梅仕事で「南高梅を使えば何でもOK」と思っていると、梅酒の仕上がりで後悔するかもしれません。
古城梅(ごじろうめ)と南高梅(なんこううめ)は、どちらも和歌山県を代表する梅の2大品種です。産地が同じだからこそ混同されがちですが、生まれた背景や特徴はかなり異なります。
古城梅は大正時代後期、田辺市長野の那須政右ヱ門(なすまさえもん)氏が他所から譲り受けた穂木を接ぎ木した中から生まれた品種とされています。那須氏の屋号「古城(ごじろ)」がそのまま品種名になりました。西牟婁郡農会による3年間の調査で最優秀系統に認定された、由緒ある品種です。
一方、南高梅のルーツは明治35年にさかのぼります。上南部村の高田貞楠(たかたさだぐす)氏が自分の畑の中から特に優れた実の梅を「高田梅」と名づけ、増殖したのが始まりです。昭和25年に梅優良母樹選定会が発足し、南部高校(なんぶこうこう)の教諭・竹中勝太郎氏と生徒たちが5年がかりで研究を重ねた末に優良品種として認定されました。「高田梅」の「高」と「南部高校」の「南」を合わせて「南高梅」という名称になりました。
つまり、どちらも和歌山県の農家や研究者の熱意から生まれた品種です。現在、和歌山県内の梅生産量の約9割を南高梅が占めており、古城梅の生産量は全体からすると少数派となっています。
和歌山県の梅品種の歴史や産地情報については、田辺市の公式ページが詳しくまとめています。
主要な梅の品種とその由来(南高梅・古城梅)|田辺市公式サイト
スーパーに並ぶ梅を見て「どっちがどっちか分からない」と迷ったことはないでしょうか。実は、見た目だけでもかなりはっきりと区別できます。
古城梅の最大の特徴は、鮮やかな緑色(青緑色)の美しい実です。その果皮の美しさから「青いダイヤ」という別名を持っており、南高梅よりも実がかたく引き締まっています。収穫は主に5月中旬から下旬にかけて行われますが、完熟しても南高梅ほど黄色や赤みを帯びにくいため、ほぼ青い状態で流通します。また、発芽・開花は他の品種より遅いにもかかわらず、収穫期は早いという少し不思議な性質を持っています。
南高梅は、果実自体は青梅として収穫されますが、熟すにつれて黄色味が増し、日光の当たる部分が鮮やかな紅色に染まるのが特徴です。特に日光に当たった部分が全体の3分の1以上赤くなったものは「紅南高(べになんこう)」として重宝されます。果肉は柔らかく皮が薄く、種が小さいため可食部が多いのも南高梅の強みです。平均的な1粒の重さは22〜35g(梅干しのMサイズで7〜10g程度)と、梅の中でも大粒の部類に入ります。
香りについても違いがあります。古城梅は力強いフレッシュな青梅の香りが特徴で、梅酒や梅シロップにしたとき、その香りがきれいに引き立ちます。南高梅は完熟すると桃を思わせるようなまろやかで芳醇な香りに変わり、梅干しや完熟梅酒に向いた風味になります。硬さが基本です。古城梅の方が南高梅よりもかなり固いと覚えておきましょう。
「梅仕事をするなら南高梅一択」と思っている方も多いかもしれませんが、実は用途によって使い分けるとぐっと仕上がりが変わります。これは使えそうです。
梅酒・梅シロップを作るなら、古城梅が非常に優れています。実が固くしっかりしているため、長時間漬け込んでも崩れず、梅のエキスをじっくりたっぷりと抽出できます。仕上がりは透明感のある澄んだ色(ほぼ透明に近い淡い黄色)で、すっきりとさっぱりした風味が際立つのが特徴です。紀州田辺うめ振興協議会のデータによると、古城梅の梅シロップは他の品種と比べて最も透明度が高く、南高梅・紅南高梅・パープルクイーンで作ったものと並べると色の差が一目瞭然です。
一方、南高梅で作る梅酒・梅シロップは、芳醇でコクのある仕上がりになります。完熟梅を使えばさらに甘みが増し、まろやかな風味になります。ただし、南高梅は皮が柔らかいため長時間漬け込むと果肉が崩れて濁ることがあります。古城梅とは対照的に、どちらかというとリッチで濃い味わいに仕上がります。
梅干しに向いているのは南高梅です。古城梅の果実は硬くてしっかりしているため、梅干しにすると食感が固くなりやすく、あまり梅干し向きではないとされています。南高梅は皮が薄く果肉が厚いため、ふっくら柔らかい梅干しに仕上がります。梅干し作りをするなら南高梅が原則です。
ひとつ注意点があります。古城梅などの果実が固い青梅を使う場合は、梅酒・梅シロップを作る前にアク抜きが必要です。水を張ったボウルに2〜4時間ほど浸してから使いましょう。南高梅や完熟梅はアク抜き不要なので、その点が手順上の違いにもなります。
