お湯から牛すじを入れると、うまみが逃げて臭みが残ります。
おでんに牛すじを入れたら、スープ全体が生臭くなってしまった──そんな経験がある方は少なくありません。その原因の多くは、下処理の最初の工程「ゆでこぼし」のやり方にあります。
牛すじには、血合い・脂・アク・獣毛など、そのままでは食べられない汚れが付着しています。これをしっかり取り除かないまま煮込むと、臭みや油っぽさが他の具材にまで移ってしまいます。大根や卵、はんぺんといったおでんの具は出汁を吸いやすいため、牛すじの下処理が不十分だと全体の味が台なしになります。
重要なのは、必ず水の状態から牛すじを鍋に入れるという点です。いきなり熱湯に入れてしまうと、肉の表面がギュッと縮まり、中のアクや臭みの成分が閉じ込められてしまいます。水からゆっくり火を入れることで、アクが外に出やすくなります。これが基本です。
また、ゆでこぼしが1回では足りないケースもあります。牛すじの鮮度や部位によっては、アクが大量に出ることがあります。1回目のゆでこぼし後にまだアクが多く出る場合は、2〜3回繰り返す必要があります。つまり「1回やったから大丈夫」は間違いです。
さらに、ゆでこぼした後に「鍋もきれいに洗う」というひと手間が必要です。鍋の内側にアクが付着しているため、洗わずに次の工程に進むとせっかく洗った牛すじに再びアクが戻ってしまいます。地味に見えますが、鍋を洗うかどうかで仕上がりが変わります。
参考:ゆでこぼしの手順と理由を丁寧に解説
失敗しない下処理を実現するために、正しい手順を覚えておきましょう。全体の流れを把握しておくと、途中で迷わずに済みます。
【ステップ1:ゆでこぼし(約5分)】
大きめの鍋に牛すじと水を入れ、水から火にかけます。沸騰してから1〜5分ほどそのまま加熱し、大量に出てくるアクごとゆで汁を捨てます。鍋も洗い、牛すじを流水で洗い流します。
【ステップ2:柔らかくなるまで煮込む(1時間半〜2時間)】
洗い直した牛すじを鍋に戻し、たっぷりの水と一緒に生姜・長ねぎの青い部分を加えて弱火で煮ます。生姜は皮ごと輪切りにして入れるのがポイントです。
【ステップ3:切り分けて串に刺す】
柔らかくなったら食べやすい大きさにカットし、おでん用の竹串に刺します。
生姜の働きが意外と重要です。生姜に含まれる成分が牛肉特有の臭みを中和し、煮込み後のすっきりとした風味につながります。皮にも成分が凝縮されているため、皮ごと使うのが正解です。長ねぎの青い部分も同様の役割を持ちますが、なければ生姜だけでも十分に効果があります。
| 工程 | 時間の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| ゆでこぼし(1回目) | 約5分 | 水から入れる・鍋も洗う |
| 洗い直し | 約5分 | 流水でアクをしっかり落とす |
| 本ゆで(生姜・ねぎ入り) | 1時間半〜2時間 | 弱火でじっくり、水を足しながら |
| 切り分け・串打ち | 約10分 | 繊維を断つようにカット |
「酒煎り」という工程を追加すると、さらに仕上がりが良くなります。本ゆで後に水気を拭き取った牛すじを、日本酒100mlと生姜の千切りを入れた鍋で炒りつけます。お酒がなくなるまで中火で加熱することで、臭みが飛び、生姜の香りが肉にしっかり入ります。これは使えそうです。
参考:管理栄養士・沼津りえさんが解説する酒煎りの手順
【牛すじ】臭みナシ!完璧な「牛すじの下処理」の秘密は"アク取り&酒煎り"|kufura
「1時間半も煮込む時間はない」という方には、圧力鍋を使った時短法がおすすめです。通常の鍋で1時間半〜2時間かかるところを、圧力鍋なら加圧15〜20分で同等の柔らかさに仕上げることができます。
ただし、いきなり圧力鍋から始めるのは間違いです。ゆでこぼしの工程は普通の鍋で先に行い、その後に圧力鍋に移して加圧するのが正しい順序です。ゆでこぼしをしないまま圧力をかけてしまうと、アクや臭みを含んだ汁が庫内に充満し、取り除けなくなってしまいます。ゆでこぼしが先、が条件です。
圧力鍋での具体的な手順は以下の通りです。
圧力鍋の安全ロックピンについては、必ず確認するようにしてください。ピンが下がる前に無理に開けようとすると、高温の蒸気が噴き出す危険があります。時短を急ぐあまりケガをしては元も子もありません。
