実は、マクドナルドのフィレオフィッシュを食べるだけで海の資源保護に貢献できます。
「サステナブルシーフード」という言葉を耳にしたことがあっても、「なんとなくエコなシーフードのことでしょ」と思ったまま通り過ぎている方は多いのではないでしょうか。実際には、この取り組みが私たちの食卓に直結しています。
サステナブルシーフードとは、水産資源や自然環境に悪影響を与えない、持続可能な方法で漁獲または養殖された水産物のことです。具体的には「産卵期に魚を獲らない」「幼魚を保護するためにサイズ規制を設ける」「環境への影響を最小限に抑えた養殖方法を採る」といった取り組みが認められた漁業や養殖場から生まれた魚介類を指します。
サステナブルシーフードには、消費者が選びやすいように認証制度が設けられています。認証には大きく2種類あります。
- MSC(海洋管理協議会)認証:天然の水産物に付与される「海のエコラベル」です。水産資源の持続可能性、生態系への配慮、適切な漁業管理の3原則を満たした漁業にのみ認められます。
- ASC(水産養殖管理協議会)認証:養殖の水産物に付与されるラベルです。環境保全、資源の効率的利用、労働者の権利保護など7つの原則に基づく厳格な審査をクリアした養殖場の商品にのみ表示されます。
この2つは別の団体が管理しており、対象となる水産物の種類が異なります。これが基本です。
さらに日本には「MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)認証」という国内独自の認証制度もあり、日本の漁業・養殖業の実情に合わせた基準で審査が行われています。
現在、MSC「海のエコラベル」付きの水産品は、世界約70カ国で2万品目以上が販売されており、日本でも約700品目が流通しています。ASCラベルの付いた商品も、世界121カ国で2万7,000品目以上、日本では約680品目が販売されています。イオングループ、生協・コープ、セブン&アイ・ホールディングス、マクドナルドなど、普段よく利用するお店でも取り扱いが広がっています。
参考:MSC「海のエコラベル」と認証制度の概要(MSC日本公式サイト)
https://www.msc.org/jp/what-is-sustainable-seafood-jp
2006年にアメリカの科学専門誌『サイエンス』に掲載された研究論文は、世界中に衝撃を与えました。「このまま乱獲が続けば、2048年には海から食用魚が消えてしまう」という予測です。これは脅しでも誇張でもなく、世界的な水産学者チームによる試算です。
日本でも、数字は深刻です。2022年の日本の年間漁獲量は392万トンで、ピーク時(1984年の1,282万トン)のおよそ3分の1にまで落ち込んでいます。かつては「庶民の魚」の代表格だったサンマも、1993年の漁獲量が約27万3,730トンだったのに対し、2023年は約2万4,433トンと、30年間で10分の1以下に激減しています。家計を預かる主婦の方には、価格の上昇として肌で感じているのではないでしょうか。
国連食糧農業機関(FAO)の「世界漁業・養殖業白書2024」によると、現在、世界の水産資源の37.7%が過剰漁獲の状態にあります。資源量がまだ十分に残っているのはわずか11.8%です。つまり水産資源は、一部の「余裕ある」魚を除いて、ほとんどがギリギリの状態で保たれているのです。
メリットはここにあります。消費者がサステナブルシーフードを選ぶと、認証を取得した持続可能な漁業への需要が高まります。需要が高まれば、より多くの漁業者が認証取得を目指して、獲りすぎない漁業へと移行するインセンティブが生まれます。これが水産資源の回復・維持につながるという仕組みです。
「自分1人が買ったところで変わらない」と思いがちです。ですが、日本の消費者の3人に1人がサステナブルシーフードを選ぶと回答した調査(MSC、2020年)があることを考えると、日本全体の消費行動がわずかに変わるだけで、水産資源への影響は相当なものになります。メリットは「海を守る」という抽象的なことだけではなく、「子どもたちが大人になってもお刺身を食べられる未来を守る」という、とても具体的なことなのです。
参考:日本の漁獲量の現状と水産資源の問題(日本財団ジャーナル)
