大吟醸を買って帰ったら、夫から「香りが純米と全然違う」と言われて戸惑ったことはありませんか?
日本酒のラベルをじっくり見ると「純米大吟醸」と「大吟醸」の2種類が並んでいることに気づきます。スーパーの棚でも、デパートの贈答コーナーでも、どちらも高級感のある瓶に入っています。違いは何なのか、ひと言でいうと「醸造アルコールを加えるかどうか」です。
醸造アルコールとは、トウモロコシやサトウキビなどの食物を発酵させた、純度の高いアルコールのことです。食品添加物とは別もので、日本酒の原材料として法律に定められた堂々たる原料のひとつです。純米大吟醸は米・米麹・水のみで造られているのに対し、大吟醸はそこに少量の醸造アルコールが加わります。
ここで重要なのが、醸造アルコールは「量を増やすために入れるものではない」という点です。酒税法では、添加できる量は白米重量の10%以下に厳しく制限されています。ではなぜ入れるのかというと、もろみの中で酵母が作り出したフルーティーな香り成分(吟醸香)はアルコールに溶けやすい性質があるため、醸造アルコールを加えることで香りをより多くお酒に閉じ込められるからです。
つまり、香りを引き出す原料です。
| 種類 | 原材料 | 精米歩合 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 純米大吟醸 | 米・米麹・水 | 50%以下 | 米の旨味とふんわりした香り |
| 大吟醸 | 米・米麹・水・醸造アルコール | 50%以下 | 華やかでキリッとした香りとキレ |
精米歩合の条件はまったく同じです。この違いだけ覚えておけばOKです。
参考:純米大吟醸酒と大吟醸酒の違い・旭酒造マガジン
https://magazine.asahi-shuzo.co.jp/know/11
両者に共通する「精米歩合50%以下」という条件は、実はかなり思い切った数字です。私たちが毎日食べているご飯の精米歩合は約90%、つまり玄米から10%ほど削るだけです。ところが大吟醸・純米大吟醸では、半分以上を削り落とします。
お米の表層には、脂質やたんぱく質が多く含まれています。これらはご飯として食べるときには栄養になりますが、日本酒を仕込む際には雑味のもとになってしまいます。そこで、酒造りでは米を精米機にかけ、外側を徹底的に削り取ります。精米歩合が50%ということは、もとの玄米の重さから見て半分以下しか残らないということ。たとえばお米1kgを仕込みに使おうとすると、精米後には500g未満しか残らない計算です。
米を磨けば磨くほど必要な量が増え、時間もかかります。しかも「心白(しんぱく)」と呼ばれる米の中心部を壊さないよう、ゆっくりと低温で精米する技術が求められます。これが大吟醸・純米大吟醸が高価格になる主な理由のひとつです。
磨けばどこまでも良くなるというわけでもありません。
酵母の種類や発酵温度・時間の管理など、様々な条件が絡み合って最終的な味になります。精米歩合35%の銘柄が必ずしも50%の銘柄より美味しいとは限らず、蔵ごとの技術と個性が色濃く出るのが大吟醸クラスの醍醐味です。
参考:蔵元が教える大吟醸の解説・しゅムリエ(本松浦酒造)
https://narutotai.jp/shumurie/sake-recommended-daiginjo/
「どちらが美味しいの?」と聞かれると、これは好みの問題になります。ただ、それぞれに明確な傾向があるので、覚えておくと選びやすくなります。
大吟醸は、醸造アルコールが吟醸香を引き出すため、華やかでキリッとした高い香りが特徴です。口に含むとすっきりしたキレがあり、後味がすぱっと消えていく飲み口です。「フルーティーな日本酒を楽しみたい」「スッキリとしたお酒が好き」という方に向いています。
純米大吟醸は、醸造アルコールを加えていないぶん、香りはやや穏やかでやわらかい印象です。米由来の旨味とコクが感じられ、飲み飽きしにくい奥行きがあります。バナナやメロンのようなやわらかい甘い香りが特徴的で、若い女性や日本酒初心者からの人気も高いです。
意外ですね。
醸造アルコールを加えた大吟醸のほうが「香りが強い」というのは、多くの方が驚く事実です。「アルコールを加えないほうが自然な香りが高いはず」と思いがちですが、実は逆。アルコールが吟醸香をまとって溶け込む効果があります。
価格帯を知っておくと、買い物の失敗が減ります。大吟醸・純米大吟醸は共に高級酒の部類に入りますが、実際の価格幅はかなり広いです。
720mlボトルで見ると、リーズナブルなものだと1,500〜2,000円前後から見つかります。ちょうど外食でランチを1回我慢する程度の出費感です。贈答用の箱入りになると3,000〜5,000円台が多く、有名銘柄や特殊な酒米を使ったプレミアムラインは1万円を超えるものもあります。
ここで気をつけたいのが「純米大吟醸のほうが大吟醸より必ず高い」という思い込みです。確かに純米大吟醸のほうが高い場合も多いですが、同じ蔵元の同価格帯で両方が出ていることも珍しくありません。どちらが上というランク差ではなく、「原料の違いによるスタイルの差」として捉えると選びやすくなります。
贈る相手の好みで選ぶのが原則です。
日本酒を普段から飲み慣れている方や、すっきりした飲み口が好きな方には大吟醸を。フルーティーで飲みやすいお酒を求めている方や、料理と一緒にゆっくり楽しみたい方には純米大吟醸をおすすめすると外れが少なくなります。
参考:日本酒の種類と違いを解説・沢の鶴
https://www.sawanotsuru.co.jp/site/nihonshu-columm/knowledge/kind-of-sake/
せっかく選んだ高級酒も、飲み方や保存の仕方を間違えると本来の味が台無しになってしまいます。ここは少し丁寧に確認しておきたいポイントです。
飲む温度については、純米大吟醸・大吟醸ともに「10〜15℃前後」が最もバランスよく香りと味わいを楽しめます。冷蔵庫で冷やしたてよりも、少し室温に戻してからグラスに注ぐくらいが目安です。冷やしすぎると繊細な吟醸香が閉じてしまい、フルーティーさが感じにくくなります。逆に温めるのはNGです。吟醸酒は熱燗には向かず、香りのバランスが崩れてしまいます。
グラス選びもポイントです。日本酒の升やお猪口では、吟醸香が広がりにくい場合があります。ワイングラスのような口の広がったグラスに注ぐと、鼻先に香りが集まってフルーティーさが際立ちます。「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」という品評会が毎年開催されており、大吟醸・純米大吟醸はそのトップ候補に名を連ねることも多い銘柄ジャンルです。
保存方法については、開封前・開封後ともに「冷蔵庫保存が基本」です。吟醸系のお酒は香り成分が揮発しやすく、常温に置いておくと風味が急速に落ちます。冷蔵庫に立てて保存し、開封後は1〜2週間以内に飲み切るのが理想です。
これは少し痛いですね。
買ってすぐ飲まないつもりで常温の棚に置いておくと、せっかくの吟醸香が大きく損なわれます。もし飲み切れない場合は、密封して冷蔵庫に入れておくのがベストです。
料理との合わせ方では、それぞれの特徴を活かすと食卓がぐっと豊かになります。
実は、純米大吟醸は「食中酒」として特に優秀です。米の旨味が料理の味を邪魔せずに寄り添うため、和食の献立全般によく合います。夕食の支度をして、テーブルに並べた料理と一緒にゆっくり楽しむという使い方には、純米大吟醸がとても向いています。
参考:日本酒の保存方法・しゅムリエ(本松浦酒造)
https://narutotai.jp/shumurie/sake-preservation-method/