サラザック配合顆粒をコロナ患者に処方すると、カロナールとの併用で重篤な肝障害を起こすリスクがあります。
サラザック配合顆粒は、日医工株式会社が製造・販売する非ピリン系の総合感冒薬です。PL配合顆粒(先発品)のジェネリック医薬品(後発品)にあたり、両者の生物学的同等性は健康成人男子14名を対象としたクロスオーバー試験で確認されています。
1包(1g)中に含まれる有効成分は以下の4種類です。
| 成分名 | 含有量(1g中) | 主な作用 |
|---|---|---|
| サリチルアミド | 270mg | 解熱・鎮痛(サリチル酸系) |
| アセトアミノフェン | 150mg | 解熱・鎮痛(アミノフェノール系) |
| 無水カフェイン | 60mg | 中枢神経興奮・鎮痛補助 |
| プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 | 13.5mg | 抗ヒスタミン(鼻水・鼻閉改善) |
COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に対する根本的な治療薬は、ニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)やモルヌピラビル(ラゲブリオ)などの抗ウイルス薬です。つまりサラザック配合顆粒はコロナウイルスそのものに作用するわけではありません。
あくまで対症療法薬という位置づけです。
しかし実際の臨床現場では、重症化リスクが低い軽症例や、抗ウイルス薬の適応がない患者に対して、コロナ感染に伴う発熱・咽頭痛・頭痛・筋肉痛・鼻汁・鼻閉などの症状緩和目的で処方されるケースが多く見受けられます。効能・効果の記載は「感冒もしくは上気道炎に伴う症状の改善及び緩和」であり、コロナが原因の上気道炎症状にも対応できるというのが処方の根拠になっています。
用法・用量は通常、成人1回1gを1日4回経口投与です。年齢や症状によって適宜増減します。
サラザック配合顆粒についての薬剤基本情報(くすりのしおり)。
くすりのしおり(患者向け情報):サラザック配合顆粒 – くすりの適正使用協議会
コロナの薬物療法全体の流れを整理しておくことが、サラザック配合顆粒の適切な処方判断につながります。
厚生労働省「COVID-19診療の手引き 第10.1版(2024年4月)」によると、軽症〜中等症Ⅰの患者に対しては、重症化リスクが高い場合に第一選択としてニルマトレルビル/リトナビル(パキロビッドパック)またはレムデシビル(ベクルリー)を早期投与することが推奨されています。発症後5日以内が目安です。
抗ウイルス薬が必要なのは重症化リスクが高い患者です。
一方、重症化リスクが低い若年健康成人や中等症リスクが低い患者の場合は、抗ウイルス薬の適応がなく、解熱鎮痛薬や鎮咳薬などによる対症療法が中心になります。この場面でサラザック配合顆粒が活躍します。
コロナによる発熱・咽頭痛・頭痛・筋肉痛・鼻閉という上気道症状の組み合わせは、サラザック配合顆粒が対象としている症状とほぼ一致しています。これは使えそうですね。
ただし、対症療法を選択する際にも注意すべき点があります。解熱鎮痛薬の選択については、2023年の韓国での研究においてアセトアミノフェンもNSAIDsも安全に使用できることが報告されており、コロナ患者へのNSAIDs使用は禁忌ではないことが現在の手引きでも明示されています。
しかしサラザック配合顆粒はアセトアミノフェンを含む配合剤です。別途カロナール(アセトアミノフェン)が処方されていないか、また患者が自己判断で市販の解熱鎮痛薬を使用していないかを必ず確認するのが原則です。
COVID-19診療の手引き(厚生労働省最終版・第10.1版)の参考資料。
COVID-19診療の手引き第10.1版(2024年4月)– 厚生労働省
医療従事者が実際のコロナ診療でもっとも注意すべきポイントのひとつが、アセトアミノフェンの重複投与です。
サラザック配合顆粒の添付文書(警告欄)には次の記載があります。
