メジコン散10%(デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物)は、体重換算で用量を決めていれば安全と思われがちですが、添付文書には「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」と明記されています。
メジコン散10%の規格は1g中にデキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物100mgを含有します。 つまり、有効成分量(mg)÷100=処方散量(g)という換算が基本です。
参考)メジコン散10%の添付文書 - 医薬情報QLifePro
小児への参考用量として広く使われているのは「1〜3mg/kg/日、分3」という体重換算値です。 たとえば体重10kgの幼児であれば、1日10〜30mgの有効成分量、散として0.1〜0.3gが目安の用量となります。
参考)小児科薬剤投与量一覧
ただし、これはあくまで参考値です。添付文書の用法用量には成人量しか明記されておらず、小児用量の直接的な承認はありません。 処方設計の際は、施設の小児薬用量基準や最新のガイドラインも必ず確認してください。
| 体重の目安 | 1日投与量(有効成分) | メジコン散10%量(目安) | 分割回数 |
|---|---|---|---|
| 5kg(生後3〜6ヶ月) | 5〜15mg | 0.05〜0.15g | 分3 |
| 10kg(1〜2歳) | 10〜30mg | 0.1〜0.3g | 分3 |
| 15kg(3〜4歳) | 15〜45mg | 0.15〜0.45g | 分3 |
| 20kg(5〜6歳) | 20〜60mg | 0.2〜0.6g | 分3 |
| 30kg(8〜10歳) | 30〜90mg | 0.3〜0.9g | 分3〜4 |
成人の1日最大量は1回30mg×4回=120mg(散として1.2g)ですが、小児では体重あたりの上限を超えないことが優先されます。 用量は「適宜増減」が認められているものの、過量投与には細心の注意が必要です。
施設ごとに備えておきたいのが、管理薬剤師.comのような小児薬用量一覧表です。
管理薬剤師.com|小児薬用量・体重換算一覧表(メジコン散10%含む)
添付文書の「9.7 小児等」には「小児等を対象とした臨床試験は実施していない」とだけ記載されています。 禁忌でも慎重投与でもなく、「エビデンスが存在しない状態で使われている」という事実を示しています。
これはデメリットにもなり得ます。つまり、体重換算で計算した値が本当に安全域内かを示す国内小児臨床データがないということです。 投与した場合の安全性プロファイルが成人データの外挿に依存しているため、特に新生児・乳児への投与は慎重さが求められます。
一方で、非麻薬性鎮咳剤として1953年にWHOが麻薬から除外した経緯があり、コデインリン酸塩と同等の鎮咳作用を持ちながら依存性は確認されていません。 コデインが12歳未満に禁忌となった現在、デキストロメトルファン製剤の位置づけはより重要になっています。
コデイン類含有製剤の12歳未満禁忌の経緯については、PMDAの公式資料が参考になります。
PMDA|コデインリン酸塩等の12歳未満小児への使用に関する資料(PDF)
メジコン散10%は劇薬に指定されています。 劇薬指定という事実を「知っているつもり」でも、実際の調剤業務で見落としがちなポイントがあります。
劇薬として守るべき主な事項は以下の通りです。
なお、メジコン錠15mgとメジコン配合シロップは劇薬指定がない点に注意が必要です。 同じメジコンブランドでも剤形によって規制区分が異なるということです。
現場での調剤ミスを防ぐためには、散剤の調剤量と実際の有効成分量を必ず二重確認する体制が重要です。特に散剤は液剤より計量誤差が起きやすく、0.1g単位の誤りが実際の投与量に大きく影響します。
デキストロメトルファンはCYP2D6で主に代謝されます。 これは小児への処方時に特に重要な情報です。
CYP2D6を阻害する薬剤(キニジン、アミオダロン、テルビナフィンなど)を同時に使用している場合、メジコン散の血中濃度が想定以上に上昇する可能性があります。 成人でも問題になるこのリスクは、体格が小さく代謝酵素活性も異なる小児ではより影響が大きくなり得ます。
また、MAO-B阻害剤(セレギリン、ラサギリン、サフィナミドなど)との併用でセロトニン症候群が発現する可能性があります。 これは頻度は高くないものの、発現した場合の症状が重篤(高体温、筋硬直、意識障害など)であるため見逃せません。
SSRIとの併用も「セロトニン症候群等のセロトニン作用による症状があらわれることがある」として注意が必要です。 小児の精神科領域でSSRIが処方されているケースでは、メジコン散が咳嗽に対して追加されるシナリオに注意が必要ということです。
相互作用のチェックには処方監査時にDI室やシステムを活用することが条件です。 処方設計段階でリストを確認しておくことで、見逃しリスクを下げられます。
添付文書の「13. 過量投与」には、嘔気・嘔吐・尿閉・運動失調・錯乱・興奮・幻覚・呼吸抑制・嗜眠などの症状が列挙されています。 これらは成人の過量投与事例に基づくデータですが、小児ではより少ない量でこれらの症状が出る可能性があります。
処置としては「ナロキソンの投与により改善したとの報告がある」と記されています。 デキストロメトルファンはモルフィナン誘導体であるため、オピオイド拮抗薬であるナロキソンが一定の効果を示すことがあるという点は知っておく価値があります。
重大な副作用として、呼吸抑制(0.1%未満)・ショック・アナフィラキシーが設定されています。 副作用全体の発現率は2703例中77例(2.85%)で、最多は悪心(0.96%)、次いで眩暈(0.37%)でした。
小児への投与後は、以下の点を保護者に必ず指導しておく必要があります。
小児の服薬指導については、m3.comの「小児科で処方されるまずい薬を飲みやすくする裏ワザ」も参考になります。メジコン散は苦味が強く、チョコアイスやココアとの混合でマスキング可能とされています。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/special_feature/6074
m3.com薬剤師|小児科で処方される「まずい薬」を飲みやすくする裏ワザ(メジコン散含む)