「赤いきつねを毎週買っているのに、実は中身が4種類あると知らずに損していた」という主婦が多数います。
「赤いきつね」のCMといえば、あの独特なナレーション「♪ まるちゃん」と武田鉄矢さんのコミカルな演技を思い浮かべる方は多いはずです。実は、この組み合わせが世界記録を打ち立てています。
東洋水産は1978年(昭和53年)8月に「赤いきつねうどん」を発売した当初から、武田鉄矢さんをCMキャラクターとして起用し続けてきました。2019年には「同じ俳優を起用したTVCMを、最も長い期間放映し続けている商品」としてギネス世界記録に正式認定されました。認定時点で41年連続、現在は47年以上という圧倒的な記録です。
ここで驚きなのが、武田さんの起用が決まった経緯です。CMを企画した東急エージェンシーは、候補として武田鉄矢さんと榊原郁恵さんの2人を提案していました。最終的に武田さんが選ばれた決め手は、1977年公開の映画『幸福の黄色いハンカチ』で日本アカデミー最優秀助演男優賞を受賞し、注目度が急上昇していたからだといわれています。
つまり「赤いきつね」のCM顔は、ある意味「タイミング」によって決まったのです。これは意外ですね。
また、1979年のCMで有名になった名台詞「戦車が恐くて、赤いきつねが食えるか!」は、実はシナリオに書かれていたセリフではありませんでした。武田さんのアドリブから生まれたものです。このひと言が社会的な流行語になり、「赤いきつね」のブランドイメージを一気に確立させたことを考えると、アドリブの偉大さを改めて感じます。
武田さん自身は「従業員が必死になって作っているんですから」という当時の社長の言葉に感銘を受け、商品への敬意を持ち続けてきたと語っています。商品の質への真摯な姿勢が、半世紀近い関係を支えてきたといえるでしょう。
現在は上白石萌歌さんが加わり、武田さんとのコンビCMが展開されています。2025年9月の「かぐや姫と月見そば」篇、2026年3月の「春の山登り」篇など、シリーズとして多くのファンに親しまれています。
ギネス世界記録公式サイト:武田鉄矢さんのCM最長出演記録について(日本語)
「赤いきつね」という名前は、最初から決まっていたわけではありません。この話を知っている人はほとんどいないでしょう。
発売直前まで、商品名は「熱いきつね」で容器の色はベージュ(黄色)になる予定でした。ところが、1978年に山口百恵さんのヒット曲『プレイバックPart2』を耳にした当時の社長が、歌詞の中の「真っ赤なポルシェ」というフレーズに感じるところがあり、急遽「赤い」に変更したという経緯があります。
「真っ赤なものには熱さと強いインパクトがある」という直感が、一夜にしてブランドの根幹を変えた瞬間でした。これが基本です。
もう一つの理由もあります。当時のライバル・日清食品の「どん兵衛」が「熱いうどん」というキャッチコピーを使っており、類似品として問題になることを避けたという現実的な判断もあったとされています。赤・緑という対照的な色の組み合わせも、「緑のたぬき」(1980年発売)との店頭での相乗効果を狙った戦略的な決定でした。
さらに少し前の歴史に目を向けると、「赤いきつね」の前身にあたる商品は1975年発売の「カップきつねうどん」です。これが業界初のカップ入り即席きつねうどんであり、自社加工のだしを使った和風カップ麺ブームの火付け役となりました。
しかし翌1976年には、「どん兵衛」をはじめとする類似品が一気に登場します。対抗するためにパッケージとネーミングを大幅刷新し、1978年に「赤いきつね」として再出発したわけです。まさに逆境を「赤」で乗り越えた歴史といえます。
面白いのは、東洋水産が「カップきつねうどん」のヒット時に特許や意匠登録を行わなかったことです。当時の社長が「必要ない」と却下したことで、競合他社が参入しやすくなってしまいました。この判断がなければ、和風カップ麺の市場はまったく違った形になっていたかもしれません。
2025年2月6日、東洋水産が公式XやYouTubeに公開したアニメCM「ひとりのよると赤緑 おうちドラマ編」が、大きな話題を呼びました。
内容は、若い女性が薄暗い自室でテレビの恋愛ドラマを見て涙ぐみながら「赤いきつね」を食べるというシチュエーションです。しかし公開から約10日後の2月16日を境に、「女性の頬を赤らめた描写や口元のアップが性的で不快だ」という批判がSNSで急増し、炎上騒動に発展しました。
注目すべきは東洋水産の対応です。多くの企業がこういった騒動でCMの削除や謝罪声明を出す中、東洋水産は一切の声明を出さず、動画も削除しませんでした。この「敢えて対応しない」という姿勢は「選択的沈黙」として、企業の危機管理の新しいあり方として注目されています。
実は、この炎上には「非実在型炎上」という側面がありました。後の分析によれば、実際にCMに対し強い批判を持っていたユーザーはさほど多くなく、批判に対する批判(「これを性的というほうがおかしい」)が議論を拡大させた構造だったとされています。
