エディブルガーデン事例から学ぶ食べられる庭の作り方

エディブルガーデンの事例を長野市・日本橋・松戸市など日本各地から紹介。ベランダや狭いスペースでも始められる、食費節約にも役立つ「食べられる庭」の実践方法とは?

エディブルガーデンの事例と始め方を徹底解説

庭がなければエディブルガーデンは無理、と思っているなら月1万円の節約チャンスを逃しています。


エディブルガーデンの3つのポイント
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食べられる庭って何?

野菜・ハーブ・果樹など食べられる植物を育てる庭。観賞だけでなく、収穫して料理に活かせるのが最大の特徴です。

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ベランダでもOK

広い庭がなくても大丈夫。プランター1つから始められ、都市部のマンションでも実践できます。

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食費節約の効果あり

ミニトマトやハーブなど、よく使う野菜を自家製に切り替えることで月数千円〜1万円前後の節約が期待できます。


エディブルガーデンとは何か——「食べられる庭」の基本事例

エディブルガーデン(Edible Garden)とは、英語の「edible(食べられる)」と「garden(庭)」を合わせた言葉で、野菜・ハーブ・果樹など食用になる植物を中心に育てる庭や空間のことです。ただ眺めるだけの観賞用の庭と違い、育てた植物をそのまま食卓に届けられることが最大の特徴です。


「食べられる庭」という考え方自体は古くから存在してきましたが、近年は食の安全やサステナブルな暮らしへの関心が高まり、家庭菜園の進化版として注目が集まっています。公益財団法人都市緑化機構の資料によれば、エディブルガーデンは「五感を刺激し、花や緑・香りなどを1年中楽しめるとともに、ミツバチや蝶の蜜源となり、生物多様性にも寄与する潤いのある環境」として位置づけられています。


つまり食べるだけでなく、見て・触れて・香りを楽しむ、生活の質そのものを底上げする仕組みなのです。


日本でよく見られる事例を整理すると、大きく3つのタイプがあります。


- 家庭タイプ:自宅の庭・ベランダ・プランターで野菜やハーブを育てる個人・家族向けスタイル
- 地域・まちづくりタイプ:住民が共同でプランターや公共スペースに食べられる植物を植え、地域交流を生む活動
- 施設・教育タイプ:病院・企業ビルの屋上・学校などに菜園を設け、食育や療養、コミュニティ形成に活用するスタイル


どのタイプも「育てる・収穫する・食べる」という体験が軸にあります。これが基本です。


▶ ルボワ(外構・造園会社)によるエディブルガーデンの特徴とメリット解説


エディブルガーデンの事例①——長野市と松戸市の地域まちづくり型

国内で注目を集めているエディブルガーデン事例として、まず紹介したいのが長野市と千葉県松戸市の取り組みです。規模や方法こそ違いますが、どちらも「食べられる植物が地域をつなぐ」という本質は同じです。


🌱 長野市「エディブルガーデンラボ」の事例


2025年に話題となった長野市の取り組みは、NPO「エディブルガーデンラボ」が遊休地や公園を活用し、約70種類ものハーブや野菜を栽培するというものです。木製のプランターにバジル・パセリなど多彩な植物を植え、入口には「自由にお入り下さい」「採取OK」と書かれた看板を設置しています。


驚くのは、誰でも自由に収穫してよいという開放性です。行政も地域活性化の観点から支援しており、長野市内の街中でこの「食べられる庭」が増加中と信濃毎日新聞が2025年10月に報じています。近所のプランターから新鮮なパセリを摘んで帰るという日常が、現実に生まれています。


🌿 千葉県松戸市「エディブルウェイ」の事例


千葉大学松戸キャンパス近くで2016年から始まった「エディブルウェイ」プロジェクトは、松戸駅から約1kmの沿道に、おそろいのデザインを施したフェルトプランターを並べ、住民が各自の玄関先で野菜やハーブを育てるという活動です。個々の玄関先を「道」としてつなぐことで、食べられる景観をつくり出すというコンセプトが特徴的です。


この活動では、植物の成長具合で住人の健康状態を確認し合う「見守り役」としての機能も生まれました。収穫物を持ち寄った「ごはん会」で、今まで話したことがなかった近所の方同士が初めて会話するきっかけにもなっています。「野菜を育てると地域のコミュニティができる」という、食以上の価値があることがわかります。


地域型エディブルガーデンのポイントは、「庭がなくても始められる」という点です。マンション暮らしや集合住宅でも、玄関先の1つのプランターから参加できます。これは使えそうです。


▶ 松戸市エディブルウェイ主宰・江口亜維子さんへのインタビュー(タカショー ホームユース)


エディブルガーデンの事例②——東京・日本橋茅場町のビル屋上菜園「Edible KAYABAEN」

「ビルの屋上に菜園をつくるなんて難しそう」と感じる方も多いかもしれません。しかし東京都中央区日本橋茅場町には、2022年にオフィスビルの屋上に整備された本格的なエディブルガーデン「Edible KAYABAEN(エディブル カヤバエン)」が実際に稼働しています。


