軟膏壺に小分けしたプロペトを遮光しないと、品質が劣化して患者クレームになります。
プロペトは丸石製薬株式会社が製造・販売する日本薬局方白色ワセリンであり、薬価基準収載コードは7121703X1330、JANコードは4987211153106です。容量展開は100g・200g(チューブ)と500g(ポリエチレン容器)があり、医療現場では100gチューブが最も広く使われています。発売開始は2008年9月で、基礎的医薬品に分類されます。
「プロペトと白色ワセリンは同じもの?」と感じている医療従事者は少なくありません。結論から言うと、プロペトも日本薬局方白色ワセリンの規格に適合しています。ただし、通常の白色ワセリンと比べて以下の3点で優れた物性を持ちます。
| 比較項目 | 一般白色ワセリン | プロペト(丸石製薬) |
|---|---|---|
| 日本薬局方適合 | ✅ | ✅ |
| 夾雑有機酸類 | 多め | ⬇️ 少ない |
| 眼科用基剤適性 | ❌ | ✅(滅菌処理後) |
| 加熱滅菌耐性 | 変色しやすい | ほとんど変色しない |
| 刺激性要素 | 含まれる場合あり | ほとんど含有しない |
「高純度」という表現は、有機酸の含有量の差を指しています。日本薬局方第18改正では純度試験(有機酸類)として水酸化ナトリウムの消費量で夾雑有機酸類を評価しており、プロペトはこの点でより厳格に管理された製品です。つまり純度の高さが最大の特徴です。
医療用医薬品としての効能・効果は「眼科用軟膏基剤、一般軟膏基剤として調剤に用いる。また、皮膚保護剤として用いる。」と規定されています。チューブに「眼科用」と記載がありますが、これは眼科用基剤としても使用可能という意味であり、眼科以外の皮膚全般にも幅広く使用できます。
参考:丸石製薬公式 製品情報ページ(電子添文・FAQを含む)
プロペト 100g[チューブ] | 丸石製薬株式会社
プロペトを軟膏壺に小分けした後の保管は、医療現場で見落とされやすいポイントです。意外ですね。
プロペトの電子添文(取扱い上の注意 20.1)には、「容器から取り出した後は、遮光して保存すること」と明記されています。その理由は、プロペトには抗酸化剤としてBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)が1g中0.01mg含有されていますが、それでも光による酸化の影響を受けやすい製品だからです。
チューブのままであれば光安定性は確認されています。しかし軟膏壺に小分けした瞬間から、その保証はなくなります。マルホが作成した皮膚外用剤の基礎知識資料でも「ワセリンは光酸化を受けることから、軟膏等を軟膏壺に小分けした場合、添付文書上は遮光の記載がなくても、室内に放置せずに、引き出しにしまうなど遮光する必要がある」と明記されています。
小分け後に取るべき具体的な対応は以下の通りです。
なお、液状の油分がチューブから出てくることがあります。これは分子量の小さいパラフィンが高温で液状になったものであり、品質の問題ではありません。軽く混ぜ合わせて使用すれば大丈夫です。
参考:マルホ 皮膚外用剤の基礎知識(遮光管理の根拠が記載されています)
FTU(Finger Tip Unit)の計算を間違えると、患者への使用量指導が大きくずれてしまいます。これは使えそうです。
FTUとは大人の人差し指の先端から第一関節まで薬を乗せた量のことで、一般的なチューブ(口径5mm程度)では1FTU=約0.5gとされています。しかし丸石製薬の公式情報によれば、プロペト100gチューブの口径は8mmであり、1FTU=約1.2gです。一般的な換算値の約2.4倍になります。
具体的に全身への塗布量で考えると、一般的な計算では全身1回あたり約20g(理論値)が必要とされます。プロペトの1FTU≒1.2gで計算し直すと、全身を塗り切るために必要なFTU数が変わります。塗布量の過少評価は患者のアドヒアランス低下につながるため、注意が必要です。
適切な塗布量の目安は「ティッシュペーパーがかろうじて落ちないくらい」です。これが現場で患者に伝えやすい基準です。
| 塗布部位(成人) | 必要FTU数(目安) | プロペトでの必要量(約) |
|---|---|---|
| 顔・頸部 | 2.5 FTU | 約3.0g |
| 腕(片側) | 3.0 FTU | 約3.6g |
| 脚(片側) | 6.0 FTU | 約7.2g |
| 体幹(前面) | 7.0 FTU | 約8.4g |
100gチューブ1本は全身(成人)で5~6回分程度の使用量に相当します。処方量の目安として知っておくと処方時の参考になります。塗布量が少なすぎると保湿効果が不十分になり、逆に多すぎると衣類への汚染や毛穴トラブルにつながります。
参考:丸石製薬 軟膏Q&A(FTUの詳細な解説があります)
軟膏Q&A | 丸石製薬株式会社
「眼科用と書いてあるから、そのまま目に使える」と考えている場合は要注意です。滅菌なしでは承認外使用になります。
プロペトの電子添文(適用上の注意 14.1)には明確に記載があります。「眼科用の基剤として使用する場合は、調製後滅菌処理をすること。」プロペト自体は無菌製剤ではないため、眼科用軟膏として使用する際には必ず滅菌処理が必要です。
推奨される滅菌方法は乾熱滅菌です。眼軟膏の基剤に高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)を用いると容器内に水分が混入するリスクがあるため、乾熱法が選択されます。
また、プロペトを単独でそのまま点眼することは、承認外使用にあたります。滅菌されたプロペトを眼軟膏の調剤基剤として使用することが本来の用途です。皮膚面への単独使用(皮膚保護剤)はそのままでも可能ですが、粘膜面(眼・口腔内)への単独使用は承認外となります。現場でルールを正確に把握しておくことが、安全な医薬品管理の基本です。
参考:KEGG医薬品情報・プロペト電子添文(滅菌処理の根拠情報が確認できます)
医療用医薬品:プロペト | KEGG MEDICUS
プロペトは基礎的な保湿・保護剤ですが、その使用範囲は非常に広く、診療科をまたいで活躍します。これは使えそうです。
皮膚科では、アトピー性皮膚炎の維持療法における保湿補助として広く処方されます。「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024」においても、ステロイド外用薬と組み合わせた保湿療法が推奨されています。プロペトは「水分を補う」のではなく「水分の蒸散を防ぐフタ」として機能します。そのため、化粧水・ローション型の保湿剤の後に重ねると効果が高まります。
主な適応疾患・使用場面は以下の通りです。
注目すべき点として、プロペト(白色ワセリン一般名)についてUVAとUVBを防ぐという報告が海外学術誌(Eur J Dermatol)に存在します。ただしプロペト自体には日焼け止め成分は含まれておらず、紫外線防御を目的とした使用は承認外です。乾燥環境での皮膚バリア保護が主目的と理解しておきましょう。
ヘパリン類似物質(ヒルドイド等)との違いも重要です。ヒルドイドは「水分を肌に与える保湿剤」であるのに対し、プロペトは「肌にフタをして水分を逃がさない保護剤」です。二者は役割が異なるため、組み合わせて使用されることが多く、その順番は「水分系(ヒルドイド等)→プロペト」が基本です。
参考:丸石製薬 軟膏Q&A(塗布量・アトピーの指導法など記載)
薬剤師さんの?を解決!軟膏Q&A | 丸石製薬株式会社