梅シロップの作り方と品種別の色の違いについては、紀州田辺うめ振興協議会の公式サイトに写真付きで詳しく解説されています。
梅シロップの作り方と種類による色の違い|紀州田辺うめ振興協議会
古城梅にはもうひとつ、知っておくと得する事実があります。それは生産量の激減です。意外ですね。
かつて古城梅は、南高梅が普及する前の和歌山県において最も多く栽培されていた品種でした。しかしピーク時に1,800トンあった生産量は、現在では約430トン近くにまで落ち込んでいます。つまり最盛期の約4分の1以下にまで減っています(東京ドームのグラウンド面積約1.3haに換算すると、畑の広さのイメージで考えると生産規模の縮小がよく分かります)。
なぜここまで生産量が減ったのでしょうか? 主な理由は、南高梅と比べて栽培が難しいことです。古城梅は樹勢は強健で耐病性が高い品種ですが、栽培の手間がかかるため、農家が収益性の高い南高梅に切り替えるケースが増えました。現在、和歌山県田辺市では毎年5月16日に「ごじろ」にちなんだ祭典が開かれており、「青梅といえば古城」というブランドイメージを復活させようと、長野県古城梅振興会が懸命に取り組んでいます。
この希少性が高まったことで、古城梅は今や高級ブランドのひとつとして扱われるようになっています。スーパーで見かける機会は非常に少なく、見つけたらすぐに購入するのがおすすめです。ネット通販でも和歌山産の古城梅(Lサイズ5kgなど)が購入できますが、梅の季節である5〜6月に需要が集中するため、早めのチェックが重要です。
古城梅の生産量や特徴については、中田食品の「梅メディア」でも詳しく解説されています。
梅仕事をする上で、品種の特徴を知っておくだけで失敗リスクが大きく下がります。梅を選ぶ場面で迷わないよう、実践的なポイントを整理します。
まず選び方の基本として、どちらの品種でも「キズがなく、表面にハリのある実」を選ぶことが大切です。購入後に数日でシワが寄ってくるものは未熟果である可能性が高く、梅のエキスが十分に抽出されません。古城梅は鮮やかな青緑色で固く、南高梅は黄緑から黄色み・赤みを帯びたものが状態の良い証拠です。サイズはLサイズ(3.3〜3.7cm程度)か2L(3.7〜4.1cm程度)以上の大粒を選ぶと、エキスがたっぷり抽出できて仕上がりが良くなります。
購入タイミングも品種によって少し異なります。古城梅の収穫は5月中旬〜下旬と、南高梅より早めです。南高梅は6月中旬〜下旬が完熟のピークで、梅干し用には完熟(黄色〜赤み)のもの、梅酒・梅シロップ用には青みの強いものが適しています。梅干しには南高梅の完熟果が条件です。
冷凍梅の活用も覚えておくと便利です。梅を購入したら水洗いしてポリ袋に入れ、冷凍庫で24時間以上しっかり冷凍してから使う方法(冷凍梅法)は、梅の表皮にわずかなヒビが入ることでエキスが出やすくなるため、梅シロップなら約7日程度で完成します。また、梅の旬の時期にまとめて購入し、冷凍保存しておけば6月以降も梅仕事が楽しめます(家庭用冷凍庫では半年を目安に使い切るのがベスト)。
| 比較項目 | 古城梅(ごじろうめ) | 南高梅(なんこううめ) |
|---|---|---|
| 別名 | 青いダイヤ | 梅の最高級ブランド |
| 果実の色 | 鮮やかな青緑(完熟しても青い) | 青→黄色→赤みへ変化 |
| 果実の硬さ | かなり固い | 柔らかい(皮薄め) |
| 収穫時期 | 5月中旬〜下旬(早め) | 6月中旬〜下旬(完熟) |
| 梅酒・梅シロップ | ◎ 透明感・すっきり系 | ○ 芳醇・コクあり |
| 梅干し | △ あまり向かない | ◎ ふっくら柔らか |
| アク抜き | 必要(2〜4時間水にさらす) | 不要 |
| 生産量 | 約430トン(希少) | 和歌山県全体の約9割 |
| 流通 | スーパーでは珍しい | スーパーで広く流通 |
梅仕事の種類ごとに狙いを決めてから品種を選ぶのが基本です。「透明でさっぱりした梅シロップを作りたい」なら古城梅、「ふっくら梅干しを作りたい」なら南高梅というシンプルな判断軸を持っておくと、スーパーや産直サイトで迷わず選べるようになります。

【KIMONO FRUITS】冷凍南高梅または、古城梅(和歌山産)1kg 500g×2 梅 和歌山産の完熟南高梅、古城梅 を冷凍加工しました。