おみやげで買ったエルブドプロヴァンスの95%は、実はフランス産ではありません。
エルブドプロヴァンス(herbes de Provence)とは、フランス南部・プロヴァンス地方で古くから料理に使われてきたハーブミックスのことです。フランス語で「エルブ(herbes)」は「ハーブ」、「プロヴァンス(Provence)」は南フランスの地方名を意味しており、つまり「プロヴァンスのハーブ」というそのままの名前が付けられています。
地中海性気候に恵まれたプロヴァンス地方では、タイム・ローズマリー・セージ・オレガノ・セイボリーなど多様なハーブが自生しており、古代のころからエジプトやマルセイユとの香辛料貿易を通じてハーブ文化が根付いていきました。各家庭や料理人が独自にブレンドして使っていたこのハーブミックスが「エルブドプロヴァンス」という名称で商品として体系化されたのは、実は1970年代に入ってからのことです。意外ですね。
それ以前は、家庭ごとにまったく異なる配合で使われていた「民間の調味料」だったわけです。1970年代以降、フランス料理への世界的な関心が高まるとともに商品化が進み、現在ではフランスはもちろん日本のスーパーマーケットやスパイス専門店でも手軽に購入できるようになりました。プロヴァンス産と認められた製品にはフランス政府の品質保証マーク「Label Rouge(ラベル・ルージュ)」が2003年から付けられており、本物の産地を見分ける目安になっています。
ちなみに、ブイヤベース・アイオリ・パスティスと並び、エルブドプロヴァンスは南フランスを象徴する味のひとつとして位置付けられています。こうした歴史的な背景を知ってから瓶を開けると、料理に使うときの気持ちもちょっと変わってきますね。
エルブ・ド・プロヴァンス(Wikipedia):歴史・成分・原産地認定マークなど基本情報の参照として
エルブドプロヴァンスに厳密に決められた配合はありません。これが基本です。製造メーカーや産地によって、使われるハーブの種類も割合も異なります。ただし、フランス国立原産地品質研究所(INAO)が推奨する標準的な配合比率は以下のとおりです。
| ハーブ名 | 配合割合 | 主な香りの特徴 |
|---|---|---|
| ローズマリー | 約26% | 松のような力強い芳香 |
| セイボリー | 約26% | 深みのあるスパイシーな香り |
| タイム | 約26% | 清涼感のある爽やかな香り |
| オレガノ | 約19% | ほろ苦く爽やかな香り |
| バジル | 約3% | 甘やかで優しい香り |
日本で市販されている製品ではフェンネル・セージ・ローレル(月桂樹)・マジョラムなどが追加されているものも多く、またラベンダーを加えたフランス本場らしい配合のものも存在します。各ハーブそれぞれの個性が互いを引き立て合うことで、単品ハーブとはまったく違う複雑な香りの層が生まれます。これは使えそうです。
タイムは清涼感があり肉や魚の臭み消しに優れ、ローズマリーは存在感のある深みを料理に加えます。セイボリーは日本ではあまり馴染みのないハーブですが、肉料理や豆料理との相性が抜群で、プロヴァンス地方では古くから欠かせない存在です。バジルの割合がたった3%と非常に少ないのは、甘みと柔らかさのバランスを取る役割のためで、多すぎると全体の香りが甘くなりすぎてしまうからです。乾燥させることでハーブの香り成分が凝縮されており、少量でも十分な風味が出るのが特徴です。
エスビー食品「エルブドプロバンスを使いこなそう!」:配合・使い方・レシピなどの実用情報として
エルブドプロヴァンスの基本的な使い方は、調理中または調理前に加えることです。本場では料理の仕上げにふりかけるような使い方はしません。加熱することでハーブの香り成分がオイルや食材にしっかり移り、料理全体に南仏の風味が広がります。
🍅 煮込み料理・ラタトゥイユへの使い方
エルブドプロヴァンスを使う代表料理が、夏野菜の煮込み「ラタトゥイユ」です。トマト・ズッキーニ・ナス・玉ねぎ・パプリカをオリーブオイルで炒め煮込む料理で、エルブドプロヴァンスをひとつまみ加えるだけで本格プロヴァンス風の仕上がりになります。煮込み始めの段階で加えると、じわじわと香りが溶け出して料理全体に奥行きが生まれます。ポトフや洋風シチューにも同様に活用できます。
🍗 肉料理への使い方
