酢酸カルシウム葉面散布の希釈倍率と効果的使用法

酢酸カルシウムの葉面散布における希釈倍率は作物の生育時期や目的によって異なります。適切な希釈倍率と散布時期を知ることで、カルシウム欠乏症を予防し作物品質を向上させることができますが、具体的にどう使い分ければよいのでしょうか?

酢酸カルシウム葉面散布の希釈倍率と使用法

この記事のポイント
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基本の希釈倍率は200~500倍

生育時期により使い分けが重要。高温時の日中散布は避け、200倍未満の濃い液は葉焼けリスクあり

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作物別の適切な散布タイミング

トマトは着果後から、キャベツは結球初めから、イチゴは着果後10日おきなど作物ごとに最適な時期がある

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細胞壁強化と病害抵抗性向上

酢酸カルシウムは細胞壁を強化し、カルシウム欠乏症を防ぎながら作物の品質と日持ちを改善する

酢酸カルシウムの基本的な希釈倍率

酢酸カルシウムの葉面散布における基本的な希釈倍率は200~500倍が標準とされています。市販の酢酸カルシウム製品の多くは酢酸カルシウム濃度が14~20%程度で、カルシウム含量として3.4~5%を含有しています。希釈倍率の選択は作物の生育ステージや目的によって調整する必要があり、生育初期には800~1000倍の薄い濃度から始め、生育中期以降は300~500倍の濃い濃度へと移行するのが一般的です。
参考)https://www.kewpie-jyozo.co.jp/product/pdf/20201218.pdf

特に注意が必要なのは、200倍未満の高濃度液を散布すると葉焼けを引き起こす可能性があるため、必ず200倍以上に希釈して使用することです。散布量は10aあたり100Lが標準で、定期的な散布を継続することで効果が高まります。また、展着剤と混合することでさらに効果的な吸収が期待できます。​

酢酸カルシウムの作物別散布時期と希釈倍率

作物ごとに最適な散布時期と希釈倍率が異なります。トマトでは尻腐れ防止のため、着果後から500倍希釈で週1回程度の散布が推奨されます。キャベツやレタスではチップバーン対策として、育苗時に800倍を2回、結球初めから300倍で5回以上の散布が効果的です。
参考)(卒論要約)酢酸と酢酸カルシウムの葉面散布

イチゴではチップバーンや軟熟果の防止のため、定植前に800倍を2回、着果後は300倍で10日おきの散布を行います。ジャガイモでは生育中期から300倍を3~5回散布することで、デンプン価の上昇と重量増加が期待できます。タマネギは葉先枯れ対策として、結球初めから300倍で5回以上の散布を行うことで、葉茎部の重量増加と球の肥大促進が報告されています。​
研究では、果樹への酢酸カルシウムの葉面散布において、発芽後からの散布よりも結実後からの散布の方が果実品質に優れる傾向があり、特に結実後から散布した区では成績が顕著に向上したという結果が得られています。​

酢酸カルシウム葉面散布の効果メカニズム

酢酸カルシウムが植物に効果的に作用するメカニズムは、カルシウムのキレート化による高い吸収性にあります。葉面から吸収された酢酸カルシウムは、通常のカルシウムと異なり植物体全体に速やかに転流され、茎、根、果実まで効率的に到達します。
参考)酢酸カルシウム

細胞壁の強化においては、カルシウムがペクチンと結合することで細胞間の接着が強化され、植物体が頑強になります。これにより病原菌が分泌する細胞壁分解酵素の活性が強力に抑制され、病害抵抗性が向上します。さらに、カルシウムは糸状菌(カビ)の繁殖を抑える一方で、放線菌や細菌を増やす効果があります。
参考)サンカルシューム

酢酸成分もまた重要な役割を果たしており、ジャスモン酸(植物ホルモンの一種)の合成を促進させ、高温・乾燥耐性遺伝子を活性化させることが知られています。また、酢酸が葉面から吸収されることで植物の代謝が活性化し、光合成能力の向上や栄養吸収の促進につながります。
参考)植物の代謝の活性化に役立つ酢酸カルシウム。酢酸、カルシウム、…

酢酸カルシウムの自家製作方法と濃度調整

酢酸カルシウムは家庭でも簡単に作ることができ、コストを大幅に削減できる方法として注目されています。基本的な作り方は、醸造酢とカルシウム源(卵殻や牡蠣殻石灰など)を混ぜるだけです。
参考)酢酸カルシウムを作ろう/酢+カルシウムの効果

最も一般的な配合比率は、酢2に対してカルシウム源1の割合です。例えば、醸造酢300ccに対してカキ殻石灰150gを混ぜます。卵殻を使用する場合は、お酢100ccに対して卵殻1個分(多くても可)を粉砕して混ぜます。反応時間は約30分で、泡が出なくなったら完成です。
参考)自作酢酸カルシウムの作り方|八尾青山町キッチンファーム|野菜…

濾過方法としては、カルシウム源をお茶のティーバッグに詰めて酢に浸す方法や、ハンドドリップのコーヒーフィルターで濾す方法が便利です。使用する際は100倍希釈で散布するのが基本ですが、作物や時期により調整が必要です。通常の食酢でも作成可能ですが、酸度が高い醸造酢(酸度15%程度)を使用すると、カルシウムの溶解時間が短縮され効率的に作成できます。​

酢酸カルシウム葉面散布の注意点と混用可否

酢酸カルシウムを使用する際には、いくつかの重要な注意点があります。まず散布時間帯については、特に夏季の高温時は日中の散布を避け、早朝の涼しい時間帯または夕刻に散布することが推奨されます。高温時の日中散布は葉焼けや薬害のリスクが高まるためです。
参考)https://www.toyo-green.com/products/detail/San-Talk-liquid-calcium.html

農薬や肥料との混用については慎重な確認が必要です。アルカリ性農薬(有機銅剤、石灰硫黄合剤、硫黄剤など)との混用は避けるべきです。また、リン酸を含む肥料や硫酸塩入り肥料との混用も、カルシウムと結合して沈殿が発生する可能性があるため、事前に混和性を確認する必要があります。​
混用する際は、必ず少量ずつ事前に混ぜて、熱・濁り・ガスの発生などの異常がないことを確認してから使用することが重要です。希釈液は腐敗防止のため、残さないように必要量のみ調整して使い切ることが推奨されます。原液が目や皮膚に付着しないよう、作業中はビニール手袋・ゴーグル・マスクを着用し、万が一目に入った場合は直ちに冷水で15分以上洗い流し医師の診断を受けることが必要です。​
参考リンク(酢酸カルシウム製品の詳細な使用方法と作物別散布事例)。
キユーピー醸造株式会社 葉活酢使用方法PDF
参考リンク(酢酸カルシウムの成分と効果メカニズム)。
東洋グリーン サントークリキッドカルシウム製品情報