フランス料理だと思って注文していたビシソワーズ、実は生まれはアメリカのニューヨークです。
「ビシソワーズ(Vichyssoise)」という名前は、フランス語に由来します。正確な発音は「ヴィシソワーズ」で、フランス中央部オーベルニュ地方にある温泉保養地「ヴィシー(Vichy)」に、「〇〇風の・〇〇にちなんだ」を意味するフランス語の接尾辞「oise(オワーズ)」が合わさったものです。つまり名前を直訳すれば「ヴィシー風の(スープ)」という意味になります。
正式名称は「クレーム・ヴィシソワーズ・グラッセ(crème vichyssoise glacée)」といい、「氷で冷やしたヴィシー風クリームスープ」という意味を持ちます。これがそのままこのスープの最大の特徴を表しています。つまりビシソワーズとは、冷たく供することが大前提の冷製クリームスープです。
コトバンクなど辞書的な定義では「じゃがいもの冷製クリームスープ。じゃがいもとポロねぎを炒めてブイヨンで煮込み、裏ごしして生クリームを加えたもの」とされています。シンプルな言葉ですが、ここに調理の本質が凝縮されています。
「フランス料理の代表格」というイメージを持たれがちなビシソワーズですが、実際に生まれた場所はフランスではなくアメリカです。これが知られざる最大の事実です。
1917年、ニューヨークの名門ホテル「ザ・リッツ・カールトン」のシェフを務めていたフランス人のルイ・ディア(Louis Diat)が考案しました。彼の故郷はフランスのヴィシー近郊で、幼いころ夏に母親が残ったじゃがいもとポロネギのスープに冷たい牛乳を加えて出してくれたのがヒントになったといわれています。そのおふくろの味を洗練させ、故郷の地名「ヴィシー」を冠してメニューに加えたのが誕生の経緯です。
このスープはニューヨークの上流階級の間でたちまち大ヒットし、「冷製スープの女王」と呼ばれるようになりました。その後世界中に広まり、アメリカ生まれにもかかわらずフランス料理の定番として定着するという、ユニークな歴史をたどっています。
辻調理師専門学校:ヴィシソワーズの誕生秘話と歴史(専門学校公式サイト)
日本では1960年代ごろから高級ホテルやフレンチレストランで提供されるようになり、今では家庭でも作られる身近な料理になりました。「ビシソワーズ」という表記も一般的で、冷製スープの代名詞的な存在として広く親しまれています。意外な歴史ですね。
ビシソワーズのおいしさは、シンプルながら素材の質に大きく左右されます。基本の材料は次のとおりです。
| 材料 | 役割 |
|---|---|
| じゃがいも | スープのとろみとボリュームの主役 |
| ポロネギ(リーキ) | 繊細な甘みと香りの決め手 |
| 玉ねぎ | うまみと甘みの底上げ |
| バター | 炒める際のコクと風味づけ |
| ブイヨン | スープのベースとなる出汁 |
| 生クリーム・牛乳 | クリーミーさとなめらかさを加える |
じゃがいもの品種選びは仕上がりに直結します。ホクホク系の「男爵」はでんぷん質が多くざらついた食感になりやすいため、ビシソワーズにはしっとりときめ細かい「メークイン」が向いています。メークインは粘りがあるため、裏ごし後の舌触りがより滑らかに仕上がります。リッツ・カールトン東京のシェフもメークインを推奨しているほどです。これが基本です。
和樂web:ザ・リッツ・カールトン東京のヴィシソワーズ・なめらかさの秘密(プロシェフ監修)
ポロネギは日本のスーパーでは入手しにくい食材です。代用には長ネギの白い部分が使われることが多く、家庭では十分に代用できます。ただしポロネギの方が刺激が少なく、加熱するとトロッとした甘みが出るため、本格的な風味を求めるなら下仁田ネギが特に近い味わいとされています。長ネギで十分ですが、機会があればポロネギも試してみてください。
