市販のコーヒー豆でエスプレッソを作ると、カフェより濃くなりすぎて飲めなくなります。
「エスプレッソは専用マシンがないと作れない」と思っている方は多いですが、実はそうではありません。自宅でエスプレッソを楽しむための器具は、大きく分けて3種類あり、価格帯もさまざまです。
まず最も本格的なのが、エスプレッソマシン(全自動・半自動)です。デロンギやネスプレッソなどのブランドが有名で、半自動タイプは2万円台から、全自動タイプは5万円以上するものも珍しくありません。これは本格派向けです。
次に、モカポット(直火式エスプレッソメーカー)があります。イタリアのビアレッティ社の「モカエキスプレス」が世界的に有名で、価格は3,000円〜5,000円程度。コンロの上に置くだけで本格的な濃厚コーヒーが抽出できるため、コストパフォーマンスに優れています。
そして、エアロプレスという道具もあります。1台5,000円前後で購入でき、手動で圧力をかけてエスプレッソに近い濃度のコーヒーを作れます。後片付けも簡単で、主婦の方にも扱いやすいと評判です。
これは使えそうです。
器具別の特徴をまとめると以下の通りです。
| 器具 | 価格目安 | 難易度 | 本格度 |
|---|---|---|---|
| 全自動エスプレッソマシン | 5万円〜 | 低 | ★★★★★ |
| 半自動エスプレッソマシン | 2万円〜 | 中 | ★★★★☆ |
| モカポット | 3,000〜5,000円 | 低〜中 | ★★★☆☆ |
| エアロプレス | 5,000円前後 | 中 | ★★★☆☆ |
初めて自宅でエスプレッソに挑戦するなら、まずモカポットからスタートするのがおすすめです。失敗しても豆と水のコストしかかからず、扱い方も直感的でわかりやすいためです。慣れてきてから本格的なマシンへのアップグレードを検討する、という2段階のアプローチが無理なく続けられます。
豆の選び方が味の8割を決める、といっても過言ではありません。エスプレッソに向いている豆には明確な特徴があります。
まず焙煎度合いですが、エスプレッソには深煎り(フルシティロースト〜フレンチロースト)が適しています。浅煎りの豆はエスプレッソに向かず、酸味が強くなりすぎて飲みにくい仕上がりになります。スーパーのコーヒー豆コーナーでは「エスプレッソ用」と明記された商品を選ぶと失敗しにくいです。
次に、鮮度が非常に重要です。コーヒー豆は焙煎後から酸化が始まり、焙煎後2週間以内に使い切るのが理想とされています。スーパーで売られている大袋の豆を「なんとなくストック」している方は注意が必要です。開封後は密閉容器に入れて、できるだけ1〜2週間で使い切るようにしましょう。
挽き目(グラインド)については、エスプレッソは「極細挽き」が基本です。市販の粉コーヒーや、普通のドリップ用に挽いた豆では粒が粗すぎて、エスプレッソ特有の濃厚なクレマ(泡)が出ません。グラインダーを持っている場合は、最も細かい設定にしてみてください。
豆の量は1杯あたり7〜9gが原則です。
コーヒーの量の目安について補足すると、7gはティースプーン約2杯分に相当します。毎回きちんと量ることで、再現性の高いエスプレッソが楽しめます。キッチンスケールを使って0.1g単位で計量できると、味のブレがぐっと減ります。
モカポットはシンプルな構造ですが、正しい手順を守らないと苦みが強くなったり、うまく抽出できなかったりします。基本の手順はとてもシンプルです。
ステップ1:下タンクに水を入れる
バルブ(安全弁)の下のラインまで水を入れます。水は必ず常温〜40℃前後のぬるま湯を使いましょう。冷水だと加熱に時間がかかりすぎて、過抽出(エグみが強い)になりやすいためです。
ステップ2:フィルターバスケットに粉を入れる
極細挽きのエスプレッソ用コーヒー粉をバスケットに入れ、すり切り一杯にします。このとき、粉を強く押し固める(タンピング)のは厳禁です。モカポットはマシンほどの圧力がかからないため、粉を固めると蒸気が通れなくなり、うまく抽出できなくなります。
ステップ3:組み立てて弱火〜中火で加熱する
火加減は「弱火〜中火」が基本です。強火にすると急激に加熱されて苦みや焦げ臭が出やすくなります。注意すれば大丈夫です。
