ライフステージとは、人の一生における加齢にともなう変化を、いくつかの段階に区切って考える場合のそれぞれの段階を指します。人間の一生において節目となる出来事(出生、入学、卒業、就職、結婚、出産、子育て、退職等)によって区分される生活環境の段階のことで、それぞれの段階で生活スタイルや考え方、仕事の仕方等を変化させる必要があります。
参考)ライフステージ(life stage)とは|知るぽると
健康と食事の観点からライフステージを見ると、大きく「子ども期」「成人期」「高齢期」の3つの期間に区切って考えることができます。子どもを0~19歳、成人を20~60歳、61歳以上を高齢者として分類しますが、近年は生活環境や経済状況により個人差が大きく、年齢にかかわらず健康状態に差が生じています。
参考)食事のポイントと、ライフステージの変化
各ライフステージには特有の発達課題があり、それに伴う発達的危機が存在します。これは平均的な家族が共通して経験するもので、食生活においても各段階で適切な対応が必要とされています。食事のポイントは「食べる」「作る」「伝えあう」の3つの視点から整理でき、無理なく続けるためには社会環境の整備も必要です。
参考)家族ライフサイクルの転換期
子ども期は身体の大きさや機能が発達する成長期と呼ばれる時期で、成長に必要なエネルギーとバランスの良い栄養を過不足なく摂ることが必要です。この時期の健康な食事の目指す姿は、バランスのとれた食事を摂る体験を積み重ねることで、健康な心身や豊かな思考を育み、食べる力を養うことにあります。
身体的な変化が最も大きく、成長に伴って性差や個人差も大きい時期です。乳幼児期には母乳(ミルク)から離乳食、大人と同じような食事へと食事の内容は大きく変化し、口腔機能の発達が重要な特徴といえます。学童期ころから肥満傾向と痩身傾向の子どもが出現し始めますが、その原因は単純にエネルギーや栄養素の過不足の問題だけではなく、子どもの貧困や孤食、極端なやせ願望など社会的な背景も大きく影響しています。
子ども期の食材選びでは、成長に必要なタンパク質、カルシウム、鉄分などの栄養素を豊富に含む食品を積極的に取り入れることが推奨されます。また、好ましい食事や生活習慣、食事のマナーを身につけたり、食事をコミュニケーションの場として楽しんで食べることも大切です。食事作りや食卓を囲む心地よさなどの体験を積み重ねることで、自ら食事を作ったり、食卓を整えたりする力を養います。
参考)ライフステージ別の食の課題と食事のポイント|乳の食育 雪印メ…
成人期は成長期といわれる期間が終わり、身体機能は向上から低下へと移行し始める時期です。生活環境によって食生活には個人差がありますが、生活習慣病の予防を念頭に置いた生活習慣の自己管理が必要といえます。この時期の健康な食事の目指す姿は、健康な心身の維持、増進に必要な栄養バランスを基本とする食生活を続けることで、生活習慣病の発症予防や重症化予防を図ることです。
20~30代では気力も体力も充実していて、健康について関心の低い人が多い時期ともいえます。就職や結婚、出産、子育てなど、生活環境が短期間で大きく変化することもあり、ライフステージの変化にともなって家族構成や家計の状況なども変わります。男性の肥満者の割合は約3割、20代女性のやせの割合は約2割という現状があり、特に男性では食事を他者や外食に依存している傾向が見られます。
参考)https://au.lifenet-seimei.co.jp/lb/lifestage/hero.html
30代からは健康診断の結果に何らかの異常値が示されるケースが増加し始めますが、生活習慣病の場合は強い自覚症状がないため深刻にとらえないことも多く、治療開始が遅れる要因となります。40代以降の健康は、それまでの食事や運動などの生活習慣によって大きく左右されると言っても過言ではありません。健康な心身の維持、増進に必要な食生活を無理なく続けるために、多様なライフスタイルに合わせた食材や調理方法や食べ方、食の場面を工夫できる能力が求められます。
高齢期は身体的・精神的機能が低下に向かう時期で、退職などにより生活環境が変化するだけではなく、社会との関り方も大きく変化します。疾患の有無や心身の状態によって、行動範囲や活動量には大きな差があり、QOL(生活の質)の維持に大きな影響を与えます。この時期の健康な食事の目指す姿は、心身の状態に応じた必要な栄養バランスを確保するための食生活を無理なく続けることで、加齢による虚弱を予防し、質の高い生活をより長く続けることです。
同年齢であっても健康状態には個人差が非常に大きくあらわれます。低栄養傾向の高齢者が約2割存在し、加齢に伴い買い物や料理が不便になる問題があります。疾病治療のための食事療法や、自歯の数や義歯の使用などの口腔機能も食事に大きな影響を与えます。また自分で食料を買い出しに行くことができるかどうかは、身体機能だけではなく、近くにお店があるか、お店までの交通手段があるかなどの地域差も生じます。
高齢者だけの世帯や高齢者単独世帯も増加を続けていて、社会的な対応が必要な状況となっています。心身の状態に合った食生活を無理なく続けるために、簡便な食事作りや食べ方を工夫できることが重要です。これまでに積み重ねてきた経験や知恵を身近な人々に伝え、共有することで、食文化の継承にも貢献できます。
各ライフステージにおける食事の工夫は、単に栄養バランスを整えるだけでなく、その時期特有の課題に対応することが重要です。家族ライフサイクルの視点では、独身期、新婚期、乳幼児期、学童期、思春期・青年期、子どもの巣立ち期、老年期という段階があり、それぞれに発達課題が存在します。
独身期では親や実家から心理的に自立し、職業を選択して経済的に自立することが課題となります。この時期は一人暮らしで食事管理が疎かになりがちなため、バランスの取れた食事を心がけることが必要です。新婚期には家庭生活、友人関係、仕事のバランスを取りながら、新たな夫婦のルール作りとパートナーへの適応が求められます。
乳幼児を育てる時期には親の役割を身につけ、子育てをしながら夫婦の絆を保つことが重要です。学童期の子どもを育てる時期は地域や学校などとの交流を深め、子どもの教育と親密さと明確な世代間境界を両立することが課題となります。思春期・青年期の子どもを育てる時期には、子どもの進路や職業の選択、アイデンティティの確立を支援しながら、親として夫婦が協力し、夫婦の将来を考え始める時期です。
子どもの巣立ちの時期には、子どもの自立を見守り、自立に伴う喪失感を受け入れ、夫婦関係を再編成することが求められます。老年期には老化を受け入れて対処し、パートナーの老化や死に対処しながら、人生の振り返りと統合を行い、自分の死への準備をはじめる時期となります。これらの各段階で適切な食事管理を行うことで、健康的な生活を維持し、次の段階への移行をスムーズに行うことができます。
参考)ライフサイクルと食生活
配食のふれ愛 - ライフステージごとの食事のポイントについて詳しく解説
健康長寿ネット - ライフサイクルと食生活の関係性について専門的な情報