ビーツをゆでる前に皮をむいてしまうと、栄養の9割近くが茹で汁に溶け出してしまいます。
ビーツは「食べる輸血」「奇跡の野菜」とも呼ばれるほど栄養価が高いスーパーフードです。ところが、下処理の仕方を間違えると、せっかくの栄養をほぼ丸ごと捨ててしまうことになります。
ビーツの栄養の核心は、カリウム・葉酸・ビタミンB群・ベタインなど、水に溶けやすい水溶性の成分です。皮をむいてから鍋に入れると、これらが一気に茹で汁へ流れ出てしまいます。皮付きのまま加熱するのが基本です。
| 加熱方法 | 時間の目安 | 栄養のキープ度 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 電子レンジ(600W) | 約8分 | ◎ | ★★★(時短最優先) |
| オーブン焼き(180℃) | 40〜60分 | ◎ | ★★★(甘み最大) |
| 皮付きのまま茹でる | 30〜60分 | ○ | ★★(スープ向き) |
| 皮をむいてから茹でる | 20〜30分 | △ | ★(栄養が流出しやすい) |
皮付きで加熱すると、仕上がり後に手でスルッとむけるようになります。これは「スキン・スリップ」と呼ばれる現象で、加熱後のビーツの皮はキッチンペーパーでこするだけで面白いほどきれいに取れます。
ただし色素が強力なため、まな板や手が真っ赤に染まります。作業時はビニール手袋をし、まな板にはラップを敷いておくと洗い物がぐっと楽になります。これが意外と大切なポイントです。
電子レンジを使う場合は、洗ったビーツ(皮付きのまま)を耐熱容器に入れ、水を少量(1〜2cm分)加えてふんわりラップし、600Wで約8分加熱します。竹串がスッと通れば完成。鍋で1時間かける下処理が、約8分で終わるのは大きなメリットですね。
参考:ビーツの下処理・保存方法について農家スタッフが詳しく解説しています。
ビーツを避けている方の多くが理由に挙げるのが、独特の「土臭さ」です。この正体は「ゲオスミン(Geosmin)」という成分で、雨上がりの土の香りと同じ物質です。ゲオスミンは酸と熱に弱い性質があるため、正しく対処すれば臭みをほぼ消すことができます。
方法①:酢やレモン汁を使う
ゲオスミンは酸性の環境で分解されます。茹でる際に大さじ1程度の酢を加えると、加熱中から臭みが抑えられます。サラダにする場合は、レモン汁やバルサミコ酢を使ったドレッシングで和えるだけで効果抜群です。つまり酸味が土臭さのカギです。
方法②:乳製品と組み合わせる
ヨーグルト・サワークリーム・クリームチーズは、ゲオスミンをマスキングする働きがあります。本場ロシアのボルシチにサワークリームが添えられるのは、見た目だけでなく科学的な理由があります。ヨーグルトをかけるだけで食べやすくなります。
方法③:しっかり加熱する
生のまま食べると土臭さが最も強く出ます。加熱時間が長いほどゲオスミンは飛びやすく、特にオーブン焼きは乾熱のため臭み成分が効率よく揮発します。「加熱後に風味が変わった」と感じる人が多いのはこのためです。
土臭さが苦手な方でも、カレーに角切りで入れる方法は特におすすめです。じゃがいも感覚で加えるだけで、食感と甘みがプラスされ、土臭さはスパイスに完全に隠れます。これは使えそうです。
忙しい日々の中で「買ったけど使えなかった」は一番もったいない結末です。ビーツは電子レンジと缶詰・水煮パックを上手に活用することで、日常の食卓にぐっと取り入れやすくなります。
電子レンジ活用法(時短8分コース)
洗ったビーツ(約200g)を皮付きのまま耐熱容器に入れ、水を1〜2cm加えてラップします。600Wで4分加熱したら裏返し、さらに4分。竹串がスッと入れば完成です。加熱後は粗熱が取れてから皮をむくと、やけどを防げます。
まとめて一度に加熱し、薄くスライスして冷凍しておくと、食べたいときにすぐ使えて便利です。冷凍したビーツはスムージーや味噌汁に凍ったまま入れられます。
