ジクアホソル点眼液とコンタクトの正しい使い方と注意点

ジクアホソル点眼液はドライアイ治療の定番薬ですが、コンタクト装用中の使用には先発品とジェネリックで対応が異なる落とし穴があります。医療従事者として正確な指導ができていますか?

ジクアホソル点眼液とコンタクト装用の注意点と指導のポイント

ジェネリックに変更した患者が、コンタクトを外さず点眼し続けて角膜障害を起こすリスクがあります。


📋 この記事の3ポイント要約
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先発品とジェネリックで対応が異なる

先発品ジクアス点眼液はベンザルコニウム塩化物を含まないためソフトコンタクトのまま点眼可能。一方、ジェネリック品(ジクアホソルNa点眼液)はベンザルコニウム塩化物を含有するため、ソフトコンタクトを必ず外してから点眼する必要があります。

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点眼後5〜10分の間隔が必須

ジェネリック使用時はコンタクトを外して点眼し、5〜10分間の間隔をあけてから再装用することが添付文書に明記されています。この手順を守らないと、防腐剤がソフトコンタクトに吸着して角膜上皮障害を招くリスクがあります。

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カラーコンタクトは先発品でも使用不可

先発品ジクアス点眼液・ジクアスLX点眼液ともに、カラーコンタクトレンズへの影響が検討されていないため、カラーコンタクト装用中の点眼は禁止されています。患者指導の際は必ず確認が必要です。


ジクアホソル点眼液の基本:ドライアイへの作用機序と特徴


ジクアホソルナトリウム点眼液(代表的な先発品名:ジクアス点眼液3%)は、日本で承認されたドライアイ治療薬の中でも特に「涙の質」に働きかけるという点で、他の点眼薬とは一線を画す薬剤です。有効成分であるジクアホソルナトリウムは、結膜上皮細胞や杯細胞の表面に存在するP2Y2受容体を刺激します。このスイッチが入ることで、涙の主成分である水分と、涙を眼表面に安定させるための接着剤として機能するムチンの両方が自発的に分泌されます。


従来のドライアイ治療の主力だったヒアルロン酸ナトリウム点眼液(ヒアレイン)は、外から潤いを「補給する」補充型の薬剤です。これに対してジクアホソル点眼液は、患者自身の目が本来持つ「涙を産生する力」を内側から引き出す点が最大の特徴です。つまり根本的なアプローチが違います。


臨床的に特に有効性が示されているのは、BUT(Tear Break-Up Time:涙液層破壊時間)短縮型ドライアイです。BUTとは、まばたきをしてから涙液層が安定を保てなくなるまでの時間を指し、正常値は10秒以上とされています。ムチンの機能低下でBUTが短縮している患者では、ジクアホソル点眼液のムチン分泌促進作用が特に高い効果を発揮します。


日本のドライアイ患者は約2,200万人とも推計されており、コンタクトレンズ使用者やPC・スマートフォンを長時間使用する現代人の増加に伴い、BUT短縮型ドライアイは増加傾向にあります。ドライアイは放置すると角膜上皮に傷がつき、視力低下や感染リスクの上昇にもつながるため、適切な薬剤選択と患者指導が重要です。


参天製薬 Santen Medical Channel「ジクアス / ジクアスLX よくあるご質問(医療従事者向け)」:用法・用量・コンタクトレンズ対応・他剤との併用順序など専門的FAQをまとめた公式情報源


ジクアホソル点眼液とコンタクト:先発品とジェネリックで対応が180度変わる

医療従事者として特に注意が必要なのが、先発品とジェネリック品でコンタクトレンズへの対応が全く異なるという点です。これを把握していないと、患者指導の内容が真逆になってしまうため、処方変更時に必ず確認しなければならないポイントです。


先発品のジクアス点眼液3%(参天製薬)は、かつて防腐剤としてベンザルコニウム塩化物を含有していました。しかし2015年に添加物の見直しが行われ、ベンザルコニウム塩化物からクロルヘキシジングルコン酸塩液に変更されました。この変更により、現在の先発品ジクアス点眼液は、ソフトコンタクトレンズを装用したままでも点眼が可能です(カラーコンタクトを除く)。


