ライゾデグ出荷調整の原因と代替薬への切り替え対応

ライゾデグ配合注フレックスタッチの出荷調整・停止の原因と時系列、代替薬の選択肢、切り替え時の注意点を医療従事者向けに詳しく解説。患者の血糖管理を守るために今すぐ知るべきことは?

ライゾデグ出荷調整の経緯と代替薬・切り替え対応

「同じ代替薬に切り替えても、単位をそのままにすると重篤な低血糖を起こすことがあります。」


📋 この記事の3つのポイント
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出荷調整の経緯と現状

2025年10月20日より海外製造拠点の遅延を理由に限定出荷が開始。11月初旬以降は一時出荷停止となり、2026年2月2日にようやく通常出荷が再開された。

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メーカー公式の代替薬3選

①ノボラピッド注フレックスペン+②トレシーバ注フレックスタッチの組み合わせ、または③ノボラピッド30ミックス注フレックスペンが推奨されている。

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切り替え時の最重要注意点

代替薬への切り替えは「同単位で開始」が原則だが、ノボラピッド30ミックスの2回法から切り替える場合、基礎インスリンが過量になるリスクがある。朝食前・夕食前血糖の確認が必須。


ライゾデグ出荷調整の発生経緯と時系列まとめ


ライゾデグ配合注フレックスタッチ(インスリン デグルデク/インスリン アスパルト)は、ノボ ノルディスク ファーマ株式会社が製造販売する配合溶解インスリンアナログ製剤です。持効型溶解インスリン(インスリン デグルデク=トレシーバ成分)と超速効型インスリン(インスリン アスパルト=ノボラピッド成分)を、世界初の溶解形態で1本のペンに配合した製剤として2015年に発売されました。デグルデク成分が70%、アスパルト成分が30%の割合で配合されているのが大きな特徴です。


今回の出荷調整は、複数回にわたって発生しています。直近では2025年10月20日、ノボ ノルディスク ファーマ社が「海外の製造拠点における出荷に関するスケジュールの遅延」を理由に、同日より限定出荷(出荷量減少)を開始すると発表しました。つまり、製造上の問題ではなく、物流・スケジュール面のトラブルが主因です。意外ですね。


その後、同年11月初旬以降は段階的に出荷停止へ移行し、医療機関への供給が事実上途絶する期間が生じました。2025年12月3日にはノボ ノルディスク ファーマが限定出荷を継続することを改めて発表し、「解除時期は準備が整い次第あらためて報告する」との方針を示しています。そして2026年1月28日、ようやく「2月2日より限定出荷を解除し、通常出荷を再開する」との公式アナウンスがなされました。約3〜4ヶ月間にわたる供給不安の期間が続いたことになります。


実は同様の出荷調整は過去にも起きています。2022年3月末にも、ウクライナ情勢に伴う輸入遅延を原因として、4月初旬〜4月末頃まで出荷調整・出荷停止が発生したことがありました。つまり、ライゾデグの出荷調整は今回が初めてではなく、地政学リスクや海外物流の影響を繰り返し受けやすい製品であることが示されています。この点を医療機関として認識しておくことが、次の供給リスクへの備えになります。


以下に、今回の出荷調整の主な時系列を整理します。
































日付 内容
2025年10月20日 限定出荷(出荷量減少)開始を発表。新規処方の自粛と代替薬への切り替えを要請。
2025年11月初旬以降 出荷停止へ移行。医療機関への在庫ひっ迫が深刻化。
2025年12月3〜4日 限定出荷継続を発表。解除時期は未定と明示。
2026年1月20日 ノボ ノルディスク ファーマ公式サイトにて通常出荷再開予定のご案内を掲載。
2026年1月28日 2月2日より限定出荷解除・通常出荷再開を正式発表。
2026年2月2日 通常出荷再開。


「なお在庫がひっ迫するのはライゾデグ配合注フレックスタッチのみであり、その他のインスリン製剤については問題ない」とノボ ノルディスク ファーマが明示しており、同社の他のインスリン製剤に関しては通常どおり供給が継続されていました。これが基本です。


以下のリンクでは、日本糖尿病学会による公式の出荷調整案内を確認できます。最新情報の確認に役立ててください。


日本糖尿病学会による出荷調整・停止に関する公式案内(2025年10月20日付)。
ライゾデグ®配合注 フレックスタッチ® の出荷調整・停止についてのご案内 - 日本糖尿病学会


ライゾデグ出荷調整時に推奨される代替薬の種類と特徴

ライゾデグが入手困難な状況において、ノボ ノルディスク ファーマが公式に提示している代替選択肢は大きく2つのカテゴリに分かれます。いずれもノボ ノルディスク ファーマ製であり、同一もしくは類似の成分で構成されている点が重要です。


① 強化インスリン療法(basal-bolus)として:同成分の2剤組み合わせ


- 超速効型:ノボラピッド®注フレックスペン®(インスリン アスパルト)
- 持効型溶解:トレシーバ®注フレックスタッチ®(インスリン デグルデク)


