有機jas規格農薬との基準と認証手続き

有機JAS規格では厳格な農薬使用基準が定められています。化学合成農薬の原則禁止から、天然由来成分を主とした許可農薬まで、その詳細をご存じですか?

有機jas規格農薬の基準

この記事でわかること
📋
有機JAS規格の農薬使用基準

化学合成農薬の使用制限と許可される天然由来農薬の種類を解説します

🔍
認証取得の手続きと条件

登録認証機関による審査プロセスと必要な転換期間について説明します

⚖️
残留農薬検査と品質管理

有機農産物の安全性を確保するための検査体制と管理方法を紹介します

有機jas規格農薬の定義と化学合成農薬の使用制限

有機JAS規格では、化学的に合成された肥料及び農薬の使用を原則として禁止しています。多年生作物は収穫前3年以上、それ以外の農産物は播種または植付前2年以上の間、化学合成農薬を使用しない有機的管理が必要とされています。この厳格な基準により、環境への負荷を最小限に抑え、安全な農産物の生産が実現されています。
参考)有機農業で使える“農薬”があるってホント?|マイナビ農業

化学合成農薬が使えないため、生産者は物理的防除、耕種的防除、生物的防除などを組み合わせた総合的な防除方法を採用する必要があります。しかし、農産物に重大な損害が生じる危険が急迫している場合に限り、有機JAS規格で認められた特定の農薬を使用することができます。
参考)有機栽培の頼れるパートナー!有機農産物に使える農薬&自然農薬…

有機JAS規格における「化学的に合成」の定義は、製造方法に基づいています。たとえば炭酸カルシウムでも、化学的に合成されたものは使用できませんが、天然鉱石を粉砕したものは使用可能という明確な区別があります。この基準により、自然由来の資材を優先的に活用する農業が推進されています。
参考)https://www.greenjapan.co.jp/yuki_hyoji_noyak.htm

有機jas規格農薬として許可される天然由来成分と特定農薬

有機JAS規格で使用が認められる農薬は、「一部の化学農薬」と「特定農薬」の2種類に分類されます。特定農薬には、食酢、重曹、次亜塩素酸水などの日常的に使用される物質や、天敵昆虫などの自然界の物質が含まれています。これらは環境への影響が最小限であることが確認されており、有機農業において優先的に使用される傾向があります。
参考)有機JAS(有機農産物に関するQhref="http://www.famic.go.jp/hiroba/anzen_anshin_qa/enterprise_consultation_case/yuuki_nousan/" target="_blank">http://www.famic.go.jp/hiroba/anzen_anshin_qa/enterprise_consultation_case/yuuki_nousan/amp;A) - 独立行政法人農林…

除虫菊から抽出した成分を使用した除虫菊乳剤やピレトリン乳剤は、共力剤としてピペロニルブトキシドを含まないものに限り使用が許可されています。また、銅や硫黄を成分とした薬剤、性フェロモン剤、天敵や微生物を用いた生物農薬なども使用可能です。
参考)有機栽培でも農薬を使うことができるのですか。|そのまま食べて…

天然由来成分を主とした農薬としては、なたね油乳剤、マシン油乳剤、デンプン水和剤、脂肪酸グリセリド乳剤などがあります。これらは植物や昆虫からとれた自然由来の物質を使用しており、病害虫から有機農産物を守るために効果的に活用されています。さらに、クロレラ抽出物液剤や混合生薬抽出物液剤など、植物由来の成分を活用した農薬も認められています。
参考)農薬不使用とは?無農薬との違いや表示ガイドラインの定義など農…

有機jas規格農薬の使用条件と防除方法の組み合わせ

有機JAS規格では、農薬の使用が認められるのは「農産物に重大な損害が生ずる危険が急迫している場合であって、耕種的防除、物理的防除、生物的防除またはこれらを適切に組み合わせた方法のみによっては、ほ場における有害動植物を効果的に防除することができない場合」に限定されています。つまり、農薬はあくまで最後の手段として位置づけられています。​
耕種的防除では、輪作や間作、抵抗性品種の選択などにより病害虫の発生を抑制します。物理的防除では、防虫ネットの設置や手作業による害虫の除去、光や熱を利用した防除方法が採用されます。生物的防除では、天敵昆虫の活用や微生物資材の利用により、化学農薬に頼らない持続可能な農業が実現されています。​
農薬を使用する際には、農薬取締法に基づく農薬の容器等に表示された使用方法を厳守しなければなりません。また、使用できる農薬の種類や使用条件は有機JAS規格の別表2に詳細に記載されており、生産者はこれを遵守する必要があります。たとえば、メタアルデヒド粒剤は捕虫器に使用する場合に限定され、硫酸銅や生石灰はボルドー剤調製用に限定されるなど、細かい使用条件が定められています。​