一方、ジェネリック品(例:ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」など)は、現在もベンザルコニウム塩化物を防腐剤として含有しています。ベンザルコニウム塩化物はソフトコンタクトレンズに吸着しやすく、そのまま装用を続けると角膜上皮への悪影響が生じるリスクがあります。そのためジェネリック品を使用する患者は、点眼前にソフトコンタクトを必ず外し、5〜10分以上の間隔をあけてから再装用する必要があります。


これは見落とされやすい盲点です。「ジクアスからジェネリックに変えてもらった」患者が、先発品と同じようにコンタクトのまま点眼し続けるケースは現場で実際に起こりえます。後発品へ変更する際は、必ずこの違いを説明する一言を加える必要があります。薬局での服薬指導においても、処方変更があった患者に対しては「コンタクトを外してから点眼してください」という具体的な手順の説明が必須です。


なお、ハードコンタクトレンズについては、ベンザルコニウム塩化物の吸着問題が生じにくいため、ジェネリック品でも装用したまま点眼することは原則として問題ないとされています。ただし患者ごとの眼の状態に応じた個別判断が必要な場合もあります。


薬剤師ブログ「ジクアス点眼液のジェネリックはコンタクトに使えない?」:先発品とジェネリックの防腐剤の違いとコンタクト装用時の注意点を解説


ジクアホソル点眼液のコンタクト装用時における正しい点眼手順

先発品か後発品かによって手順が変わることを前置きした上で、それぞれの正しい点眼手順を確認しておきましょう。患者に口頭で説明しやすいよう、具体的なステップに分けて整理します。


【先発品ジクアス点眼液3% / ジクアスLX点眼液3%を使用する場合(通常のソフトコンタクト装用時)】



  • コンタクトを装用したままで点眼可能(カラーコンタクトは除く)

  • 1回1滴を結膜のう内に点眼する

  • 点眼後は1〜5分間、目を閉じて涙のう部を軽く圧迫する

  • あふれた薬液は清潔なガーゼやティッシュで軽くふき取る

  • 他の点眼薬と併用する場合は、5分以上の間隔をあける


【ジェネリック品(ジクアホソルNa点眼液3%)を使用する場合(ソフトコンタクト装用時)】



  • 点眼前にソフトコンタクトを必ず外す

  • 1回1滴を結膜のう内に点眼する

  • 点眼後は1〜5分間、目を閉じて涙のう部を軽く圧迫する

  • 点眼後、5〜10分以上の間隔をあけてからコンタクトを再装用する

  • 他の点眼薬と併用する場合は、5分以上の間隔をあける


「5分待てばいい」という認識では不十分です。添付文書には「5〜10分以上」と記載されており、ベンザルコニウム塩化物の濃度が十分に低下するまでの時間を確保する必要があります。ベンザルコニウム塩化物(BAK)は点眼後5分後に通常の1/10以下の濃度に低下するという報告もありますが、それでも完全に消えるわけではなく、継続的な使用によってレンズへの蓄積が起こり得ます。


点眼回数も重要です。ジクアス点眼液3%は1日6回(2〜3時間ごと)が標準用法であり、コンタクトを使用しながら6回の点眼間隔を守ることは、日常生活の中で相当な負担になります。この点を踏まえると、コンタクト使用患者には1日3回(4〜6時間ごと)点眼で対応できるジクアスLX点眼液を検討することも一つの選択肢です。LXはポビドン(PVP)の添加により涙液の眼表面滞留時間が延長され、同等の効果を維持しながら点眼回数を半減できます。


カラーコンタクト・ワンデー・2週間交換型:レンズの種類別の注意点

コンタクトレンズは種類によってジクアホソル点眼液との相性や取り扱い方針が異なります。実際の処方現場や服薬指導の場面では、患者がどのタイプのコンタクトを使用しているかを最初に確認することが重要です。


まずカラーコンタクトレンズ(カラコン)については、先発品・後発品に関わらず、装用中の点眼は避けることが推奨されています。参天製薬の公式FAQでも「ジクアス点眼液およびジクアスLX点眼液のカラーコンタクトレンズへの影響は検討していないため、装用中の点眼は避けてください」と明記されています。カラーコンタクトには着色剤が含まれており、点眼液との相互作用について十分なデータがないため、安全性の観点から装用中の点眼は非推奨です。カラコンユーザーには、必ずレンズを外してから点眼するよう徹底指導が必要です。