鶏肉・豚肉・羊肉との相性が特に優れています。焼く前にエルブドプロヴァンスとオリーブオイル・塩コショウをまぶして揉み込み、10〜15分ほど置いてから焼くのが基本です。下味として揉み込む段階と、仕上げの段階の2回に分けて使うと香りがより豊かになります。グリルチキンやローストポークはシンプルな調理法なのに、エルブドプロヴァンスを加えるだけでレストラン風の一皿に変わります。
🐟 魚料理への使い方
白身魚やサーモンのソテー・ムニエルに使うのがポピュラーです。魚特有の生臭さをタイムやフェンネルの成分が抑えてくれます。パン粉にエルブドプロヴァンスを混ぜて魚の表面にまぶし、オーブンで焼く「ハーブパン粉焼き」も人気のレシピです。サクサクした食感と香ばしい香りが一気にフレンチの雰囲気を演出してくれます。
🥦 野菜料理・じゃがいも料理への使い方
じゃがいもやズッキーニ・パプリカをオリーブオイルとエルブドプロヴァンスで和えてオーブンで焼くだけで、それだけで立派な副菜になります。野菜の甘みを引き出してくれる効果があり、シンプルな塩コショウだけの味付けよりも格段に奥行きが出ます。バーベキューの食材にもよく合います。
エルブドプロヴァンスが手元にない場合でも、自分でハーブをブレンドして代用することが可能です。そもそもエルブドプロヴァンス自体がミックスハーブなので、複数のハーブを混ぜ合わせれば自作できます。
INAOが推奨する配合(ローズマリー:セイボリー:タイム=各26%、オレガノ19%、バジル3%)を参考に、小さじ1を作る場合の目安量はこのようになります。
セイボリーは日本では入手が難しいので、タイムで代用しても問題ありません。タイムが重複することになりますが、風味のバランスはそれほど崩れません。
どうしても単品ハーブしかない場合は、タイムやローズマリーなどを単体で使うことでもある程度近い風味が出せます。ただし、単品だと香りが強すぎる場合があるので少量から始めるのがコツです。「香りを感じるか感じないかくらい」の量が目安です。
また、市販品を選ぶ際はメーカーによって配合がかなり異なります。たとえば、GABANのエルブドプロヴァンスにはタイム・ローズマリー・セージ・フェンネルが、エスビー食品のものにはタイム・セージ・フェンネル・ローレル・ローズマリーが入っており、同じ名前でも香りの個性は製品ごとに違います。いくつか試して自分の料理に合うブレンドを見つけるのが楽しみの一つですね。ラベンダー入りのものはより南仏らしいフローラルな香りが強くなるため、日本の家庭料理に使うなら最初はラベンダーなしを選ぶと使いやすいです。
chocobio.click「エルブ・ド・プロヴァンスの代用は?」:自作配合比率・市販商品比較の参照として
エルブドプロヴァンスはブレンドされたハーブの香りが強いため、入れすぎると料理全体がハーブの風味に支配されて食べにくくなります。ミートソースやカレーのような強い味の料理に多量に加えて失敗した、という経験をした人は少なくありません。注意が必要です。
一般的な目安として、2〜4人分の煮込み料理1鍋に対して小さじ1程度から始めるのが基本です。慣れてきたら好みで少しずつ増やしていく方法が失敗を防ぎます。「ちょっとからはじめよう」という感覚が大切ですね。
| 料理の種類 | 目安量(2〜4人分) | 加えるタイミング |
|---|---|---|
| 煮込み・スープ | 小さじ1/2〜1 | 煮込み始めに |
| 肉・魚の下味 | 小さじ1/2〜1 | 焼く10〜15分前に揉み込む |
| 野菜のグリル | 小さじ1/2 | オイルと一緒に和えてから焼く |
| パスタソース | 小さじ1/4〜1/2 | ソースを仕上げる際に |
保存については、開封後は冷暗所で保管するのが原則です。乾燥ハーブは光・熱・湿気で香りが急速に劣化します。キッチンのコンロ近くに置きっぱなしにしていると、熱と湿気で半年もしないうちに香りがほぼ飛んでしまいます。冷暗所か冷蔵庫の野菜室での保存が最も香りを長持ちさせます。
また、スパイスの開封後は一般的に1〜2年以内に使い切ることが推奨されています。香りが薄くなってきたと感じたら、少し多めに加えるより新しい製品を購入する方が料理の仕上がりに差が出ます。いつもの料理が格段においしくなるハーブなので、できるだけ新鮮な状態で使いたいですね。
エスビー食品サポートデスク「エルブドプロバンスについて」:使用量・代用・保存に関する実用情報として