加熱して使うと、えごま油の効能がゼロどころか体に有害な油に変わります。
2018年11月21日に放送されたNHK「ガッテン!」(テーマ:「スプーン1杯でカラダが激変!?食べるアブラの新常識」)では、えごま油をはじめとするオメガ3系脂肪酸の驚くべき健康効果が特集されました。この回が話題になった最大の理由は、番組内で実施された実際の実験データにあります。
番組では48人の被験者に、1日小さじ1杯のえごま油を1か月間摂取してもらうという実験を行いました。結果として、33人に体重の減少がみられました。つまり、参加者のおよそ7割近くに変化が現れたことになります。さらに、中性脂肪の数値が基準値より悪かった17人のうち、12人(約7割)の数値が改善するという結果も出ています。
油なのに、なぜ体重や中性脂肪が改善するのでしょうか。
えごま油に豊富に含まれる成分が「α-リノレン酸(アルファリノレン酸)」です。これはオメガ3系脂肪酸の一種で、人間の体内では合成できない「必須脂肪酸」にあたります。α-リノレン酸は体内でEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)に変換され、肝臓で中性脂肪が合成されるのを抑制するほか、すでに蓄積された内臓脂肪や皮下脂肪を燃焼させる方向に働くとされています。えごま油100gあたりのα-リノレン酸含有量は約60gと非常に高く、国民生活センターの調査でもその豊富な含有量が確認されています。
また、2週間の継続で1日の消費カロリーが70kcalアップしたというデータも番組では紹介されました。食べるだけで代謝が上がるというのは、意外な事実ですね。
国民生活センター「見た目だけでは分からない、えごま油の品質」
※えごま油の成分・α-リノレン酸含有量・酸化度合いの差について詳しく記載されています。
ためしてガッテンで注目されたのは、主にダイエット・中性脂肪改善の効能でしたが、えごま油が持つ健康効果はそれだけではありません。複数の研究と臨床データから、主婦の日常生活に関わる幅広い効能が確認されています。
まず、認知症予防の効果があります。α-リノレン酸が体内でDHAに変換され、脳神経細胞の死滅を防ぐ抗酸化作用を発揮します。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」でも、成人のオメガ3系脂肪酸の摂取目安量は1日1.6〜2.2gと設定されており、えごま油の小さじ1杯(約4g)で、この目安量をほぼ1本で達成できます。
次に、花粉症をはじめとするアレルギー改善の効果があります。これが意外と知られていません。現代の食生活では、サラダ油や加工食品に多く含まれるオメガ6系脂肪酸を過剰に摂取する傾向があります。日本脂質栄養学会が推奨するオメガ6:オメガ3の理想比率は「2:1」なのに対し、実際の現代人の摂取比率はおよそ「10:1」にまで偏っているというデータもあります。この比率が大きく崩れると体内での炎症反応が促進され、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状が悪化しやすくなります。えごま油でオメガ3を補うことは、アレルギーのバランスを整えることにもつながるということです。
さらに、国立がん研究センターが発表したメタアナリシスでは、オメガ3系脂肪酸の摂取が不安症状を軽減することが確認されています。育児や家事のストレスを抱える主婦にとっても、精神面への効果は見逃せないポイントです。
これだけ多くの効能が確認されているということです。
国立がん研究センター「オメガ3系脂肪酸の摂取による不安症状の軽減をメタアナリシスで確認」
※オメガ3系脂肪酸の摂取が不安症状を有意に軽減するという研究データが掲載されています。
えごま油を料理に使おうと、フライパンで炒め物に使っている方は少なくないと思います。これは健康のためになりません。
α-リノレン酸は熱に対して非常に不安定な性質を持っています。高温で加熱すると酸化が急速に進み、「過酸化脂質」という物質に変化してしまいます。過酸化脂質は消化管である程度分解されますが、体内に吸収されると動脈硬化や認知症の原因になるとされています。せっかく認知症を防ごうと毎日えごま油を使っているのに、加熱することで逆に認知症のリスクを高める原因物質を摂取していたとなれば、大きな損失です。
