ほうれん草を毎日茹でて食べているのに、ビタミンKはほとんど摂れていないかもしれません。
ビタミンKは「脂溶性ビタミン」の一種で、大きくK1(フィロキノン)とK2(メナキノン)の2種類に分かれます。K1は主に緑黄色野菜・海藻・植物油に含まれ、K2は納豆などの発酵食品や動物性食品に多く含まれています。
毎日の食事でよく使う食品について、可食部100gあたりのビタミンK含有量をまとめました。
| カテゴリ | 食品名 | 含有量(μg/100g) | 目安量 |
|---|---|---|---|
| 🌿 野菜類 | パセリ(葉・生) | 850 | 1枝:15g |
| 🌿 野菜類 | しそ(葉・生) | 690 | 10枚:7g |
| 🌿 野菜類 | モロヘイヤ(茎葉・生) | 640 | 1束:100g |
| 🌿 野菜類 | ほうれん草(生) | 270 | 1株:20g |
| 🌿 野菜類 | かぶ(葉・生) | 340 | 1個:80g |
| 🌊 海藻類 | あまのり・ほしのり | 2,600 | 1枚:2g |
| 🌊 海藻類 | カットわかめ(乾) | 1,600 | 1人分:10g |
| 🫘 豆類 | ひきわり納豆 | 930 | 1パック:30〜50g |
| 🫘 豆類 | 糸引き納豆 | 870 | 1パック:30〜50g |
| 🍗 肉類 | 鶏もも皮(生) | 120 | 1枚:30〜40g |
| 🧀 乳製品 | パルメザンチーズ | 15 | 大さじ1:6g |
| 🥚 卵類 | 鶏卵・卵黄(生) | 39 | 1個:16g |
| 🫒 油脂類 | 大豆油 | 210 | 大さじ1:12g |
| 🫒 油脂類 | なたね油(キャノーラ油) | 120 | 大さじ1:12g |
(出典:日本食品標準成分表・八訂増補2023年、健康長寿ネット)
表を見ると、乾燥海藻類の数値が突出して高いことに気づくと思います。ただし、1回に食べる量が少ないため、実際に食事から摂取できる量は野菜類とそれほど変わりません。1食あたりの摂取量で考えると、ほうれん草1束を調理した場合のビタミンK量は約270μgになり、1日の目安量(150μg)を大きく超えます。つまり食品を上手に組み合わせれば、普通の食事でも十分に摂れるということですね。
参考にした信頼性の高い情報源はこちらです。
ビタミンKの働きと1日の摂取量|健康長寿ネット(公益財団法人 長寿科学振興財団)
ビタミンKと一口に言っても、K1とK2では働きの「得意分野」が異なります。この違いを知っておくと、目的に合わせた食品選びができるようになります。
K1(フィロキノン)は主に「止血」に関わるビタミンです。傷を負ったときに血液を固めるプロトロンビンという血液凝固因子の生成を補助します。K1が不足すると、鼻血や傷口からの出血が止まりにくくなる可能性があります。含まれる食品は緑黄色野菜・海藻・植物油などがメインです。
K2(メナキノン)は主に「骨と血管の健康」に深く関わります。K2が重要なのは、骨にあるオステオカルシンというたんぱく質を活性化させ、カルシウムを骨に定着させるからです。これが不足すると、カルシウムをいくら摂っても骨に届きにくくなります。骨粗しょう症の治療薬にも、このK2(メナテトレノン)が使われているほどです。
| ビタミンK1(フィロキノン) | ビタミンK2(メナキノン) | |
|---|---|---|
| 主な働き | 血液凝固(止血) | 骨形成・血管保護 |
| 多い食品 | ほうれん草・ブロッコリー・海藻・植物油 | 納豆・鶏肉・チーズ・卵黄 |
| 特徴 | 食品から摂りやすい | 腸内細菌でも合成される |
注目すべきなのがK2の納豆との関係です。納豆1パック(40g)には約350μgものK2が含まれており、1日の目安量150μgの2倍以上を一度に摂取できます。さらに納豆菌は腸内でもK2を産生するため、納豆を食べている人は食べていない人に比べてビタミンK摂取量が約2倍になるという調査結果もあります。これは使えそうです。
ただし、ワルファリン(ワーファリン)という血液凝固を抑える薬を服用している方は注意が必要です。ビタミンKが多い食品、とくに納豆・ほうれん草・ブロッコリーは薬の効き目を弱めてしまうことが知られています。薬を服用中の方は必ず医師に相談してください。
ビタミンKの性質と働き|大塚製薬 栄養素カレッジ(医薬品メーカーによる栄養情報)
ビタミンKは「脂溶性ビタミン」です。脂溶性とは、油に溶ける性質のことを指します。つまり、油と一緒に摂ると腸での吸収効率が大幅に上がるということですね。
野菜のビタミンKを効率よく摂るには、「茹でてお浸し」よりも「油で炒める」ほうが断然おすすめです。炒め物・ドレッシングを使ったサラダ・天ぷらのように、調理に油が入るだけで吸収率が変わります。
