食育絵本を家で読むだけでは、保育園の給食嫌いは実は改善しにくいことをご存じでしたか?
食育絵本とは、食べること・食材・食事マナー・農業・命のつながりなどを子どもにわかりやすく伝えることを目的とした絵本です。保育園や幼稚園で積極的に取り入れられている背景には、文部科学省や農林水産省が推進する「食育基本法」(2005年施行)の存在があります。この法律の施行以降、保育現場での食育活動は一気に広がりました。
食育絵本の特徴は、年齢によって響き方がまったく異なる点です。たとえば0〜2歳向けの絵本は、食材の色や形を視覚的に楽しませることを優先します。一方、3〜5歳になると「なぜ野菜を食べるの?」「これはどこで育つの?」という問いへの答えを絵と言葉で丁寧に伝える内容が主流になります。
つまり、年齢に合った絵本を選ぶことが基本です。
実際、保育士向け専門誌「保育のひろば」の調査では、食育絵本を週1回以上読み聞かせしている保育園の約73%で「子どもの食に対する興味が高まった」と回答しています。これは数字として非常に大きな変化です。野菜を食べた経験が「給食で初めて」という子どもも多い現代において、絵本で食材のイメージを事前に作ることは、食わず嫌いを防ぐ強力な手段になります。
保育園で特に読まれる定番絵本を整理すると、以下のような作品が挙げられます。
これらの作品は、保育現場だけでなく家庭でも活用できます。家で読んだ絵本の話が保育園の給食と繋がったとき、子どもの「あ、これが絵本に出てきたやつだ!」という体験が食への関心を一気に高めます。
給食の時間に特定の食材を頑固に拒否する子どもは、保育園全体の約40〜50%に上るとされています(幼児健康診査に関する研究報告・2022年)。この数字、意外に多いと感じませんか?
多くのお母さんが「何度言っても食べない」と悩みますが、実は「言葉で説得する」よりも「絵本で感情的に食材を好きになる」アプローチのほうが効果的です。脳科学的にも、感情と結びついた記憶は行動変容につながりやすいとされています。これは使えそうです。
効果的な読み聞かせのコツは、次の3つです。
注意したいのは、「食べなさい」と強制するための道具として絵本を使わないことです。「この絵本の子もピーマン食べてるよ!」というプレッシャーは逆効果になることがあります。絵本はあくまでも食への「興味のとびら」を開くもの。そのスタンスを大切にしてください。
読み聞かせの際に活用できるツールとして、絵本の内容に合わせた食育カードや食材フラッシュカードも市販されています。絵本を読んだあとにカードを使って食材当てクイズをするだけで、子どもの食への関心が目に見えて変わることがあります。食育グッズは1,000〜2,000円程度から揃えられるものも多く、手軽に始められます。
保育園での食育と家庭での取り組みは「バラバラに動く」よりも「連携する」ことで効果が倍になります。これが基本です。
たとえば、保育園で「にんじん」をテーマにした食育週間があったとします。そのタイミングに合わせて家庭でも「にんじんさん どこ?」(福音館書店)などのにんじんが登場する絵本を読むと、子どもの中でイメージが積み重なり、給食のにんじんに対する抵抗感がグッと下がります。
保育園の食育カレンダーや給食だよりを確認する習慣をつけるのが第一歩です。多くの保育園では月に1回「給食だより」が配布されており、その月のテーマ食材や食育活動の内容が載っています。このお便りをそのまま捨てずに、食材のヒントとして活用するだけで連携は十分成立します。
家庭と保育園の連携についての情報は、農林水産省の食育推進ページにも詳しくまとめられています。
参考:農林水産省「食育の推進」(家庭・地域・保育現場の連携に関する情報が掲載されています)
https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/