また、カップ麺の容器や納豆の容器(発泡ポリスチレン製)に直接えごま油を垂らすことも要注意です。えごま油には発泡ポリスチレン容器を変質・溶解させる性質があるため、容器に穴が開いてやけどする事故が報告されています。国民生活センターもこのリスクについて正式に注意喚起を行っています。
| 使い方 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|
| サラダにかける | ✅ OK | 非加熱で酸化せず、効果が保たれる |
| 味噌汁に後がけ(飲む直前) | ✅ OK | 人が飲める温度ではα-リノレン酸は壊れない |
| 卵かけご飯にかける | ✅ OK | 非加熱で最も手軽な摂り方のひとつ |
| フライパンで炒め物に使う | ❌ NG | 高温加熱で過酸化脂質が生成される |
| 発泡スチロール容器に直接かける | ❌ NG | 容器が溶け、やけどのリスクあり |
加熱しないことが大原則です。
国民生活センター「発泡ポリスチレン製容器にMCTオイルやえごま油等を加えるのはやめましょう」
※えごま油を発泡容器に直接入れることの危険性について、公的機関が注意喚起している情報が記載されています。
えごま油を購入してそのままコンロ脇の棚に置いている場合、それだけで酸化が進んでいる可能性があります。開封後の保存方法は、効能を維持するうえで非常に重要です。
えごま油は「熱・光・酸素」という3つの要素によって急速に酸化する性質を持っています。これはサラダ油やオリーブオイルと比べても酸化のスピードが段違いに速く、国民生活センターの実験でも「他の食用植物油脂よりも早く劣化する」ことが確認されています。開封後は冷蔵庫(0〜5℃)で保存し、1〜2ヶ月を目安に使い切るのが基本です。
酸化したえごま油は、体に良いどころか有害な過酸化脂質を含むものになってしまいます。魚臭い匂いや苦味が出ていたら、それは酸化のサインです。そのまま使い続けるのは避けましょう。
コンロ脇への放置はNGが原則です。
市販品を選ぶ際は、国民生活センターの調査でも品質にばらつきがあることが確認されています。透明に近い淡い黄色のものは精製度が高く酸化が進みにくい傾向があり、茶褐色が強いものは焙煎加工の影響で酸化度が高い可能性があります。購入前に色と表示をチェックする習慣をつけると、より良質なえごま油を選べるようになります。
えごま油の効能をきちんと得るためには、継続することが最も大切です。ためしてガッテンの実験でも、1か月の継続が成果につながっていました。つまり一時的に大量に摂っても意味がなく、「毎日小さじ1杯」を習慣化することが目標になります。
1日の摂取量の目安は小さじ1杯(約4g)です。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」が定めるオメガ3系脂肪酸の摂取目安量(成人女性:2.0g以上)を、これ1杯でクリアできます。飲み込みにくさはなく、味もほとんどクセがない製品が多いため、料理に後がけする形が最も続けやすいでしょう。
毎日の食事に取り込む最もシンプルな方法は、朝の味噌汁への後がけです。お椀にえごま油を小さじ1杯垂らしてから、火を止めた後の味噌汁を注ぐだけでOK。鍋に直接入れると加熱されてしまうため、必ず器に注いだ後に加えることが条件です。あるいは、卵かけご飯・サラダのドレッシング代わり・おひたしへの和え油としても活用できます。
もうひとつ、あまり知られていない独自のポイントがあります。えごま油だけを増やしても、オメガ6の摂りすぎを放置していると効果が出にくいということです。サラダ油・コーン油・大豆油などオメガ6系が多い油を日常的に使っている場合、それらをえごま油に「置き換える」意識が重要です。えごま油を追加するより、日常の油をえごま油に代替する方が、オメガ6:オメガ3の比率を整える効果が高くなります。
「置き換える」だけで効果が出やすくなる、というのは意外と知られていない事実です。
1日の摂取量に関しては、上限を超えた大量摂取(過剰な摂取)は下痢を引き起こすこともあるため、小さじ1杯を守ることを意識しましょう。油はカロリーが高いため、えごま油の分だけサラダ油などの他の油を減らすことで、カロリーの総量を調整することも大切です。
※n-3系脂肪酸(オメガ3)が脳機能・認知症予防に与える作用についての医学論文で、えごま油の認知症予防効果の根拠として参照できます。