https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2025/109953/social_good
サステナブルシーフードを選ぶことは、海のためだけでなく、食べる側の健康にも関わる話です。意外な視点ですね。
認証を受けていない水産物の中には、違法・無報告・無規制(IUU)漁業によって獲られたものが含まれる場合があります。IUU漁業では、適切な環境管理が行われない水域での漁獲や、劣悪な環境での養殖が問題になることがあります。過剰な養殖や海洋汚染は、抗生物質の多用や有害物質の蓄積を招き、最終的には人間の健康リスクになると指摘する専門家もいます。
一方、MSCやASC認証を取得した水産物は、適切に管理された環境での漁獲・養殖が確認されています。ASC認証では、養殖場で使用する飼料や薬品の種類・量について厳格な基準が設けられており、天然の個体群への影響が最小限になるよう管理されています。
これは重要なことです。
シーフードは本来、栄養価が非常に高い食品です。特にオメガ3脂肪酸(DHA・EPA)は、心臓の健康維持、炎症の抑制、子どもの成長にも欠かせない栄養素であり、サーモン、サバ、ニシンなどの脂ののった魚に豊富に含まれています。タンパク質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄など、体に必要なミネラルも豊富です。
この栄養価の高さを安心して享受するためにも、生産過程が透明で適切に管理されたサステナブルシーフードを選ぶことには、明確なメリットがあります。「安いから」という理由だけで選ぶよりも、認証ラベルという「安心の目印」を一つの判断材料にすることは、家族の健康を守る上でも賢い選択です。
なお、認証商品の価格がどれくらい高いかというと、MSCラベル付き商品のプレミアム価格は平均約11%とされています(MSC調査)。100円の食材が111円になる計算です。これを高いと見るか、安心・安全の対価と見るかは、それぞれの判断ですが、毎日の食卓に乗る商品だからこそ、一度考えてみる価値はあります。
「環境保護」というと、ボランティアに参加したり寄付をしたりといった、特別な行動が必要なイメージがあるかもしれません。ところが、サステナブルシーフードの場合は違います。今日のスーパーでの買い物が、そのまま海の保護活動になります。これは使えそうです。
具体的な方法は、とてもシンプルです。魚売り場でパッケージを裏返し、青い魚のマーク(MSCラベル)か、緑のASCラベルが付いているかどうかを確認するだけです。
| ラベル | 色 | 対象 | 主な取扱店 |
|---|---|---|---|
| MSC「海のエコラベル」 | 青 | 天然の水産物 | イオン、生協、マクドナルドなど |
| ASCラベル | 緑 | 養殖の水産物 | イオン、セブン&アイ、生協など |
| MEL認証 | 青・緑 | 天然・養殖どちらも | 国内スーパー各社 |
例えば、イオングループのトップバリュブランドでは、MSC・ASC認証を取得したサステナブルシーフードを展開しており、たらこ、明太子、鮭、ししゃもなど日常的な食材で認証品を見つけることができます。マクドナルドのフィレオフィッシュも、2019年からMSC認証を取得したアラスカ産スケソウダラ100%を使用していることは、意外と知られていません。日本の生協(コープ)でも、2007年からMSC認証商品を扱い始めており、取り扱い魚種は年々拡大しています。
WWFジャパンが提供している「シーフードガイド」(オンラインで無料公開)では、主な魚介類について、サステナビリティの状況や認証ラベル付き商品の有無を確認することができます。自分の家でよく食べる魚を検索してみると、「この魚はすでにラベル付きで買える」「この魚は慎重に選んだほうがいい」といった情報を手軽に得られます。
参考:WWFジャパン「シーフードガイド」(魚ごとの持続可能性評価)
https://www.wwf.or.jp/campaign/osakana/guide/
毎日の買い物でラベルを1枚チェックするだけです。特別なお金も時間も必要ありません。