また、意外と知られていないのが「絵本の貸し出し」サービスです。全国の公共図書館では食育絵本のコーナーを設けているところが多く、費用をかけずに多様な絵本を試せます。ブックスタート事業(赤ちゃんに無料で絵本を届ける自治体事業)に登録すると、地域の図書館から食育絵本のリストが届くこともあります。お金をかけずに始められるのが条件です。
食育絵本の効果を最大化するための意外な方法、それが「農業体験と絵本を組み合わせる」アプローチです。意外ですね。
一般的に、食育絵本は「読み聞かせ」として完結しているイメージがありますが、実は農業体験や栽培活動と組み合わせることで、子どもの理解度と食への興味が飛躍的に高まることが研究で示されています。日本農業教育学会の報告(2021年)によると、栽培活動を経験した子どもは、そうでない子どもに比べて野菜の摂取意欲が約1.8倍高くなるというデータがあります。
この1.8倍という数字はかなりの差です。東京ドームで例えるなら、満員の観客5万5千人のうち約3万人が食べるようになるイメージです。
保育園で栽培活動(トマト・きゅうり・さつまいもなど)と食育絵本を組み合わせる流れはこうです。
家庭でも、ベランダや窓辺でミニトマトやラディッシュを育てるだけで同じ効果が期待できます。種から育てる体験キットは500〜1,500円程度で手に入り、絵本との相乗効果を手軽に試せます。
栽培と食育の組み合わせについては、以下のページも参考になります。
参考:文部科学省「食に関する指導の手引」(保育・学校での食育活動の実践事例が掲載されています)
https://www.mext.go.jp/a_menu/sports/syokuiku/1292952.htm
食育絵本を選ぶとき、多くの方が「かわいいから」「有名だから」という理由で選びがちです。でも、それだけでは効果が半減することがあります。選び方にはいくつかのチェックポイントがあります。
まず、子どもの年齢と絵本の語彙レベルが合っているかを確認します。3歳未満の子どもには、文字が少なく大きな絵が多い絵本が適しています。4歳以上になると、ストーリー性があり登場キャラクターが食材の名前を繰り返す作品が理解しやすいです。
次に、「食材が主役」か「食事の場面が豊富」かで選ぶと目的に合わせやすくなります。給食嫌いを克服したいなら食材が主役の絵本を、食事マナーを教えたいなら食事の場面が多い絵本を選ぶのが効果的です。これだけ覚えておけばOKです。
以下に、年齢別・目的別のおすすめ絵本をまとめます。
| 年齢 | タイトル | テーマ・特徴 | 価格目安 |
|---|---|---|---|
| 0〜2歳 | 『くだもの』(平山和子) | 果物の断面・色・形を美しく描写。食材への親しみを育てます | 880円 |
| 2〜3歳 | 『やさいのがっこう』(なかやみわ) | 野菜キャラクターが登場し、食材に感情移入しやすい構成 | 1,320円 |
| 3〜4歳 | 『おにぎり』(平山和子) | 米から食卓までのプロセスをリアルに描く。食への感謝心を育成 | 990円 |
| 4〜5歳 | 『もったいないばあさん』(真珠まりこ) | 食べ残しや無駄遣いへの気づきを促す。環境意識も育てられます | 1,320円 |
| 5〜6歳 | 『いのちをいただく』(内田美智子) | 命の大切さと食事のつながりを深く考えさせる作品。読後の対話が重要 | 1,430円 |
選ぶ際の最後のポイントとして、「保育士が実際に保育園で使っている絵本」を参考にする方法があります。保育士向けのQ&Aサービスや、保育園のクラスだよりに「今月の絵本」として紹介されている作品は、現場での実績があるため信頼性が高いです。
参考:絵本ナビ(食育絵本の専門特集・保育士レビューが充実)
https://www.ehonnavi.net/
最終的に、食育絵本は「正解の1冊を探す」よりも「子どもの反応を見ながら複数試す」スタンスのほうがうまくいきます。図書館を活用しながら、月に2〜3冊のペースで試していくのが現実的な取り組み方です。食育絵本は、保育園と家庭をつなぐ最も手軽で確かなツールです。