「エピを使って」と医師に言われても、何のことかわからず困ったことはありませんか?
「エピ」は、医療従事者が日常的に使う略語で、正式名称はエピネフリン(Epinephrine)です。日本語では「アドレナリン」とも呼ばれ、両者はまったく同じ物質を指しています。副腎髄質(ふくじんずいしつ)から分泌されるホルモンであり、心拍数の増加・血管収縮・気管支拡張といった生体反応を引き起こします。
「エピ」と「アドレナリン」は同じです。
医療現場では、心停止・アナフィラキシー・重篤な喘息発作などの緊急場面で投与されます。日本の救急医療ガイドラインでも第一選択薬として明記されており、「とにかく緊急時に使う薬」というのが現場での位置づけです。
エピネフリンという名称は、ギリシャ語の「epi(上)」と「nephros(腎臓)」に由来します。つまり「腎臓の上」=副腎を意味しており、名前の由来を知ると記憶に残りやすいですね。一方、アドレナリンはラテン語の「ad(上)」+「renes(腎臓)」から来ており、英語圏ではアドレナリンよりエピネフリンという呼び方が主流です。
日本語の日常会話では「アドレナリンが出た!」という表現が広まっていますが、病院で使われる薬剤名・指示としては「エピ」が標準です。救急外来や手術室で「エピ1アンプル」などと言われるのは、エピネフリン1アンプル(1mg/1ml)を投与するという意味になります。
エピネフリンがなぜアナフィラキシーに使われるのか、その仕組みを理解しておくことは非常に重要です。アナフィラキシーとは、食物・薬物・ハチ毒などが引き金となって数分以内に全身の免疫反応が暴走し、血圧が急低下・気道が腫れて窒息状態になる生命危機です。
これは時間との勝負です。
エピネフリンを投与すると、以下の3つの作用が同時に起こります。
世界アレルギー機関(WAO)の声明では、アナフィラキシーに対してエピネフリンは「唯一の第一選択治療薬」とされており、抗ヒスタミン薬やステロイドは「補助的な役割」に過ぎないと明記されています。つまり、市販の抗アレルギー薬でアナフィラキシーを止めることはできません。
多くの保護者が「抗アレルギー薬を飲ませればいい」と思いがちですが、それは大きな誤解です。抗ヒスタミン薬の効果発現には30〜60分かかることがあり、急速に悪化するアナフィラキシーには間に合いません。エピネフリンが必要な理由はここにあります。
日本アレルギー学会の「アナフィラキシーガイドライン2022」でも、投与までの時間が長くなるほど死亡リスクが上がると記載されています。5分以内の投与が理想とされており、これが「エピペン」自己注射薬の存在意義です。
日本アレルギー学会 ガイドライン一覧 — アナフィラキシーガイドラインの内容を確認できます(アナフィラキシーとエピネフリンの使用指針について)
「エピペン(EpiPen)」は、エピネフリンをあらかじめ充填した自己注射器です。アナフィラキシーリスクの高い人(食物アレルギーを持つ子どもなど)が携行し、発作が起きたときに自分または周囲の人が太ももに押し当てて使います。
使い方はシンプルです。
具体的な手順は以下のとおりです。
日本では、エピペンは医師の処方が必要な医療用医薬品です。0.15mg(体重15〜30kg未満の小児用)と0.3mg(体重30kg以上用)の2種類があります。処方を受けたらかかりつけ薬局で入手でき、保険適用で購入できます。
保管にはいくつか注意点があります。
エピペンを処方された子どもを持つ保護者は、学校への「緊急時個別対応計画(アクションプラン)」の提出が推奨されています。文部科学省も学校での適切な管理・使用体制の整備を求めており、自治体ごとに書式が用意されている場合があります。
文部科学省 — 学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(エピペンの学校での管理と使用手順について)
救急医療の現場でエピネフリンは、心停止のCPR(心肺蘇生法)においても使用されます。日本版AHAガイドライン(JRC蘇生ガイドライン2020)では、心停止患者に対して「3〜5分ごとに1mgを静脈内投与」が推奨されています。
これは病院・救急隊員が行う処置です。
一般市民がエピネフリン注射薬を直接使うことはできません。ただし、エピペン(処方を受けた患者本人または家族・教職員など)は例外であり、法的に許可された範囲での使用が認められています。
少し知られていない事実として、日本では2011年から教職員がエピペンを代わりに打てるよう法整備が行われました。それ以前は本人以外の使用が法的にグレーゾーンでしたが、現在は「本人が打てない緊急時は周囲の人が使用可能」という解釈が法的に明確化されています。
知っておくと助かります。
救急車を呼んだ後でも、エピペンを持っているなら「呼ぶ前」に打つのが正しい対応です。救急車が来るまでの平均時間は全国平均で約9.4分(2023年総務省消防庁データ)ですが、アナフィラキシーは5分以内に急変することがあります。エピペンがあるなら、119番通報と同時進行で使用することが命を守ります。
総務省消防庁 令和5年版救急・救助の現況 — 救急車の平均到着時間などの統計データが掲載されています
家庭において最も「エピ」が身近になるのは、食物アレルギーを持つ子どもがいるケースです。日本では食物アレルギーを持つ子どもは約5〜10%とされており、小学校の30人クラスに1〜3人はアレルギー児がいる計算になります。
珍しくはないですね。
家庭での日常リスク管理として、押さえておきたいポイントをまとめます。
また、二相性アナフィラキシーという現象も覚えておく価値があります。最初の症状が収まった後、4〜12時間後に再び症状が出ることがあり、この「落ち着いたから大丈夫」という判断が二次被害につながります。エピペンを使用したら、症状が改善しても必ず救急搬送を受けてください。
この点は見落とされがちです。
エピペンを初めて処方された保護者向けには、製造元のマイランEPD合同会社(現ヴィアトリスグループ)が無料のトレーニング用デバイス(針なし練習用)を配布しています。かかりつけ医または薬局に申し込むことで受け取れるので、実際の使い方を事前に練習しておくと本番で落ち着いて対応できます。
エピペン.jp(公式サイト) — エピペンの使い方動画・練習用デバイスの入手方法・保管上の注意点が詳しく掲載されています
知識は備えになります。
「エピ」という言葉の意味を知っているだけでなく、いざというときに自分や家族を守るための行動ができるかどうかが、本当の意味での準備です。アレルギー科への受診、アクションプランの作成、エピペンの練習、この3つを今日から一つずつ確認してみてください。
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