「SDGsに貢献したいけど、何から始めればいいかわからない」という声をよく聞きます。結論は、サステナブルシーフードを選ぶことです。
サステナブルシーフードの普及は、SDGs(持続可能な開発目標)の複数の目標に同時に貢献します。最も直接的な関わりがあるのは目標14「海の豊かさを守ろう」で、具体的には「2020年までに過剰漁獲・IUU漁業・破壊的漁業を終わらせ、科学的管理計画を実施する」という項目(目標14.4)に関係しています。
さらに、認証制度が労働者の権利保護も評価基準に含めていることから、目標8「働きがいも経済成長も」、そして消費者が責任ある選択をするという点で目標12「つくる責任 つかう責任」にも貢献します。一つの買い物行動が、複数のSDGs目標に寄与するというのは、日常生活でできる社会貢献としては非常にコスパが良い、といえます。
企業の取り組みとして見ると、例えば米国のウォルマートは天然水産物の98%をサステナブルな魚に置き換えています。日本でもパナソニックグループが57拠点の社員食堂にMSC・ASC認証のサステナブルシーフードを導入し、セブン&アイ・ホールディングスは2020年に大手小売業として初めてMEL認証を取得しています。
企業がこれだけ動いているということは、消費者の選択が企業の仕入れ方針に影響を与えることを彼らが理解しているからです。いいことですね。
購入を迷ったときには、価格差や商品の種類よりも「このラベルがついているかどうか」を一つの基準にする。その小さな選択が積み重なって、企業の調達方針が変わり、漁業者が持続可能な漁業に移行し、海の資源が回復する。そのサイクルの出発点は、消費者の「1回の選択」にあります。
参考:サステナブル・シーフードを取り入れている企業事例(日経ESG)
https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00005/120900030/
サステナブルシーフードというと「認証ラベルが付いた輸入品」というイメージを持たれがちです。ところが実際には、地元産・国産の旬の魚介類を選ぶことも、広い意味でのサステナブルな消費行動になります。この視点は、検索上位の記事にはあまり書かれていない独自の観点です。
旬の時期に、地元で獲れた魚を地元で消費するスタイルの漁業は、乱獲抑制の観点から持続可能性が高いとされています。なぜなら、旬の時期は魚が最も多く、かつ脂が乗って美味しい時期であり、その時期に自然の分量だけを獲って消費するサイクルは、魚の個体数回復とも相性が良いからです。
さらに、地元産の旬の魚を地元で消費すれば、長距離輸送や長期間の冷凍保存が不要になります。これにより、輸送にかかるCO₂の排出量削減にもつながります。つまり「地産地消+旬を楽しむ」というおばあちゃんの時代からの食文化が、実は現代の環境問題の解決策としても再評価されているのです。
家計の視点でもメリットがあります。旬の魚は市場への供給量が多いため、比較的価格が安定していることが多いです。認証ラベル付き商品を選びつつ、旬の地元産魚介類を組み合わせることで、コストを抑えながらサステナブルな食生活を実践できます。
具体的には、地域のスーパーの鮮魚コーナーで「県産」「地元産」「旬の○○」といった表記を活用し、さらにパッケージのラベルを確認する習慣を組み合わせると効果的です。毎週の買い物に「ラベル確認+旬チェック」を組み込むだけで、家計にも地球にも優しい食卓が実現します。
認証ラベルと地産地消、この二刀流が最強の選択です。
| 選び方 | メリット | チェックポイント |
|---|---|---|
| MSC・ASCラベル付き商品 | 環境保護・健康・安心 | パッケージのラベルマークを確認 |
| 地元産・旬の魚介類 | CO₂削減・価格安定・新鮮 | 産地表示と季節を確認 |
| 両方を組み合わせる | 最大の環境・健康・家計効果 | ラベル+旬チェックの習慣化 |
地産地消とラベル確認の習慣を組み合わせることで、特別な出費や時間なしに、日常の買い物がサステナブルな選択になります。毎日の食卓から、未来の海を守る一歩が踏み出せます。
参考:WWFジャパン「海を守るためのさかなの選び方と食べ方」
https://www.wwf.or.jp/campaign/osakana/