ライゾデグ自体がこの2成分を配合した製剤なので、バラバラに処方することで「成分としては同じ」治療を継続できます。つまり成分は同一です。ただし、1本のペンで済んでいたところが2本のペンを使い分ける必要が生じるため、患者の注射負担が増す点は考慮が必要です。特に高齢患者では注射手技の混乱や打ち間違いのリスクが生まれる可能性があります。


② 混合型製剤として:同種同効薬(混合比率が類似)


- ノボラピッド®30ミックス注フレックスペン®(インスリン アスパルト:30%、プロタミン結晶化インスリン アスパルト:70%)


ライゾデグはアスパルト成分30%・デグルデク成分70%であり、ノボラピッド30ミックスはアスパルト成分30%・中間型成分70%という構成です。アスパルトの割合は同じ30%ですが、基礎成分の種類が異なります(超長時間作用型デグルデク vs 中間型プロタミン)。この違いが臨床上の注意点につながります。これは重要です。






















製剤名 超速効型成分 基礎成分 懸濁操作
ライゾデグ配合注(元薬) インスリン アスパルト 30% インスリン デグルデク(持効型)70% 不要(溶解製剤)
ノボラピッド30ミックス(代替) インスリン アスパルト 30% プロタミン結晶化インスリン アスパルト(中間型)70% 必要(懸濁製剤)


ノボラピッド30ミックスに切り替える際、懸濁操作(振り混ぜ)が必須になる点も患者指導のポイントです。ライゾデグは溶解型で懸濁不要という使い勝手のよさが特徴でしたから、患者が「同じように使えばよい」と思い込んでしまうと、懸濁不十分による血糖コントロール悪化につながります。患者への再指導は必須です。


以下の参考資料では、ライゾデグの製品情報と代替薬の詳細が確認できます。


ライゾデグ配合注フレックスタッチの製品情報・添付文書(KEGG医薬品データベース)。
医療用医薬品 : ライゾデグ (ライゾデグ配合注フレックスタッチ) - KEGG MEDICUS


ライゾデグ出荷調整時の切り替え単位・用量の注意点

出荷調整への対応で最も臨床的なリスクが潜むのが、代替薬への切り替え時の用量設定です。「同じようなインスリンだから同じ単位でよい」と判断するのは非常に危険です。ここが最大の落とし穴です。


添付文書の記載によれば、ライゾデグへの切り替えにおいては「前治療におけるインスリン製剤の1日投与量と同単位で投与を開始」することが基本とされています。これは、ライゾデグ→他剤への切り替えにも応用できる考え方です。ただし、以下のパターンごとに注意すべき点が変わってきます。


パターンA:ライゾデグ1日2回 → ノボラピッド30ミックス1日2回への切り替え


混合比率の「アスパルト30%」部分は同じですが、基礎成分がデグルデク(作用持続42時間超)からプロタミン結晶化アスパルト(作用持続12〜16時間程度)に変わります。デグルデクは作用時間が非常に長く血中濃度が安定しているのが特徴ですが、中間型への切り替えでは作用パターンが大きく変わります。特に夜間〜早朝の基礎インスリン作用が弱くなるケースでは、朝食前血糖が上昇する可能性があります。


パターンB:ライゾデグ1日2回 → ノボラピッド(超速効型)+トレシーバ(持効型)の2剤へ分割


この場合、ライゾデグ1回の投与量を「アスパルト30%相当をノボラピッドへ」「デグルデク70%相当をトレシーバへ」と分けて考えることになります。たとえばライゾデグを朝10単位・夕10単位打っていた患者であれば、ノボラピッドを朝3単位・夕3単位(アスパルト成分相当)+トレシーバを7単位(デグルデク成分相当)という試算が一つの参考になります。ただしこれはあくまでも計算上の出発点であり、実際の用量調整は患者個々の血糖値データに基づいて行う必要があります。


特に注意が必要なケース:ノボラピッド30ミックス2回法から来た患者


ライゾデグへの切り替え前にノボラピッド30ミックスを朝の投与量を多めに設定していた患者を、出荷調整を機にノボラピッド30ミックスに「戻す」際には、ライゾデグ使用中に基礎インスリン(デグルデク70%分)が基礎補充として効いていたぶん、ノボラピッド30ミックスの中間型成分への移行で基礎補充が不足するリスクがあります。


逆に、ノボラピッド30ミックスの朝を多く打っていたパターンからライゾデグを経由して別の代替薬に切り替える場合、「基礎インスリン補充(トレシーバ)が過量になる可能性がある」とも指摘されており、朝食前・夕食前の血糖値を1〜2週間は丁寧に追うことが欠かせません。


以下のPMDA公式添付文書資料では、切り替え時の投与量調整に関する記述が詳細に掲載されています。


PMDA公式の添付文書(切り替え時の投与量調節の根拠確認に有用)。
ライゾデグ配合注フレックスタッチ 添付文書(PMDA)


ライゾデグ出荷調整で見落とされがちな患者指導の盲点

出荷調整の対応において医療従事者が集中しがちなのは「どの代替薬に切り替えるか」という選択肢の問題です。しかし実際の現場では、切り替えそのものよりも「患者への説明と再指導」が血糖管理を左右する場合のほうが多いと言えます。見落としがちです。