有機jas規格農薬の残留基準と検査体制

有機農産物であっても、残留農薬の検査は重要な品質管理の一環です。有機JAS規格で許可された農薬を使用した場合でも、適切な使用方法を守り、残留農薬が基準値以下であることを確認する必要があります。登録認証機関は、生産者が使用する資材の適合性を評価するため、資材メーカー等から原材料や製造工程などの詳細な情報を入手します。
参考)ルナラパン

残留農薬の分析には、高度な分析技術が使用されています。超高効液相色谱-串联质谱法(UPLC-MS/MS)や气相色谱-质谱法(GC-MS)などの最新分析技術により、微量の農薬残留も検出可能です。QuEChERS法などの前処理技術と組み合わせることで、複数の農薬を同時に分析できる体制が整備されています。
参考)301 Moved Permanently

有機農産物の生産者は、使用する資材が有機JAS規格に適合しているかを事前に評価する必要があります。資材メーカーに対して適合性証明を求めることがありますが、有機JAS制度では肥料や農薬等の適合資材に関する認証制度は存在しないため、生産者自身が資材の情報を収集し、判断する責任があります。この評価プロセスには、JAS資材評価手順書に基づく厳密な基準が適用されます。​

有機jas規格認証取得における農薬管理の実務上の課題

有機JAS認証を取得するには、栽培時に「有機JAS規格で認められていない肥料・農薬などの資材」を使用していると認証を受けられません。認証取得までには申請書受理から4ヶ月から8ヶ月程度かかり、書類審査、実地調査、判定といった厳格なプロセスを経る必要があります。​
転換期間中は特に注意が必要で、多年生作物では最初の収穫前3年以上、それ以外の農産物では播種または植付前2年以上の期間、禁止された農薬や化学肥料を使用してはなりません。この転換期間1年目のほ場については、前年の収穫日満1年後に検査が実施されます。また、ほ場や施設・用具に農薬や化学肥料などの使用禁止資材の飛散・混入がないことも確認されます。
参考)新たに有機JAS認証したい方 href="https://rrofi.jp/new_jas" target="_blank">https://rrofi.jp/new_jasamp;#8211; 民間稲作研究所…

有機栽培における農薬管理の実務では、隣接する慣行栽培ほ場からの農薬飛散防止対策が重要な課題となります。緩衝地帯の設置や防風ネットの設置など、物理的な対策が必要です。さらに、使用した農薬の種類、使用量、使用日時などを詳細に記録し、認証機関の検査に備える必要があります。
参考)http://www.yu-ki.or.jp/tejun/ninteijyun.htm

生産コストの面でも課題があり、化学合成農薬を使用しないことで病害虫防除に多大な労力が必要となります。天敵昆虫の導入や生物農薬の使用にはコストがかかり、収量が慣行栽培に比べて低下する傾向もあります。しかし、有機農産物は市場で高価格で取引される傾向があり、付加価値の向上により生産コストをカバーできる可能性があります。​
認証取得後も、毎年の実地調査や書類審査が実施され、継続的な管理が求められます。3月末日までに前年度の格付・格付表示実績報告書を提出し、認証の更新手続きを行う必要があります。これらの継続的な管理により、有機農産物の品質と安全性が保証されています。
参考)有機栽培に農薬が使われている!?「有機JASマーク」の盲点を…

<参考リンク>
有機農産物の農薬使用基準の詳細について、農林水産省の公式ページで確認できます。

 

有機食品の検査認証制度:農林水産省
有機JAS規格で使用可能な農薬の一覧表は、以下のページで詳しく解説されています。

 

有機農産物と農薬 - 日本農薬株式会社
有機栽培における農薬使用の実務的な知識については、こちらの記事が参考になります。

 

有機栽培の頼れるパートナー!有機農産物に使える農薬 - スマート農業