八角を冷蔵庫で保存すると、カビが生えて使えなくなることがあります。
2025年12月、競馬ファンのあいだで大きな話題になった競走馬がいます。それが、2025年の阪神ジュベナイルフィリーズ(GI)を制した牝馬・スターアニス(Star Anise)です。
馬名の意味は「中国原産の香辛料・八角(はっかく)」。一見するとなぜスパイスの名前が馬名になったのか不思議に感じる方もいるでしょう。実はこの命名には、ひとつの家族物語があります。
母馬の名前は「エピセアローム(Epicea Arôme)」といい、フランス語で「スパイシーな香り」という意味を持ちます。つまり「香り」を持つ母の名から連想して、娘に「スターアニス(八角)」という香辛料の名前が付けられた、という流れです。これがポイントです。
さらに父は米国産のスプリント王・ドレフォン(Drefong)。スターアニスは父から短距離の爆発的なスピードを受け継ぎつつ、2025年6月のデビューからわずか4戦目で芝1600mのGIを制する快挙を成し遂げました。
JRA賞の最優秀2歳牝馬にも選ばれた同馬は、2026年4月の桜花賞へ向けた期待の星となっています。競走馬の馬名には馬主や生産牧場のこだわりが込められているもの。スターアニスという名前の背景には、こんなに豊かなストーリーがあったのですね。
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競走馬名の元になった「スターアニス」というスパイス、実際には何者なのでしょうか?
スターアニスとは、モクレン科トウシキミという木の果実を乾燥させたものです。その形は直径3〜4cm(ほぼ一円玉より少し大きい程度)の星形で、8つの突起が放射状に広がっています。この「8つの角を持つ星形」という形状が、日本語名「八角(はっかく)」の由来となっています。
「スターアニス」という英語名は、16世紀末にイギリスの船乗りがヨーロッパへ持ち込んだ際に命名されました。形が星(Star)のようで、セリ科のハーブ「アニス(Anise)」に香りが似ていたことから名付けられたとされています。これが基本です。
ただし重要な点として、スターアニスとアニスはまったく別の植物です。偶然にも香りの主成分「アネトール」が共通しているため似た香りに感じますが、科も属も異なります。香りが似ているからといって代替品として使用するのは危険な場合もあるため、注意が必要です。
中国での歴史はさらに古く、2000年以上前から漢方薬として活用されてきた記録があります。明代(1368〜1644年)の医学書『本草綱目』にも、胃腸薬や鎮痛剤としての記述があります。17世紀のヨーロッパではフルーツやジャムの香りづけとして使われていたそうで、その歴史はスパイスのなかでも特に長いものがあります。
現在、スターアニスの主要産地は中国南部(広西壮族自治区・雲南省)と北部ベトナムです。世界の生産量の約8割以上が中国産だといわれています。つまり中国産が原則です。
参考として、スターアニスの特性や歴史を解説している信頼性の高いページをご紹介します。
スターアニスがスパイスとして有名なのはご存知の方も多いでしょう。しかしこのスパイスが、インフルエンザ治療薬と深く関わっているという事実は、あまり知られていません。これは使えそうです。
スターアニス(八角)の実には「シキミ酸(Shikimic acid)」という成分が含まれています。このシキミ酸は、世界で広く処方されている抗インフルエンザ薬「タミフル(一般名:オセルタミビル)」の製造原料として使われているのです。
製薬大手ロシュ(Roche)社は、タミフルの製造に中国・雲南省や四川省で収穫されるスターアニスのシキミ酸を使用してきました。2005年の鳥インフルエンザ流行時には、世界の八角生産量の約90%がタミフル製造のために消費されたという記録が残っています。世界中の八角がほぼすべてお薬に、というのは驚きですね。
ただし、注意が必要な点があります。八角をそのまま食べてもインフルエンザには効果がありません。シキミ酸はあくまで合成の「出発原料」であり、タミフルになるには10工程以上の化学反応が必要です。食品安全委員会も、八角を食べることとタミフルの効果は別物であると明示しています。
料理に少量使う分には健康メリットを期待できますが、「八角を食べてインフルエンザ予防」という考え方はNG。正しい知識を持った上で活用することが大切です。
シキミ酸とタミフルの関係について詳しくは、以下の参考ページが参考になります。
