スーパーで売っているなずなのパックには、実は農薬が使われていない可能性が高く、家庭菜園より安全なケースがあります。
なずなは、アブラナ科ナズナ属の一年草または二年草です。日本全国の畑の畦道や空き地、道端など、どこにでも自生している身近な野草で、英語では「Shepherd's purse(羊飼いの財布)」とも呼ばれています。この名前は、三角形の実の形が財布に似ていることから来ており、世界的にも愛されてきた植物であることがわかります。
「なずな」という名前の由来については、いくつかの説があります。最も広く知られているのは「撫でたいほどかわいい菜」という意味から「撫で菜(なでな)」が転じたという説です。また、「夏に枯れてなくなる菜」を意味する「夏無菜(なつなしな)」が語源という説もあります。どちらの説も確かな根拠は定まっていませんが、昔から人々に親しまれてきた植物であることは確かです。
歴史的にも、なずなは非常に古い時代から日本人の食卓に登場しています。奈良時代に編纂された『万葉集』にはなずなを詠んだ歌が収録されており、平安時代の歌人・清少納言の『枕草子』にも登場します。つまり、1,000年以上にわたって日本人に親しまれてきた植物です。
七草との関係で言えば、なずなは「春の七草」の一つに数えられています。春の七草とは、せり・なずな・ごぎょう・はこべら・ほとけのざ・すずな(かぶ)・すずしろ(だいこん)の7種類です。毎年1月7日に、この七草を入れたお粥を食べる風習があり、これを「七草がゆ」と言います。これが基本です。
| 七草の名前 | 現代の呼び名 | 特徴 |
|---|---|---|
| せり | セリ | 水辺に自生するセリ科の植物 |
| なずな | ナズナ(ぺんぺん草) | 白い小花とハート形の実が特徴 |
| ごぎょう | ハハコグサ | 白い綿毛に覆われた葉 |
| はこべら | ハコベ | 小さな白い花を咲かせる |
| ほとけのざ | コオニタビラコ | 葉が仏の蓮座に似る |
| すずな | カブ | 根を鈴に見立てた呼び名 |
| すずしろ | ダイコン | 白く清らかな色から命名 |
なずなの最大の特徴は、その実の形にあります。三角形またはハート形をした平たい実をつけることから、「ぺんぺん草」という別名でよく知られています。「ぺんぺん」という響きは、三味線を弾く音に似ているため、この実を茎に残したまま振ると「ぺんぺん」と音が鳴ることに由来しています。これは使えそうです。
植物全体の大きさは、高さが20〜40cmほどです。はがきの縦の長さ(約15cm)の2〜3倍程度と考えるとイメージしやすいでしょう。根元から出る葉(根生葉)はタンポポの葉に似た形で、羽状に深く切れ込んでいます。春先に中央から茎を伸ばし、その先端に白くて小さな4枚の花びらを持つ花を多数咲かせます。
七草として販売されているものを見分けるのは比較的簡単です。セットで売られている七草パックの中では、細かく切れ込みのある葉とハート形の実、または白い小花がついているものがなずなです。ただし、収穫時期によっては実がついていない状態のものもあります。その場合は、葉の形と香りで確認するのが確実です。
道端で見かける際の注意点が一つあります。「ほとけのざ」という名前の植物は、七草に入っている「ほとけのざ(コオニタビラコ)」と、それとは全く別の植物である「シソ科のホトケノザ」の2種類が存在します。七草に入るのは前者だけです。なずな自体は比較的見分けやすいものの、七草全体の採取には注意が必要です。
なずなは七草がゆの材料というイメージが強いですが、実は古くから薬草としても利用されてきた植物です。この点はあまり知られていません。
なずなに含まれる主な栄養素は以下の通りです。
栄養が豊富ですね。特にカルシウムの多さは見逃せません。
東洋医学の観点では、なずなは「薺(せい)」と呼ばれ、利尿作用・解熱作用・止血作用があるとされています。中国の薬学書『本草綱目』にも記載があり、数千年にわたって薬用植物として活用されてきました。現代の研究では、なずなに含まれるフマル酸やオキサリル酢酸などの成分が、血圧降下に関与している可能性が示唆されています(ただし、治療目的での摂取は医師に相談が必要です)。
