アントシアニジンとアントシアニンは、植物に含まれるフラボノイドの一種ですが、化学構造の面で重要な違いがあります。アントシアニジンは、フェニルプロパノイドという基本骨格にベンゾピリリウム構造を持つ色素成分の最も基本的な形です。一方、アントシアニンはこのアントシアニジンに糖や有機酸が結合した配糖体の総称です。
植物の生合成経路では、まずアントシアニジンが合成され、その後に糖や有機酸がアントシアニジンに結合することでアントシアニンになります。自然界ではアントシアニジン単体で存在することはまれで、通常、植物体内ではアントシアニンの形で蓄積されています。これは、アントシアニジン自体が非常に不安定な成分であるため、糖や有機酸による修飾を受けることで初めて構造的に安定性を获得するためです。
アントシアニジンの不安定性は食品加工の際に大きな意味を持ちます。加熱処理が行われると、アントシアニンに結合している糖や有機酸が分解され、アントシアニジンに戻る可能性があります。興味深いことに、アントシアニンに結合している有機酸の種類によって、加熱への耐性が異なります。
特に複数の有機酸が結合したポリアシル化アントシアニンは、非常に高い安定性を示します。例えば、紫サツマイモに含まれるアントシアニンYGM-6や、食品添加物として認められているバタフライピー色素(チョウマメ色素)に含まれるテルナチンは、複数の有機酸でアシル化されているため、加熱処理にも耐える性質を持っています。加熱温度が60℃、80℃、100℃と高くなるほど、アントシアニンの残存率は低下することが実験でも確認されており、食品加工時にこの点を考慮することが重要です。
自然界に見られるアントシアニジンには、代表的な6種類があります。ペラルゴニジン、シアニジン、デルフィニジン、ペオニジン、ペツニジン、マルビジンです。これらの基本骨格の側鎖にある水酸基やメトキシ基の数や配置により、由来するアントシアニンの色合いが大きく異なります。
デルフィニジンを由来とするアントシアニンは青い色を呈し、シアニジン由来は朱色から赤紫色、ペラルゴニジン由来は明るい赤色となります。興味深いことに、水酸基が多いほど色は青みが強くなり、水酸基がメトキシ基に置き換わるほど赤みが強くなるという法則があります。ブルーベリーやナスに含まれるデルフィニジン由来のアントシアニン、ブラックキャロットや紫キャベツに含まれるシアニジン由来のアントシアニン、イチゴや赤かぶに含まれるペラルゴニジン由来のアントシアニンというように、植物によって異なるアントシアニジン由来の色素が蓄積しており、これが多様な食材の色合いを生み出しています。
アントシアニンは強い抗酸化作用を持つため、体内の活性酸素を無害化し、酸化ストレスによる細胞損傷を防ぎます。活性酸素の過剰により引き起こされるがん、心臓病、脳卒中などの生活習慣病、さらには皮膚のシミやシワといった老化現象を予防する効果が期待されています。
また、アントシアニンは網膜に含まれるロドプシンという物質の再合成を助けることで、目の疲労改善と視機能の向上に役立つと考えられています。加えて、血液中の悪玉コレステロールの酸化を抑制することで動脈硬化を予防し、血糖値の上昇を抑える作用も報告されています。これらの多面的な健康効果により、アントシアニンはビタミンCの20倍、ビタミンEの50倍の抗酸化力を持つと評価されることもあります。
食事での効率的な摂取方法としては、ブルーベリーやカシス、黒豆、紫サツマイモ、ナスなどのアントシアニンを豊富に含む食材を選ぶことが重要です。加熱によりアントシアニンが減少することを踏まえ、果物は可能な限り生のまま食べ、野菜を調理する場合は長時間の加熱を避け、炒め物や揚げ物など短時間の調理方法を選ぶことをお勧めします。
アントシアニンの最も特徴的な性質の一つが、pH値による色の変化です。酸性環境ではアントシアニンは赤色のフラビニウムイオンの形態をとり、pH3~7の中性に近づくにつれて紫色から青色の形態に変わります。アルカリ性ではさらに色が変わり、最終的には無色のカルコンに変化して退色します。この性質は紫キャベツを使った理科実験でも有名で、酸性液を加えると赤に、アルカリ性液を加えると青~黄色に変わります。
この特性は家庭の調理にも活用できます。清涼飲料など酸性食品は、アントシアニンが安定で相性が良好ですが、牛乳などの中性食品や、卵や重曹を使う菓子類でアントシアニンを使用する際は、変色を防ぐための工夫が必要になります。また、マロウティーなどで使われるチョウマメのアントシアニンは複雑な構造を持つため、単純な構造のアントシアニンではすぐに分解してしまうようなpH条件でも色の変化を長く楽しむことができます。
農研機構の公式ページでは、アントシアニジンとアントシアニンの構造的な違いと、植物での蓄積形態について詳しく説明されています
生物化学研究室では、アントシアニンの生合成経路と、アントシアニジンの3つの基本構造について詳細に解説しており、秋の紅葉のメカニズムも説明されています
鹿光生物科学研究所のページではアントシアニンの6種類のアグリコン、アシル化アントシアニンの安定性、pHによる色の変化などが、図解を含めて詳しく説明されており、バタフライピー色素の特性についても記載されています
ダイケン薬局ではアントシアニジンとアントシアニンの定義の違いに加え、プロアントシアニジンとの関係、そして複数のアントシアニジン構造が存在することによる色の違いについて解説しています
栄養のはなしでは、加熱処理がアントシアニンに与える影響について科学的知見を提供しており、調理方法による含有量の変化を詳しく説明しています

新田ゼラチン ハピコラサプリ (180粒) 美容サプリ/タブレットで手軽にコラーゲン補給/ブルーベリーの香り (コラーゲンペプチド 2,500mg プロアントシアニジン 100mg ビタミン類)