ニシンを水洗いするだけでは、臭みが7割しか取れません。下処理を省くと、仕上がりの風味が大きく落ちます。
甘露煮に使うニシンは、大きく「干しニシン(身欠きニシン)」と「生ニシン(または冷凍ニシン)」の2種類があります。どちらを選ぶかで、下処理の方法も仕上がりの食感も変わってきます。
身欠きニシンは、北海道をはじめとする産地で水揚げされたニシンを乾燥させたもので、旨みが凝縮されています。スーパーでも入手しやすく、保存性が高いため、甘露煮の材料としてもっともよく使われています。一方で、乾燥しているぶん繊維が締まっており、戻し時間がかかる点は覚えておきましょう。
生ニシンや冷凍ニシンを使う場合は、下処理こそ簡単ですが、くさみが出やすい傾向があります。これは身の水分が多く、内臓の臭いが身に移りやすいためです。生の場合は購入後すぐに下処理を行うのが原則です。
身欠きニシンには「本乾(ほんかわき)」と「ソフトニシン(半乾燥)」の2種類があります。本乾タイプは木のように固く、米のとぎ汁で4〜5日かけて戻す必要があります。ソフトタイプは流通量も多く、水に一晩(約8〜12時間)浸けるだけで戻せるので、初めて作る方にはソフトタイプがおすすめです。
選ぶ際は、身の色が均一で、表面が白っぽくなりすぎていないものを選びましょう。極端に黒ずんでいるものは鮮度が落ちている可能性があります。
下処理が、甘露煮の仕上がりを決めます。
身欠きニシン(本乾タイプ)の場合、まず米のとぎ汁に4〜5日間漬けて柔らかく戻すところから始めます。米のとぎ汁には、ぬかの成分(フィチン酸など)が含まれており、これが魚の臭みの原因となる脂質の酸化物を中和・吸着してくれます。ただ水に漬けるよりも臭みが取れやすく、身もふっくらと仕上がります。
ソフトタイプの身欠きニシンは、米のとぎ汁に一晩(8〜12時間)浸けるだけで十分です。これは短い時間ですが、省略するのはNGです。
戻したニシンはその後、流水で表面のぬめりや鱗の残りをしっかり洗い落とします。この工程で残った臭みの多くが除去されます。
さらに仕上がりをきれいにしたい場合は、霜降り処理(熱湯をかけた後すぐに冷水で冷やす方法)を行うのも効果的です。これにより表面のたんぱく質が固まり、余分な脂と臭みが出やすくなります。実際にこの一手間を加えると、煮汁のにごりが格段に少なくなります。
生ニシンの場合は、酢水(水1リットルに酢大さじ2〜3杯)に20〜30分漬けることで臭みを抑えられます。酢の酸が臭みの元となるトリメチルアミンを中和するためです。漬けたあとは水で軽く洗い流してから使いましょう。
| ニシンの種類 | 下処理方法 | 所要時間 |
|---|---|---|
| 身欠きニシン(本乾) | 米のとぎ汁に漬ける → 流水洗い → 霜降り | 4〜5日 |
| 身欠きニシン(ソフト) | 米のとぎ汁に漬ける → 流水洗い | 一晩(8〜12時間) |
| 生・冷凍ニシン | 酢水に漬ける → 流水洗い → 霜降り | 20〜30分 |
下処理の手順を守るだけで、仕上がりの臭みが大幅に変わります。
煮汁の割合が、甘露煮の味の核心です。
基本の黄金比は以下の通りです。ニシン4〜5切れ(約300〜400g)を基準に考えてください。
この割合を守ることで、甘さと塩気のバランスが整い、照りのある仕上がりになります。砂糖の量を減らしたい場合はみりんをやや多めにすると、風味が落ちにくいです。
甘露煮の「甘露」という名前は、「天上の甘い露のようにおいしい」という意味に由来しており、甘さをしっかり出すことが本来のコンセプトです。砂糖を削りすぎると、甘露煮ではなく「煮付け」に近い仕上がりになります。これは意外ですね。
味付けの手順としては、まず酒・みりん・水を鍋に入れ、ひと煮立ちさせてアルコールを飛ばします。次に醤油・砂糖を加えてから、ニシンを並べ入れます。砂糖を先に入れることで、煮崩れを防ぎながら味が均一に染み込みます。これが原則です。