まず問題になるのが、製剤の外見・デバイス形状の違いです。ライゾデグもノボラピッド30ミックスもフレックスタッチ®またはフレックスペン®を使用しますが、液の見た目が大きく異なります。ライゾデグは溶解型なので液が透明ですが、ノボラピッド30ミックスは懸濁型のため白く濁っています。患者がこの違いを理解していないと、「濁っているのでおかしい薬が来た」と思い込み、振り混ぜずに投与してしまうことがあります。懸濁不十分なまま注射した場合、超速効型成分の割合が偏り、血糖コントロールが乱れます。


次に、注射タイミングの変化です。ライゾデグは食直前投与が基本で、1日1回または2回の投与が可能です。一方、ノボラピッド30ミックスは食直前の2回投与が標準的であり、朝の血糖コントロールが重要視されます。患者が「前と同じタイミングで打てばよい」と誤解すると、食後血糖の管理が乱れます。


また見落とされやすいのが、CGM(持続血糖モニタリング)やSMBG(自己血糖測定)の頻度増加の必要性です。切り替え直後の2〜4週間は、作用パターンが変わる過渡期にあたるため、普段より測定頻度を増やして血糖推移を丁寧に確認することが求められます。特に無自覚低血糖を起こしやすい患者では、切り替え後2週間は朝食前・就寝前・夜中の測定を追加するよう指導することが安全です。


低血糖リスクの高い患者(腎機能障害、高齢、食事量が不規則など)では、切り替え時の初期単位を前の投与量より10〜20%程度減らしてから慎重に増量することも選択肢となります。この判断は医師と薬剤師が連携して行うことが原則です。


さらに、出荷調整という供給上の混乱は患者の不安感を高めます。「急に薬が変わった」という心理的ストレスがインスリン療法への意欲低下や自己判断による注射省略につながることもあり、患者への丁寧なコミュニケーションが低血糖・高血糖の予防に直結します。患者の不安解消も治療の一部です。


薬剤師・看護師・糖尿病療養指導士(CDEJ/CDELJなど)が連携した多職種サポートが、このような緊急の切り替え時こそ力を発揮します。医療機関内での情報共有と役割分担を早期に整えることが、患者を守る最善策となります。


ライゾデグ出荷調整の再発に備えるための施設的対策と独自視点

今回のライゾデグ出荷調整は「突発的なトラブル」として処理されがちですが、実は医療機関がインスリン製剤のサプライチェーンリスクを体系的に管理するきっかけとして捉えるべき事例です。単なる一時的な問題ではありません。


振り返れば、ライゾデグは2022年と2025年の少なくとも2回にわたって出荷調整・停止が発生しています。背景にある「海外製造拠点への依存」「輸送スケジュールの遅延」という構造的な問題は、短期間で解消されるものではありません。地政学リスクや国際物流の不安定さが今後も続く中で、同様の事態は他のインスリン製剤にも起こりうると認識しておく必要があります。


医療機関として取り組めることの第一は、使用患者の定期的なリスト化と在庫の可視化です。ライゾデグ処方患者が院内または院外薬局にどれくらいいるかを把握しておくことで、出荷調整発生時に迅速にトリアージと代替薬調整ができます。逆に、患者リストが整備されていないと、出荷調整の情報が入ってから実際に対応できるまでに1〜2週間以上かかることもあります。時間の余裕は大事ですね。


第二に、代替薬への切り替え手順の院内プロトコル化です。「ライゾデグ→代替薬切り替えフロー」をあらかじめ文書化しておくことで、情報収集と意思決定の時間を大幅に短縮できます。どの代替薬をどの患者に優先的に使うか、用量調整の初期値はどう設定するかを事前に合意しておくことが安全管理の観点から有効です。


第三に、製薬会社からの情報を医療機関全体で迅速に共有する体制づくりです。今回の出荷調整では、ノボ ノルディスク ファーマから医療機関・卸各社・医師会などへ文書が配布され、日本糖尿病学会からも速やかに周知が行われました。しかし、MR経由の情報が医師や薬剤師のみに届き、病棟看護師や糖尿病療養指導士まで共有されないケースが現場では少なくありません。出荷調整情報の院内ルーティングを明確にしておくだけで、現場の混乱を大幅に防げます。


また、処方側の医師は「出荷調整=完全に入手できない」と思い込んで必要以上に早急な切り替えを進めることがありますが、今回のケースのように「限定出荷」の段階では在庫が完全にゼロになるわけではありません。すでにライゾデグによる血糖コントロールが安定している患者については、流通在庫を確認した上で「切り替えを急がない」選択も検討できます。切り替えが患者にとってすべて最善とは限りません。


以下は、ノボ ノルディスク ファーマの医療従事者向け公式サイトで、最新の出荷状況やお知らせを確認できます。出荷調整発生時の一次情報確認先として登録しておくことをお勧めします。


ノボ ノルディスク ファーマ 医療従事者向けサイト(お知らせ一覧)。
お知らせ一覧 | 医療従事者向けサイト | Novo Nordisk Pro




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