炊飯器を使う方法もあります。ゆでこぼし済みの牛すじと水を炊飯器に入れ、炊飯ボタンを押します。炊き終わったら保温モードに移行し、4時間ほど保温すれば完成です。火の番をする必要がないため、別の家事をしながら並行して進められます。意外ですね。
| 調理器具 | 加熱時間の目安 | メリット |
|---|---|---|
| 普通の鍋 | 1時間半〜2時間 | 器具不要、誰でもできる |
| 圧力鍋 | 加圧15〜20分 | 大幅な時短が可能 |
| 炊飯器 | 炊飯+保温4時間 | 火の番が不要・ほったらかしOK |
参考:圧力鍋・炊飯器を使った下処理の手順を詳しく紹介
おでんの牛すじの下処理方法|下処理済みの冷凍方法も紹介|オリーブオイルをひとまわし
下処理が終わった牛すじの串打ちは、おでんのビジュアルと食べやすさを大きく左右します。部位によって切り方が異なるため、以下のポイントを押さえておきましょう。
肉が多い部分(赤身部分)は約4cmに切り、竹串に刺します。脂が多い部分や薄い部分は約7cmに切り、折りたたんでから串に刺すと、見た目がまとまりやすくなります。切るときは繊維を断つ方向(繊維に対して垂直)に包丁を入れると、煮込んだ時にトロトロになりやすいです。繊維方向に切ると、食べたときに筋っぽさが残ります。
冷凍保存の方法についても覚えておくと便利です。一度にまとめて下処理しておけば、次回のおでん作りでは冷凍庫から取り出すだけで使えます。
牛すじの冷凍は劣化しにくく、むしろ冷凍することで食感がプリプリになるという特徴があります。ニチレイフーズの調査でも「牛すじは冷凍に向いている具材」として取り上げられており、冷凍後の仕上がりは良好です。冷凍なら問題ありません。
解凍するときは、前日に冷蔵室へ移すのが一番おすすめです。急いでいる場合は、ゆで汁だけを先に電子レンジで溶かし、液状になったところに凍ったままの牛すじを投入してそのまま温めると、短時間で対応できます。
ゆで汁はそのまま捨てるのはもったいないです。牛すじのうまみが溶け出したゆで汁は、カレーやスープ、うどんのつゆなど幅広い料理に応用できます。ただし、最初のゆでこぼしのゆで汁(アクが大量に出たもの)は使えません。2回目以降の本ゆでのゆで汁だけが再利用できます。つまり、ゆで汁の使い分けが大事です。
排水口にゆで汁をそのまま流すことも避けるべきです。牛すじの脂が冷えて固まると、排水口が詰まる原因になります。捨てるときは鍋ごと冷蔵庫で冷やして、表面に固まった脂を取り除いてから流すようにしましょう。
「下処理なしで作れないの?」と思っている方のために、少し違う角度から考えてみます。
実は、ある条件が揃えば下処理を省くことも不可能ではありません。おでんは長時間煮込む料理のため、その過程でアクや臭みをある程度取り除くことができます。特に、新鮮な牛すじを使う場合や、煮込み中にアクをこまめにすくい取る場合は、下処理なしでも食べられる仕上がりになることがあります。
ただし、おでんで下処理なしを選ぶリスクを理解しておく必要があります。他の具材への臭みの移り具合は、下処理ありと比べると明らかに違います。大根や卵、白はんぺんなどのデリケートな具材に臭みが移ってしまうと、全体の味が台なしになります。他の具材を犠牲にすることになります。
「下処理不要の牛すじ」として市販されている下処理済み商品を使うのも、一つの賢い選択肢です。国産牛すじ専門店などが販売している下処理済みのボイル牛すじを購入すれば、串に刺してそのまま煮込むだけで本格的な牛すじおでんが完成します。忙しい日の夕食作りを劇的に楽にしてくれます。これは使えそうです。
参考:下処理済み牛すじを使った本格おでんのレシピ
【下処理不要】牛すじ専門店が教える本格牛すじおでんのレシピ|国産牛すじ専門店
おでん作りの手間をどこで節約するかは、その日の時間や気力によって選べばいいことです。「今日は手間をかけたくない」という日には市販の下処理済み品を使い、「時間があるときにまとめて仕込む」という日には自分で下処理して冷凍ストックしておく。この使い分けができると、牛すじおでんのハードルがぐっと下がります。結論は、使い分けが最もストレスが少ない方法です。