スターアニスは見た目も美しく、香りも豊かなスパイスですが、実は健康面にも注目すべき成分が含まれています。
まず、スターアニスに含まれる「アネトール」という成分には、胃腸の働きを整えて消化を助ける作用があります。腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進する効果も報告されており、食後の膨満感や消化不良が気になるときに役立ちます。
また、「アトネール」という芳香成分は、女性ホルモンのエストロゲンと似た構造を持つとされており、生理不順や更年期症状のサポートに期待できるという研究報告もあります。さらに「ピネン」には神経系の興奮を抑える鎮静作用があり、ストレスが多い日のリラックスにも向いています。
料理での使い方については、豚の角煮・煮豚・北京ダックが代表的です。煮込むことで肉の臭みを消し、深みのある甘い香りを加えてくれます。使うときの目安は「ホール1個(または割った2〜3片)」で、使いすぎると薬っぽい苦みが出ることがあるので注意しましょう。少量が基本です。
中国のミックススパイス「五香粉(ウーシャンフェン)」にも必ず含まれていますが、五香粉を買えば気軽にスターアニスの風味を取り入れられます。カレーの隠し味に少量加えると、まろやかさが増すという使い方も料理好きのあいだでは知られています。
豚の角煮に八角を使うときの具体的なコツについては、以下のサイトが参考になります。
エスビー食品|スターアニス/八角を使いこなそう!ミニ講座&おすすめレシピ
せっかく購入したスターアニスの香りが、使うころにはほとんど飛んでいた、という経験はないでしょうか。スターアニスの香りの主成分「アネトール」は揮発性が高く、保存方法を間違えると急速に香りが抜けていきます。これは厳しいところですね。
具体的な保存のNGポイントを整理しましょう。まず、冷蔵庫はNG。乾燥香辛料を冷蔵保存してしまうと、冷蔵庫から取り出した際に温度差で結露が発生し、湿気でカビが生える原因になります。スパイス類は常温保存が原則です。
次に直射日光もNGです。紫外線によって香り成分が分解されるため、コンロ横などの光が当たる場所に置くのも避けましょう。「香りが良いから飾っておく」という使い方も、時間がたつと残念なことになります。
正しい保存方法は「密閉容器に入れて冷暗所へ」の一択です。具体的には、密閉蓋つきのガラス瓶や缶などに入れ、シンクの下の棚や食器棚の奥など、温度変化が少なく光の当たらない場所で保管します。
賞味期限の目安はホール(丸ごと)の場合で約2〜3年ですが、開封後は半年以内に使い切るのが理想です。もし香りが弱くなってきたと感じたら、フライパンで30秒ほど空煎りすると香りが復活することがあります。これは使えそうです。
スターアニスの適切な保管と活用について参考になるページをご紹介します。
競馬ファン以外の方にはあまり知られていませんが、競走馬の馬名は単なる識別番号ではなく、血統や生産者の哲学が込められた「名前の文化」があります。スターアニスを例に、その深さを紐解いてみましょう。
スターアニスの母・エピセアロームは「エピセア(Epicea=トウヒの木)+アローム(Arôme=フランス語で"香り")」という意味で、「香りの木」を表しています。さらにエピセアロームの近親馬には「バルサムノート」「シトラスノート」という香りにまつわる名前を持つ兄弟馬がおり、この一族全体が"香りのテーマ"で統一されています。つまり香りの一族ということですね。
日本の競走馬の馬名は、ジャパン・スタッドブック・インターナショナルの審査を経て決定されます。過去に存在した著名馬や外国の著名馬と同じ名前は登録できないなどのルールがあり、馬名の選定には馬主や生産者のセンスが光ります。
スターアニスを生産したノーザンファームは、2022年のリバティアイランドから4年連続で阪神ジュベナイルフィリーズを制覇しており、累計15勝目という記録的な強さを誇ります。その生産馬に「香辛料」の名前をつけた背景に、東洋のスパイスへのリスペクトを感じます。
このように、競走馬の馬名と日常に使うスパイスがリンクしているとわかると、スターアニスを料理で使うたびに「あの馬か」と思い出す楽しさも生まれてきます。スパイスと競馬、意外なところで繋がっていますね。
競走馬の馬名登録に関するルールは、以下で確認できます。
ジャパン・スタッドブック・インターナショナル|馬名登録審査について(PDF)