ビシソワーズを家庭で作るときに最もつまずきやすいのが「なめらかさ」の再現です。レストランのようにシルクのような舌触りにするには、いくつかの重要なポイントがあります。
まず野菜の炒め方が大切です。バターを鍋に溶かし、玉ねぎやポロネギ(長ネギ)を弱火でじっくりと炒める工程を「スュエ」といいます。野菜が透明になるまで、焦がさずに甘みを引き出すことが仕上がりの風味を左右します。次にじゃがいもを加え、ブイヨン(またはコンソメ)と水を加えて20〜30分ほど煮込みます。
煮上がったらミキサーまたはハンドブレンダーでなめらかに撹拌します。ここがポイントで、撹拌後にさらに目の細かいザルや漉し器で裏ごしすることで、プロの仕上がりに近づきます。裏ごしは面倒に感じるかもしれませんが、この一手間が食感をぐっと底上げします。これは使えそうです。
最後に生クリームと牛乳を加えて塩こしょうで味を整え、氷水を張ったボウルに鍋底を当てながら素早く冷やします。その後、冷蔵庫で2〜3時間しっかり冷やしてから提供するのが基本です。冷やすほどじゃがいものでんぷんの甘みが落ち着き、ポロネギの繊細な香りが際立つということです。
| 手順 | ポイント |
|---|---|
| ① 野菜を弱火でじっくり炒める | 焦がさず甘みを引き出す(スュエ) |
| ② ブイヨンで20〜30分煮込む | じゃがいもが崩れるまで柔らかく |
| ③ ミキサーで撹拌→裏ごし | 二重の工程でシルキーな舌触りに |
| ④ 生クリーム・牛乳を加えて味を調える | 濃厚さとさっぱり感のバランスを調整 |
| ⑤ 氷水で素早く冷やし→冷蔵庫で2〜3時間 | 十分に冷えることで風味が際立つ |
ミキサーがない場合でも、じゃがいもを薄切りにして十分に柔らかく煮込み、マッシャーでていねいに潰してから漉せば代用できます。すべて実践できれば理想的ですが、裏ごしだけは省かないことが大事です。
「生クリームを使うとカロリーが気になる」「ポロネギが近くのスーパーで売っていない」——そんな声はとても多いです。実際、家庭でのビシソワーズには使いやすい代用食材がいくつかあります。
生クリームの代わりに豆乳を使うと、カロリーを抑えつつクリーミーな口当たりを再現できます。無調整豆乳の方が大豆の風味がスープと馴染みやすくおすすめです。また、牛乳だけで仕上げてもさっぱりとした仕上がりになり、夏の朝食にもぴったりです。カロリーを抑えるなら豆乳一択です。
以下に家庭でよく使われる代用食材をまとめました。
- ポロネギ → 長ネギの白い部分:甘みや独特の香りは若干異なりますが、十分においしく仕上がります。下仁田ネギがより近い風味です。
- 生クリーム → 豆乳(無調整)または牛乳:さっぱりとしたヘルシー仕上げになります。
- ブイヨン → コンソメ顆粒:小さじ1〜2杯で手軽にスープのベースが整います。
- ミキサー → マッシャー+漉し器:少し手間はかかりますが、なめらかに仕上がります。
アレンジとして、コーン・かぼちゃ・枝豆などを加える「野菜バリエーション」も人気があります。夏野菜との掛け合わせで彩りも鮮やかになり、食卓が一気に華やかになります。残ったビシソワーズを米粉で作るおやきにリメイクするレシピもSNSで話題になっています。一度作れば活用の幅が広がります。
ヘルシーに作りたい場合、バターを使わずオリーブオイルで野菜を炒める方法もあります。この場合、熱によるオリーブオイルの芳香がスープに溶け込み、よりあっさりとした風味になります。生クリームなしでも十分においしく作れます。
シェフレピ:アメリカ生まれのヴィシソワーズ・魅力と歴史・プロの調理法(料理専門メディア)
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