鯨の竜田揚げを今も給食で出している自治体は、全国で約30市区町村以上あります。
鯨の竜田揚げが給食に登場したのは、戦後の食糧難という時代背景と深く結びついています。1947年(昭和22年)ごろ、占領下の日本でGHQが捕鯨を再開させたことがきっかけでした。当時、牛肉や豚肉はほとんど庶民の口に入らない高級品でしたが、鯨肉は比較的安価で大量に供給できました。
そのため、給食に取り入れやすい食材として全国の学校で採用されるようになりました。1950年代から1960年代にかけて、鯨肉は給食の定番食材として定着し、竜田揚げ・オーロラ煮・大和煮など様々な調理法で出されていました。つまり、鯨給食は戦後復興のシンボルでもあったということです。
1980年代に入ると、国際捕鯨委員会(IWC)の商業捕鯨モラトリアム(1986年)の影響で鯨肉の価格が上昇し、徐々に給食から姿を消していきました。しかし、捕鯨の文化が根付く地域では食文化の継承という観点から今も提供が続いています。これは注目すべき点ですね。
現在も鯨の竜田揚げを給食に取り入れている地域は、大きく分けて「捕鯨基地がある地域」「古式捕鯨の歴史がある地域」「食文化として根付いている地域」の3つに分類されます。
代表的な地域としては以下があります。
太地町では年間6〜8回程度、鯨料理が給食に登場するとされており、全国でもトップクラスの頻度です。これが基本的な傾向です。
一方で、愛知県・大阪府・東京都などの大都市部でも、食育の一環として鯨給食を実施している学校が少数ながら存在します。意外ですね。捕鯨の歴史と直接関係がない地域でも、「昭和の食文化を伝えたい」という思いから取り組む学校が増えているのです。
全国的に鯨給食が激減した背景には、3つの大きな要因があります。
まず価格の高騰です。商業捕鯨モラトリアム(1986年)以降、鯨肉の流通量が激減し、1kgあたりの価格が牛肉と同等かそれ以上になった時期もありました。給食は1食あたりの食材費に厳しい上限があるため、高価な鯨肉を使い続けるのが困難になりました。これが主な理由です。
次に国際的な批判の影響があります。1990年代から2000年代にかけて、捕鯨に対する国際的な批判が高まり、一部の自治体では「鯨給食を実施することへの配慮」から自主的にメニューを外したケースもあったとされています。厳しいところですね。
そして3つ目が、食文化の変化です。牛肉・豚肉・鶏肉が当たり前になった現代において、わざわざ鯨肉を使う積極的な理由が薄れたことも大きいでしょう。
しかし、2019年に日本がIWCを脱退し商業捕鯨を再開したことで、状況に変化が生まれています。国内での鯨肉の安定供給が見込めるようになり、価格が少しずつ下がりつつある地域もあります。これは使えそうです。実際に、商業捕鯨再開後に鯨給食を復活させた自治体も複数報告されており、今後さらに広がる可能性があります。
鯨肉が給食食材として優れていた理由は、価格だけではありません。栄養面でも非常に優秀な食材なのです。
鯨肉(赤肉)100gあたりの主な栄養成分は以下の通りです。
| 栄養素 | 鯨肉(赤肉)100g | 牛もも肉100g(比較) |
|---|---|---|
| タンパク質 | 約24g | 約21g |
| 脂質 | 約0.4g | 約10g |
| 鉄分 | 約2.5mg | 約2.8mg |
| カロリー | 約106kcal | 約176kcal |
鯨の赤肉は、牛もも肉と比べてカロリーが約4割低く、脂質はわずか約25分の1程度しかありません。高タンパク・低脂肪・低カロリーという三拍子が揃っています。これが条件です。
また、鯨肉にはバレニンという成分が含まれていることも特徴的です。バレニンは鯨の筋肉に多く含まれるジペプチドの一種で、抗疲労効果が期待されるとして研究が進んでいます。成長期の子どもの給食食材として理にかなっている側面もあるわけです。
さらに、竜田揚げという調理法との相性も優れています。鯨の赤肉は脂質が少ない分パサつきやすいという欠点がありますが、醤油・みりん・生姜で下味をつけて竜田揚げにすることでジューシーさが増し、食べやすくなります。これが給食での定番メニューになった理由の一つです。
「子どもの頃に食べた給食の鯨の竜田揚げを家庭で作りたい」と思う方は少なくありません。ただし、鯨肉の入手方法と下処理を知らないと、臭みが強くて食べにくい仕上がりになりがちです。
鯨肉を入手できる主なルートは次のとおりです。
肝心の下処理についてですが、鯨赤肉は購入後に流水で血抜きを行うことが重要です。5〜10分程度、冷水に浸してから水気をしっかりと拭き取ります。これが基本の手順です。
竜田揚げの下味は、醤油・みりん・酒・生姜(すりおろし)を合わせたものに20〜30分ほど漬け込むと、臭みが抑えられてジューシーに仕上がります。揚げ油の温度は170〜180℃が目安で、外がカリッとなったらすぐに引き上げるのがコツです。揚げすぎると硬くなるので注意が必要です。
鯨肉の臭みが気になる場合は、下味に生姜を通常の1.5倍量使うか、牛乳に30分ほど浸してから下味をつける方法が効果的とされています。この情報を活用すると、初めて鯨肉を調理する場合でもおいしく仕上げやすくなります。
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参考:和歌山県太地町の捕鯨文化・食育の取り組みについての公式情報はこちらからご確認いただけます。太地町の給食における鯨料理の提供方針や地域の食文化継承の姿勢が掲載されています。
太地町公式ウェブサイト
参考:日本鯨類研究所による鯨肉の栄養成分や日本の捕鯨文化に関する詳細な解説が掲載されています。バレニンなどの成分についての科学的な説明も確認できます。
一般財団法人日本鯨類研究所 公式サイト
参考:水産庁による商業捕鯨再開後の鯨肉の流通・消費に関する最新情報はこちらで確認できます。各地域での捕鯨や給食への活用に関する行政の方針も掲載されています。
水産庁 捕鯨関連情報ページ
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