ビタミンC(L-アスコルビン酸)は、食品添加物として使用される際に「酸化防止剤」という分類に含まれます。一般的に「防腐剤」と呼ばれることもありますが、正確には酸化を防ぐことで食品の劣化を抑制する働きを持つ成分です。水溶性のビタミンとして広く知られるこの物質は、野菜や果実に天然に含まれており、食品添加物としても安全性が高いとされています。
参考)https://www.mrso.jp/colorda/lab/3450/
食品表示においては「酸化防止剤(ビタミンC)」と記載されることが一般的ですが、栄養強化の目的で使用される場合は表示が免除されることもあります。つまり、同じビタミンCでも使用目的によって表示方法が異なるという特徴があります。デンプンを加水分解して得られるブドウ糖を原料として、発酵により製造されるのが一般的な製法です。
参考)https://www.asama-chemical.co.jp/TENKAB/YUKAWA39.HTM
ビタミンCが酸化防止剤として機能するメカニズムは、その強力な還元作用にあります。食品中の脂肪が酸素と反応して過酸化脂質を生成すると、食品の風味や食感が悪化し、さらには健康に有害な影響を及ぼす可能性があります。ビタミンCは自らが酸化されることで、他の物質の酸化を防ぎ、食品の品質劣化を抑制します。
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具体的には、ビタミンCは酸素と反応することで食品中の酸化反応を抑制し、変色、褐変、風味の劣化などを防止します。この過程でビタミンC自体は酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)に変化しますが、これにより食品本来の色や風味、栄養価を長期間維持することができます。研究によると、ビタミンCの抗酸化作用は他の保存料と比較しても非常に効果的であり、食品の鮮度を長期間維持する能力が高いことが確認されています。
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ビタミンCは幅広い食品に酸化防止剤として使用されています。代表的な使用食品としては、果実加工品、漬物、缶詰、パン、そう菜などがあり、特にペットボトルのお茶や果実飲料では一般的に添加されています。また、油脂や油脂加工品にも使用され、植物油脂の酸化防止に効果を発揮します。
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水産加工品や畜肉加工品においても、ミオグロビンを多く含む食材の変色抑制効果に優れているため、積極的に活用されています。ワインやドライフルーツ、天然濃縮果汁などにも添加され、古くから硫黄を燃やして亜硫酸ガスを起こすことでワインの酸化と過発酵防止に使われてきた歴史もあります。使用基準は食品の種類によって異なり、例えば冷凍魚では400mg/kg以下、乳児用食品では500mg/kg以下といった具体的な上限値が設定されています。
参考)https://shareshima.com/info/36927007698
ビタミンC単独でも酸化防止効果はありますが、他の成分と組み合わせることでさらに強力な効果を発揮することが知られています。特にビタミンEとの併用は相乗効果が高く、油脂や油脂加工品全般の酸化防止に優れた効果を示します。ビタミンEは脂溶性の抗酸化剤であり、水溶性のビタミンCと組み合わせることで、異なる環境での酸化を効果的に防ぐことができます。
また、果実酸との組合せも効果的で、厳選した果実酸との相乗効果によって酸化防止効果を高めた製剤も開発されています。従来ビタミンC単独では酸化防止効果が弱かった飲食品に対しても、シナージスト効果が高い果実酸との組合せにより、リンゴ、モモ、バナナ、ごぼう、さといも、じゃがいも、白菜など幅広い食品に使用できるようになっています。ビタミンCパルミテートという油溶性の形態も開発されており、これにより容易に油脂に溶け、より効果的な酸化防止が可能になっています。
ビタミンCは酸化防止剤としてだけでなく、製パン工程において生地弾性を高める働きをすることが知られています。古くから柑橘類の果汁を加えてパン生地を作ると品質の良いパンができることが知られており、1938年にビタミンCが製パン性向上に寄与していると証明されました。この現象は、ビタミンCが空気中の酸素との接触やミキシング中に取り込まれる酸素により酸化され、酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)となることで生地の構造を改善するメカニズムによるものです。
参考)https://www.panpedia.jp/lesson/pdf/2013.10_4-7.pdf
製パンにおけるビタミンCの利用は、栄養強化や酸化防止という目的ではなく、製パン性や品質向上を主目的としています。この独自の応用方法は、ビタミンCが持つ多面的な機能性を示す好例であり、食品加工において単なる保存料以上の価値を提供していることを示しています。パン製造業界では、この特性を活用して、より弾力のあるふっくらとした食感のパンを製造することが可能になっています。
食品添加物としてのビタミンCは安全性が非常に高く、通常の摂取量で健康への悪影響の心配はほとんどありません。厚生労働省の食品安全委員会による評価でも、アスコルビン酸(ビタミンC)には発がん性や遺伝毒性などは認められず、繰り返し摂取による有害な影響も特に確認されなかったと報告されています。
参考)https://www.mix-nuts.ichoice-coop.com/organic/shokuhintenkabutsu_vitaminc-32/
ビタミンCは水溶性で体に蓄積しにくく、必要以上に摂取した分は尿中に排泄されるため、過剰摂取による急性の中毒症状も起こりにくい特徴があります。日本の栄養摂取基準では、推奨量は1日100mg、耐容上限量は1日1,000mgとされており、サプリメントなどで補給する際もこの上限量を目安にすると安全性が高いと考えられています。大量に一度に摂取すると一時的に下痢などの軽い症状が出る場合がありますが、重篤な副作用は報告されていません。
参考)https://ashitano.clinic/medicine/2358/
市販の粉末ビタミンC(原末)を家庭内で作られた飲料に加えることで、酸化防止効果を得ることができます。夏場の外出先で使うタンブラーや天然水の入ったペットボトルに添加することで、飲料の品質を保つことが可能です。ただし、添加量については食品製造業者が使用する基準を参考にしながら、必要最小限の量から試すことが推奨されます。
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家庭での保存においても、ビタミンCの特性を理解することは重要です。ほうれん草の場合、0℃の冷蔵庫で1日保存すると96%のビタミンCが残存しますが、25℃の室温では80%まで減少します。保存温度が高ければ高いほどビタミンCは失われるため、冷蔵庫もしくは冷暗所での保存がおすすめです。また、光を遮る褐色ガラス瓶に充填したり、窒素ガスの充填により酸素を排除するなどの方法で、ビタミンCの安定性を高めることができます。
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ビタミンCが食品に添加される際、その使用目的によって表示方法が異なります。酸化防止剤として使用される場合は「酸化防止剤(ビタミンC)」と明記する必要がありますが、栄養強化の目的で使用される場合は表示が免除されることがあります。つまり、栄養強化剤として使用されている場合には「ビタミンC」とだけ表示されることもあります。
参考)https://www.genspark.ai/spark/%E9%85%B8%E5%8C%96%E9%98%B2%E6%AD%A2%E5%89%A4%E3%81%A8%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AE%E3%83%93%E3%82%BF%E3%83%9F%E3%83%B3c%E3%81%AE%E8%A1%A8%E7%A4%BA%E3%81%A8%E4%BD%BF%E7%94%A8%E4%BE%8B/1d60bcba-4cdf-4164-bcb8-cc721eae5ebd
この表示の違いは消費者が添加物の種類を理解しやすくするための食品表示法に基づくものです。ただし、「ビタミンC」と「酸化防止剤」は別物のように聞こえますが、食品添加物のビタミンC自体が酸化防止剤の一種であり、名前の違いこそあれ、中身は同じアスコルビン酸であり、安全性や作用に違いはないといわれています。消費者は原材料表示を確認することで、ビタミンCがどの目的で添加されているかを判断することができます。