1月7日の七草がゆの習慣は、お正月のごちそうで疲れた胃腸を休めるという目的で広く知られています。この点はよく言われることです。しかしそれだけでなく、冬に不足しがちなビタミンやミネラルを野草から補う、という実用的な意味合いも古くからあったのです。先人の知恵は合理的でした。
七草がゆを作る際、なずなの下処理は比較的シンプルです。基本の手順をしっかり押さえておきましょう。
まず、根元を切り落とします。根の部分は食べられますが、泥がついている場合が多いので、洗いやすくするためにも根元から1〜2cmのところでカットするのが一般的です。次に、たっぷりの水でやさしく洗います。特に葉の付け根や切れ込みの部分に土や虫がついていることがあるので、丁寧に確認してください。これが基本です。
下処理として軽く塩ゆでする方法もあります。沸騰したお湯に塩をひとつまみ加え、30秒〜1分程度さっとゆでて水にさらします。このひと手間で、えぐみが和らぎ色鮮やかになります。七草がゆに加えるときは、最後に刻んで加えるのがポイントです。長時間煮込むと色が悪くなり、栄養も逃げてしまいます。
七草がゆ以外にも、なずなはさまざまな調理法で楽しめます。
なずなは独特の風味があります。菜の花に似たほんのりとした苦みと、わずかな辛みが特徴です。子どもが苦手な場合は、ゆで時間をやや長めにするか、ごまやみりんを使った甘めの味付けにすると食べやすくなります。食べやすさを工夫する価値はあります。
七草パックを購入する場合、スーパーでは12月下旬から1月7日前後まで販売されていることがほとんどです。購入後はなるべく早めに使い切ることが理想ですが、ポリ袋に入れて冷蔵庫の野菜室で保存すれば2〜3日は鮮度を保てます。また、ゆでてから冷凍保存しておくと、七草がゆ以外の料理にも手軽に活用できて便利です。
自宅近くの野原や畑の畦道でなずなを見かけることがあります。自分で摘んで七草がゆに使う方も一定数いますが、野生のなずなを採取する際にはいくつかの重要な注意点があります。これを知らないと健康を損なうリスクがあります。
最も気をつけるべきは、採取場所です。道路の脇や農地の近くに生えているなずなは、除草剤や農薬が散布されている可能性があります。特に、農地や公共の空き地・公園などでは、管理のために定期的に農薬が使われているケースがあります。外見では農薬の有無を判断できません。
同様に、犬の散歩道になっているような場所での採取も衛生面から避けるべきです。また、工場や幹線道路沿いに生えているものは、排気ガスや重金属による汚染が懸念されます。採取するなら、人や車の往来が少なく、農薬の使用履歴が不明でない場所に限るのが無難です。
土地の所有権にも注意が必要です。他人の土地や管理地で無断採取をすると、軽犯罪法や民法上の問題になる場合があります。採取前には場所の確認が条件です。
植物の識別ミスも無視できないリスクです。前述のように、「ほとけのざ」には食用でない種類があります。なずな自体は比較的見分けやすいものの、初めて採取する場合や判断に迷う場合は、市販の七草パックを使うことを強くおすすめします。市販品はプロが管理した環境で育てられており、識別ミスや農薬のリスクを避けられます。意外ですね。
| 比較項目 | 野生のなずな(自分で採取) | 市販の七草パック |
|---|---|---|
| 農薬リスク | 場所による・不明確 | 栽培管理されているため低い |
| 植物識別 | 自己判断が必要 | 専門家が選別済み |
| コスト | 無料〜低コスト | 500〜800円程度(7種セット) |
| 手軽さ | 採取・洗浄に手間がかかる | 洗うだけで使える |
| 鮮度 | 摘みたてで高い | 流通経路による |
採取に慣れていない場合は、市販品を活用するのが賢明な選択です。七草パックは毎年1月7日直前に需要が集中して売り切れることもあるので、12月中旬ごろにスーパーへ問い合わせておくか、ネット通販で予約注文しておくとスムーズです。これだけ覚えておけばOKです。
参考リンクとして、農林水産省のウェブサイトでは春の七草についての基礎情報が公開されており、食に関する正確な情報を確認できます。
また、なずなの植物学的な特徴や生態については、国立科学博物館のデータベースが詳しいです。