ワンデー(1日使い捨て)タイプのソフトコンタクトについては、先発品ジクアスであれば装用中の点眼が可能です。ただし1日使い捨てのため、薬液が吸着してもその日に廃棄するという点で実害は最小化されます。それでも、先発品以外を使用する患者は同様にコンタクトを外してからの点眼が原則です。


2週間・1ヶ月交換型のソフトコンタクトは、最も注意が必要なレンズタイプです。繰り返し使用するため、ジェネリック品に含まれるベンザルコニウム塩化物が蓄積しやすく、角膜上皮への慢性的なダメージが生じるリスクが高まります。このレンズ使用者には特に丁寧な服薬指導が求められます。


ハードコンタクトレンズについては、先述の通りベンザルコニウム塩化物が吸着しにくいことから、原則として装用中の点眼は問題ないとされています。これは実は比較的知られていない点で、ハードコンタクト装用者に対してもソフトコンタクトと同じ指導をしてしまうケースがあります。個別性が高いテーマです。


患者がどのレンズを使用しているかによって指導内容が変わる、という認識を持っておくことが大切です。


つつみ眼科クリニック「コンタクトの上から点眼してもいいの?」:ハードコンタクト・ワンデー・2週間交換型それぞれの目薬使用に関する解説ページ


ジクアホソル点眼液の併用時の点眼順序と実践的な指導ポイント

ドライアイ患者の多くは複数の点眼薬を使用しています。ジクアホソル点眼液を他の点眼薬と組み合わせる場合の順序は、単なる利便性の問題ではなく、薬効に直接影響するため医療従事者として正確に把握しておく必要があります。


参天製薬の医療従事者向け情報によれば、ジクアス(ジクアホソル)と他剤を組み合わせる場合の推奨点眼順序は以下のとおりです。
























組み合わせ 推奨される点眼順序 理由
ヒアルロン酸Naとの併用 ジクアホソル → ヒアルロン酸Na(5分以上あける) ジクアホソルを先に点眼し涙液分泌を促進してからヒアルロン酸で保湿することで涙液の安定性が高まるため
その他の水性点眼液との併用 他の水性点眼液 → ジクアホソル(5分以上あける) ジクアホソルを先に使うと涙液分泌が促進され他の薬液が希釈されてしまうため
懸濁性・ゲル化製剤との併用 ジクアホソル → 懸濁性・ゲル化製剤(5分以上あける) 粘度の高い製剤を先に使うと後続の点眼薬が眼表面に到達しにくくなるため


特に重要なのはヒアルロン酸との組み合わせです。ドライアイ治療においてヒアルロン酸点眼液(ヒアレイン)とジクアホソル点眼液を併用するケースは多く、「どちらを先に点眼すべきか」は患者からもよく質問される内容です。原則はジクアホソルを先に点眼することですが、ジクアホソルで刺激感が強い患者の場合は逆順でもよいとガイドラインに明記されています。これは例外です。患者の症状に応じた柔軟な判断が求められます。


間隔については「5分以上」が基本です。この5分という数字は、健康成人を対象とした臨床試験において、ジクアホソルを点眼後5分で有意な涙液量の増加が確認されたこと、またBAKの濃度が5分後に大幅に低下することなどのデータに裏付けられています。患者への指導では「スマートフォンのタイマーで5分測ってから次の目薬を差してください」という具体的な方法を伝えると実行されやすいです。


また点眼を忘れた場合の対処も患者から聞かれることがあります。気づいた時点でできるだけ早く1回分を点眼しますが、次の点眼時間が近い場合は忘れた分は飛ばして、次の時間に通常通り1回分だけ点眼します。2回分をまとめて点眼してはいけません。これが基本です。


参天製薬 Santen Medical Channel「ジクアス 他剤と併用する場合の点眼順序」:点眼順序の根拠となる臨床データと推奨順序の詳細解説(医療従事者向け)




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