市販の丸ズッキーニの種から採った種を翌年まいても、同じ実はほぼ育ちません。
丸ズッキーニといっても、市場に出回っている種には複数の品種があります。代表的なものとして「パッローネ」と「ゴールディ」の2種類がよく知られています。
パッローネはイタリア語で「ボール・気球」を意味し、ゴルフボールから野球ボール(直径4〜7cm)くらいで収穫する緑系の丸ズッキーニです。生育が早く草勢も旺盛で、つるなしタイプのためプランター栽培にも向いています。オーブン焼きや炒め物のほか、中をくり抜いた肉詰め料理にも最適です。
一方のゴールディは、光沢のある鮮やかな黄色が特徴の卵形品種です。直径6〜7cmほどで連続して雌花が着生し、次々と収穫できるのが魅力。家庭菜園向けのF1品種(一代交配種)として流通しており、つるなし・耐病性の強さから初心者にも作りやすい品種といわれています。これは使えそうです。
他にも「パリーノ・ジャッロ(鮮明な黄色の丸型)」「パリーノ・ネロ(濃い緑色の丸型)」「トンダ・キアーロ・ディ・ニッツァ(薄緑色の卵型・固定種)」などのイタリア系品種があります。固定種かどうかは自家採種を考えるうえで非常に重要な情報になりますので、この先の章でも詳しく説明します。
種を購入する際は、袋の裏面に「F1」「一代交配」「交配種」と書いてあるか確認してみましょう。これが書いてある場合は自家採種には向きません。詳しくは後述しますが、種選びの段階で用途を決めておくのが重要なポイントです。
なお、種の通販はタキイ種苗・トキタ種苗・e-種やなどの専門ショップのほか、楽天市場やYahoo!ショッピングでも多くの品種が購入できます。「丸ズッキーニ 種 固定種」で検索すると、自家採種向けの品種も見つかりやすいですよ。
トキタ種苗「パッローネ」品種詳細ページ(球形丸ズッキーニの特性・栽培方法)
丸ズッキーニの種まき時期は、お住まいの地域によって大きく異なります。発芽適温は25〜30℃と高めで、気温が十分に上がらないまま種をまいても発芽しないか、発芽しても苗が弱くなってしまいます。発芽が基本です。
地域ごとの目安は以下のとおりです。
| 地域 | 種まき適期(育苗) | 定植の目安 |
|---|---|---|
| 北海道・東北 | 5月上旬〜中旬 | 5月下旬〜6月上旬 |
| 関東・中部・近畿 | 4月上旬〜中旬 | 4月下旬〜5月中旬 |
| 九州・四国・沖縄 | 3月下旬〜4月上旬 | 4月中旬〜5月上旬 |
育苗の方法は、直径7〜9cmの育苗ポットに市販の野菜用培養土を入れ、1ポットに2〜3粒の種を深さ1〜1.5cm(はがきの厚さの約3〜4枚分)で植えるのが基本です。まいたあとはビニールや透明ケースで覆って保温し、発芽までは5〜10日ほどかかります。
注意したいのが夜間の気温です。昼間が20〜25℃でも、夜間に15℃を下回ると発芽率が著しく下がります。段ボールと透明フィルムで囲う簡易温室、または市販の育苗ドームを活用すると安定した温度環境を保てます。これが条件です。
芽が出たら最も元気な1本を残して間引きます。間引くときは根を傷めないよう、引き抜かずハサミで根元をカットしましょう。本葉が4〜5枚になったら定植のタイミングです。
水やりは「土の表面が乾いたらたっぷり与える」が鉄則です。毎日ぐしょぐしょに与えると根腐れやカビの原因になります。葉に水がかからないよう、株元に静かに与えるのがポイントです。
また、丸ズッキーニはウリ科の植物なので、同じ仲間(キュウリ・カボチャ・スイカなど)を育てた土に続けて植えると、連作障害で生育が悪くなります。同じ場所への植え付けは3〜4年空けるか、プランター栽培では毎シーズン新しい土を使うようにしましょう。
サカタのタネ 園芸通信「ズッキーニの育て方・栽培方法」(種まきから収穫までの基本手順を詳細に解説)
丸ズッキーニが育ってきたら、次に重要なのが受粉と収穫のタイミングです。ズッキーニは受粉しないと実が大きくなりません。これが原則です。
家庭菜園では虫による自然受粉に頼ることも多いですが、雨が続いたり曇りの日が多かったりすると、花粉が流れてしまい受粉失敗になりやすいです。そんなときは「人工授粉」が有効です。
方法はシンプルで、午前6〜9時ごろに咲いている雄花(茎が細く花だけ付いているもの)を摘んで、雌花(根元に小さなズッキーニの実がついているもの)の中心にやさしく花粉をなすりつけます。晴れた朝に行うのが最も効果的で、花粉の活性が高い時間帯を逃さないようにしましょう。