肝心の売上への影響はどうだったのでしょうか?日経トレンディの調査では、炎上によってマイナスの影響はなかった一方、プラスの影響も見られなかったという結果が出ています。つまり売上への実被害はゼロという結果です。
制作会社は2025年2月21日に声明を発表し、「すべての制作過程において生成AIは一切使用されておらず、プロのアニメーターとクリエイターによる手作業で制作された」と明確に否定しています。このCMに対して「AIを使っているのでは」という疑惑まで出ていたことを考えると、炎上がいかに多面的な広がりを見せたかがわかります。
なお、同時に公開された「緑のたぬき」版は男性が主人公で、雪の降る寒い日の放課後に教師の男性が食べるという内容でした。こちらは炎上せず、女性版だけが批判を受けたことも議論のポイントになりました。
スーパーで「赤いきつね」を買うとき、パッケージの表面しか見ていないという方は多いと思います。実は、裏面か側面を確認することが非常に重要です。
「赤いきつね」には、北海道向け・東日本向け・関西向け・西日本向けの4種類が存在します。それぞれだしの原料と配合が大きく異なるのです。
| 地域 | だしの特徴 |
|------|-----------|
| 🗾 北海道 | かつおと利尻昆布を利かせたまろやかで甘みのあるつゆ |
| 🏙️ 東日本 | かつおを中心に、醤油で仕上げたすっきり系 |
| 🌸 関西 | うるめ鰯などの雑節の旨みを利かせ、淡口醤油でまとめた上品な味 |
| 🌊 西日本 | いりこ(煮干し)の風味が強めで、はっきりとしただしの味 |
2001年に西日本エリアから関西エリアが独立し、2005年には東日本エリアから北海道向けが独立して、現在の4種類体制になりました。お住まいの地域に対応した商品は、フタや側面のパッケージで確認できます。東日本向けはパッケージ側面に「E」、西日本向けには「W」の文字が記載されています。
ここがポイントです。旅行先で自分の地域と異なるバージョンを購入すると、同じ商品名なのにまったく違う風味に驚くことがあります。たとえば、東日本在住の方が関西や九州に旅行した際にスーパーで買い求めると、いりこや雑節が効いたしっかりとしただし感に「こんなに違うの?」と感じるはずです。
2025年6月には「全国味くらべ 赤いきつねうどん 北海道・東・関西・西」という、4種類すべてを同時に購入できる企画商品も発売されています。普段は自分の地域の味しか食べる機会がない方にとっては、食べ比べをすることで「だし文化」の地域差を体感できる貴重な機会です。これは使えそうです。
主婦の日常的な買い物という観点から考えると、スーパーの陳列棚を確認し、自分の地域に合った商品を選ぶことが、同じ価格で最もおいしく食べられる方法です。逆に他地域のものを間違えて購入しても食べられないわけではありませんが、「なんか味が違う」と感じる原因になります。お買い物の際は、パッケージの側面チェックが基本です。
東洋水産公式サイト:「全国味くらべ 赤いきつねうどん」4種類のだしの特徴を解説したページ
現在の「赤いきつね」CMは、武田鉄矢さんと上白石萌歌さんのコンビによる時代劇風シリーズが展開されています。2025年9月放映の「かぐや姫と月見そば」篇では、上白石さんがかぐや姫、武田さんが翁(おじいさん)を演じるという設定で話題になりました。
「天ぷらが月に見える」という理由で緑のたぬきを"月見そば"と言い切る翁役・武田さんと、月の何を知っているのかと冷たい視線を向けるかぐや姫役・上白石さんの掛け合いは、多くの視聴者から好評を集めています。続く2026年3月の「春の山登り」篇では山を登りながら息を切らしつつも平然を装う武田さんのコミカルな演技が見所になっています。
このシリーズが人気を得ている理由は、コメディとしての完成度の高さにあります。武田鉄矢さんは1978年から47年以上にわたってこのCMの顔を担ってきており、その蓄積されたキャラクターと、若い世代から絶大な支持を受ける上白石萌歌さんのフレッシュな存在感が絶妙に噛み合っています。
一方で、2025年2月のアニメCM炎上のようなケースと対照的なのも興味深い点です。武田さん・上白石さんが出演する通常のTVCMシリーズは何ら炎上せず、むしろファンから愛されています。同じ「赤いきつね」というブランドを扱いながら、CMの表現方法によって受け取られ方がこれほど異なる点は、広告やメディアを普段から意識している主婦層にとっても気になるテーマでしょう。
なお、東洋水産の公式サイト「CMライブラリー」では、過去から現在に至るすべてのCMを視聴することができます。武田鉄矢さんの若いころの映像から現在に至るまで、時代とともに変わるビジュアルと変わらないキャラクターを比較してみるのも楽しいものです。親子で見ると「お父さんもこれ好きだったんだよ」という会話のきっかけにもなりそうですね。
東洋水産公式CMライブラリー:赤いきつね・緑のたぬきの最新から過去CMまで一覧で視聴できるページ