東京証券会館の屋上を活用したこの菜園には、現在150品種以上(当初200種)の食べられる植物が育っています。バジルだけでスイートバジル・ホーリーバジル・オパールバジル・レモンバジル・シナモンバジル・ブッシュバジルの6種類があり、熱帯植物のパッションフルーツも育つほどです。屋上は地上より約3℃気温が高く、作物の栽培が通常より1ヶ月ほど早まるという、地上では得られない独自の環境を活かした工夫が随所に見られます。


ここで特筆すべきなのが、教育機能との融合です。エディブル・スクールヤード・ジャパン(ESYJ)がプログラムを提供し、近隣の阪本小学校2年生と3年生が授業の一環として菜園に参加しています。子どもたちが育てた大根をなますにして学校給食に添えるという体験型の食育が実現しています。


また近隣企業の社員が参加することで、「菜園で摘んだハーブを同僚にプレゼントした」「菜園で出会った社外の方と食事に出かけた」というコミュニティ効果も生まれています。屋上の菜園が、オフィス街に新しいつながりをつくり出しているのです。




























項目 内容
場所 東京都中央区日本橋茅場町・東京証券会館屋上
開設年 2022年
栽培品種数 150種類以上(バジルだけで6種類)
主な活動 子ども向け自然学校「アーススコーレ」・小学校との食育授業・企業向けプログラム
特徴 屋上は地上より約3℃高く、栽培が1ヶ月早まる独自環境


▶ Edible KAYABAENガーデンティーチャー・山本竜太郎さんインタビュー(Bridgine)


エディブルガーデンの事例③——自宅ベランダ・小スペースでできる家庭型の始め方

「事例を見ても、うちには広い庭がないし…」と感じた方にこそ伝えたいのが、家庭型エディブルガーデンの現実です。実はベランダのプランター1つからでも、立派なエディブルガーデンは作れます。


公益財団法人都市緑化機構の資料では、葉菜類なら深さ約20cm前後のプランターでも十分に栽培できると明記されています。葉書の横幅(約15cm)より少し深いくらい——それで育てられる野菜がたくさんあるということです。


🥬 ベランダ・プランターで育てやすい植物リスト


| 植物 | 特徴 | 節約効果 |
|------|------|---------|
| ミニトマト | 1株で60〜80個収穫可。日当たりがあれば育てやすい | 1株で3〜4パック分相当(約600〜800円)の節約 |
| バジル・パセリ | プランターOK。ハーブは少量ずつ買うと割高なので自家製が特に効果的 | 1パック100〜150円を何度も買い直すコストが消える |
| 万能ネギ・シソ | 一度植えると長く収穫できる。日陰でも育つ品種あり | 薬味を毎回買わなくて済む |
| レタス・ベビーリーフ | 浅いプランターでも育つ。種を蒔いてから30〜45日で収穫 | 1袋200〜300円程度のものが継続収穫できる |
| ローズマリー | 多年草なので1度植えると何年も使える。虫除け効果もあり | 料理に使えてコンパニオンプランツにもなる |


家庭菜園の食費節約効果は「劇的なゼロ円生活」ではなく、月数千円〜1万円前後の節約が現実的なラインです。単価が高くよく使う野菜ほど節約を実感しやすいのが原則です。


💡 コンパニオンプランツで農薬を減らす工夫


エディブルガーデンを育てる上で知っておきたいのが「コンパニオンプランツ」の考え方です。相性のよい植物を一緒に植えることで、病害虫が減り、農薬を使わずに育てやすくなります。公益財団法人都市緑化機構の資料にも「コンパニオンプランツとしてハーブと野菜が共生し、病害虫が少なくなる」と記されています。


代表的な組み合わせ例は以下の通りです。


- トマト+バジル:バジルの香りがアブラムシなどを遠ざける
- キャベツ・ニンジン+ローズマリー:害虫の忌避効果が期待できる
- レタス+ニンジン:お互いの生育を助ける相性のよい組み合わせ


つまり農薬代が省けるだけでなく、自然の力を借りた安心な野菜が育てられるということです。


▶ 公益財団法人都市緑化機構「屋上で楽しむエディブルガーデンの基礎知識」(PDF)


エディブルガーデンが子どもの食育と家庭の会話を変える——意外な効果

エディブルガーデンを実践した家庭から多く聞かれるのが、「子どもが野菜を嫌がらなくなった」という声です。これは単なる偶然ではなく、植物を育てる体験が持つ教育的な力によるものです。