またビタミンKは熱に比較的強いという性質も持っています。ビタミンCは加熱で壊れやすいのですが、ビタミンKは炒める・蒸す・揚げるといった調理でも損失が少ないため、積極的に火を通した料理に使えます。農研機構の調査データによると、ゆで調理後の残存率は約91%と非常に高く、栄養がほとんど残るという報告があります。
| 調理法 | ビタミンK吸収のしやすさ | ポイント |
|---|---|---|
| 🥗 生(ドレッシングあり) | ◎ | オリーブオイルやごま油で吸収アップ |
| 🍳 炒め物 | ◎ | 油を使うため最も吸収しやすい |
| 🍲 茹でる・煮る | ○ | 残存率が高く、汁ごと飲めばさらにOK |
| 🥬 生(ドレッシングなし) | △ | 吸収率がやや低下する |
具体的な食べ合わせとしておすすめなのは以下の3つです。
- 小松菜のごま油炒め:小松菜100gで約210μgのK1が摂れ、ごま油で吸収率も上がります
- 納豆+亜麻仁油がけ:K2がたっぷりの納豆に脂溶性を活かした油をプラスするとさらに効果的です
- ほうれん草のソテー:バターやオリーブ油で炒めるだけで、効率よくK1を取り込めます
1食に1品、油を使った緑黄色野菜料理を意識するだけでOKです。
野菜を茹でると栄養がなくなるは本当か?|カゴメ ベジデイ(野菜の調理と栄養の関係を解説)
ビタミンKが不足した場合、体に現れる影響は大きく2つあります。「出血が止まりにくくなること」と「骨が弱くなること」です。
出血に関する症状としては、皮下出血(あざができやすくなる)・鼻血が出やすくなる・傷口からの出血が止まりにくくなるといったことが起こります。月経過多が起きる場合もあります。健常な大人では腸内細菌によってもK2が合成されるため、日常的に欠乏症になることは稀ですが、食事の偏りや抗生物質の長期服用によって腸内細菌が減少すると起こりやすくなります。
骨への影響が、特に女性にとって深刻なポイントです。閉経後に女性ホルモンの分泌が減ると骨密度が低下しやすくなりますが、そこにビタミンKの不足が重なると骨粗しょう症のリスクが一気に高まります。新潟大学の研究では、食事中のビタミンKとカルシウムの摂取量が少ない女性は、骨粗しょう症性骨折(特に脊椎圧迫骨折)のリスクが高くなることが報告されています。痛いですね。
骨粗しょう症の予防・治療ガイドラインによると、骨粗しょう症の方に推奨されるビタミンK摂取量は「1日250〜300μg」とされています。通常の目安量である150μgよりも多い量を意識的に摂る必要があるということですね。
患者数は推計1280万人とも言われる骨粗しょう症ですが、ビタミンKを日常的に多く摂っているグループはリスクが下がるというデータもあります。「骨のことが気になり始めた」という方は、カルシウムだけでなくビタミンKも同時に意識することが大切です。カルシウムとビタミンKを一緒に摂るのが基本です。
食事中のカルシウムとビタミンKは女性の骨粗鬆症性骨折リスクと関連する(新潟大学 研究概要)
「どの食品を食べればいいかはわかった、でも毎日どうやって続ければいいの?」という疑問に答えるのがこのセクションです。
1日の摂取目安量150μgを食事で達成するのは、実はそれほど難しくありません。以下の組み合わせ例を見てみましょう。
| タイミング | 食品・料理 | ビタミンK量(目安) |
|---|---|---|
| 🌅 朝食 | 納豆(1パック40g) | 約350μg |
| 🌅 朝食 | 味付けのり(1人分3g) | 約20μg |
| 🌞 昼食 | ほうれん草のソテー(50g) | 約135μg |
| 🌛 夕食 | 小松菜のごま油炒め(80g) | 約168μg |
| 🌛 夕食 | わかめの味噌汁(乾燥5g) | 約80μg |
朝に納豆1パックを食べるだけで1日の目安量の2倍以上になります。1食でカバーできるということですね。ただし、毎日同じ食品に頼るよりも、野菜・海藻・発酵食品をバランスよく組み合わせるほうが他の栄養素も一緒に摂れて効率的です。
特に忙しい主婦の方にとって、意識して取り入れやすいのが小松菜・ほうれん草・ブロッコリーの3つです。スーパーで年中手に入り、炒め物・味噌汁・スープに何にでも使えます。週に3〜4回これらを献立に加えるだけで、ビタミンKの摂取量は安定しやすくなります。
また、青みが少ない日の「保険」として役立つのが乾燥わかめです。味噌汁に入れるだけで約80μgを補えます。常備しておくと安心ですね。
もし普段の食事からビタミンKが摂りにくいと感じる場合は、栄養機能食品やサプリメントで補う方法もあります。ただし、ワルファリンなどの薬を服用中の方は医師への相談が条件です。サプリの過剰摂取については、食事による過剰摂取の報告はほとんどないものの、サプリでの大量摂取は注意が必要です。
ビタミンKを多く含む食品(1食当たりの含有量)|オーソモレキュラー栄養医学研究所