「本剤とアセトアミノフェンを含む他の薬剤(一般用医薬品を含む)との併用により、アセトアミノフェンの過量投与による重篤な肝障害が発現するおそれがあることから、これらの薬剤との併用を避けること」
これが意外と盲点になります。
コロナ患者に対して「解熱目的でカロナール(アセトアミノフェン錠)を処方し、上気道症状の全般的な緩和にサラザック配合顆粒も追加する」という組み合わせは、成分が重複します。実際にアスクドクターズなどの医師Q&Aサイトにも、「サラザック配合顆粒とカロナールを両方処方された」という患者からの質問が複数寄せられています。
アセトアミノフェンの1日投与量上限は原則4,000mgです。カロナール錠500mgを1日4回(計2,000mg)服用しながらサラザック配合顆粒を1日4回(アセトアミノフェン150mg×4=600mg)を追加すると、合計で2,600mgになります。それ自体が直ちに過量ではありませんが、患者が市販の総合感冒薬(例:パブロン、ルル等にもアセトアミノフェン含有)を自己購入・服用していた場合は、合算での過量投与になるリスクがあります。
肝機能が低下している患者(アルコール多飲者、肝疾患既往者)は特にリスクが高いです。
処方時の具体的な確認ステップとしては、「①患者が現在服用中の他の薬剤・市販薬の全リスト確認」「②アセトアミノフェン含有製剤の重複がないか照合」「③重複があれば処方変更か減量調整の検討」という流れが基本です。
サラザック配合顆粒の添付文書(JAPIC収録)。
サラザックR配合顆粒 添付文書(日本医薬品情報センター)
コロナ患者は様々な背景を持っています。サラザック配合顆粒を処方する前に、禁忌・慎重投与に該当しないかを必ず確認することが大切です。
📌 絶対禁忌(投与してはならない患者):
- 消化性潰瘍のある患者:サリチルアミドが消化性潰瘍を悪化させるおそれがある
- 前立腺肥大等、下部尿路に閉塞性疾患のある患者:プロメタジンの抗コリン作用が排尿困難を悪化させる
- 緑内障のある患者:同じく抗コリン作用が眼圧を上昇させる危険がある
- アスピリン喘息(NSAIDs誘発性喘息)またはその既往歴のある患者:サリチルアミドが誘発因子となりうる
禁忌に該当する患者への投与は絶対に行ってはなりません。
📌 慎重投与が求められる患者:
- 出血傾向のある患者(抗凝固薬服用中など):サリチルアミドが血小板機能に影響する可能性がある
- 肝障害・腎障害のある患者:アセトアミノフェンの代謝・排泄が遅延し、蓄積しやすくなる
- 高齢者:腎機能・肝機能の低下により副作用が出やすく、特に眠気に伴う転倒リスクが増大する
- 妊婦・妊娠している可能性のある患者:サリチルアミド(シクロオキシゲナーゼ阻害)により胎児の動脈管収縮・羊水減少が生じる可能性がある。特に妊娠20週以降は原則避ける必要がある
- 授乳婦:無水カフェインが母乳に容易に移行するため長期連用は避けること
妊娠週数の確認は処方前の必須事項です。
コロナ患者は高齢者や基礎疾患を持つ方も多く、上記の禁忌・慎重投与項目に該当するケースが少なくありません。特に高齢のコロナ患者に処方する際は、「排尿障害の有無(前立腺肥大など)」「緑内障の既往」「転倒リスク(眠気による)」を事前に確認することが、安全な処方の基本となります。
現場では「サラザック配合顆粒をどう組み合わせると有効か」という実践的な視点が重要になります。実際にコロナ患者に処方される薬剤の組み合わせとして、よくある処方例を整理しておくと処方判断がスムーズです。
まず、コロナの主な症状ごとに担当する薬剤を考えると整理しやすくなります。
🔹 発熱・頭痛・筋肉痛・咽頭痛:サラザック配合顆粒(サリチルアミド+アセトアミノフェン)が対応。解熱鎮痛の2成分を一度にカバーできる点が特徴です。
🔹 咳・痰:サラザック配合顆粒の4成分には直接的な鎮咳・去痰作用はありません。咳が強い場合はデキストロメトルファン(鎮咳薬)やカルボシステイン(去痰薬)の追加が必要です。アスクドクターズの質問事例でも、サラザック配合顆粒+デキストロメトルファン+カルボシステインという組み合わせの処方例が複数確認されています。
