという独特の製法からついた名称です。戦前から大阪を中心に使われてきた、比較的古い呼び名のひとつでもあります。
江戸発祥の「今川焼き」が全国に広まっていく過程で、各地の販売店が独自ののぼりや暖簾を作り、そこに書かれた名前がそのまま定着した——という流れが、これほど多くの呼び名が生まれた最大の理由だと考えられています。つまり「食の方言」が自然発生した、というわけですね。
岸江先生は「各地でそれぞれ独自の呼び名が生まれたのは、それだけ多くの地域でこのお菓子が長く愛されてきた証拠」と語っています。
参考:方言学の視点から回転焼きの呼び名を解説した記事
御座候?大判焼?地域で違う「回転焼」の呼び名のナゾ - 大阪ガス
2025年11月にニチレイフーズが実施した大規模調査(全国14,057人対象)によると、47都道府県ごとの最多呼称は以下のとおりでした。「今川焼」が19エリアでトップ、次いで「大判焼き」が15エリア、「回転焼き」が9エリアという結果です。
| 呼び名 | 主な地域 | 制覇エリア数 |
|---|---|---|
| 今川焼き | 関東・北陸を中心に広範囲 | 19エリア(約6割が選択) |
| 大判焼き | 東海・中国・四国・東北の一部 | 15エリア |
| 回転焼き | 関西(大阪・堺)・九州全県 | 9エリア |
| 御座候 | 兵庫県(姫路・神戸周辺) | 1エリア(固有ブランド名) |
| おやき | 北海道・青森・岩手 | 2エリア |
特筆すべきは、九州全県(沖縄を除く)が「回転焼き」で統一されているという点です。九州から関西へ出てきた方が「回転焼きください」と言っても通じないことがある、というのは有名な話です。
その一方、近畿地方では「今川焼き」「回転焼き」「大判焼き」「御座候」が複雑に入り混じっており、食文化の交差点のような様相を呈しています。
「暫(しばらく)」という呼び名は、歌舞伎十八番のタイトルからつけられたという、非常に個性的な例です。意外ですね。同じお菓子でも、その土地の文化や歴史が名前に色濃く反映されているのがわかります。
参考:2025年最新の47都道府県別呼び名調査の詳細データ
47都道府県別・今川焼の呼び方勢力図マップ - ニチレイフーズ(PRtimes)
「大判焼き」という呼び名が全国に一気に広まったのには、意外な背景があります。それは、昭和31〜33年(1956〜1958年)に連載されたベストセラー小説『大番』の存在です。
愛媛県の菓子製造機器メーカー「松山丸三」は、小説の舞台でもある愛媛で、従来よりひと回り大きなサイズの回転焼きを「大番焼き」として売り出そうと計画しました。しかし「小説のタイトルをそのまま使うだけでは芸がない」として、大きなサイズ(判)を意味する「大判焼き」という名称を採用。焼き器と「大判焼の素」「大判焼」と書かれた暖簾のセット販売を展開し、これを使えば素人でもすぐ店が開けるということで、四国・中国地方から全国へと急速に名前が広がっていきました。
つまり、大判焼きという名前の普及は「機器販売のセット商品」がもたらしたマーケティングの産物でもあるわけです。
一方の「回転焼き」は、戦前の大阪ですでに広く使われていた由緒ある名称です。円形の焼き板の中心に軸があり、手前で焼きやすいように焼き板をくるりと回転させたことが名前の由来とされています。そのため同じ製法でもあり、「回転焼き=大判焼き=今川焼き」はすべて同じお菓子を指しています。これが基本です。
どれが「正式名称」かというと、実は法律・規格上の統一名称は存在しません。「標準語」がないのと同じで、それぞれが対等な呼び名として各地で定着しています。「どれが正しい」という議論よりも、その地域の文化と一緒に楽しむのが一番です。
参考:大判焼き・今川焼き・回転焼きの由来についての学術的解説
「回転焼き」という呼び名を知っておくと、生活の中でちょっと得することがあります。たとえば関西・九州出身のパートナーや友人と会話するとき、または旅行先で屋台のお菓子を頼もうとするとき、呼び名のすれ違いで困った経験がある方は少なくありません。
引っ越しや旅行先でお菓子屋さんに入ったとき、「大判焼きをください」と言っても「うちは回転焼きです」と言われる地域があります。実は同じ商品でも、呼び名が通じないことで注文に迷ったり、店員さんに伝わらなかったりすることがあるのです。
特に「御座候」は注意が必要です。これは兵庫・大阪に展開する老舗和菓子店のブランド名で、1950年(昭和25年)の創業当初は「回転焼き」として販売されていました。ところが、独自の暖簾・のぼりに「御座候」と書いたことで客が商品名として呼び始め、いまでは関西圏では「御座候=回転焼き全般」の意味で使われるほど定着しています。
旅先で「このお菓子、なんて呼ぶ?」と地元の方に聞いてみるのは、会話のきっかけにもなりますね。その土地の食文化を身近に感じられる、手軽な旅の楽しみ方でもあります。
また、冷凍の今川焼き(回転焼き)はスーパーや業務スーパーで手軽に購入でき、電子レンジで温めるだけで食べられます。つぶあん・カスタードなど複数の味が揃っていることも多く、家庭のおやつとしても活躍します。電子レンジで加熱後にオーブントースターで1〜2分追加加熱すると、外側がカリッと仕上がり、焼き立て感が再現できます。この方法だけ覚えておけばOKです。
地域の呼び名を事前に把握しておくと、旅行先でも地元の感覚でお菓子を注文できて、ちょっと得した気分になれます。これは使えそうです。
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