偏差値が高い子どもしか農業大学校に入れないと思っていませんか?
「農業大学校」と聞くと、普通の大学と同じように偏差値があるものだと思いがちです。ですが実際には、農業大学校と農業大学(農学部)はまったく別の種類の学校です。
農業大学(たとえば東京農業大学など)は文部科学省が管轄する4年制大学で、偏差値35〜65程度と幅広く、一般的な大学入試が行われます。一方、農業大学校は各都道府県が設置・運営する専修学校(専門学校)であり、文部科学省ではなく農林水産省と連携した機関です。つまり学校の種別がまったく異なります。
農業大学校は全国42道府県に設置されており、就農を目指す人や農業技術・経営を学びたい人が対象です。修業年限は基本2年間で、卒業すると「専門士」の称号が得られます。これは短期大学卒業者と同等以上の学力があると認定されるもので、4年制大学への3年次編入の資格にもつながります。
つまり、偏差値という概念は農業大学校には存在しません。これは条件がないのではなく、選考方法がそもそも違うということです。よく混同されますが、この違いを知っておくだけで進路選びの視点がグッと広がります。
| 比較項目 | 農業大学(農学部) | 農業大学校 |
|---|---|---|
| 管轄 | 文部科学省 | 農林水産省・各都道府県 |
| 修業年限 | 4年 | 2年(研究課程も2年) |
| 偏差値 | あり(35〜65程度) | なし |
| 卒業資格 | 学士(大卒) | 専門士(専門学校卒相当) |
| 入試方法 | 一般・推薦・共通テスト | 書類・面接・作文が中心 |
| 年間学費目安 | 国公立70〜100万円、私立150〜200万円 | 約12〜30万円(校によって異なる) |
参考:農業大学と農業大学校の違いについて詳しく解説されています。
農業大学・大学の農学部と農業大学校の違いは?(minorasu)
農業大学校に偏差値はないとわかりましたが、入試がまったくないわけではありません。書類・面接・作文が基本です。
入試のスケジュールは多くの学校で「推薦型選考(10〜11月)」「一般選考・前期(11〜12月)」「一般選考・後期(1〜2月)」の3回に分けられています。推薦型選考では作文と面接のみというケースが多く、一般選考では国語・数学・作文などの筆記試験+面接という形式が一般的です。埼玉県農業大学校の一般入試では小論文(800字・50分)と面接(20分程度)が課されています。
気になる倍率はどのくらいでしょうか? 長野県農業大学校のデータによると、総合農学科(農業経営)の募集定員40名に対し、受験者数47名・合格者数38名で倍率は約1.23倍です。一般的な大学入試や就職活動と比べるとかなり低い水準と言えます。
ただし、学校によっては「日本農業検定3級程度の農業の基礎的知識」を筆記試験に含めるところもあります(兵庫県立農業大学校)。農業に関心があることを示す準備は欠かせません。倍率が低いとはいえ、面接では就農への意欲や農業に関わってきた経験を具体的に伝えることが合否を左右します。
過去問を公開している学校も多いので、事前に確認しておくのが安心です。
農業大学校の最大のメリットのひとつが学費の安さです。多くの都道府県立農業大学校では、受験料2,200円・入学料5,650円・授業料(年額)118,800円という設定になっています。
年間授業料12万円は、私立大学の年間授業料100万円前後と比べると、実に8分の1以下です。4年制私立大学に4年間通った場合の授業料総額が約400万円とすると、農業大学校の2年間の授業料は約24万円。差額は300万円以上になります。
さらに驚くべき点として、福岡県農業大学校・長崎県立農業大学校など、入学金と授業料が完全無料の学校も複数存在します。福岡県農業大学校では、2年間トータルで入寮生が約93〜130万円、通学生が約64〜99万円(教材費・資格取得費・食費等込み)という試算が示されています。
学費が安いだけでなく、支援制度も活用できます。
「子どもを大学に行かせたいけれど、学費が心配」というご家庭ほど、農業大学校という選択肢は金銭的に非常に合理的です。
参考:千葉県立農業大学校の詳しい費用構成はこちらで確認できます。
卒業後はどんな道があるのでしょうか? 農業大学校の進路は実に多彩です。
農林水産省が公表したデータによると、農業大学校を卒業してすぐに農業に従事した人は卒業生のおよそ半数に達します。農業法人への就職、家業の農業継承、新規就農など形はさまざまで、就農・就職の進路決定率は学校によっては10年連続で100%という実績を持つところもあります(東京農林大学校)。
残り半数の進路も幅広く、農協(JA)・公務員・農業関連産業・一般企業への就職、さらに4年制大学への3年次編入が挙げられます。農業大学校を卒業して「専門士」の称号を得た場合、大学への編入学資格が付与されます。東京農業大学をはじめ複数の4年制大学が農業大学校出身者の編入を受け入れています。
農業とは関係のない就職先に進む卒業生も珍しくなく、在学中に取得できる以下の資格・免許が一般企業でも評価されることがあります。
これらの資格は在学中に取得できることが多く、卒業時点ですでに実務的なスキルを持つ人材として評価されます。就農だけが唯一の道ではないということですね。
参考:農業大学校卒業後の進路と就農状況について参考になります。
農業大学校卒業後の進路(農林水産省データ含む、minorasu)
「農業大学校は高校を出たばかりの若い人が行くところ」と思いがちです。これは半分正解で、半分は違います。
農業大学校の対象者の条件は、基本的に「高校卒業程度の学力を有する者」です。年齢の上限は特に定められていないケースがほとんどで、実際に30代・40代の社会人が養成課程に在籍している例も珍しくありません。農業に転身したい会社員や、子育て一段落後に就農を目指す主婦の方が通うこともよくある話です。
ただし、2年間の養成課程は基本的に平日の昼間通学で、多くの学校で1年次は全寮制が採用されています。仕事を持ちながらの通学は難しいという現実もあります。そういった方向けには、以下のような選択肢があります。
農業を学びたいという気持ちは年齢に関係ありません。まずは自分のライフスタイルに合ったコースを検討することが大切です。農林水産省の「農業大学校等のご案内」ページには全国42道府県の農業大学校一覧と各校ホームページへのリンクがまとめられているので、まずここから自分の住む都道府県の学校を調べてみるのがおすすめです。
参考:全国の農業大学校の一覧と各校へのリンクが確認できます。