キタノカオリの特徴と魅力を知れば家のパンが変わる

キタノカオリという国産小麦粉、名前は聞いたことがあっても「何が違うの?」と思っていませんか?黄色い粉の色・もちもち食感・驚きの吸水率など、パン作り初心者にも知ってほしい特徴を徹底解説します。あなたのパン作りが格段にレベルアップするポイントとは?

キタノカオリの特徴とパンへの活かし方

いつもと同じレシピなのに、キタノカオリで焼いたら生地が硬くなって失敗します。


🌾 キタノカオリの3大ポイント
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黄色いクリーム色の粉

カロテノイド色素が豊富で、焼き上がりのパンの断面が卵やバターを入れたかのような黄金色に仕上がる国産小麦です。

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圧倒的な高吸水性

ファリノグラム吸水率は66.4%と、一般的な国産小麦(ホクシン53.5%)を大きく上回ります。通常のレシピより水を5〜10%多く入れることが必須です。

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もちもち食感と濃い甘み

強いグルテンと高い保水力により、翌日でもパサつかない「老化が遅い」パンが焼けます。砂糖なしでも小麦本来の甘みをしっかり感じられます。


キタノカオリの特徴①黄色い粉色の正体と理由


スーパーで売っている一般的な小麦粉を思い浮かべると、ほとんどが真っ白ですよね。しかしキタノカオリを袋から出すと、目に見えてわかるほどのクリーム色をしています。まず気になるのは「この色は何?」という点ではないでしょうか。


この黄色みの正体は、小麦の胚乳に含まれる「カロテノイド」という天然の色素です。カロテノイドはにんじんやかぼちゃにも含まれる色素で、体内でビタミンAに変換されるものもあります。キタノカオリにはこの色素が他の品種よりも多く含まれているため、粉の段階から見た目が違うのです。


この色素のおかげで、焼き上がったパンの断面(クラム)がクリーム色に仕上がります。卵やバターをたっぷり使ったわけではないのに、リッチな見た目になるのが特徴です。


食卓に出したとき、「これ、卵を入れたの?」と聞かれることもあるかもしれません。着色料ゼロで視覚的においしさを演出できる、珍しい国産小麦といえます。他の粉との食べ比べをすると、断面の色の差は一目瞭然です。つまり見た目からして唯一無二です。




なお、同じ北海道産でもよく比較される「春よ恋」は白っぽい粉色をしており、焼き上がりも比較的白い断面になります。見た目の黄色さをパンの「顔」にしたいなら、キタノカオリは最適な選択肢です。


参考:キタノカオリと他の国産小麦の品質・色比較データ
キタノカオリの特徴と魅力がわかる!国産小麦でパンを焼き比べてみた|Eating Hokkaido


キタノカオリの特徴②吸水率66.4%が生む「もちもち」の秘密

パン作りをしていると、「吸水率」という言葉を目にすることがあります。これは小麦粉100gに対してどれだけ水を吸収できるかを示す数値で、キタノカオリはファリノグラム吸水率66.4%という高い数値を記録しています。これは一般的な国産小麦「ホクシン」の53.5%と比べて、約13ポイントも高い数字です。


数字だけだとイメージしにくいですが、パン作りの現場では非常に大きな差です。同じ100gの粉に同じ量の水を加えたとき、キタノカオリは水をぐんぐん吸収してまとまるのに対し、吸水率の低い粉は生地がベタついたままになります。


水分をしっかり抱え込んだ生地は、焼き上がった後もパサつきにくく、しっとりした状態が続きます。これが翌日でもおいしいキタノカオリパンの正体です。


もちもち感が生まれる仕組みが、これで理解できますね。




水分を多く含ませると生地はベタベタしやすいですが、これは失敗ではありません。キタノカオリはその性質上、生地を捏ねていくにつれてどんどん水を吸い込んでいくので、「ベタついていても捏ね続けることが正解」です。初めて使うときは、少しだけ水を少なめにして試し、感触を確かめながら少しずつ増やしていくと安心できます。


参考:農研機構が公開するキタノカオリの品質特性データ(吸水率・製粉歩留の数値)
麦栽培マニュアル キタノカオリ|農研機構 作物研究部門


キタノカオリの特徴③タンパク質量と「老化の遅さ」という隠れた魅力

「国産小麦はタンパク質が少なくてパンが膨らみにくい」という話を聞いたことはありませんか?これは全体的には正しい傾向ですが、キタノカオリはその常識に当てはまらない特別な品種です。


