600Wでそのままチンするだけだと、甘さが半分以下になります。
さつまいもが甘くなるのには、科学的な理由があります。さつまいもにはβ-アミラーゼという酵素が豊富に含まれており、この酵素がデンプンを麦芽糖(マルトース)に分解することで甘みが生まれます。ポイントは、β-アミラーゼが最も活発に働く温度が「65〜75℃」であるという点です。
つまり、甘くするには65〜75℃の温度帯をできるだけ長くキープすることが条件です。
ところが、600Wのレンジで一気に加熱すると、内部温度があっという間に80℃を超えてしまいます。80℃を超えると酵素が壊れて働かなくなるため、せっかくのデンプンが糖に変わらないまま加熱が終わってしまいます。これが「レンジでチンしたさつまいもは甘くない」と言われる本当の理由です。意外ですね。
これを解決するのが「2段階加熱法」です。
200Wがない機種の場合は「解凍モード」で代用できます。大手食品メーカーのニチレイフーズが公開しているさつまいも料理研究家・鈴木絢子さんの方法でも、この2段階加熱法が推奨されています。
参考:ニチレイフーズ公式メディアによる「さつまいもを電子レンジで焼き芋にするテク」(2段階加熱の具体的な手順と根拠が詳しく解説されています)
さつまいもを電子レンジで【甘〜い焼き芋】にするテク |ニチレイフーズ
さつまいもの大きさの目安として、300gは手のひらをやや超えるくらいのサイズです。小ぶりなもの(200g前後)なら、600Wは1分、200Wは8分程度に短縮して構いません。加熱後は竹串がスッと通ればOKのサインです。
レンジ加熱の前に、もう一手間かけることで甘さがさらにアップします。それが「水にさらす」と「塩水に浸ける」の組み合わせです。
まず、さつまいもを切ったらすぐに水に5分ほどさらしてアク抜きをしましょう。アク抜きをすることで、仕上がりの色が鮮やかなオレンジ色を保てます。ただし、水にさらしすぎると風味が抜けるので、30分以上は浸けないのが原則です。
次に、塩水を使う方法があります。これは「対比効果」と呼ばれる味覚の仕組みを活用したもので、スイカに塩を振ると甘みが際立つのと同じ原理です。水500mlに対して塩小さじ1(約3g)の塩水を作り、カットしたさつまいもを20分ほど浸けます。塩分がさつまいもの甘みを引き立て、加熱中にデンプンが糖に変わりやすくなる効果もあるとされています。
これは使えそうです。
水にさらした後は、キッチンペーパーでしっかり水気を拭き取ってからレンジへ入れましょう。水分が残ったままだと加熱にムラが出て、一部だけ硬いままになることがあります。また、耐熱皿に並べる際は重ならないように1枚ずつ並べてください。重なると湿気がこもり、カリッとした仕上がりの妨げになります。
| 下処理の方法 | 効果 | 時間 |
|---|---|---|
| 水にさらすだけ | 変色防止・アク抜き | 5〜10分 |
| 塩水に浸ける | 甘みアップ・対比効果 | 20分 |
| 一晩塩水漬け | 甘み最大化(焼き芋級) | 約8時間 |
天ぷらにする場合は、加熱後の水気をしっかり拭き取ることが衣のサクサク感にも直結します。水気が残っていると、衣が油と反応してべちゃつく原因になるからです。水気の処理は必須です。
甘さやホクホク感は、実は切り方と厚さにも大きく左右されます。この点を知らずに揚げていると、いくら下処理を丁寧にしてもうまくいかないことがあります。
基本的な切り方は「1〜1.5cm幅の斜め切り」または「輪切り」です。斜め切りは断面が大きくなるため、衣が絡みやすく見た目も映えます。
厚さ別の特徴をまとめると次の通りです。
甘さにこだわるなら1〜1.5cm厚さが基本です。
厚めに切る場合は、レンジ加熱時間も比例して長くなります。1.5cm幅なら600Wで2分30秒を目安に、竹串で刺して少し柔らかくなっていれば十分です。天ぷらにするときは揚げ油の中でも追加加熱されるので、レンジでは「7〜8割火が通った状態」で十分です。
完全に火を通してしまうと、揚げるときに崩れる原因になります。崩れには注意すれば大丈夫です。
なお、皮付きで揚げると彩りが良くなるうえ、皮のすぐ内側には甘みが凝縮されているため、風味のロスを防ぐことができます。料理研究家の間でも、さつまいもは皮をむかずに調理することが推奨されています。また、太いさつまいもの場合は半月切りにすると、1枚あたりの大きさが揃いやすくなります。
