多くの家庭で賞味期限切れの非常食が放置されているのが現状です。内閣府の調査によると、6割以上の人が備蓄食品の賞味期限を切らしてしまった経験があります。しかし「期限切れ=すぐに危険」というわけではありません。消費者庁では、科学的な根拠に基づいた食べきる目安を提示しています。
賞味期限が5年の非常食の場合、期限切れ後3ヶ月以内なら安全に食べられる可能性があります。この計算式は、賞味期限（月数）に0.1をかけ、さらに安全性を高めるため0.5をかけたもので、賞味期限10年なら約6ヶ月、20年なら1年という目安になります。ただし、これはあくまでモデル検証段階の目安であり、適切に保存されていた場合に限ります。
| 非常食の賞味期限 | 期限切れ後の食べきる目安 |
|---|---|
| 3年 | 約60日（2ヶ月） |
| 5年 | 約90日（3ヶ月） |
| 10年 | 約半年 |
| 20年 | 約1年 |
賞味期限切れの非常食を食べるかどうかの判断は、最終的に自己責任となります。しかし、缶詰、びん詰、レトルト食品それぞれに、安全性を見極める明確なチェックポイントがあります。
缶詰の場合は、外観の膨らみがないことが最重要です。フタ部分が通常よりへこんでいるのは正常ですが、ペコペコと音がして動くもの、膨らんでいるものは中に微生物が侵入している可能性があるため避けましょう。また、缶に穴が開いている、錆びが見られるものも危険信号です。缶詰は2～3年程度の賞味期限が一般的ですが、非常食用は5年以上に設定されているものが多くあります。
びん詰めの場合は、フタの膨張がないかを確認します。缶詰同様、フタを押したときにペコペコするものは内部に空気や微生物が侵入している証拠です。びんが遮光されていない場合は光の影響で中身が変色することもあるため、異常を感じたら即座に廃棄してください。
レトルト食品は外装の破損を最優先にチェックします。パッケージのどこかが破損して中身が漏れているもの、全体が膨らんでいるものは腐敗している可能性が高いため絶対に食べてはいけません。
非常食の賞味期限を切らせない最善策は、ローリングストック法の実践です。この方法は、普段から食べている缶詰やレトルト食品などを少し多めに備蓄し、古いものから順に消費して使った分を新たに買い足していく循環型の備蓄方法です。一般家庭から企業まで広く推奨されています。
ローリングストック法を成功させるコツは、最初に最低ストック数を決めておくことです。その下限を下回ったら新たに買い足す、という単純なルールで継続できます。古い商品を手前に、新しい商品を奥に配置するなど、視覚的な工夫も大切です。この方法の大きなメリットは、非常時に慣れた食べ物が食べられるため、災害時のストレスが軽減される点にあります。
国の指針では、最低でも3日分の食料・飲料を備蓄することとされています。東京都では企業に対し、災害発生から3日程度は会社に留まるよう指導しており、従業員1人当たり3日分の備蓄が努力義務となっています。ローリングストック法なら、この要件を満たしながら自然に備蓄品を活用できます。
期限切れ間近の非常食は、複数の有効活用方法があります。賞味期限内でも1年の猶予がある段階で、買取事業者に備蓄品を買い取ってもらう方法があります。フードロスを減らしつつ、買取収入も得られるメリットがあります。
賞味期限が確実に切れてしまった場合は、自治体の指定する方法で処分します。2リットルペットボトルの廃棄費用が約80円かかることを考えると、大量備蓄の場合は相当な処分費用が発生します。企業の場合、産業廃棄物として扱われるため、家庭ごみのように処分できません。フードバンクへの寄付は、賞味期限内のものしか受け付けていないため注意が必要です。
一般家庭でも、セカンドミールや調理材料としての再活用が可能です。アルファ米はお粥に、乾パンは砕いてパン粉代わりにするなど、創意工夫で消費できます。
非常食の備蓄管理は、平時の継続的な取り組みが欠かせません。賞味期限が長い非常食を選ぶことで、頻繁な入れ替えの手間を減らせます。3年程度から10年以上のものまでさまざまですが、非常食用として販売されているものは一般的な同類商品より賞味期限が長めに設定されています。
管理担当者を決め、月1回などのスケジュールで定期的な入れ替えと補充を行う体制が重要です。例えば、3年賞味期限のものを揃えて、2年経過した時点で入れ替え、1年かけて消費していくといった計画的なアプローチが有効です。
企業向けには、防災支援型の自動販売機という選択肢もあります。普段から使用している販売機を、災害支援型にすることで、停電時に無料で中身を取り出せる仕組みになっています。ベンダーが補充・管理を担当するため、社内スペースの負担が軽減されます。防災備蓄品管理の専門サービスを利用すれば、期限切れの心配なく安心した体制が整えられます。
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