ステップ4:音が変わったら火を止める
「シュー」という音が「ブクブク」「ゴボゴボ」という音に変わったら、すぐに火を止めてください。この音の変化が抽出完了のサインです。そのまま加熱し続けると過抽出になり、苦みが爆発的に強くなります。
ステップ5:底面を水で冷やして完成
火を止めた後、モカポットの下タンク部分を濡れ布巾や流水で数秒冷やすと、抽出がピタリと止まります。こうすることでクリーンな味わいが保てます。
モカポットでの一回の抽出量は機種にもよりますが、1〜2人分(約60〜120ml)が目安です。コンパクトな2カップ用(1,400円前後〜)から始めると扱いやすいでしょう。
本格的なエスプレッソには、3つの数字を覚えておくだけで品質が格段に安定します。抽出量・抽出時間・粉量の3点セットです。
抽出量は30ml前後が理想とされています。カップ1杯あたり、おちょこ1杯分程度の量です。これが「シングルショット」と呼ばれる1杯の基本量です。ダブルショットは60mlになります。
抽出時間は25〜30秒が基準です。これは本格的な9気圧エスプレッソマシンを使った場合の数値で、モカポットやエアロプレスでは完全に同じにはなりませんが、「早すぎず遅すぎず」を意識することで味の安定につながります。
お湯の温度は90〜93℃が推奨されています。沸騰したお湯(100℃)を少し冷ます、あるいはモカポットなら加熱時に弱火を守ることで自然にこの範囲に近づきます。高温すぎると苦みが強くなり、低温すぎると酸味が際立ちます。
つまり温度・量・時間の3つが条件です。
圧力については、本格的なエスプレッソマシンは9気圧(bar)での抽出が標準です。モカポットは約1〜2気圧、エアロプレスは手動で加える圧力(約0.35〜0.7気圧程度)にとどまるため、厳密にはエスプレッソとは異なりますが、濃厚さや風味は十分に楽しめます。この数値はコーヒーマニアの間では常識ですが、家庭で気にしすぎる必要はありません。
日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ):エスプレッソの定義と品質基準
自宅でエスプレッソが作れると、カフェでよく見るアレンジドリンクが低コストで楽しめます。これは大きなメリットですね。
カフェラテは、エスプレッソ30mlにスチームミルク(温めた牛乳)約150mlを加えるだけで完成します。市販のフォームミルクメーカーを使えば、コンビニラテ(約300〜400円)と同等のものが1杯50〜80円程度で作れます。1ヶ月毎日飲むとすると、1杯300円のカフェラテを外で買い続けると月9,000円ですが、自宅で作れば月1,500〜2,400円程度に抑えられます。差額は約6,600〜7,500円、年間では約8万円前後の節約になります。
カプチーノは、エスプレッソとフォームドミルク(泡立てた牛乳)を1:1:1の比率で合わせます。フォームドミルクは牛乳を電動ミルクフォーマーで泡立てるだけで作れ、道具は1,000〜3,000円程度で揃います。
アイスカフェラテは、エスプレッソを素早く作り、氷を入れたグラスに注いで冷たいミルクを加えるだけです。夏場の定番ドリンクが手軽に楽しめます。
カフェモカはエスプレッソ30mlにチョコレートシロップ小さじ2杯、温めたミルク150mlを加えます。市販のハーシーズやトッポのシロップで代用可能で、追加コストは1杯あたり20〜30円程度です。
アレンジの幅が広いですね。
エスプレッソを自宅で作る習慣は、カフェ代の節約だけでなく、好みの濃さや甘さを自在に調整できる「カスタマイズの自由」も大きな魅力です。市販のカフェでは追加料金がかかるシロップ増量やミルク変更なども、自宅なら追加費用ゼロで実現できます。
まとめ
自宅でエスプレッソを作ることは、決して難しいことではありません。モカポットなら3,000円台から始められ、豆の選び方と3つの数字(抽出量30ml・時間25〜30秒・粉量7〜9g)を覚えるだけで、クオリティの高い一杯が楽しめます。器具への初期投資はかかりますが、毎日カフェに行く習慣がある方なら、半年以内に元が取れる計算です。まずは小さなモカポットひとつから、自宅エスプレッソライフをスタートさせてみてください。