さらに風味を加えたい場合は、生姜(薄切り3〜4枚)を一緒に煮ると、臭みが消えるだけでなく、奥行きのある香りが出ます。山椒の実(ひとつまみ)を加えるのも、古くから京料理などで使われる本格的な技法です。
火加減を間違えると、身がボロボロに崩れます。
手順は「強火スタート→弱火でじっくり」が基本です。鍋に煮汁とニシンを入れたら、まず中〜強火で沸騰させ、アクをしっかり取り除きます。アクを放置すると煮汁が濁り、見た目も味も落ちます。
沸騰後は落し蓋をして弱火に切り替えます。落し蓋がない場合は、クッキングシートを鍋の形に合わせて切り、中央に小さな穴を開けたもので代用できます。落し蓋をすることで、煮汁が対流して全体に均一に味が染み込みます。
弱火で煮る時間の目安は、身欠きニシンで約30〜40分、生ニシンで約20〜25分です。途中で煮汁の量をチェックし、減りすぎている場合は水を少量足してください。煮汁が完全になくなると焦げ付きの原因になります。
仕上げに、落し蓋を外して中火にし、煮汁をスプーンやヘラでニシンにかけながら2〜3分煮詰めます。この「照りを出す」工程が、甘露煮らしいツヤのある見た目をつくる最後の一手です。
| 工程 | 火加減 | 時間の目安 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 沸騰〜アク取り | 中〜強火 | 2〜3分 | アクをしっかり除去 |
| 落し蓋で煮る | 弱火 | 30〜40分(身欠き) 20〜25分(生) |
煮汁の量を定期確認 |
| 仕上げ(照り出し) | 中火 | 2〜3分 | 煮汁をかけ回す |
焦げ付きと煮崩れに注意すれば大丈夫です。
煮上がったニシンの甘露煮は、粗熱を取ってから清潔な保存容器に煮汁ごと入れて保存します。冷蔵での保存期間の目安は約4〜5日です。煮汁ごと保存することで、乾燥を防ぎ、味がなじんでさらにおいしくなります。翌日以降のほうが味が染みて美味しいのは、多くの方が経験済みでしょう。
ただし、煮汁の量が少ない状態で保存すると、身の上部が乾燥してパサつきます。保存する際は、必ず身が煮汁に浸かっている状態にするのが条件です。足りない場合は、同比率で新たに煮汁を作って足しても問題ありません。
冷凍保存も可能です。冷凍する場合は、1切れずつラップで包んでからジッパー付き保存袋に入れ、空気を抜いて冷凍庫へ。冷凍での日持ちの目安は約1ヶ月です。解凍は冷蔵庫でゆっくり行うのが基本で、電子レンジで急速解凍すると身が硬くなりやすいため注意が必要です。
甘露煮は「食べきり料理」と思われがちですが、実は冷凍にも適しています。これは使えそうです。
また、残った甘露煮の活用法として、炊き込みご飯の具材に加えるのが意外と人気の使い方です。煮汁ごとご飯と一緒に炊くことで、深みのある旨みが全体に広がります。ほかにも、細かくほぐしてお茶漬けの具にしたり、卵とじにしたりとアレンジが広がります。捨てずに活用できる点も、甘露煮を作る大きなメリットです。
保存容器の選び方に迷う場合は、においが移りにくく密閉性の高いガラス製の保存容器がおすすめです。プラスチック製は魚の油やにおいが移りやすいため、繰り返し使ううちに容器自体が気になってくることがあります。気になる方は、煮魚専用の保存容器を1つ用意しておくと使い勝手が向上します。
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本乾き 身欠きニシン 500g 本乾燥 身欠きにしん 鯡 鰊 みがきにし ん 本乾燥 12時間ぐらい水や米のとぎ汁で、もどすと身が柔らかくなります。ニシン漬、昆布巻き甘露煮などでお召し上がり下さい。昔ながらの保存食品