エディブル・スクールヤード・ジャパン(ESYJ)の活動では、「食べる」という行為が自然のダイナミックな営みと直結していることを体験することで、子どもたちの「生きる力」が育まれると実証されてきました。ブルーベリーの粒を数えて足し算の勉強をしたり、野菜の品種名を書くために漢字を覚えたりと、菜園は教科書では得られない学びの場になります。


ふだん内気な子どもが菜園ではいつの間にか友だちの輪に入り、感想を尋ねると真っ先に手を挙げて発言するといった変化も現場で多く見られています。自然と触れ合う中で、個性が伸び伸びと発揮される場所になるのです。


家庭でのエディブルガーデンでも、同じ効果は期待できます。「今日の夕飯、ベランダのバジル入れてみようか」という一言から、子どもが料理に参加する流れが生まれます。収穫・調理・食べる、という一連の体験を家族で共有できるのは、エディブルガーデンならではの豊かさです。


また、植物の世話をする習慣は意外にも精神的な効果があることが指摘されています。土に触れ、植物の成長を観察する行為は、緊張感を和らげ情緒を安定させる「園芸療法」としての効果があると、英国園芸療法協会でも定義されています。毎日の育児と家事で疲れを感じやすい方にとって、プランター1つの世話が「ほっとひと息つける時間」になることもあります。


🌸 兵庫県小野市の農園カフェ事例


兵庫県小野市のカフェ「neko de' himawari」では、カフェの周りにブルーベリー・リンゴ・ジューンベリーなど実のなる植物と、カフェメニューに取り入れられるハーブをエディブルガーデンとして配置するデザインを採用しています。カフェのメニューにそのまま活かせるハーブを庭で育てるという実践的な事例で、見た目の美しさと実用性が高いレベルで両立しています。自宅でも「台所で使えるものを庭で育てる」という発想を取り入れると、より暮らしに根ざしたエディブルガーデンが実現できます。


▶ 子どもの食と自然体験の効果について(福武財団 and F)


エディブルガーデンを長く続けるための3つの実践コツ

エディブルガーデンを始めても、「世話が大変で続かなかった」「収穫できず枯らしてしまった」という声も少なくありません。ここでは継続するために本当に大切なポイントを3つに絞って紹介します。


① 最初は「育てやすい3種類」に絞る


いきなり多くの種類を植えようとすると管理が追いつかず、挫折の原因になります。最初はミニトマト・バジル・万能ネギの3種類だけを育てることをおすすめします。この3つは初心者でも育てやすく、毎日の料理に使いやすい植物です。慣れてきたら少しずつ品種を増やしていくのが基本です。


初期費用としてかかるのは、プランター・土・苗代などで3,000〜8,000円程度が目安です。一般的な小区画の家庭菜園なら年間の維持費は5,000〜15,000円前後とされています。育てる作物を続けられる範囲に絞れば、固定費は数年でならされていきます。


② 「収穫日+使う料理」をセットで決める


せっかく収穫しても使い切れず傷んでしまうと節約効果が半減します。週に1回「収穫する日」と「その食材を使う料理」をあらかじめ決めておくのが効果的です。たとえば「水曜日にバジルを摘んでバジルペーストを作る」「土曜日にミニトマトを収穫してサラダにする」といった小さなルールが、無駄なく食べ切る仕組みになります。


収穫した野菜をベースに、足りない食材をスーパーで補うという順番にするだけで、無駄な買いすぎが防げます。これは使えます。


③ 「完璧に管理しない」ことを決めておく


毎日必ず水やりしなければと気負うと、出かける日が多い週には罪悪感が生まれてしまいます。育てる植物は「多少水やりを忘れても枯れにくいもの」を選ぶことが大切です。ローズマリーやミントなどのハーブは比較的乾燥に強く、手間がかかりません。真夏の水分管理だけは気を付ければ、あとは週1回程度の手入れでも育つ植物がたくさんあります。


「育てることが楽しい」と感じられる余裕を残しておくのが、長続きのコツです。頑張りすぎないことが条件です。




























よくある失敗 対策
最初から種類を増やしすぎて管理できない まず3種類に絞り、慣れてから増やす
収穫しても使い切れず傷む 収穫日と使う料理をセットで決めておく
水やりを忘れて枯らす 乾燥に強いハーブ類を中心に選ぶ
初期費用が高くなりすぎる プランター・土・苗の3点から始め、必要に応じて追加
夏に水切れで枯らす 真夏だけは朝夕2回の水やりを習慣にする


エディブルガーデンは、規模の大小を問わず「育てる・食べる・楽しむ」というサイクルが続けば成功です。長野市の70種類もの植物を育てる活動から、ベランダのプランター1つまで、出発点はどこでも構いません。自分のペースで始められる庭づくりが、食費節約・家族の会話・地域のつながりといった思わぬ恵みをもたらしてくれます。まずは育ててみたい植物を1つ選ぶこと——それだけで十分なスタートになります。


▶ 家庭菜園でどこまで食費は節約できる?リアルな数字と考え方(Green Life Lab)