参考:家庭画報「揚げ方でさつまいもの甘さや食感が変化します」(加熱温度帯と糖化の仕組みについて、プロの料理人が詳しく解説しています)
揚げ方でさつまいもの甘さや食感が変化します|家庭画報.com
どれだけ丁寧にレンジ下処理をしても、揚げ方を間違えると台無しです。サクサクの衣に仕上げるには、3つの鉄則があります。
①衣は冷水で作る
衣に使う水は必ず冷水にしましょう。温度が高いと小麦粉のグルテンが出やすくなり、重くてモコモコした衣になってしまいます。夏場は氷を2〜3個入れた水を使うと安心です。
②混ぜすぎない
衣を混ぜすぎるのは禁物です。グルテンが発生してフリッター状のボテッとした衣になります。箸でざっと10回程度かき混ぜるだけで十分で、ダマが少し残るくらいでOKです。混ぜすぎが最大の失敗原因です。
③揚げ油は170℃をキープ
さつまいも天ぷらは170℃が基本温度です。温度が低すぎると油っぽく仕上がり、高すぎると衣だけが焦げて中が生のままになります。菜箸の先端に衣を少しつけて油に落としたとき、底まで沈んだ瞬間にすっと浮き上がってくる状態が170℃の目安です。一度にたくさん入れすぎると油の温度が下がるため、鍋の面積の半分程度を目安に揚げましょう。
揚げ時間の目安はこちらです。
レンジ下処理を済ませてから揚げると、揚げ時間が半分以下になります。時短になるのはもちろん、衣が焦げる前にしっかり火が通るので失敗がぐんと減ります。
揚げ上がりのサインは「きつね色になった衣」と「泡が小さくなってきた頃合い」です。最初は大きな泡が出ますが、水分が抜けるにつれて泡が細かくなり、音も静かになってきます。そのタイミングで油から上げると、サクッと仕上がります。
参考:dancyu公式サイト「ひと手間で甘味が倍増!さつまいもの天ぷら」(衣の混ぜ方と揚げ方の科学的な理由が丁寧に説明されています)
実はさつまいもそのものの保存方法も、天ぷらの甘さに直結しています。ここは見落とされがちですが、大きな差が出るポイントです。
まず知っておきたいのが、さつまいもは冷蔵庫に入れると甘くなるどころか、風味が落ちるという点です。さつまいもは10℃以下の環境に置かれると「低温障害」という生理現象を起こします。内部が黒く変色し、甘みが減るだけでなく、苦みが出ることもあります。JAなめがた甘藷部会連絡会でも「絶対に冷蔵庫に入れてはいけません」と明記しているほどです。
厳しいところですね。
さつまいもの最適な保存温度は13〜15℃、湿度90%以上の環境です。秋冬なら新聞紙に包んで段ボール箱に入れ、玄関や廊下などの涼しい日陰に置くのがベストです。夏場に限り、野菜室(5〜8℃)への一時保存は許容範囲ですが、長期保存には向きません。
また、さつまいもは収穫後すぐより2〜3カ月寝かせたものの方が格段に甘くなります。追熟によってデンプンが徐々に糖に変わるからです。冬以降に店頭に並ぶさつまいもの多くはこの追熟済みのものです。秋口に購入した場合は、少し寝かせてから使うとより甘い天ぷらに仕上がります。
追熟に適した温度は10〜15℃で、期間は2〜3週間が目安です。
なお、翌日に天ぷらを作る予定なら、前日の夜に塩水(水500mlに塩小さじ1)を作り、カットしたさつまいもを一晩浸けておくのがおすすめです。冷蔵庫ではなく常温か野菜室で浸けておくと、翌日すぐに甘みが引き出された状態でレンジ下処理に入れます。準備が前日に終わるので、当日の調理がとてもスムーズになります。
| 保存場所 | 温度帯 | 向き・不向き |
|---|---|---|
| 常温・暗所(新聞紙包み) | 13〜15℃ | ◎ 基本の保存法 |
| 野菜室 | 5〜8℃ | △ 短期間のみ可 |
| 冷蔵庫(通常棚) | 3〜5℃ | ✕ 低温障害が起きる |
| 冷凍(加熱済み) | −18℃以下 | ◎ 加熱後なら2週間OK |
さつまいもを冷凍したい場合は、必ずレンジ加熱後に粗熱を取ってからにしましょう。生のまま冷凍すると、解凍時に水分が出て食感が大きく損なわれます。マッシュ状にしてから冷凍用保存袋に入れると、スムープやスイートポテトにも使いまわせて便利です。
参考:農研機構「さつまいもの低温障害と適正貯蔵条件」や、JAなめがた甘藷部会連絡会の保存ガイドページは、保存環境についての根拠として信頼性が高いです。