収穫タイミングも見極めが重要です。丸ズッキーニの場合、直径5〜10cm(テニスボール〜野球ボールくらいのサイズ)が食べごろです。大きくなるほど皮が硬くなり、種も固くなって食感が落ちてしまいます。痛いですね。
成長スピードは非常に早く、梅雨や夏場には一晩で大きく育つこともあります。毎日の観察が欠かせません。こまめに収穫することで株への負担が減り、次の実もつきやすくなります。つまり、早め収穫が好循環を生むということです。
また、ズッキーニは受粉後の未熟果に「ククルビタシン」という苦味成分が多く含まれることがあります。強い苦味を感じた場合は食べるのを控え、受粉の状態や追肥の量を見直してみましょう。
受粉がうまくいかず実がつかないときは、株の近くにカボチャなど同じウリ科の別株があると雄花が増え、受粉の成功率が上がります。1株だけ育てている場合は特に人工授粉を意識しましょう。
信州山峡採種場「ズッキーニが実をつけない原因と受粉の重要性」(専門家への質問と回答形式で受粉の仕組みを解説)
家庭菜園を続けていると「来年も同じ種から育てたい」と思う方も多いですが、ここに大きな落とし穴があります。市販の丸ズッキーニの種の多くは「F1品種(一代交配種)」です。F1品種から採った種をまいても、翌年は形・色・味がバラバラになり、親株と同じ実はほぼ得られません。これは遺伝の法則によるもので、F1品種の特性は「1代限り」だからです。
意外ですね。家庭菜園歴が長い方でも、この点を誤解して種を採り続けているケースがあります。
自家採種で翌年同じ実を育てたいなら、「固定種(在来種)」の丸ズッキーニを選ぶ必要があります。固定種として流通しているものには「ブラックビューティー」「コスタータロマネスコ」「トンダ・キアーロ・ディ・ニッツァ」などがあります。固定種なら自家採種しても安定した性質の実を翌年も収穫できます。
固定種で自家採種する場合の手順は以下のとおりです。
また、ズッキーニは他家受粉100%の植物で、同じ品種を3株以上まとめて植えるか、人工授粉で受粉を管理しないと、近くにある別品種やカボチャと交雑してしまいます。交雑した種からは翌年、思いもよらない形や味の実ができます。交雑防止が条件です。
1本の採種果から採れる種の量は200〜300粒ほど。翌年の種まき分を差し引いても十分な量が確保できます。
ズッキーニの種採りガイド(自家採種の手順・交雑防止・固定種の選び方を詳細解説)
丸ズッキーニの種まきや栽培でよくある失敗パターンを知っておくと、ぐっと成功率が上がります。初心者の方に特に多いのが「種まきが早すぎる」「水やりのしすぎ」「収穫が遅れる」の3つです。
種まきは「桜が散ってから2〜3週間後」を目安にすると安心です。気温が安定して15℃以上になるころに種まきするのが最善で、焦って3月上旬にまいても発芽しないことがほとんどです。発芽しない場合の最も多い原因は温度不足と土の過湿です。どちらも「少しだけ待つ」ことで防げます。
水やりは「土の表面が乾いてから与える」が大前提です。毎日びしょびしょにすると根腐れやカビを招きます。葉に水をかけず、株元に静かに与えること、これだけ覚えておけばOKです。
収穫遅れも要注意です。丸ズッキーニを「カボチャみたいに大きく育ててから収穫するもの」と思っている方が多いのですが、それは誤りです。直径10cmを超えると皮が硬くなり、種も固くなって食感が損なわれます。開花後5〜7日が最適な収穫タイミングです。
育てた丸ズッキーニは、その形を活かした料理が映えます。特に人気なのが「肉詰め焼き」です。上部1cmをカットして蓋を作り、スプーンで中身をくり抜きます。くり抜いた果肉はみじん切りにして肉ダネに混ぜ込み、炒めてから詰めてオーブンで焼くと、見た目にも豪華な一品になります。直径10cm(はがきの短辺くらい)のものがくり抜きやすく、扱いやすいサイズです。これは使えそうです。
保存は、カットしていないものなら新聞紙に包んでポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室へ。4〜5日が保存の目安です。夏場は常温保存を避けてください。カットした場合はラップで断面を覆い、2〜3日以内に使い切りましょう。
なお、育てた丸ズッキーニが大量に採れた場合、輪切りにしてから冷凍保存する方法も有効です。使いたいときにそのまま調理できるため、時短にもつながります。いいことですね。
JAグループ「ズッキーニとれたて大百科」(保存方法・栄養・食べ方を網羅したJA公式ガイド)
Nadia「丸ズッキーニの肉詰め」レシピ(種が硬い場合の下処理コツも記載された主婦向けレシピ)