缶詰・水煮パック(下処理ゼロコース)
スーパーや輸入食品店、Amazonなどで手に入る「ビーツ水煮缶」は下処理が完全に済んだ状態で販売されています。開けてカットするだけで、すぐにサラダやスープに使えます。缶詰なら下処理ゼロが条件です。
缶詰の汁にも栄養と色素が含まれているため、そのままポタージュに加えたり、炊き込みごはんの水分の一部として使うと、きれいなピンク色のごはんが炊けます。見た目が華やかなので、お弁当にも喜ばれます。
参考:ビーツ水煮缶を使った本格ボルシチの作り方を農家直伝のレシピで紹介しています。
ここは検索上位の記事にはあまり書かれていない内容です。生ビーツを購入したとき、葉と茎ごとついてきた場合、多くの方がその部分を捨ててしまっているのではないでしょうか。実はビーツの葉と茎は、根の部分と同様に食べられる「もう一品」です。
ビーツの葉の栄養価
ビーツの葉はほうれん草と同じアカザ科の植物で、栄養的にも似た特徴を持ちます。鉄分・ビタミンK・ビタミンC・葉酸が豊富で、特にビタミンKは骨の健康に欠かせない成分です。根よりも葉の方がビタミンCは多いと言われています。葉は栄養面で侮れません。
ビーツの葉・茎の食べ方
小さくて柔らかい葉は、生のままサラダに加えられます。大きくなった葉はほうれん草のように炒めたりおひたしにすると食べやすくなります。
赤い茎は特に使い勝手がよく、以下の料理に活用できます。
根・茎・葉をまるごと使い切れば食材のムダがゼロになり、家計にも優しい食べ方になります。いいことですね。
ただし、葉もシュウ酸を含むため、大量に食べ過ぎないように気を付けてください。さっと茹でてからアク抜きをすると安心です。これだけ覚えておけばOKです。
「体に良いから」とたっぷり食べたくなるのがスーパーフードの宿命ですが、ビーツには食べ過ぎると健康リスクが生じる成分も含まれています。正しい適量を知って、長く安全に取り入れましょう。
シュウ酸による尿路結石リスク
ビーツにはほうれん草と同じ「シュウ酸」が100gあたり約500〜700mg含まれています。ほうれん草(約770mg)に次いで多い野菜の一つです。シュウ酸は体内でカルシウムと結合して「シュウ酸カルシウム」という結晶を作り、これが尿路結石の主な原因になります。
シュウ酸は水溶性なので、茹でることで大幅に減らせます。茹で汁を捨てることが前提です。茹でる一手間がリスク軽減の条件です。
1日の適量目安
| 対象者 | 1日の目安量 | 頻度 |
|---|---|---|
| 健康な成人 | 生で約100g(中サイズ半個〜1個分) | 週2〜3回程度 |
| 子ども(3歳以上) | 30〜50g程度 | 少量から様子を見る |
| 妊婦 | 50g程度 | 過剰摂取を避ける |
| 腎臓疾患・結石の既往歴がある方 | 医師に要相談 | 要相談 |
「ビーツ尿」は病気じゃない
ビーツを食べた後、尿や便がピンク〜赤色になって驚く方がいます。これは「ビーツ尿(ビートルリア)」と呼ばれる現象で、ビーツの赤色色素「ベタシアニン」が完全に分解されずに排出されることで起こります。健康への影響はありません。1〜2日で自然に元の色に戻るので心配不要です。
ただし、ビーツを食べた覚えがないのに尿が赤い場合は、血尿の可能性があるため必ず医師に相談してください。
低血圧の方は少量から
ビーツに豊富な「硝酸塩」は体内で一酸化窒素(NO)に変換され、血管を拡張して血圧を下げる効果があります。複数の臨床研究で、ビーツジュースの摂取により収縮期血圧が4〜10mmHg低下したことが報告されています。高血圧の方には嬉しい効果ですが、もともと低血圧の方は血圧が下がりすぎてめまいや立ちくらみが出る可能性があります。低血圧の方は30〜50g程度の少量から始めるのが原則です。
参考:ビーツの食べ過ぎによるシュウ酸リスクや適量について管理栄養士監修のもと詳しく解説されています。