スペイン産のハモンセラーノやイベリコハムを食べると、アフリカ豚コレラウイルスに感染する——そう思っている方も多いですが、実はそれは誤解です。
アフリカ豚コレラ(ASF:African Swine Fever)は、豚やイノシシに感染するウイルス性の疾病です。致死率はほぼ100%に達することもあり、養豚産業に壊滅的な被害をもたらします。
重要なのは、このウイルスは人間には感染しないという点です。つまり、感染豚の肉を食べても人体に影響はありません。これが基本です。
スペインでは2022年以降、野生イノシシの間でASFが確認されるようになり、徐々に感染地域が拡大しています。欧州食品安全機関(EFSA)の報告によると、スペイン東部および中部の一部では、野生イノシシを介したウイルスの拡散が継続的に観察されています。養豚農家への感染リスクも高まっており、スペイン政府は対策に追われています。
日本の農林水産省もこの動向を注視しており、スペインからの豚肉・豚肉製品の輸入に関する検疫条件は随時見直されています。感染が広がれば輸入停止になる可能性もあります。意外ですね。
スペインはEU域内で最大の豚肉生産国の一つであり、年間約5,000万頭の豚が飼育されています。東京都の人口(約1,400万人)の約3.5倍に相当する数の豚が、一国で管理されているイメージです。その規模ゆえに、ASFの影響は世界市場に直結します。
スーパーの輸入食材コーナーで見かけるハモンセラーノやイベリコハム。これらはスペインを代表する豚肉加工品です。ASFの感染が拡大した場合、日本への輸入がどうなるか気になるところですね。
現時点(2025年8月時点の情報)では、スペイン産の豚肉製品は日本への輸出が継続されています。ただし、日本の動物検疫所は輸出国の感染状況をモニタリングしており、特定地域でのASF発生が確認された場合、その地域からの製品は輸入停止の対象になり得ます。
これは経済的に大きな影響をもたらします。たとえばイベリコベジョータのハムは100gあたり3,000円を超えるものも珍しくありません。万一輸入が停止されれば、希少性がさらに高まり、価格が1.5〜2倍に跳ね上がる可能性があります。
日本に輸入されるスペイン産豚肉製品の金額は年間数十億円規模とされており、食品輸入業者にとっても深刻なリスクです。痛いですね。
一方で、加熱処理済みの製品(ソーセージや缶詰など)は、熱処理によってASFウイルスが不活化されるため、生ハムのような非加熱製品と比べて検疫上の扱いが異なる場合があります。加熱処理済みかどうかを確認することが条件です。
輸入食材を頻繁に購入する方は、農林水産省や動物検疫所のウェブサイトで輸入禁止措置の更新情報を確認しておくと、家計の計画にも役立ちます。農林水産省の公式サイトでは、国別の輸入禁止情報が定期的に更新されています。
「感染した豚の肉を食べたらどうなるの?」という疑問は、多くの方が持ちます。どういうことでしょうか?
ASFウイルスは70℃以上の加熱処理で不活化されることが国際獣疫事務局(WOAH)によって確認されています。つまり、しっかり加熱調理した豚肉であれば、ウイルス的な安全性に問題はありません。
ただし問題になるのは「非加熱の豚肉製品」です。生ハムや一部の腸詰め製品は、製造過程で高温加熱されないため、原産地の衛生管理が非常に重要になります。ASFウイルスは塩漬けや乾燥ではほとんど不活化されないことが知られており、感染豚由来の生ハムには理論上リスクがあります。
これが基本的な考え方ですね。
しかし実際には、日本に輸入される生ハム類は動物検疫所での検査を経ており、感染国からの非加熱製品は輸入が禁止されています。消費者が市場で購入できるスペイン産生ハムは、現時点では検疫をクリアしたものです。
家庭で気をつけるべき点は、海外旅行の際に持ち込む肉製品です。スペイン旅行のお土産として生ハムをスーツケースに入れて帰国しようとすると、日本の検疫で没収されるだけでなく、最大1年の懲役または100万円以下の罰金が科せられる場合があります。知らずにやると非常にまずいですね。これは家族全員に関わるリスクです。
ASFウイルスが最も恐れられている理由の一つが、その「環境耐性の高さ」です。このウイルスは室温の環境で数週間から数ヶ月生存可能であり、冷凍肉の中では数年間生き続けるとされています。これは使えそうな知識です。
問題になるのが、旅行者が持ち込む肉製品や食品のクズです。過去に発生した事例では、アジア各国への侵入はほとんどが「人の移動と食品の持ち込み」が原因だったとされています。中国では2018〜2019年にASFが蔓延し、国内の豚の約40%にあたる約2億頭が死亡または殺処分されました。2億頭とは、日本全国の養豚頭数(約900万頭)の約22倍にあたる規模です。
家庭でできることは、「肉製品を海外から持ち込まない」という一点に尽きます。観光地のスーパーで購入した真空パックのソーセージやハムも、日本への持ち込みは原則禁止です。
キャンプや農場体験の際に自分の靴底にウイルスが付着するリスクもゼロではありません。養豚場に近い場所を訪問した後は、靴底を消毒する習慣が養豚業者を守る意識につながります。
結論は「持ち込まないこと」です。家族旅行でスペインを訪れる際は、帰国前にスーツケースの中身を確認しておきましょう。税関申告書に「持ち込む肉製品あり」と記載するだけで手続きができますが、検疫を通過できなければ現物は廃棄処分となります。
食卓を守る立場から見て、ASFとスペイン産豚肉製品の今後はどう動くのでしょうか。
現在の状況を整理すると、スペインではASFの感染は野生イノシシを中心に拡大傾向にありますが、スペイン政府はEU規定に基づく防疫措置を実施しています。スペインの養豚産業はEU全体の約20%を占めるほど巨大であり、完全崩壊には至っていませんが、楽観視もできない状況が続いています。
日本のスーパーに並ぶ豚肉の価格への影響は、現状ではスペイン産よりも北米産や国産に依存している分、限定的です。ただし、スペインを含むEU各国でASFが拡大し、EU全体からの輸入規制が強化された場合、国産豚肉の価格が数十%上昇する可能性も排除できません。国産豚ロースが100gあたり200円から280円超に上がる局面も考えられます。
これは家計への直接打撃です。
賢い備えとしては、今のうちに冷凍可能な豚肉を適量まとめ買いして保存しておくか、代替タンパク質として鶏むね肉や大豆ミートを活用するメニュー開拓をしておくことが有効です。一度使えるレパートリーを増やしておけば、価格変動への耐性がつきます。
また、農林水産省が発表する「ASF発生状況マップ」は、年数回更新されており、感染地域の把握に役立ちます。これは無料で閲覧できます。スマートフォンのブックマークに登録しておくだけで、情報収集にかかる時間をほぼゼロにできます。
最後に、ASFは繰り返しになりますが人には感染しません。正確な情報を持つことが、不必要な買いだめや風評被害を防ぐことにもつながります。正しく知ることが最大の対策です。