キタノカオリのタンパク質含有率は11.5〜12.5%程度とされており、パン用強力粉として十分な量を誇ります。同じく人気の「春よ恋」は約11.2%、「はるゆたか」は約11.5%であることを考えると、キタノカオリはトップクラスの水準にいます。タンパク質が多いということは、グルテンの形成がしやすいということです。


強いグルテンが形成されると、発酵で生まれたガスをしっかりと包み込めるため、オーブンの中でよく膨らみます。比較実験では、同じ条件で焼いたとき、一般的な国産中力粉品種「きたほなみ」より高さが1.2倍になったというデータもあります。


これは使えそうです。




さらに見逃せないのが「老化の遅さ」です。パンの「老化」とは時間とともに硬くなる現象のことで、水分量が多いパンほど老化が遅い傾向があります。キタノカオリは吸水性が高く生地に水分をたっぷり閉じ込めることができるため、翌朝になってもしっとりを保ちます。忙しい朝に、前日焼いたパンをそのまま食べられるのは、主婦にとって地味に嬉しいポイントです。


キタノカオリの特徴④パン作りで「水を増やす」ことがなぜ必須なのか

キタノカオリで失敗しやすいパターンとして多いのが、「普段使っている他の粉と同じ分量で作ってしまう」ケースです。キタノカオリの高い吸水性を考慮せずにいつも通りの水量で仕込むと、生地が硬くなりすぎて、あのもちもちした食感が全く出ません。


基本のルールは、レシピに記載の水分量からプラス5〜10%増やすことです。たとえばレシピの吸水率が65%なら、70〜75%に調整します。粉200gで作る場合なら、水を10〜20gほど増やすイメージです。ちょうど大さじ1杯弱〜大さじ1杯強の量です。


吸水量を増やした生地は最初べたつきますが、捏ねることでキタノカオリが水を吸い込み、次第にツルンとまとまります。水分が多いほど生地の仕上がりがなめらかで、焼き上がりのしっとり感も格別になります。


5〜10%の差が、全体の出来を大きく左右します。




また、捏ね上げ温度の管理も大切です。目安は26〜28℃。夏場は冷水を使い、冬場はぬるま湯で調整しましょう。温度が上がりすぎるとグルテンが緩んでしまい、せっかくのもちもち感が損なわれます。生地温度が気になる方は、料理用の温度計が1本あると管理しやすく、失敗を防ぎやすくなります。


キタノカオリの特徴⑤「幻の小麦」と呼ばれる希少性と産地の背景

キタノカオリは、北海道の「ホロシリコムギ」とハンガリーの「GK Szemes」を掛け合わせ、約15年の研究開発期間を経て2003年に品種登録されました。製品化まで15年かかった品種というのは、どれだけ丁寧に開発されたかがわかります。


しかし現在、北海道内の小麦全作付面積13万2,200ヘクタール(2023年)の中で、キタノカオリが占めるのはわずか1,139ヘクタール、割合にして約0.8%しかありません。比較すると、主力品種「きたほなみ」の作付面積は9万716ヘクタールと全体の約7割を占め、その差の大きさがよくわかります。キタノカオリは東京ドームおよそ244個分しか作られていない、本当に貴重な小麦なのです。


希少性が高いのには理由があります。




最大の問題は「穂発芽(ほはつが)」と呼ばれる現象です。収穫期の6〜7月に長雨にさらされると、穂がついたまま小麦が発芽してしまい、でんぷんが分解されて品質が著しく低下します。パン用小麦として出荷できなくなってしまうのです。北海道は「梅雨がない」といわれますが、2018〜2019年は天候不順が重なり、多くの製粉会社がキタノカオリの販売休止に追い込まれました。こうしたリスクを抱えながらも生産者が丁寧に育て続けているため、価格もやや高めになることは覚えておきましょう。


参考:キタノカオリの作付面積0.8%という具体的なデータとその背景
数字で見る「奇跡の小麦」キタノカオリ|希少性と復活のストーリー|Eating Hokkaido




富澤商店(TOMIZ) キタノカオリ / 1kg 強力小麦粉