🔹 咽頭痛(特に強い場合):トラネキサム酸(トランサミン)の追加が有効とする報告もあります。ただしトラネキサム酸と抗ヒスタミン薬の組み合わせには相互作用の確認が必要なため、処方時に注意が必要です。
これは使えそうです。
一方、コロナ患者に対してロキソプロフェン(ロキソニン)が処方されるケースもありますが、NSAIDsであるため消化器リスクのある患者や腎機能低下患者では注意が必要です。アセトアミノフェンを主体とするサラザック配合顆粒は、消化器への負担が比較的少なく、腎機能低下患者にも使いやすいという利点があります。
ただし、肝機能低下患者には慎重に使用するのが原則です。
また、1日4回服用という用法は患者にとって忘れやすいスケジュールです。服薬アドヒアランスを高めるためには、「毎食後と就寝前」という具体的な時間指定での指導が有効です。患者への説明時に「コロナウイルスを直接やっつける薬ではなく、つらい症状を和らげる薬である」ことをしっかり伝えることで、過度な期待や自己判断による服用量増加を防ぐことができます。
薬価は1gあたり約6.3〜6.5円です。1日4回×5日処方した場合の薬剤費は約126〜130円(薬価ベース)と非常にリーズナブルであることも、外来処方での使いやすさにつながっています。
コロナ患者の咽頭痛への処方薬に関するm3.com調査(医師向け情報)。
コロナ患者の咽頭痛処方、「アセトアミノフェン」が最多 – m3.com(医師向け情報)
サラザック配合顆粒の副作用について、医療従事者が患者に事前に説明すべき内容を整理します。副作用の説明を怠ると、患者が服薬を自己中断するリスクや、重大な副作用の発見が遅れるリスクにつながります。
📋 主な副作用(頻度が比較的高いもの):
- 眠気:プロメタジンメチレンジサリチル酸塩(抗ヒスタミン成分)による。コロナで体力が低下している患者は特に眠気が強く出ることがある
- 口渇:抗コリン作用による
- 食欲不振・悪心:臨床試験では副作用発現頻度3.8%(悪心2.5%、眠気・口渇各1.3%)と比較的低頻度
眠気には注意が必要です。
⛔ 重大な副作用(まれだが見逃してはいけないもの):
- ショック・アナフィラキシー:呼吸困難、蕁麻疹、動悸が出た場合は即座に服薬を中止させること
- 中毒性表皮壊死融解症(TEN)・皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群):皮膚の広い範囲が赤くなる・目の充血・唇のただれ
- 薬剤性過敏症症候群(DIHS):発疹、発熱、リンパ節腫脹が同時に起こる場合。ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の再活性化を伴うことが多く、投与中止後も症状が再燃・遷延することがある点が特徴
- 再生不良性貧血・無顆粒球症:動悸、発熱、のどの痛み、出血傾向
- 重篤な肝障害:アセトアミノフェン過量投与時
特に眠気の副作用については、添付文書上「自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないように」という記載があります。コロナで自宅療養中の患者でも、車で買い物に行くなどのケースが想定されます。「この薬を飲んでいる間は車の運転はできません」という具体的な言葉で伝えることが、患者の理解につながります。
また薬剤性過敏症症候群(DIHS)は、投与開始から2〜6週間後に発症することが多く、解熱を目的に投与したコロナ患者の発熱・発疹が「副作用」だと気づかれにくいという危険性があります。コロナの症状が落ち着いた後にも発熱・発疹が続いている場合は、DIHSの可能性も念頭に置いた評価が必要です。
もう一点、光による含量低下・着色という保管上の注意点もあります。外箱開封後は遮光保存が必要であることを、患者への服薬指導で必ず伝えてください。
サラザック配合顆粒の副作用・飲み合わせに関する詳細情報(ケアネット)。
サラザック配合顆粒の効能・副作用 – CareNet(医療従事者向け)